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会社売却

会社売却の準備期間はどれくらい?準備を始めるタイミングと進め方

目次

そもそも「会社売却の準備期間」はどこからどこまで?

「会社売却の準備期間」と聞くと、“何か月かかるのか”がいちばん気になりやすいと思います。
ただ、期間を見積もる前に、まずは「準備って、どこからどこまでを指すのか」をはっきりさせておくと、不安が少し整理されます。

この章では、準備期間の範囲を言葉にしながら、「自分が今どこで立ち止まっているのか」を見えやすくしていきます。

準備期間=「売却活動の前」に整える時間、と考える

ここでいう「会社売却の準備期間」は、ひとことで言うと「売却活動に入る前に、判断材料と説明材料を整える時間」です。

会社売却は、何かの申請のように“決まった書類をそろえれば終わり”という性質ではありません。
相手に説明できる状態になっているか、そして自分自身が納得して意思決定できる状態になっているかが、とても大事になります。

そのため準備期間は、次のようなことを整える時間だと考えるとイメージしやすいです。

  • 自分が判断するための材料(なぜ売るのか、何を大切にしたいのか など)
  • 相手に説明するための材料(事業の強み・収益の構造・体制などを言葉にできる状態)
  • 進め方の土台(社内で誰が何を把握しているか、連絡窓口は誰か など)

逆に言うと、「準備が足りないまま売却活動に入る」と、後から資料の追加や説明のやり直しが増え、結果として時間が延びたり、気持ちが疲れてしまったりしやすいです。
だからこそ、準備期間は“遠回りに見えて、結果的に近道になりやすい時間”でもあります。

準備が終わっている状態とは(最低限の“整っている”の基準)

「準備が終わった状態」と聞くと、完璧に整えないといけないように感じるかもしれません。
でも実際は、最初から100点を目指す必要はありません。
大切なのは、“スタートしても大きく迷子にならない最低限”ができていることです。

最低限の基準としては、次の3つがそろっていると、準備がかなり進んでいると言えます。

  • 目的が言葉になっている:なぜ会社売却を考えているのかを、短い言葉で説明できる
  • 条件の優先順位が見えている:譲れない条件と、状況次第で調整できる条件がある程度分かれている
  • 説明の骨組みができている:自社の事業を「何で儲けていて」「何が強みで」「どんな体制で回っているか」を、ざっくりでも話せる

ここでのポイントは、資料が完璧にそろっていることよりも、「説明が破綻しない状態」になっていることです。
たとえば、数字の細部が未整理でも、全体像がつかめていて、必要に応じて確認できる体制があるなら、十分に前へ進めます。

逆に、準備が長引きやすいのは、情報が無いというよりも、情報が社長の頭の中にだけある状態です。
この状態だと、毎回その場で思い出しながら話すことになり、説明のたびに疲れてしまいます。
準備期間は、そうした負担を減らすために、「頭の中の情報を外に出して整える時間」とも言えます。

ここでは扱わない:買い手探しや交渉など、売却活動そのもの

この章で扱うのは、あくまで「売却活動の前に整えること」までです。

まずはこの章で、準備期間の範囲をはっきりさせて、「何が不安なのか」を言葉にできる状態を作っていきましょう。
それだけでも、次に何をすればよいかが、少し見えやすくなるはずです。

準備期間が人によって大きく変わる理由

会社売却の準備期間は、「だいたい何か月」と一言で決めにくいことが多いです。
というのも、準備の長さは会社の規模だけでなく、情報の整理状況社内の体制、そして意思決定の進め方で大きく変わるからです。

ここでは、準備期間が伸びやすい代表的な理由を3つに分けて整理します。
先に原因を知っておくと、「自社はどこで時間がかかりそうか」が見えやすくなり、準備期間の見積もり精度が上がります。

数字・契約・運用が「頭の中」にあるほど時間がかかりやすい

準備が長引きやすい会社に共通しやすいのが、数字や契約、日々の運用の情報が「社長(または特定の人)の頭の中」に集まっている状態です。

これは能力の問題ではなく、現場で意思決定をしながら走ってきた会社ほど、自然に起こりやすいことです。
ただ、この状態だと準備の場面で、次のようなことが起きやすくなります。

  • 必要な情報を聞かれても、その場では答えきれず後から確認が増える
  • 「たしかこうだったはず」が多くなり、説明の精度を上げるのに時間がかかる
  • 契約書や請求書などの所在が曖昧で、探す時間が発生する

ここでのポイントは、情報が無いことよりも、「外に出ていない」ことです。
準備では、頭の中にある情報を「言葉にして」「人に渡せる形にして」いく必要があるため、どうしても時間がかかりやすくなります。

もし「うちは口頭のやり取りが多い」「契約書がまとまっていないかも」と感じる場合は、準備期間は少し長めに見ておくと安心です。

社長への依存が強いほど、整理に時間がかかりやすい

次に、準備期間に差が出やすいのが、事業がどれだけ社長に依存して回っているかです。

社長が中心になって会社を引っ張ってきたこと自体は、とても強みでもあります。
ただ一方で、売却の準備では、次のような点を整理する必要が出てきます。

  • 社長が担っている仕事はどこまでか(営業、仕入れ、採用、現場判断など)
  • 社長がいないと止まる業務は何か
  • 周囲に引き継げそうな領域はどこか

依存が強いほど、この棚卸しに時間がかかります。
理由はシンプルで、社長自身も普段は無意識にやっていることが多く、「自分の仕事を言語化する」作業が必要になるからです。

また、社長が忙しすぎると、準備に使える時間が限られてしまい、結果としてカレンダー上の期間も長くなりやすいです。
準備期間は「作業量」だけでなく、確保できる時間でも大きく変わります。

関係者(家族・役員・幹部)の合意形成で差が出やすい

最後に、準備期間を左右しやすいのが、関係者との合意形成です。
会社売却は、社長ひとりの気持ちだけで進められるケースもありますが、実際には家族役員幹部などの関係者がいることが多いです。

合意形成に時間がかかりやすいのは、誰かが反対しているから、というよりも、見ている景色が違うことが多いからです。
たとえば、同じ「会社をどうするか」という話でも、

  • 社長は「今後の人生や責任」
  • 家族は「生活や安心」
  • 役員・幹部は「雇用や現場の継続」

といったように、気になるポイントがそれぞれ違います。
この違いをすり合わせずに進めると、途中で「そんな話は聞いていない」となってしまい、準備が止まりやすくなります。

逆に言えば、関係者との話が早めに整うと、準備は一気に進みやすいです。
準備期間を見積もるときは、作業面だけでなく、意思決定の関係者が何人いるかも一緒に考えておくと、現実に近い見立てになりやすいです。

準備の最初に決めたい「ゴール」と「優先順位」

会社売却の準備を始めるとき、最初に大切なのは「資料を集めること」よりも、“何をゴールにするか”を決めることです。
ゴールがあいまいなままだと、やることが増えていく一方で、「結局、何を優先すればいいの?」となりやすいからです。

この章では、準備の最初に決めておきたいゴール優先順位を整理します。
ここが定まると、準備期間の見立ても現実に近づき、途中で迷いにくくなります。

「なぜ売るのか」を短い言葉で言えるようにする

まずは、会社売却を考える理由を、できるだけ短い言葉で言えるようにしておくのがおすすめです。
理由はシンプルで、ここが定まると、準備の方向性がブレにくくなるからです。

たとえば、理由が長文でしか説明できない状態だと、判断が揺れやすくなります。
逆に、短い言葉で言えると、準備中に迷いが出たときも戻る場所ができます。

短い言葉にする、といっても難しく考える必要はありません。
次のように、「いちばん大事な理由を1つ」に絞ってみるところからで十分です。

  • 体力や年齢の面で、今のうちに区切りをつけたい
  • 後継者が見つからず、事業を続ける道を作りたい
  • 会社の成長のために、次の経営体制にバトンを渡したい
  • 経営リスクを減らして、家族や社員を守りたい

ポイントは、きれいな言葉にすることではなく、自分が納得できる言葉になっていることです。

そしてもう一つ、できれば「なぜ今なのか」も一言で添えておくと、準備の優先順位がさらに決めやすくなります。
たとえば、「業績が安定している今のうちに」「主要取引先との関係が良い今のうちに」など、今というタイミングの理由です。

譲れない条件/譲れる条件を分けておく

次に決めておきたいのが、条件の整理です。
準備を進める中では、いろいろな選択肢が出てきます。
そのときに、条件が整理されていないと、毎回ゼロから考えることになり、気持ちも時間も消耗しやすくなります。

ここでおすすめなのが、条件を「譲れない条件」「譲れる条件」に分けておくことです。

譲れない条件の例

  • 社員の雇用を守りたい
  • 取引先との関係を大きく壊したくない
  • 社名やブランドを残したい(または残さなくてもいい、を決めておく)
  • 自分の関与期間はここまで(引き継ぎ期間の希望など)

譲れる条件の例

  • 引き継ぎのやり方は、状況に応じて調整できる
  • 会社の運営方針は、一定の範囲で新体制に任せられる
  • 細かな条件は、全体のバランスを見て判断したい

条件を分けるときのコツは、譲れない条件を増やしすぎないことです。
譲れない条件が多すぎると、選択肢が狭まり、判断が難しくなってしまいます。
最初は「どうしても守りたいことを1〜3個」くらいに絞ると、現実的に進めやすいです。

また、条件は「正解」を決めるものではありません。
準備を進める中で考えが変わることもあります。
そのため、ここでやるのは、確定ではなく“暫定の軸”を作るイメージで大丈夫です。

準備期間を短くしやすい進め方(やる順番のコツ)

会社売却の準備は、やることが多そうに見えて、最初の一歩が重くなりがちです。
でも実は、準備期間が長くなる原因の多くは「作業量」そのものよりも、途中で止まってしまうことにあります。

この章では、動き方を少し工夫して、準備を“止めない”ための進め方を整理します。
ポイントは、短期間で一気にやり切ることではなく、ムリなく前に進み続ける形を作ることです。

「集める→そろえる→説明できる形にする」の順で進める

準備が止まりにくい進め方としておすすめなのが、「集める → そろえる → 説明できる形にする」という順番です。
この順番にすると、迷いが減って、手が動きやすくなります。

集める(まずは散らばっている材料を集める)

  • 手元にある資料、データ、契約書、メモなどを“ひとまず集める”
  • この段階では、きれいに整理しなくて大丈夫です
  • ポイントは「探す時間を後で何度も発生させない」ことです

そろえる(抜けているものを把握し、そろえていく)

  • 集めたものを見て、「足りないもの」「どこにあるか分からないもの」を確認します
  • 一気に完璧を目指さず、優先順位が高いものから順にそろえます
  • ここで大事なのは、“抜けがあることを把握できている状態”にすることです

説明できる形にする(材料を“話せる・伝えられる”形にする)

  • 資料があるだけではなく、「何が言えるか」を言葉にします
  • 難しくまとめる必要はなく、短く要点が話せればOKです
  • この段階まで来ると、準備はかなり前に進みやすくなります

この順番が効く理由は、「集める」と「説明する」を最初から同時にやろうとすると、難易度が上がって止まりやすいからです。
まずは材料を集めるだけ、次にそろえるだけ、最後に説明できる形にする、と分けるだけで、準備は驚くほど進みやすくなります。

完璧主義を避けるための“最低ライン”の決め方

準備が止まる大きな原因のひとつが、「完璧にしてから進めたい」気持ちです。
もちろん丁寧にやることは大切ですが、準備段階で完璧を目指しすぎると、いつまでも終わりが見えなくなってしまいます。

そこでおすすめなのが、最初に“最低ライン(ここまでできたら次へ進む)”を決めておくことです。

最低ラインの決め方のコツ

  • 「説明に困らない」レベルをゴールにする(100点ではなく、まずは70点)
  • 数字は“全体像”が分かればOKにする(細部は後で確認できる状態にしておく)
  • 迷ったら「一度、人に説明できるか」で判断する

たとえば、資料がまだ一部足りなくても、「何がどこまで揃っていて、何が未確認か」が分かっていれば前に進めます。
逆に、資料がたくさんあっても、説明ができない状態だと、実質的には準備が止まっているのと同じになりやすいです。

最低ラインを決めることは、妥協ではなく、準備を前に進めるための設計です。

日常業務と両立するための、週1回の進め方テンプレ

準備は「まとまった時間が取れたらやろう」と思うほど、後回しになりやすいです。
そこで、日常業務と両立しやすい形として、週1回・短時間で回せるテンプレを用意しておくと、止まりにくくなります。

週1回テンプレ(60分想定)

  • 10分:今週やることを1つだけ決める(やることを増やさない)
  • 30分:「集める」または「そろえる」を進める(作業に寄せる)
  • 15分:今日進んだ内容をメモする(次回すぐ再開できる形にする)
  • 5分:次回の“最初の1手”を決めて終える(迷いを残さない)

このテンプレの狙いは、毎回ゼロから考え直さないことです。
準備が止まるときは、内容の難しさよりも、再開するときに「何からだっけ?」となってしまうことが多いです。
最後に“次回の最初の1手”を決めておくだけで、再開の心理的ハードルがぐっと下がります。

また、週1回の枠を守るために、「今週はここまで」と区切るのも大事です。
準備はやればやるほど追加で気になる点が見つかりやすいので、あえて区切りを作ることで、継続しやすいペースが生まれます。

まとめると、準備期間を短くしやすいのは、頑張って詰め込む人よりも、止まらずに淡々と進められる仕組みを作った人です。
この章で紹介した順番とテンプレをベースに、ぜひご自身のペースに合わせて調整してみてください。

準備期間のイメージをつかむ(短め/標準/長めのケース)

会社売却の準備期間は、人によって本当に幅があります。
だからこそ、「一般的には何か月です」と聞いても、なかなか自分ごとになりにくいですよね。

ここでは、準備期間を短め/標準/長めの3つのケースに分けて、イメージをつかみやすくします。
大事なのは、どれが良い悪いではなく、自社がどこに近いかを見立てて、現実的な計画に落とすことです。

なお、ここでの「短め/標準/長め」は、あくまで体感の分類です。
実際の期間は状況によって変わるため、無理に当てはめず、近いものを目安として使ってください。

短めになりやすいケース(情報・体制が整っている)

準備期間が短めになりやすいのは、会社の情報や体制が、すでに“人に渡せる形”になっているケースです。
普段から社内の整理が進んでいる会社ほど、準備がスムーズになりやすいです。

短めになりやすい特徴

  • 数字や資料がまとまっていて、必要な情報がすぐ出せる
  • 契約や取引の内容が整理されていて、口頭頼みになっていない
  • 社長以外にも状況を把握している人がいて、確認が分散できる
  • 「なぜ売るのか」「何を守りたいか」がすでに言葉になっている

このタイプは、準備の中心が「集める」ではなく、“整っているものを並べ直す”に近くなります。
そのため、準備の途中で大きく止まるポイントが少なく、テンポよく進みやすいです。

もし当てはまる点が多いなら、準備計画も短めのスケジュールをベースに組みつつ、念のための余裕を少しだけ残す、という考え方が合いやすいです。

標準になりやすいケース(整理しながら前に進める)

多くの会社は、この「標準」に近いことが多いと思います。
つまり、必要な情報はある程度あるものの、すべてが整っているわけではなく、準備を進めながら整理も同時に進むタイプです。

標準になりやすい特徴

  • 資料はあるが、散らばっていて探す時間がときどき発生する
  • 数字は追えるが、説明するには言葉の整理が必要
  • 社長の頭の中にある情報もあり、メモ化・共有が必要
  • 関係者の意向を確認しながら、方針を固めていく必要がある

このタイプのポイントは、「準備が進まない」のではなく、準備の中身が“整える作業”を含むということです。
整理しながら進める分、波は出ますが、やり方を工夫すれば十分に前へ進められます。

計画を立てるときは、最初からきれいに完了させようとするより、「週1回でも動かし続ける」前提で組むと、現実に合いやすいです。

長めになりやすいケース(依存度が高い/未整理が多い)

準備期間が長めになりやすいのは、情報が未整理だったり、社長への依存が高かったりして、準備の初期段階で“整える作業”が多くなるケースです。
ここに当てはまるからといって悪いわけではなく、これまで社長中心で走ってきた会社ほど、自然にそうなりやすいです。

長めになりやすい特徴

  • 数字・契約・運用のルールが口頭記憶に依存している
  • 社長が担っている業務が多く、引き継ぎの前提整理が必要
  • 資料がそろっていないというより、どこに何があるか分からない状態
  • 家族・役員・幹部など、意思決定に関わる人が多く、合意形成に時間がかかりやすい

このタイプは、準備の最初に「集める」以前の段階として、“棚卸し(現状を言葉にする)”が必要になることが多いです。
ここで焦ると、途中で止まりやすくなるので、計画は余裕を多めに取っておくほうが安心です。

また、長めになりやすいケースでは、準備期間が延びる原因が「忙しさ」になりがちです。
準備のための時間が取れないと、作業量が同じでもカレンダー上は長くなります。
そのため、最初から“確保できる時間”を前提に、無理のないペースで組むことが大切です。

最後にもう一つだけお伝えすると、どのケースでも「途中で止めない」ことが、準備期間を現実的にする最大のコツです。
自社がどのタイプに近いかを見立てたうえで、続けられる計画に落としていきましょう。

準備中に起こりやすい“つまずき”と、対処法

会社売却の準備は、やること自体が大変というより、気持ちが止まってしまう瞬間が出やすい作業です。
普段の経営とは違い、「正解が一つではない判断」が多いので、慎重になって当然だと思います。

ここでは、準備中によく起こりがちな“つまずき”を3つ取り上げて、止まりにくくする考え方小さな対処法を整理します。
どれも「気合いで乗り切る」ではなく、やわらかく前に進めるための工夫です。

「何から手をつければいいか分からない」をほどく方法

準備が止まる一番よくある原因が、これです。
やることが多そうに見えるほど、頭の中でタスクが膨らんで、最初の一歩が踏み出せなくなることがあります。

この状態をほどくコツは、いきなり「全部を整理」しようとせず、“最初の一手を小さくする”ことです。

おすすめのほどき方(3ステップ)

  • ステップ1:「今いちばん気になっている不安」を1つだけ書き出す(例:資料がそろうか、家族に言うべきか など)
  • ステップ2:その不安に対して「確認すれば前に進めそうなこと」を1つ決める(例:必要になりそうな資料の置き場所を確認する)
  • ステップ3:15分だけやって終える(“やり切る”ではなく“着手する”がゴール)

ポイントは、進捗を出すことより、再開しやすい状態にすることです。
準備は、毎回まとまった時間を取れなくても進められます。
だからこそ、「今日はこれだけやったらOK」という小さなゴールがあると、止まりにくくなります。

また、「何から手をつけるべきか」が分からないときは、無理に順番を考えず、“いま手元にあるものから触る”でも十分です。
たとえば、机の引き出しにある契約書ファイルを開く、決算書の保存場所を確認する、メモを1枚作る。
その一歩が、次の一歩を連れてきます。

情報開示が怖くて進められないときの考え方

会社売却の準備では、会社の情報を整理していく過程で、どうしても「見せて大丈夫かな」という不安が出やすいです。
これはとても自然な感覚ですし、慎重さは大切です。

ただ、怖さが強くなると、準備そのものが止まりやすくなります。
このときの考え方としておすすめなのは、情報開示を「0か100か」で捉えないことです。

情報は“段階”で考えて大丈夫です

  • 段階1:まずは社内・自分のために整理する(外部に出す前提ではなく、手元に置く
  • 段階2:必要になったら、相手や場面に応じて出し方を考える
  • 段階3:実際に出す場合も、範囲を区切って出す(全部を一度に出す必要はありません)

つまり、準備とは「全部さらけ出す作業」ではなく、まずは“整理して、いつでも出せる状態にする作業”です。
この捉え方に変えるだけでも、気持ちが少し軽くなることがあります。

また、怖さの正体が「情報そのもの」ではなく、情報がどう使われるか分からないことにある場合も多いです。
そのときは、まず「何が心配なのか」を分解してみてください。

  • 取引先に知られたくないのか
  • 社員に動揺が出るのが怖いのか
  • 数字の弱点を突かれるのが怖いのか

不安を言葉にできると、対処も選びやすくなります。
準備は、怖さを消す作業ではなく、怖さと付き合いながら進める作業でもあります。

社内に言う/言わないの悩み(ここでは扱わない:従業員対応の詳細な設計)

準備中に意外と重くのしかかるのが、社内にどこまで共有するか、という悩みです。
「誰かに相談したい気持ち」と「広がってしまう怖さ」の間で、揺れやすいテーマだと思います。

ここで大切なのは、社内共有を一気に“全社に伝える/一切言わない”の二択にしないことです。
まずは、必要最小限の範囲で考えるだけでも、気持ちが整理されやすくなります。

考え方のヒント(判断を軽くするために)

  • 「今、言う必要があるか」と「いつか言う必要があるか」を分けて考える
  • 共有するとしても、目的を決める(例:情報収集のため、意思決定のため、体制づくりのため)
  • 共有範囲を決める(例:役員だけ、幹部だけ、特定の担当者だけ など)

この章でお伝えしたいのは、準備中につまずくのは「能力が足りないから」ではなく、不安が自然に出やすいテーマだからということです。
つまずきは悪いことではなく、進め方を見直す合図にもなります。
もし当てはまるものがあれば、今日できる範囲で、小さく一歩だけ進めてみてください。

準備が整ったかを確認する、セルフチェック

会社売却の準備は、がんばって進めていても、ふと「これって、もう準備できたと言えるのかな?」と迷いやすいです。
準備はテストのように合否がはっきりしているわけではないので、なおさらですよね。

この章では、準備の“着地”を判断するためのやさしいセルフチェックを用意しました。
ここでの目的は、細かな漏れ探しではなく、「次の一手に進んでも大きく迷子にならない状態か」を確認することです。

「説明できる材料」がそろっているか(数字・事業・体制)

まず一番大事なのが、「説明できる材料」がそろっているかどうかです。
ここでいう“そろっている”は、資料が完璧に整っていることではありません。
必要なときに取り出せて、筋の通った説明ができる状態になっているか、という意味です。

やさしい確認ポイント

  • 数字:売上・利益が「なぜこうなっているか」をざっくり説明できる(細部は後で確認できればOK)
  • 事業:「誰に」「何を」「どうやって提供して」「何が強みか」を短く話せる
  • 体制:会社が日々どう回っていて、誰が何を担っているかを説明できる

この3つは、完璧な文章にする必要はありません。
言い方が少し拙くても、自分の言葉で筋が通っているなら十分です。

もしここで引っかかる場合は、「足りない資料がある」というより、頭の中の情報が外に出ていない可能性が高いです。
その場合は、資料探しよりも、まずメモに書き出して言語化するほうが前に進みやすくなります。

意思決定の体制ができているか(誰が決めるかが明確)

次に確認したいのは、準備の中身というより、意思決定の体制です。
ここが曖昧だと、準備を進めても途中でブレーキがかかりやすくなります。

やさしい確認ポイント

  • 最終的に誰が決めるかが明確になっている(社長一人なのか、役員を含むのか等)
  • 相談すべき人が整理できている(家族、役員、幹部など)
  • 決める順番が大まかに見えている(いきなり全部決めようとしない)

ここでのコツは、「みんなが完全に納得しているか」まで求めないことです。
準備の段階では、まず“誰に相談し、どこで決めるか”が見えていれば十分です。

もし迷いがあるなら、いきなり大きな結論を出そうとせず、「この段階では、ここまで決める」と小さく区切ると、体制が整いやすくなります。

次の一手に進める状態か(焦らず進めるための合図)

最後は、準備が整ったかどうかの“合図”を確認します。
ここでいう合図は、「もう不安がゼロになった」ではありません。
不安は残っていてもいいので、焦らずに次の一手へ進める状態になっているかを見ます。

やさしい確認ポイント

  • 次にやることが1つ言える(“何から?”で止まらない)
  • 準備の中で出てきた疑問が、メモとして残っている(頭の中に溜めていない)
  • 完璧ではない点があっても、「未確認」として把握できている(不明点が不明のままになっていない)

特に大切なのは、「未確認でも、未確認だと分かっている」状態です。
これは、準備が進んでいるサインです。

逆に、準備が整っていないときは、「何が足りないか分からない」「どこが不安なのか分からない」という状態になりがちです。
その場合は、準備不足というより、整理が追いついていないだけのことも多いので、焦らず一度メモに書き出すところからで大丈夫です。

まとめると、準備の“着地”は、資料が完璧かどうかではなく、説明できる材料意思決定の体制が整っていて、次の一手が見えているかで判断できます。
この3つがそろっていれば、準備はしっかり進んでいると言えます。

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