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会社売却

会社売却前にやるべきこと。迷わないための準備の順番と進め方

会社売却を考え始めたとき、多くの方が最初にぶつかるのが「結局、何からやればいいの?」という迷いです。ネットで調べるほど情報が増えて、準備が進んでいるのか、止まっているのかさえ分からなくなることもあります。

でも、安心してください。会社売却の準備は、いきなり完璧な資料をそろえることではありません。大事なのは、やることの量よりも、進める順番を先に決めることです。順番が見えると、次の一手が自然に決まり、余計な遠回りが減っていきます。

この記事では、「会社売却前にやるべきこと」をやさしく整理しながら、迷わないための準備の順番と進め方をお伝えします。

「まだ相談するほど固まっていない気がする…」という段階でも大丈夫です。読み終わるころには、焦らず進めるための道筋が見えてくるはずです。

目次

準備は「やること」より、まず「順番」を決める

会社売却の準備は、やることが多そうに見える分、最初の一歩でつまずきやすいです。とくに多いのが、「とりあえず資料を作ろう」と動き出したのに、途中で手が止まってしまうケースです。

ここで大事なのは、作業量を減らすことではなく、進める順番を先に決めることです。順番が決まると、「今やること」と「今はやらなくていいこと」が分かれて、気持ちがラクになります。

資料づくりから入ると、途中で詰まりやすい理由

資料づくりは、一見すると前向きな行動です。実際、何かをまとめ始めると「進んでいる感」も出ます。

ただ、会社売却の準備においては、資料づくりから入ると詰まりやすいポイントがあります。理由はシンプルで、「何のために、誰に向けて、どこまで出すのか」が決まっていないまま作り始めると、途中で判断が止まるからです。

たとえば、こんな場面が起きがちです。

  • 何を強みとして書くべきか決められず、内容がぼんやりする
  • 数字の見せ方に迷って、手元の資料を集め続けてしまう
  • 書き始めたのに「これで合っているのかな…」と不安になり、進まなくなる

これは能力の問題ではありません。順番が逆になっているだけです。資料は「作りながら方向性を探す」ものではなく、方向性がある程度決まってから整えていく方がスムーズです。

もちろん、今ある資料を軽く見直すこと自体は悪くありません。ですが、最初から完成度を求めてしまうと、準備の入り口で疲れてしまいます。まずは、資料に着手する前の“土台”を整えるほうが、結果的に早く進みます。

「目的・期限・優先順位」を先に言葉にするとラクになる

準備が進みやすくなる一番のコツは、いきなり作業に入る前に、次の3つを短い言葉で整理しておくことです。

  • 目的:会社売却で、何を実現したいのか
  • 期限:いつ頃までに、どこまで進めたいのか
  • 優先順位:絶対に守りたいことは何か(逆に、妥協できることは何か)

ここでいう「言葉にする」は、立派な文章にすることではありません。メモで十分です。たとえば、こんなレベルでOKです。

  • 目的:事業を次の人に引き継ぎたい自分の負担を減らしたい
  • 期限:半年以内に方向性を決めたい1年くらいで形にしたい
  • 優先順位:従業員の働く環境を守りたい取引先に迷惑をかけたくない

この3つが少しでも言語化できると、準備のあいだに出てくる迷いが減ります。たとえば「この資料は今必要?」「この情報はどこまで整える?」という判断が、目的・期限・優先順位に照らして決められるようになります。

逆に言うと、ここが曖昧なままだと、どこまでやっても「まだ足りない気がする…」となりやすいです。だからこそ、最初にやるべきは、細かい作業ではなく、順番を整えるための“軸づくり”です。

この章のまとめとしては、ひとつだけ覚えておいてください。会社売却の準備は、「資料を作る」より先に「方向を決める」。この順番にするだけで、準備はぐっと進めやすくなります。

最初に決めたい「売却のゴール」と譲れない条件

会社売却の準備を進めるうえで、最初にやっておくと心がラクになるのが、「売却のゴール」と「譲れない条件」を言葉にしておくことです。

ここが曖昧なままだと、途中で情報が増えたときに判断がぶれやすくなります。逆に、最初に軸ができていると、細かい判断が出てきても「自分にとって大事な方」を選びやすくなります。

「なぜ売りたいか」を一文で説明できるようにする

まずは「なぜ売りたいのか」を、一文で言えるようにしてみてください。立派な言葉でなくて大丈夫です。むしろ、短くて素直なほうが、判断の軸として強くなります。

たとえば、こんな形です。

  • 後継者がいないので、事業を続けられる形で引き継ぎたい
  • 自分の体力・年齢を考えて、今のうちに良い形で区切りをつけたい
  • 事業を成長させるには資金や人材が必要で、一緒に伸ばせる相手を探したい
  • 家族との時間を増やしたいので、経営の負担を軽くしたい

この一文があるだけで、たとえば条件交渉や相手選びで迷ったときに、「それは自分の目的に合っているか?」と立ち返れます。

ここで注意したいのは、正解を作ることではなく、今の自分の本音に近い言葉を置くことです。途中で変わっても構いません。まずは「現時点の軸」を持つことが大切です。

価格以外の希望(相手像・引継ぎ・従業員など)を整理する

会社売却というと、どうしても「いくらで売れるか」に意識が向きがちです。もちろん価格は大事です。ただ、実際に売却を検討していくと、価格以外の希望が判断を左右する場面も多く出てきます。

たとえば、こんな項目です。

  • 相手像:同業がいい/異業種でもいい/地域に残してほしい など
  • 引継ぎ:自分はいつまで関わるか(短期/数か月/年単位)
  • 従業員:雇用を守りたい/待遇を大きく変えたくない
  • 取引先:主要取引が継続できる形が望ましい
  • ブランド・社名:残したい/こだわりはない

ここでのポイントは、全部を完璧に決めることではありません。まずは、「これは譲れない」「できれば叶えたい」を分けておくと、判断がとても楽になります。

例としてはこんな感じです。

  • 譲れない:従業員の雇用は守りたい
  • できれば:社名は残せると嬉しい

この整理ができると、話が進んだときに「思っていたのと違った…」となりにくくなります。売却は条件が複数あります。だからこそ、早めに自分の希望を見える形にしておくのが大切です。

家族・共同経営者とのすり合わせ

会社売却は、オーナー社長ひとりの決断に見えて、実際には家族や共同経営者の気持ち・状況が大きく関わることがあります。

このすり合わせを後回しにすると、準備が進んだ段階で「実は反対だった」「条件が合わない」となってしまい、精神的にも大変です。だからこそ、早い段階で大まかな方向性だけでも共有しておくと安心です。

共有するときは、難しい話から入らなくて大丈夫です。まずは次の3点だけでも十分です。

  • なぜ売却を考えているのか(先ほどの“一文”でOK)
  • いつ頃までにどうしたいか(ざっくりの時期でOK)
  • 譲れない条件は何か(雇用、引継ぎ、相手像など)

また、共同経営者がいる場合は、「最終的に誰が決めるのか」の認識も合わせておくと、あとで揉めにくくなります。

この章の結論はシンプルです。会社売却の準備をスムーズにするために、最初に「売却のゴール」と「譲れない条件」を言葉にしておく。これだけで、途中の迷いがぐっと減っていきます。

「会社の説明材料」をそろえる(数字・事業・体制)

会社売却の準備で大切なのは、いきなり立派な資料を作ることではありません。まず目指したいのは、第三者から「この会社って、どんな会社ですか?」と聞かれたときに、大枠をきちんと説明できる状態になることです。

ここでいう「説明材料」は、大きく分けると数字事業体制の3つです。完璧にそろえる必要はありませんが、最低限の“話の土台”があると、その後の検討が一気に進みやすくなります。

数字の土台(決算書・試算表・主要KPIの考え方)

まずは数字です。売却の話になると、どうしても「いくらで売れるか」が気になりますが、その前に、相手にとっては「実際にどんな数字の会社なのか」が判断の出発点になります。

最初にそろえておくと安心なのは、次のようなものです。

  • 決算書(直近のもの。可能なら数期分)
  • 試算表(最新の月まで。もしあれば)
  • 売上・粗利・利益の推移(ざっくりでもよいので流れが分かるもの)

ここで大事なのは、細かい分析をすることではなく、「数字の説明ができる」ことです。たとえば、次のような質問に答えられるだけで十分、土台になります。

  • 売上は伸びているのか、下がっているのか
  • 利益が出ている年と出ていない年があるなら、その理由は何か
  • 今期の着地見込みはどれくらいか(分かる範囲で)

また、業種によって「見られやすい数字」は変わります。ここでは難しい指標の話はしませんが、もしあなたの会社で日々見ている数字があるなら、それが主要KPIになり得ます。

  • 例:客数、単価、リピート率、解約率、稼働率、受注件数、紹介比率 など

ポイントは、「この数字が動くと、売上や利益が動く」という関係を、簡単に言えるようにしておくことです。それだけで、事業の理解がぐっと伝わりやすくなります。

事業の中身(顧客・商品・単価・継続性を言えるようにする)

次に事業の中身です。ここで求められるのは、格好いい説明ではなく、分かりやすい説明です。第三者がイメージできるように、要点をそろえておくと安心です。

たとえば、次の4つを言葉にできると、説明が一気に整理されます。

  • 顧客:誰が買ってくれているか(業種・規模・地域など)
  • 商品・サービス:何を提供しているか(主力は何か)
  • 単価:だいたいの価格帯(高単価なのか、回転型なのか)
  • 継続性:売上が続く仕組みがあるか(リピート/契約/紹介など)

ここでおすすめなのは、長文でまとめるより、箇条書きで短く整理することです。たとえば、こんな感じで十分です。

  • 顧客:地元の中小企業が中心。特定業界に偏りは少なめ
  • 商品:定期契約が主。スポットは全体の一部
  • 単価:月額◯万円帯がボリューム。追加業務で上振れあり
  • 継続性:契約更新が多く、紹介も一定数ある

また、売上が特定の取引先に偏っている場合は、その事実自体が悪いわけではありません。ただ、質問されやすい点なので、「偏りがある/ない」を自分の言葉で説明できるようにしておくと安心です。

体制(誰が何を担っているか、属人化の見え方)

最後に体制です。売却の話では、数字や事業と同じくらい、「この会社は、人で回っているのか、仕組みで回っているのか」が気にされます。

まずは、次のようなことを整理してみてください。

  • 組織図(きれいなものでなくてOK。メモで十分)
  • 主要メンバーの役割(誰が何を担っているか)
  • 社長が握っている仕事(営業・採用・現場・財務など)

ここでよく出てくるのが「属人化」という言葉です。難しく聞こえるかもしれませんが、意味はシンプルで、「特定の人がいないと回らない部分があるかどうか」ということです。

属人化があること自体は、珍しくありません。問題になるのは、本人も把握できていない状態です。たとえば次のように、“見える化”できているだけで前に進みやすくなります。

  • 営業は社長が中心だが、提案資料は共有フォルダにまとまっている
  • 現場の品質はベテランが支えているが、手順は一部マニュアル化している
  • 経理は担当者がいるが、月次の締めは社長確認が必要

大切なのは、「うちは属人化していません」と言い切ることではありません。そうではなく、どこが人に依存していて、どこが仕組みになっているかを説明できることです。それが、第三者にとっての安心材料になります。

この章のまとめとしては、次の一言です。会社売却の準備は、まず“説明できる状態”を作ること。数字・事業・体制の3つを、完璧でなくてもいいので、自分の言葉で話せる形にしておくと、次の判断がぐっと楽になります。

見落としやすい「つまずきポイント」を先にメモしておく

会社売却の準備では、「資料を整えること」や「数字を説明できること」も大切ですが、同じくらい大事なのが、あとから問題になりやすい点を、先に“メモ”として見える化しておくことです。

ここで言うメモは、解決策まで用意するという意味ではありません。むしろ、今の段階では「気になる点がどこか分かっている」だけで十分です。早めに見えているほど、後から慌てにくくなります。

契約書・取引条件の確認(主要取引先・解約条項など)

まず見落としやすいのが、契約書や取引条件です。日々の業務では当たり前に回っている関係でも、会社売却を考える場面では、「その取引は、今後も続けられるのか」が注目されます。

ここでおすすめなのは、契約書を完璧に読み込むことではなく、主要取引の“骨組み”だけを押さえることです。たとえば、次のような項目をざっくり確認して、メモに残します。

  • 主要取引先はどこか(売上の割合が大きい先は特に)
  • 契約の形(口頭中心/書面あり/更新型 など)
  • 解約のルール(何日前通知か、いつでも解約できるか)
  • 名義や契約主体(会社契約か、社長個人名義か)
  • 禁止事項(再委託の可否、競合の制限、秘密保持など)

この段階で「これ、どこに書いてあるんだろう…」となるものがあっても大丈夫です。大切なのは、“不明点がある”ことを把握することです。後で確認しやすくなるだけでも、準備として価値があります。

個人保証・名義の混在・役員借入

次につまずきやすいのが、社長個人と会社の関係が混ざっている部分です。これは中小企業では珍しくありませんし、悪いことだと決めつける必要もありません。ただ、売却を考えるときには、「どこが会社で、どこが個人なのか」が整理されているほど、話が進みやすくなります。

代表的には、次のような項目です。

  • 個人保証(会社の借入に社長が保証人として入っているか)
  • 名義の混在(車・不動産・賃貸契約・各種サービス契約が個人名義になっていないか)
  • 役員借入(会社が社長から借りているお金があるか)
  • 社長貸付(社長が会社に立て替えている支出が残っていないか)

ここでも重要なのは、今すぐ解消することではなく、現状を把握してメモにしておくことです。たとえば、こういうメモで十分です。

  • 借入:メインバンクの借入に個人保証あり(詳細は確認中)
  • 賃貸:事務所の契約が個人名義の可能性あり
  • 役員借入:残高あり(いつから、いくらかは後で確認)

労務・クレーム・係争など“気になる点”の整理

最後に、心の負担になりやすいのが、労務やクレーム、係争(もめごと)などの“気になる点”です。こういう話題は、触れるのが嫌で後回しにしがちですが、後になればなるほど不安が大きくなりやすいです。

ここでも、完璧な整理は必要ありません。大切なのは、「何があるか(または、何もないか)」を自分で把握しておくことです。たとえば、次のように分けてメモしてみてください。

  • 労務:未払い残業の疑い/口頭注意が続いている社員がいる/退職トラブルが過去にあった など
  • クレーム:特定の顧客から定期的に指摘がある/品質に関する指摘が増えた時期がある など
  • 係争:訴訟や調停などの手続きが進行中/過去に弁護士相談をした案件がある など

ポイントは、事実ベースで、短く書くことです。誰かを責める表現や、感情の強い言葉にする必要はありません。「いつ頃、どんなことがあったか」「今はどうなっているか」を、分かる範囲で整理するだけで十分です。

この章の結論はシンプルです。会社売却の準備では、きれいに整える前に、つまずきポイントを先にメモしておく。それだけで、後から慌てにくくなり、気持ちにも余裕が出てきます。

社内の動き方を決める(誰が決めるか/誰が知るか)

会社売却の準備は、社長の頭の中だけで進めている間は問題が起きにくいです。けれど、少しでも社内で人が関わり始めると、情報の扱い方意思決定の流れが原因で、思わぬ混乱が起きることがあります。

だからこそ、この段階で整えておきたいのは、難しい制度やルールではなく、シンプルに「誰が決めるか/誰が知るか」を先に決めておくことです。これがあるだけで、準備を安全に、落ち着いて進めやすくなります。

意思決定者と窓口を明確にする(ブレない進め方のために)

まず決めたいのは、最終的に誰が決めるのか、そして外部との連絡窓口は誰かです。

会社売却の準備では、途中で「この話は進めていいのか」「この情報は出していいのか」といった判断が何度も出てきます。ここが曖昧だと、関わる人が増えるほど判断が遅れたり、内容がブレたりしやすくなります。

おすすめは、次の2点を先に固定しておくことです。

  • 意思決定者:最終判断をする人(多くは社長。共同経営なら誰が最終か)
  • 窓口:外部に返事をする人(社長本人/役員/信頼できる担当者など)

たとえば、こう決めておくだけでも十分です。

  • 最終判断は社長。重要事項は役員と相談して決める
  • 外部とのやり取りは社長が基本。資料の取りまとめは経理担当が補助

ポイントは、誰かに負担を押し付けることではなく、判断が迷子にならない形を作ることです。準備がブレないだけで、結果的に関係者のストレスも減ります。

情報管理のルール(共有範囲・データ置き場・口外防止)

次に大事なのが情報管理です。会社売却は、内容によっては社内外に影響が出やすいテーマです。だからこそ、準備の段階では「必要な人に、必要な範囲で」共有するのが基本になります。

ここで決めておくと安心なのは、次の3つです。

  • 共有範囲:誰まで知ってよいか(役員のみ/特定の担当者まで など)
  • データ置き場:資料をどこに置くか(共有フォルダ/専用フォルダ/アクセス権の設定)
  • 口外防止:どんな場面でも話さない、を徹底する(社内雑談・取引先・知人など)

難しい仕組みを導入しなくても、ルールは作れます。たとえば、こんな決め方で十分です。

  • 資料は専用フォルダにまとめ、アクセスできる人を限定する
  • ファイル名は分かりやすくしつつ、不用意に目立たない名称にする
  • メール送付時は宛先ミスが起きないよう、送付前に必ず確認する
  • 会議の議事録やチャットに残す内容は最小限にする

情報管理で大切なのは、「完全に隠す」よりも、漏れやすいポイントを先に潰すことです。準備が進むほど資料は増えます。早めにルールがあると、後がとてもラクになります。

従業員への伝え方は慎重に

「従業員にはいつ伝えるべきか」は、多くの社長が悩むテーマだと思います。気持ちの面でも大きいですし、会社の状況によって正解が変わるので、簡単に言い切れません。

この章でお伝えしたいのは、ひとつだけです。従業員への伝え方は、善意だけで早めに話すと、かえって不安を増やしてしまうことがあるという点です。

理由はシンプルで、準備段階ではまだ決まっていないことが多く、質問に答えられない状況が起こりやすいからです。すると、

  • 「会社はどうなるの?」という不安が広がる
  • 憶測が憶測を呼び、社内の空気が落ち着かなくなる
  • 退職や採用への影響が出てしまう

といったことが起きる可能性があります。

とはいえ、ずっと隠し続けるべき、という話でもありません。大事なのは、伝えるなら「何を、どこまで、どう伝えるか」をある程度用意した上で、落ち着いて行うことです。

なお、最適な告知タイミングは会社ごとの事情で変わりますし、状況によって判断が分かれます。この章では、準備の段階でできることとして、情報の扱い方と社内の動き方を整えることに絞ってお伝えしました。

この章のまとめはシンプルです。会社売却の準備を安全に進めるために、まず「誰が決めるか/誰が知るか」を決め、情報管理のルールを作っておく。これだけで、社内の混乱をぐっと減らしながら進めやすくなります。

専門家に相談する前に「これだけあると話が早い」

会社売却は、一人で抱え込むほど不安が大きくなりやすいテーマです。だからこそ「早めに専門家へ相談したい」と思うのは、とても自然なことだと思います。

ただ、相談に行ったときに情報が散らばっている状態だと、説明に時間がかかったり、「結局、何を持ってくればいいの?」となってしまいがちです。

ここで目指したいのは、完璧な資料を作ることではありません。相談を前に進めるために、最低限の“話の材料”をそろえておくことです。これだけで、初回相談の手触りがかなり変わります。

会社概要を“ざっくり一枚”でまとめるイメージ

まず用意したいのは、会社概要の「ざっくり一枚」です。パワポでもWordでも、メモでも構いません。大切なのは、初対面の人が会社の全体像をつかめることです。

一枚に入れるなら、たとえばこのあたりがあると十分です。

  • 会社の基本情報(業種、所在地、設立年、従業員数など)
  • 何をしている会社か(主な商品・サービスを一言で)
  • 売上のつくり方(主な顧客層、契約型か単発型かなど)
  • 強み(選ばれている理由、リピートや紹介の有無など)
  • 気になる点(偏り、属人化、課題があるなら一言)

ポイントは「うまく書く」ではなく、話しやすい形にすることです。たとえば、

  • 「主力はA、売上の半分。残りはBとC」
  • 「顧客は地元企業が中心。紹介が多い」

のように、自分が口で説明しやすい言葉になっていればOKです。

この一枚があると、相談側も状況を理解しやすくなり、質問が具体的になります。結果として、あなた自身も「何が論点か」が見えやすくなります。

直近の数字と、気になっている点のメモを用意する

次にそろえておきたいのは、直近の数字と、気になっている点のメモです。これも完璧である必要はありません。「分かる範囲で」で大丈夫です。

数字については、たとえば以下のようなものがあると話が早いです。

  • 直近の決算書(手元にある範囲で)
  • 最新の試算表(もしあれば)
  • 今期の見込み(ざっくりでOK:去年より上/同程度/下がりそう など)

そして、もうひとつ大事なのが「気になっている点」のメモです。ここでいう気になる点は、解決済みかどうかではなく、あなたが引っかかっていることを短く書けば十分です。

たとえば、こんな形でOKです。

  • 売上が特定の取引先に偏っている(割合は後で確認)
  • 社長が営業を握っている(引継ぎが課題かも)
  • 借入に個人保証がある(状況整理が必要)
  • 口頭取引が多い(契約書が薄い)

このメモがあるだけで、相談が「一般論」ではなく、あなたの会社に合わせた話になりやすいです。なにより、あなた自身が「何が不安なのか」を言葉にできると、心も少し落ち着きます。

「どこに相談すべきか」「誰に頼めばいいのか」という悩みも、当然出てくると思います。ただ、相談先の比較や選び方は、状況によって優先順位も変わりますし、伝えるべき注意点も多くなります。

この章でお伝えしたかったのは、相談に行く前に“これだけあると話が早い”という最低限の準備イメージです。

  • 会社概要のざっくり一枚
  • 直近の数字
  • 気になっている点のメモ

この3つがそろっているだけで、初回相談の内容がぐっと具体的になり、次の一手が見えやすくなります。

完璧を目指しすぎないためのポイント

会社売却の準備をまじめに進めようとするほど、「まだ足りない気がする」「もっと整えてから相談した方がいいのでは」と不安になりやすいものです。

でも、ここでお伝えしたいのは、準備には“完璧な状態”を待たなくても進められるタイミングがある、ということです。むしろ、完璧を目指しすぎると、準備が長引いてしまい、気持ちも疲れてしまいます。

この章では、次の相談・検討に進めるための「最低限の整い方」を、やさしく整理します。

不足があっても「未整備な点」を説明できれば前に進める

準備が整っているかどうかを判断するとき、意外と大事なのは「全部そろっているか」ではありません。むしろ、不足があるなら、どこが未整備かを自分の言葉で説明できるかがポイントになります。

たとえば、こんな状態なら“ひとまずOK”と言えます。

  • 会社の概要(何の会社で、どうやって売上が立っているか)をざっくり話せる
  • 直近の数字(決算書や試算表など、分かる範囲のもの)が手元にある
  • 気になる点(偏り、属人化、契約、借入など)を「ここが不安」と言える

反対に、準備が止まりやすいのは、「不足を埋めること」自体が目的になってしまう状態です。たとえば、

  • 数字が揃わないから進められない
  • 資料が完璧になるまで相談しない

という形になると、いつまでも“着地”できなくなります。

大丈夫です。不足があるのは普通です。大切なのは、「今、ここが足りない」を言えること。これができれば、次の相談・検討に進めます。

追加資料が増えるのは自然

準備を進めると、途中で「追加でこれも必要です」と言われることがあります。ここで焦る方が多いのですが、これは失敗ではなく、むしろ自然な流れです。

なぜなら、最初の段階では全体像をつかむことが目的で、話が具体的になって初めて「この点をもう少し詳しく見たい」という項目が出てくるからです。

なので、「今の時点で全部そろえておかなきゃ」と気負わなくて大丈夫です。最初は、全体を説明できる材料と、気になる点のメモがあれば十分です。

焦りが出たときの合図(順番を戻して整えるポイント)

準備をしていると、どうしても焦りが出る瞬間があります。たとえば、

  • 「何から手をつけたらいいか分からなくなった」
  • 「資料を作っているのに、進んでいる気がしない」
  • 「情報が増えすぎて、判断がぐらつく」

こういうときは、頑張りが足りないのではなく、順番を少し戻す合図だと思ってください。

焦りが出たときに戻るポイントは、難しいことではありません。次の3つを、もう一度短く整理するだけで十分です。

  • 目的:なぜ売りたいのか(1文でOK)
  • 期限:いつ頃までにどうしたいか(ざっくりでOK)
  • 譲れない条件:これだけは守りたいことは何か

この3つが再確認できると、「じゃあ今はこれを優先しよう」と判断が戻ってきます。焦ったときほど、作業を増やすより、判断の軸を整えるほうが早く落ち着きます。

この章の結論は、シンプルです。会社売却の準備は、完璧になってから進めるものではありません。不足があっても、未整備な点を説明できる。その状態になったら、次の相談・検討に進んで大丈夫です。

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