会社売却を考え始めると、まず気になるのが「税金ってどれくらい引かれるんだろう」「できれば節税したい」という点ではないでしょうか。
ただ、会社売却の節税方法を調べるほど情報がバラバラで、何が自分に当てはまるのか分からなくなりがちです。しかも、売却の税金は売却額だけで自動的に決まるわけではありません。売り方の形やお金の受け取り方、事前に整えておく数字によって、手残りの見え方が大きく変わることがあります。
一方で、焦って「とにかく節税」と動くと、後から困るケースもあります。たとえば、数字の作り方によっては買い手に不安を与えたり、説明に時間がかかったりして、話が進みにくくなることもあります。大切なのは、無理のある節税をすることではなく、合法的に手残りを守るための準備をすることです。
この記事では、会社売却で税金がどう決まりやすいのかをやさしく整理しながら、節税を考えるときに押さえておきたいポイントを順番に解説します。読み終えたときに、自分は何を確認すればいいか、そして誰に何を相談すればいいかが見える状態を目指します。
節税と言う前に知っておきたい線引き
会社売却の話が動き始めると、「税金が大きいなら、何か節税できないか」と考えるのは自然なことです。
ただ、ここで最初に押さえておきたいのは、節税には「やっていい節税」と「やると危ない動き」が混ざりやすいという点です。売却は金額も大きく、あとから見直しが入りやすい場面でもあるため、まず線引きを理解したうえで動くことが、結果的に安心と手残りの両方につながります。
節税と脱税の違いをやさしく整理する
言葉が似ているので混同されがちですが、節税と脱税はまったく別物です。ざっくり言うと、
- 節税:法律のルールの中で、税金が増えにくい選択をすること
- 脱税:本当は払うべき税金を、嘘や隠しごとで減らすこと
そして実務で怖いのは、本人に「脱税のつもり」がなくても、説明がつかない処理をすると疑われやすいことです。たとえば、領収書の内容が実態と合わない、取引の中身があいまい、相手が誰のための支払いか説明できない、といった状態は、後から見られたときに苦しくなります。
節税を考えるときの安全ラインはシンプルで、「実態がある」「説明できる」「記録が残る」の3つがそろっているかどうかです。逆に言うと、説明できない節税は、節税ではなくリスクになりやすいです。
| 考え方 | 目安 | あとで困りやすいポイント |
|---|---|---|
| 節税 | ルールの範囲で選択する | 説明と記録がそろっていれば問題になりにくい |
| グレーになりやすい動き | 実態は弱いが、形だけ整える | 「なぜ今やったのか」が説明できないと疑われる |
| 脱税 | 嘘や隠しごとで税を減らす | 修正や追徴の可能性が高く、信用も大きく落ちる |
ここで大事なのは、節税を否定することではありません。むしろ、会社売却は税金が大きくなりやすいからこそ、きれいに守れる節税を、早めに整理して進めることが大切です。
売却が決まってからでは間に合わないことがある
会社売却では「話がまとまりそうになってから、税金を何とかしたい」と考える方が多いです。ですが実際は、売却が固まってからでは選べる手が限られることがあります。
理由は単純で、売却が近づくほど、
- 買い手の確認が厳しくなる
- 数字の変化に理由が求められる
- 契約やスケジュールの制約が増える
からです。
たとえば、売却の直前に大きな支出や処理が増えると、買い手側は「何が起きたのか」「この会社は本当に安定しているのか」と警戒します。節税のつもりでも、買い手にとっては将来のリスクのサインに見えることがあるのです。
また、税金は「売却の瞬間」だけで決まるわけではなく、それまでの数字の積み上げも関係します。決算書の見え方、利益の出方、社内のお金の流れなどは、短期間で都合よく整えようとすると、逆に説明が難しくなります。
だからこそ、節税を考えるなら、売却が決まってから慌てるのではなく、前の段階で「触っていいところ」と「触ると疑われやすいところ」を分けておくことが安心につながります。
無理な節税が買い手の不安につながる場面
会社売却では、買い手は「この会社を引き継いだあと、同じように利益が出るか」を見ています。つまり、買い手は節税の中身そのものよりも、節税によって会社の姿が読みづらくなることを嫌います。
無理な節税が不安につながりやすいのは、たとえば次のような場面です。
- 利益が急に変わる:前年までと比べて利益が急に上下し、理由が短く説明できない
- 支出の中身があいまい:何のための支払いか、成果や必要性が説明しづらい
- 会社と社長の財布が混ざって見える:誰のための支払いか境目がぼやけている
- 短期間で処理が増える:売却の直前に処理や取引が立て続けに起きる
この状態になると、買い手は「税金の問題」ではなく、会社の管理や透明性の問題として受け取りやすくなります。すると、
- 追加の資料提出が増える
- 確認に時間がかかる
- 条件の見直しや慎重な交渉につながる
といった形で、売却プロセス全体が重くなりやすいです。
節税は、うまくやれば手残りを守る力になります。一方で、やり方を間違えると、節税したつもりが「不安材料」になってしまうことがあります。ここで意識したいのは、節税のために会社を分かりにくくしないという一点です。
買い手に対しても自分に対しても、数字の理由が短く説明できる状態を守ることが、売却の安心につながります。
税金が決まる三つの分かれ道
「会社売却の節税方法」を考えるとき、いきなり細かいテクニックに入るより先に、税金のかかり方を決める分かれ道を押さえるのが近道です。
会社売却の税金は、ざっくり言うと次の3点で方向性が大きく変わります。
- 株式譲渡なのか、事業譲渡なのか
- 個人が売るのか、会社が売るのか
- 売却額ではなく、手残りで判断できているか
ここを整理しておくと、節税の検討も「何をどう動かせば意味があるか」が見えやすくなります。
株式譲渡か事業譲渡かで税金のかかり方が変わる
会社売却は、大きく分けると株式譲渡と事業譲渡があります。どちらを選ぶかで、誰に税金がかかるか、何が課税の対象になるかが変わります。
ざっくりのイメージはこうです。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 売るもの | 会社の株 | 事業や資産・負債の一部 |
| 税金が問題になりやすい人 | 株主(個人または会社) | 売り手の会社(法人) |
| 税金の見え方 | 株を売って得た利益に対して課税される流れになりやすい | 会社側で売却益が出て課税され、その後オーナーが資金を取り出す段階でも論点が出やすい |
| 話が複雑になりやすい点 | 取得価格や過去の株の動きの整理が必要になることがある | 何をいくらで売ったかの内訳、引き継ぐ範囲の整理が増えやすい |
ここで大事なのは、どちらが得かを一般論で決めないことです。税金だけでなく、引き継ぎ方や手続きの重さなども絡むため、まずは自分の案件がどちらの形になりそうかを言葉にできる状態にしておくと、判断がブレにくくなります。
個人が売るか会社が売るかで話が変わる
次の分かれ道は、「売り手は誰か」です。たとえば、株式譲渡であれば、株を持っているのが社長個人なのか、別の会社なのかで税金の考え方が変わります。事業譲渡であれば、基本的には会社が事業を売る形になり、会社側の税金がまず問題になります。
ここで押さえておきたいのは、同じ売却額でも、手元に残るお金が同じとは限らないという点です。特に事業譲渡では、会社にお金が残ったあとで社長が資金を取り出す方法(役員報酬、配当、退職金など)によって、社長個人側の税金の論点が出てきます。
つまり、売却の形によっては、
- 会社で税金が発生し
- その後に個人でも税金の論点が出る
という順番になりやすい、ということです。ここを知らないまま「節税できるなら何でも」と動くと、あとで計算が合わなくなって不安が増えます。
誰が売って、誰の手元に最終的に残すのかを先に整理すると、節税の検討も現実的になります。
売却額ではなく手残りで考えるクセをつける
売却の相談でよく起きるのが、「売却額」ばかりを見てしまい、税金や費用を差し引いた手残りの感覚が置き去りになることです。
会社売却では、金額が大きい分、税金と諸費用の影響が体感以上に大きくなりやすいです。なので、早い段階から手残りで判断するクセをつけておくと安心です。
考え方はシンプルで、まずは概算でもいいので次の形で整理します。
- 手残りの出発点:売却額
- 差し引かれるもの:税金、売却に関する費用(専門家費用など)、返済が必要なものがある場合はその影響
- 最終的に残る見込み:手取りの見込み
このとき大切なのは、税率や細かい計算を自分で完璧に出すことではありません。最初の目的は、判断の軸を売却額から手残りに移すことです。
そして、節税を考えるならなおさら、どの分かれ道で税金が増減しやすいのかを押さえたうえで、「自分はどこを動かすと効果が出そうか」を整理していくのが安全です。
税金の扱いは、条件によって結果が変わります。だからこそ、株式譲渡か事業譲渡か、個人が売るか会社が売るか、手残りで見られているかの3点を先に整えるだけで、節税の検討がぐっと現実的になります。
取引の形を選んで手残りを守る考え方
会社売却で手残りを守るうえで大事なのは、細かい節税テクニックよりも先に、取引の形をどうするかです。なぜなら、取引の形が決まると、税金のかかり方や手続きの流れがほぼ決まり、あとから動かせる余地が小さくなるからです。
ここでは、株式譲渡と事業譲渡がそれぞれ選ばれやすい理由、そして見落としやすい税金のポイント、不動産や知的財産がある場合に論点が増える場面を、できるだけやさしく整理します。
株式譲渡が選ばれやすい理由と注意点
会社売却の現場では、株式譲渡が選ばれやすいケースが多いです。理由はシンプルで、取引の対象が「会社の株」なので、事業や契約を一つずつ移す必要が少なく、手続きが比較的シンプルになりやすいからです。
株式譲渡が選ばれやすい代表的な理由は、次のようなものです。
- 契約や許認可を個別に移さずに済むことが多い
- 従業員や取引先との関係を保ちやすい
- 売るものが「株」なので、対価の整理が単純になりやすい
一方で、株式譲渡には注意点もあります。株式譲渡は、買い手が会社そのものを引き継ぐため、買い手から見ると過去の負債やリスクもまとめて引き継ぐ形になります。すると、買い手は慎重になり、確認が増えやすいです。
手残りの観点で、株式譲渡で特に意識したいのは、次の2つです。
- 「株を売ったお金がそのまま手元に残る」とは限らない(売却後に返済や清算すべきものがあると実質の手残りが減る)
- 過去の整理不足があると、条件面で不利になりやすい(買い手の不安が増えて価格や条件の調整につながる)
つまり、株式譲渡はシンプルに見えますが、会社の中身が整っているほど強いという特徴があります。整っていない部分があるなら、取引の形だけでなく、整理の順番も含めて考えるのが安全です。
事業譲渡が向くケースと税金の見落とし
一方で、事業譲渡が向くケースもあります。事業譲渡は、会社全体を売るのではなく、事業や資産、契約などを選んで移す形です。そのため、状況によっては、売る側にも買う側にもメリットがあります。
事業譲渡が向きやすいのは、たとえば次のような場面です。
- 会社の中に「売りたい事業」と「残したい事業」が混ざっている
- 過去のリスクや不要なものを切り分けて売りたい
- 買い手が欲しい範囲が明確で、そこだけ引き継ぎたい
ただし事業譲渡は、税金の見落としが起きやすい形でもあります。よくあるのは、売却で会社にお金が入った時点で安心してしまうパターンです。
事業譲渡では、まず会社側で売却益が出るため、会社に対して税金の論点が出やすいです。そして、そのあと社長が会社からお金を取り出す段階でも、別の税金の論点が出ます。つまり、税金を一回で終わる話として見ないことが大切です。
もう一つの見落としは、売るものの中に「資産」が多い場合です。事業譲渡は、資産ごとに対価を分けて決めることが多く、内訳によって税金や手続きの重さが変わりやすいです。感覚的に「全部まとめてこの金額」という決め方をすると、あとで整理が大変になったり、話が戻ったりしやすいので注意が必要です。
不動産や知的財産があるときに増えやすい論点
会社の中に不動産や知的財産があると、取引の形を選ぶときの論点が増えやすくなります。ここで言う知的財産は、たとえば商標、特許、ソフトウェア、設計図、ノウハウの一部など、事業の価値に関わる権利や情報のイメージです。
不動産がある場合に増えやすい論点は、たとえば次のようなものです。
- 不動産を会社ごと引き継ぐのか、切り分けて動かすのか
- 不動産をどう評価し、売却対価の内訳にどう入れるか
- 不動産があることで、買い手の確認が増えやすい
知的財産がある場合も、同じように「誰が何を持つか」をはっきりさせる必要があります。特にややこしくなりやすいのは、
- 商標やドメインなど、名義の移し方
- ソフトウェアや制作物など、権利の帰属があいまいな状態
- 業務委託や外注で作ったものの権利が会社にあるか不明
こうした要素があると、株式譲渡なら「会社ごと引き継ぐ」で済む場面もありますが、事業譲渡だと「何を移すか」を一つずつ決める必要が出てきます。その分、設計を間違えると、税金というより契約や手続きの負担が大きくなり、結果として手残りやスケジュールに影響が出ることがあります。
だからこそ、取引の形を選ぶときは、税金だけで判断しないのが大切です。手続きの重さ、引き継ぎたい範囲、買い手が不安に感じやすい点まで含めて、手残りを守れる形を選ぶことが現実的です。
売る前に整えると効きやすい会計の手当て
会社売却の節税を考えるとき、意外と効果が出やすいのが「節税っぽいことを増やす」よりも、会計のモヤモヤを減らすことです。
買い手は、決算書の数字そのものだけでなく、数字の理由がきちんと説明できるかを見ています。ここが整うと、買い手の不安が減り、交渉がスムーズになりやすいです。結果として、価格や条件が崩れにくくなり、手残りを守りやすくなることがあります。
ここでは、売る前に手当てしておくと効きやすい代表例として、役員貸付金や仮払金、在庫や固定資産、そして「一時的な利益操作」に見えやすい動きについて整理します。
役員貸付金や仮払金をそのままにしない
売却の場面でよく止まりやすいのが、決算書の中にある役員貸付金や仮払金です。どちらも、言葉としては難しく聞こえますが、イメージはシンプルです。
- 役員貸付金:会社から社長など役員にお金が出ている状態
- 仮払金:何の支払いかまだ整理できていない、とりあえずの支出
これらが多いと、買い手はまずこう考えます。
- これは本当に回収できるお金なのか
- 中身は社長の個人的な支出ではないか
- あとから追加の負担やトラブルが出ないか
つまり、税金の話というより、会社の透明性の話になりやすいということです。そして透明性が低いと、価格や条件で調整されやすくなり、結果的に手残りが減りやすくなります。
ここでのポイントは、「消す」ことより「説明できる状態にする」ことです。具体的には、
- 誰に、いつ、何のために出たお金かを整理する
- 回収するものは、回収の方針とスケジュールを決める
- 私的な支出が混ざっているなら、早めに線を引く
売却直前に慌てて動かすほど不自然に見えやすいので、できれば「売るかもしれない」と思った段階から整え始める方が安心です。
在庫と固定資産の数字を現実に近づける
次に効きやすいのが、在庫と固定資産です。ここがズレていると、買い手は「この会社の利益は本当なのか」を疑いやすくなります。
まず在庫は、数字が大きいほど、買い手は中身を確認したくなります。よくあるのは次のようなズレです。
- 動かない在庫が残っているのに、価値がある前提の数字になっている
- 棚卸のルールがあいまいで、年によって数字の出し方が違う
- 在庫の実数と帳簿がずれている
固定資産も同じで、帳簿上は価値が残っていても、実際は使っていない設備が混ざっていたり、逆に重要な設備の管理があいまいだったりすると、確認が増えます。
ここで意識したいのは、「見栄えのいい数字」にすることではなく、現実に近づけることです。買い手が知りたいのは、過去の見せ方よりも、引き継いだあとにどんな状態で事業が動くかだからです。
もし「うちの在庫は説明が難しいかも」「設備の一覧が即答できないかも」と感じるなら、今の段階で次のような準備が役に立ちます。
- 在庫の中身を、動くものと動かないものに分ける
- 棚卸のルールを言葉にしてそろえる
- 固定資産の一覧と現物の紐づけを確認する
これだけでも、買い手の不安はかなり減りやすいです。
一時的な利益操作が疑われやすいパターンを避ける
節税や見栄えのために「利益を作る」動きは、やり方によっては買い手の警戒を強めます。ここで言うのは、脱税のような話ではなく、短期間で数字が急に変わり、理由が説明しにくい状態のことです。
買い手が「一時的な操作かも」と感じやすいのは、たとえば次のようなパターンです。
- 売却の直前だけ、急に利益が上がっている
- 費用を先送りして利益を大きく見せているように見える
- 売上の計上タイミングがいつもと違う
- 役員報酬や外注費などが短期間で大きく動いている
もちろん、事業には波があるので、利益が増えること自体は悪いことではありません。問題になるのは、「なぜそうなったのか」を短く説明できないことです。説明ができないと、買い手は安全のために厳しめの条件を出しやすくなります。
だからこそ、売る前の会計の手当てでは、次の考え方が効きます。
- 数字を作るより、数字の理由を整える
- 急に変えるより、早めに整えて自然な流れにする
- 説明できない処理は増やさない
会計を整える作業は地味に見えますが、売却の場面では、不安を減らし、条件が崩れにくくなるという形で手残りを守る力になりやすいです。
オーナー社長が検討しやすい節税の打ち手
会社売却で「節税したい」と思ったとき、オーナー社長が現実的に検討しやすい打ち手はいくつかあります。ここで大切なのは、税金を減らすことだけを目的にしないことです。売却は買い手の確認も入るため、説明できる形で進めるほど、交渉が荒れにくく、結果として手残りを守りやすくなります。
この章では、よく検討される「役員退職金」「役員報酬と配当」「含み益のある資産」の3つを、考え方と注意点にしぼって整理します。数字の計算や具体的な税率は条件で変わるため、ここでは判断の軸に集中します。
| 打ち手 | 考え方 | 注意しやすい点 |
|---|---|---|
| 役員退職金 | 会社のお金を個人に移す方法の一つとして検討されやすい | 金額の妥当性、決議や規程、タイミングが重要 |
| 役員報酬と配当 | 毎年の取り方を整えて、税・社会保険・利益の見え方を調整する | 利益が減ると見え方が変わる、配当には手続きと制約がある |
| 含み益のある資産 | 資産を「残す・売る・切り分ける」を先に決めて、税の発生点を整理する | 売却や移転で課税が起きることがある、買い手の意向で条件が動く |
役員退職金を使うときの考え方と注意点
役員退職金は、会社売却の前後で検討されやすいテーマです。ポイントは、退職金が「節税の裏技」ではなく、退職という出来事に対して、妥当な水準で支払うものだということです。
検討するときの考え方は次の通りです。
- 誰が、いつ退職するのかを先に決める
- 金額が妥当と言える根拠を用意する
- 社内手続きが整っている状態にする
注意点としては、買い手がいる取引では特に、退職金の扱いが「お金の抜き取り」に見えないようにする必要があります。たとえば、売却直前に急に大きな退職金が出ると、買い手からは「この会社の資金繰りは大丈夫か」「残るべきお金が減っていないか」と警戒されやすくなります。
実務的に押さえたいのは、次のような点です。
- 決議(株主総会や取締役会など、会社のルールに沿った決め方)ができているか
- 退職金規程や支給の考え方が説明できるか
- 金額の妥当性を自社の状況で説明できるか
- 支払いによって会社の体力が落ちないか
退職金はうまく設計できれば意味のある選択肢になり得ますが、タイミングと根拠が弱いと一気にリスク側に倒れるので、検討するなら早めに整理しておくのが安全です。
役員報酬と配当のバランスをどう見るか
会社のお金をオーナーが受け取る方法として、役員報酬と配当はどちらもよく出てきます。ただし、この2つは「どちらが得か」よりも、会社の利益の見え方と受け取る側の負担の両方を見て決めるのが現実的です。
まず役員報酬は、毎月の固定費として利益に直接影響します。売却の場面では、利益の見え方が変わると、買い手の評価や確認ポイントも変わります。そのため、役員報酬を動かすなら、次の観点が重要です。
- 利益がどれくらい減るかを先に見積もる
- なぜその水準なのかを説明できるようにする
- 短期間で大きく動かさない(不自然に見えやすい)
一方で配当は、会社に利益の蓄積があり、手続きも踏んだうえで支払う形になります。配当は「出せば終わり」ではなく、会社側の資金が減るため、買い手からは「運転資金が減っていないか」「財務が弱くならないか」という見られ方をします。
配当を検討するときの軸は、
- 配当を出しても会社が回るか
- 出した理由が説明できるか
- 手続きがきちんと踏めるか
です。
役員報酬も配当も、やり方によっては「節税」以前に、買い手の不安材料になったり、手残りに影響する条件変更につながったりします。なので、ここでのコツは、税金の大小だけで決めずに、会社の体力と見え方もセットで考えることです。
含み益のある資産をどう扱うかの選び方
含み益のある資産とは、かんたんに言うと売れば利益が出そうな資産です。たとえば不動産や有価証券、事業に欠かせない権利類などが該当することがあります。
ここで起きやすいのは、「会社に資産があるのは良いこと」と思っていたのに、売却の場面では買い手から別の見られ方をするケースです。買い手は、資産そのものだけでなく、
- その資産が事業に必要か
- 将来売ると税金が出そうか
- 維持費や修繕などの負担があるか
を気にします。つまり、含み益は「得」だけでなく、状況によっては「将来の税負担や不確実さ」として見られることがある、ということです。
ここで扱い方としては、基本的に次の3択の発想で整理すると分かりやすいです。
- 会社に残したまま売る(買い手に引き継ぐ)
- 売却前に売る(現金化してから売却に臨む)
- 資産だけ切り分ける(事業と資産の持ち方を分けて検討する)
どれを選ぶかは、「税金が少ないから」だけで決めると危険です。なぜなら、資産の売却や移転は、状況によっては課税が発生したり、手続きが増えたりするからです。さらに、買い手が「その資産はいらない」「その資産があるなら条件を変えたい」と言うこともあります。
判断の軸としては、次の質問が役に立ちます。
- その資産は事業に本当に必要か
- 買い手が引き継ぎたい資産か
- 資産を動かすと税金や手続きが増えそうか
- 会社の運転資金が薄くならないか
含み益の整理は、うまくやれば手残りを守る判断につながりますが、やり方を間違えると、税金だけでなく売却条件そのものが揺れやすくなります。だからこそ、資産をどうしたいかを先に言葉にして、買い手との認識ズレを減らすことが大切です。
株主構成の見直しで起きやすい落とし穴
会社売却の節税を考えるとき、意外と見落とされやすいのが株主構成です。
株主が社長お一人なら話は比較的シンプルですが、実際にはご家族が株を持っている、昔の共同創業者が少し残っている、名義があいまいなままなど、売却の場面で初めて「これ、どう扱うべきだっけ」と気づくことがあります。
ここが整っていないと、税金の問題以前に、買い手の確認が増えたり、手続きが止まったりして、結果として条件が不利になりやすいです。だからこそ、節税の前に落とし穴を踏まない整え方を押さえておくのが安心です。
家族が株主のときに先に確認したいこと
家族が株主になっている場合、悪いことではありません。ただ、会社売却の場面では、次の点を先に確認しておくだけでトラブルを避けやすくなります。
- 誰が何%持っているかがすぐに言える状態になっているか
- 株主名簿や株券などの記録が整っているか
- 家族株主が売却に同意できる状況か(連絡が取れる、意思が一致している)
- 配当や役員報酬など、家族間で受け取り方の認識ズレがないか
特に、家族株主が少数でもいる場合、買い手から見ると「全株をまとめて取得できるのか」が大きな関心事になります。売却が進んだあとに「実は家族の同意が必要だった」と分かると、話が止まりやすいです。
また、株主が複数いると、売却代金の受け取りも複数人になります。節税の議論も、「社長個人の話」だけでは済まなくなり、家族それぞれの事情が絡むことがあります。だからこそ、まずは名簿と持株比率、そして同意の取り方を早めに確認しておくのが現実的です。
株の移動が後から問題になりやすい場面
「節税になるなら、株を動かした方がいいのでは」と考えたくなる場面はあります。ただ、株の移動は、あとから見たときに説明が必要になりやすい行為でもあります。
後から問題になりやすいのは、たとえば次のような場面です。
- 売却の直前に株を動かし、なぜそのタイミングなのか説明が難しい
- 株を安く移したつもりでも、価値の考え方が整理できていない
- 名義だけ変わっていて、実態としては誰が意思決定しているかがあいまい
- 株式の取得経緯が古く、記録が残っていない(いつ誰からいくらで取得したか不明)
ここでのポイントは、株を動かすこと自体が悪いのではなく、「説明できる形」で動かせているかです。売却は買い手の確認も入るため、買い手から「この株の動きは何ですか」と聞かれたときに、短く整理して答えられないと不安を増やします。
株の移動を検討するなら、最低限、次の3点は意識しておくと安全です。
- 理由が言語化できている
- 価格や条件の考え方が整理できている
- 記録が残る形になっている
「節税のために動かした」という言い方そのものが悪いわけではありませんが、売却と近すぎると、どうしても疑いの目で見られやすくなります。だからこそ、株を動かす話は、早めに専門家とセットで整理して、手戻りを減らす方が安心です。
持株会社を考えるときに外せないチェック
持株会社は、言葉だけ聞くと「何か節税になりそう」と感じる方も多いです。ただ、持株会社を作るのは、単なる箱づくりではなく、会社の構造を組み替える話になります。その分、売却に向けてはメリットもデメリットも出やすいです。
持株会社を検討するときに外せないチェックは、次の通りです。
- 目的がはっきりしているか(節税以外の狙いも言葉にできるか)
- 売却スケジュールに間に合うか(作った直後は確認事項が増えやすい)
- 手続きとコストを受け止められるか(設立・組み替え・専門家対応)
- 銀行や取引先との契約に影響がないか(保証や契約名義など)
- 買い手が好む形か(買い手によっては構造が複雑だと嫌がることがある)
持株会社を作ると、株主やグループ構造の説明が必要になり、買い手の確認項目が増えることがあります。つまり、節税の効果が期待できたとしても、売却プロセスが重くなると、結果として条件交渉が難しくなって手残りに別の形で響くこともあり得ます。
判断をしやすくするために、持株会社の検討では次のように整理すると現実的です。
| 確認したいこと | チェックの視点 |
|---|---|
| 何のために作るか | 節税以外の目的も含めて説明できるか |
| 売却にプラスか | 買い手の理解が難しくならないか、確認が増えないか |
| 時間と手間 | スケジュールが延びても耐えられるか |
| 契約や金融機関 | 保証や契約名義、取引条件に影響が出ないか |
持株会社は、ハマると効果が出る一方で、合わない状況で急いで作ると、売却の現場では「説明が増える仕組み」になりやすいです。だからこそ、検討するときは節税の期待だけで突っ込まず、売却の進めやすさとセットでチェックしておくのが安全です。
損失や繰越を活かせるかを確認する
会社売却の節税を考えるとき、「過去の赤字があるなら、税金が減るのでは」と期待する方は多いです。たしかに、損失や繰越がうまく使える場面はあります。
ただし、ここは勘違いが起きやすい分野でもあります。なぜなら、損失には「会社の損失」と「個人の損失」があり、さらに売り方や取引の形で使える範囲が変わることがあるからです。
この章では、欠損金がある会社で起きやすい勘違い、個人側の損失があるときの見方、そして税務調査で説明が必要になりやすいポイントを、できるだけやさしく整理します。
欠損金がある会社で起きやすい勘違い
欠損金とは、かんたんに言うと過去の赤字の残りのようなものです。「今は黒字だけど、過去に赤字がある」という会社では、この欠損金があることで税金の見え方が変わることがあります。
ただ、よくある勘違いは次の2つです。
- 勘違い1:欠損金があるだけで、売却の税金が自動的に減る
- 勘違い2:欠損金は、売却代金そのものに直接ぶつけられる
実際には、欠損金が効きやすいのは「会社の利益」に対してです。会社が何かで利益を出したとき、その利益と相殺できる可能性がある、というイメージに近いです。
そのため、会社売却でも、たとえば会社側で売却益が出る形になっている場合は、欠損金が効く余地が出ることがあります。一方で、株式譲渡のように株主側で利益が出る形では、会社の欠損金がそのまま株主の税金を減らす、という話にはなりません。
ここでのポイントは、欠損金があるかどうかを確認したら、次に「その欠損金は、誰の利益と相殺する話なのか」を整理することです。欠損金があるのに税金が減らない、という混乱は、ここが整理されていないと起きやすいです。
個人側の損失があるときの見方
次に、「社長個人で損失があるから、会社売却の税金と相殺できないか」と考える方もいます。たとえば、株の売買で損が出た年がある、投資で損失がある、他の所得で赤字がある、といったケースです。
ここで大事なのは、個人の損失にも種類があることです。そして種類によって、相殺できる相手が決まっていたり、そもそも相殺のルールが違ったりします。
なので、個人側の損失を活かしたいときは、まずは次の順番で考えるのが安全です。
- その損失は何の損失か(何が原因で生じた損失か)
- いつ発生したか(その年だけの話か、繰り越せる話か)
- 何と相殺できる損失か(どんな所得にぶつけられるか)
ここを整理せずに「損があるから相殺できるはず」と進めると、あとから「その損失はこの所得とは相殺できません」となって、予定が崩れやすいです。
また、会社売却で個人に利益が出る場面では、利益の種類によって取り扱いが違うことがあります。だからこそ、個人側の損失を節税に活かしたいなら、売却益の種類と損失の種類をセットで確認するのが大切です。
ここは細かい計算よりも、相談の準備として「損失の種類と年」をメモにしておくだけでも話が早くなります。
税務調査で説明が必要になりやすいポイント
損失や繰越を活かす話は、正しく行えば問題ありません。ただ、会社売却は金額が大きくなりやすく、税務上も注目されやすい場面です。そのため、あとから見られたときに、説明が必要になりやすいポイントを押さえておくと安心です。
特に説明が求められやすいのは、次のようなところです。
- 欠損金の中身(なぜ赤字になったのか、記録が整っているか)
- 繰越の手続き(申告をきちんとしていて、繰り越しの前提が崩れていないか)
- 大きな損失の発生理由(特別な取引、資産売却、評価の処理などの説明)
- 売却前後の数字の動き(急に費用が増えた、急に利益が減ったなどの理由)
ここで重要なのは、何かを恐れて過度に身構えることではなく、「聞かれたら説明できる状態」にしておくことです。具体的には、
- 欠損金が生まれた背景を一言で言えるようにしておく
- その年の大きな取引は、契約書や根拠資料がすぐ出せるようにしておく
- 繰越の計算や根拠は、申告書と一緒に整理しておく
こうしておくと、仮に確認が入っても慌てにくく、買い手への説明もスムーズになります。損失や繰越は、うまく使えれば手残りに効く可能性がある一方で、整理が甘いと不安や手戻りの原因になりやすいので、早めに「中身が説明できる状態」に整えておくのが安心です。
交渉と契約で税金の想定ズレを減らす
会社売却で「節税」を考えるとき、意外と大きく効くのが交渉と契約の設計です。税金は「いくらで売れたか」だけでなく、そのお金が何の対価として支払われるのか、いつ支払われるのか、何が条件になっているのかで見え方が変わることがあるからです。
ここを曖昧なまま進めると、後になって「思ったより税金が増えた」「この条件、税金の計算に入るの?」という想定ズレが起きやすくなります。逆に、最初からポイントを押さえておけば、節税というより手残りを守る交渉がしやすくなります。
売却対価の内訳を決めるときの注意点
売却対価は「一括で○円」と見えることが多いですが、契約書では実際に内訳が入ることがあります。たとえば、次のように分かれるイメージです。
- 本体の対価(株や事業そのものの対価)
- 運転資金や残高の調整(現預金や借入、在庫などの調整)
- 役員退職金など別の名目のお金
- 支払いが将来に分かれる部分(分割・条件付きの支払い)
ここで気をつけたいのは、名目が変わると税金の扱いも変わり得ることです。だから、内訳を決めるときは「相手がこう言っているから」だけで飲み込まず、その内訳にする理由と自分の手残りへの影響を確認しておくのが安全です。
内訳を決めるときに、特に確認したいポイントは次の通りです。
- 何の対価なのかが説明できるか
- 内訳が変わったとき、税金の見え方が変わらないか
- 支払い時期がずれる部分があるなら、いつ入金されるかが明確か
- 後で争いになりやすい「調整項目」が、数字で決まる形になっているか
内訳の話は難しく見えますが、やることはシンプルで、名目と理由をセットで確認し、手残りの計算に入れるだけです。
あとから税金が増えやすい条件を見抜く
税金の想定ズレが起きやすいのは、契約の中に「後から金額が動く条件」が入っているときです。売却条件としてはよくある話ですが、これを税金の視点で見落とすと、「入ると思っていたお金が入らない」「逆に税金だけ先に来る」といったズレが起きやすくなります。
あとから税金が増えやすい、または手残りが読みにくくなる条件の例は次のようなものです。
- 条件付きの支払い(業績などの条件を満たしたら追加で支払う)
- 補償や調整(後から損害が出たら差し引く、返す可能性がある)
- 分割払い(支払いが複数年にわたる)
- 役員や株主に紐づく条件(一定期間の勤務、競業避止などが絡む)
これらがあるときに大切なのは、税金の専門的な計算を自分でやることではなく、「いつ・いくら・確実に入るのか」を分けて整理することです。
たとえば、次のようにメモを作るだけでも、ズレが減ります。
| お金の種類 | 入金の確実性 | 入金の時期 | 後から動く条件 |
|---|---|---|---|
| 確定の売却対価 | 高い | クロージング時 | なし |
| 条件付きの追加対価 | 条件次第 | 将来 | 業績などの達成条件 |
| 調整・差し引きの可能性 | 状況次第 | 将来 | 表明保証や補償、在庫・債権の調整 |
こうしておくと、税理士や専門家に相談するときも話が早くなり、税金の見込みと手残りの見込みを合わせやすくなります。
消費税や源泉など見落としやすい税金の話
会社売却の税金というと、どうしても「利益にかかる税金」だけに意識が向きがちです。でも実務では、消費税や源泉など、見落としやすい税金の論点が混ざることがあります。
ここで大切なのは、細かい結論を断定することではなく、見落としやすい論点があると知ったうえで、契約段階で確認することです。
たとえば消費税は、「売るもの」が何かによって論点が出やすくなります。株そのものの売買と、資産やサービスの対価が混ざる取引では、買い手との整理が必要になることがあります。事業譲渡のように、資産を一つずつ動かす形では特に、どれが消費税の対象になり得るのかを契約前に確認しておくと安心です。
源泉についても、取引の中で「人に支払うお金」が含まれると、源泉の論点が出る場面があります。売却対価の名目が複数ある場合は、何の支払いなのかによって扱いが変わる可能性があるため、契約書の文言を見ながら早めにチェックする方が安全です。
見落としを防ぐために、交渉と契約の場面では次の質問を自分に投げるだけでも違います。
- このお金は何の対価として書かれているか
- 売る対象は「株」だけか、それとも資産や権利も含まれるか
- 人に支払う名目のお金があり、支払い方法や手続きが必要にならないか
- 後から調整が入るとき、税金の想定はどうなるか
交渉と契約は、税金の「節約」だけでなく、税金の想定ズレを減らして手残りを守るための大事な場面です。名目、条件、支払い時期を整理しておくだけで、あとからの不安がぐっと小さくなります。
税理士に相談するときにそろえる情報
会社売却の節税は、ネットの情報だけで判断しようとすると、かえって不安が増えやすいです。なぜなら、税金の結果は会社の数字と売り方の形、そして社長の事情で変わるからです。
だからこそ、税理士に相談すること自体はとても有効です。ただ、相談の仕方によっては「資料を出して」「確認して」「次回また」と往復が増えてしまい、時間だけが過ぎていきます。
ここでは、税理士との相談を一回で前に進めやすくするために、最低限そろえておくと効果が出やすい情報をまとめます。ポイントは、完璧な資料を作ることではなく、判断に必要な材料が抜けない状態にすることです。
直近の決算書と申告書で見たいところ
税理士に「会社売却の節税を相談したい」と伝えるとき、まず必要になるのは直近の決算書と申告書です。できれば直近1期だけでなく、2〜3期分あると、数字のクセが見えやすくなります。
ただ、全部を細かく説明しようとしなくて大丈夫です。社長側で押さえておくと話が早いのは、次のようなポイントです。
- 利益がどれくらい出ているか(毎期の増減も含めて)
- 現預金と借入がどれくらいあるか
- 役員貸付金や仮払金など、説明が必要になりやすい項目があるか
- 在庫や固定資産が大きいか
- 欠損金の繰越など、過去の赤字が残っているか
税理士は決算書や申告書を見れば読み取れますが、社長がこの5点だけでも把握していると、相談のスピードが変わります。
また、申告書は「税金の計算の元データ」です。決算書だけでは分からない調整が入っていることもあるので、決算書と申告書はセットで渡すのが安心です。
株主と役員の状況を一枚で整理する
次に、会社売却の税金や手残りを考えるうえで、必ず必要になるのが株主と役員の状況です。ここが曖昧だと、どれだけ決算書がきれいでも「誰に税金がかかるのか」が確定できず、相談が進みにくくなります。
難しく考えず、まずは一枚にまとめるつもりで、次の情報を書き出すのがおすすめです。
- 株主の名前
- 持株比率(何%持っているか)
- 取得した時期(だいたいでOK)
- 役員の名前と役職
- 役員報酬の大きな流れ(毎月いくら、賞与があるかなど)
イメージとしてはこんな表です。
| 区分 | 氏名 | 割合や金額 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 株主 | 社長 | ○% | 取得時期:だいたい○年頃 |
| 株主 | 家族 | ○% | 連絡・同意が取れるかも確認 |
| 役員 | 社長 | 役員報酬:月○円 | 退職金の予定があるか |
| 役員 | 親族役員など | 役員報酬:月○円 | 実態と役割の説明ができるか |
ここで大事なのは、きれいな資料を作ることではなく、税理士が「この案件は誰にどんな税金が出るか」を整理できる状態にすることです。一枚で全体像が見えるだけで、相談の精度が上がります。
売却後の希望を言葉にして判断を早くする
税理士に相談するとき、意外と抜けがちなのが「社長が売却後にどうしたいか」です。節税は、単に税金を減らす話ではなく、お金をどう残して、どう使いたいかとセットで決まるからです。
たとえば、同じ売却でも、
- できるだけ早く現金化したい
- 分割でもいいから安全に回収したい
- 売却後も一定期間は会社に関わりたい
- 売却後は早めに引退したい
- 家族に資金を残したい
のように希望が違うと、検討の方向も変わります。
ここは難しく考えず、次の3つだけを一言で書いておくと、判断が早くなります。
- いつまでに売りたいか(急ぎか、時間があるか)
- 最低限守りたい手残り(金額でも、生活のイメージでもOK)
- 売却後の関わり方(残るのか、離れるのか)
税理士は「税金の計算」だけでなく、「その希望だと、どの動きが現実的か」を一緒に整理しやすくなります。逆に、希望が言葉になっていないと、節税の話が枝葉に広がり、決めきれなくなります。
相談を前に進めたいときは、決算書と申告書に加えて、株主と役員の一枚メモ、そして売却後の希望の三行メモをそろえるだけで十分です。それだけで、税理士との会話が「確認」から「判断」に変わりやすくなります。