東京都の企業では、人手不足が一時的な採用課題ではなく、受注、利益、事業承継にまで影響する経営課題になっています。帝国データバンクが2026年3月11日に公表した調査によると、2026年1月時点で正社員が不足していると答えた東京都内企業は54.2%でした。全国の52.3%を1.9ポイント上回り、1月として4年連続で半数を超えています。
一方、同年4月に公表された雇用動向調査では、東京都内企業の63.7%が2026年度に正社員を採用する予定と回答しました。ただし、大企業では85.8%であるのに対し、中小企業は57.4%、小規模企業は35.4%です。人が足りない会社ほど、賃金や採用費を増やしにくく、採りたくても採れない状況が起きています。
この記事では、東京都と全国の差、業種別の3年推移、企業規模による採用余力の差を整理します。そのうえで、人手不足が会社売却の価格や条件にどう関係するのか、売却を考えている経営者が何を準備すべきかを具体的に解説します。
東京都では正社員不足54.2%、全国を1.9ポイント上回る
帝国データバンクの「東京都・人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」は、東京都に本社を置く3,822社を対象に実施され、1,906社から回答を得ています。回答率は49.9%です。
| 比較項目 | 東京都 | 全国 | 東京-全国 |
|---|---|---|---|
| 正社員が不足 | 54.2% | 52.3% | +1.9ポイント |
| 非正社員が不足 | 29.4% | 28.8% | +0.6ポイント |
| 前年同月からの変化(正社員) | -1.5ポイント | -1.1ポイント | 東京の低下幅が0.4ポイント大きい |
| 前年同月からの変化(非正社員) | -2.2ポイント | -1.8ポイント | 東京の低下幅が0.4ポイント大きい |
正社員、非正社員ともに前年同月より不足割合は下がりました。ただし、「改善した」ことと「人手が足りている」ことは同じではありません。正社員はなお半数を超え、非正社員も約3社に1社が不足を感じています。
アンケートの「不足」は、実際の欠員数や求人倍率そのものではなく、経営者や管理者が自社の雇用を過剰・適正・不足のどれと捉えているかを示します。会社ごとの人数規模も異なるため、54.2%を「都内の全職種で働き手が54.2%足りない」と読むことはできません。
それでも、この指標が長く高止まりしている事実は重要です。特定の担当者が退職しただけで受注量を減らす、残業や外注費が増える、管理職が現場に戻るといった影響が続けば、売上だけでなく利益の再現性も損なわれるからです。
建設75.3%、サービス61.3%|不足の形は業種で異なる
東京都の正社員不足を業種別に見ると、2026年1月は建設が75.3%で最も高く、サービス61.3%、金融60.0%が続きました。建設は4社中3社、サービスと金融はおよそ5社中3社が不足を感じている計算です。

| 業種 | 2024年1月 | 2025年1月 | 2026年1月 | 2年間の変化 |
|---|---|---|---|---|
| 建設 | 72.0% | 77.9% | 75.3% | +3.3ポイント |
| サービス | 66.1% | 65.9% | 61.3% | -4.8ポイント |
| 金融 | 61.0% | 54.0% | 60.0% | -1.0ポイント |
| 運輸・倉庫 | 50.9% | 53.6% | 54.1% | +3.2ポイント |
| 小売 | 43.0% | 41.9% | 53.8% | +10.8ポイント |
| 卸売 | 47.5% | 45.9% | 46.5% | -1.0ポイント |
| 製造 | 45.4% | 45.9% | 44.4% | -1.0ポイント |
| 不動産 | 45.7% | 42.5% | 35.4% | -10.3ポイント |
建設では、人数だけでなく、現場管理、施工、電気工事など資格や経験が必要な職種の不足が受注上限に直結します。人を増やせばすぐ解消する問題ではなく、育成に時間がかかる点も特徴です。会社売却では、資格者数、年齢構成、現場ごとの配置、退職予定、協力会社への依存度が確認されます。
サービス業には飲食、IT、人材、警備、専門サービスなど幅広い業種が含まれます。2024年から不足割合は下がっていますが、61.3%は依然高い水準です。担当者のスキルや顧客との関係が個人に付いている会社では、人数が足りていても退職による売上流出リスクが残ります。
小売は2年間で10.8ポイント上昇しました。店舗数を維持するための店長候補やシフトを組める従業員が不足すると、営業時間の短縮や休業が必要になることがあります。逆に、不動産は10.3ポイント低下しています。業種別の数字は大きく動くため、1年の値だけで将来を決めず、自社の採用数、退職数、残業、外注費を3年程度並べて見ることが大切です。
非正社員は小売42.9%、運輸・倉庫41.7%
非正社員の不足割合は、正社員とは順位が異なります。2026年1月の東京都では小売42.9%が最も高く、運輸・倉庫41.7%、サービス38.9%、金融38.9%が続きました。建設は23.9%で、正社員の75.3%とは51.4ポイントの差があります。
| 業種 | 正社員不足 | 非正社員不足 | 差 | 経営上の確認点 |
|---|---|---|---|---|
| 建設 | 75.3% | 23.9% | 51.4ポイント | 資格者・現場責任者を確保できるか |
| サービス | 61.3% | 38.9% | 22.4ポイント | 専門職と店舗運営職を分けて見る |
| 金融 | 60.0% | 38.9% | 21.1ポイント | 専門人材の採用・育成期間 |
| 運輸・倉庫 | 54.1% | 41.7% | 12.4ポイント | ドライバー・倉庫要員と稼働上限 |
| 小売 | 53.8% | 42.9% | 10.9ポイント | 店長層と日々のシフト双方 |
正社員不足は、営業、技術、管理、店舗責任者など、継続運営の中核に関係しやすい問題です。非正社員不足は、営業時間、稼働率、繁忙対応に表れやすくなります。どちらも重要ですが、対策と会社売却時の説明方法は分けた方が実態を伝えやすくなります。
例えば、店舗のアルバイト採用が難しくても、店長が複数おり、営業時間を調整しながら利益を維持できていれば、買い手は対応可能な課題と判断するかもしれません。一方、売上の半分を担当する技術責任者が一人しかおらず、雇用契約や引継ぎ計画も曖昧であれば、人数が少ない問題でも評価への影響は大きくなります。
採用予定63.7%でも、小規模企業は35.4%
人手不足が続くなか、東京都内企業の採用意欲は高まっています。帝国データバンクの「東京都・2026年度の雇用動向に関する企業の意識調査」では、正社員の採用予定がある企業は63.7%で、全国平均60.3%を3.4ポイント上回りました。
ただし、企業規模による差は大きく、大企業85.8%と小規模企業35.4%の差は50.4ポイントです。中小企業全体でも57.4%にとどまります。「東京では採用が活発」という平均値だけでは、小さな会社が置かれた状況を捉えきれません。

| 区分 | 採用予定あり | 全体との差 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 85.8% | +22.1ポイント | 採用活動を継続できる企業が多い |
| 全体 | 63.7% | — | 5年連続で6割台 |
| 中小企業 | 57.4% | -6.3ポイント | 過半数だが大企業との差が大きい |
| 小規模企業 | 35.4% | -28.3ポイント | 採用したくても費用・教育余力が課題になりやすい |
採用形態でも差があります。東京都全体では新卒採用予定37.6%に対し、中途採用予定は56.3%でした。中小企業に限ると新卒28.1%、中途51.2%で、即戦力を求める傾向がより明確です。
しかし、中途採用へ切り替えるだけで解決するとは限りません。採用費の高騰、同業大手との賃金差、入社後の教育担当不足、社長の面接時間不足が重なると、募集を続けても採用や定着につながらないためです。採用人数だけでなく、入社1年以内の離職率、採用単価、独り立ちまでの期間も確認する必要があります。
人手不足が利益と企業価値に影響する4つの経路
会社売却では、現在の従業員数が多いか少ないかだけで企業価値が決まるわけではありません。買い手が見るのは、その人員で売上と利益を再現できるか、引継ぎ後に追加費用がどの程度発生するかです。
受注できず、売上の上限が下がる
建設、運輸、IT、専門サービスなどでは、仕事の相談があっても担当できる人がいなければ受注できません。過去の売上が維持されていても、失注件数や納期延長が増えていれば、将来計画の前提は慎重に見られます。受注残、見積辞退、外注への振替を記録すると、機会損失を説明しやすくなります。
残業・外注・採用費で利益率が下がる
欠員を残業や高単価の外注で補うと、売上は維持できても利益率が低下します。採用会社への成功報酬、求人広告費、入社時の紹介料も、一時的な費用なのか恒常的な費用なのかを区別する必要があります。買い手は、買収後に通常発生する人件費を見積もり、実態利益を調整します。
特定社員の退職で顧客・許認可・技術が失われる
社長だけでなく、営業責任者、資格者、工場長、料理長、システム管理者などへの依存も確認されます。一人の退職が売上、許認可、品質、顧客継続に波及する場合、その人が在籍しているうちに役割分担と引継ぎを進める必要があります。
賃上げと最低賃金で将来費用が増える
東京労働局は、東京都最低賃金を2026年10月1日から時間額1,280円に改定すると公表しています。最低賃金で働く人だけでなく、既存社員との賃金差を維持するための調整が必要になる会社もあります。人件費の増加を価格へ転嫁できるかは、会社売却時の事業計画にも影響します。最新情報は東京労働局で確認できます。
会社売却で買い手が確認する人材情報
買い手は、労務デューデリジェンスだけでなく、事業デューデリジェンスや財務デューデリジェンスでも人材情報を確認します。必要な資料は会社や業種によって異なりますが、少なくとも次の項目は説明できるようにしておくと安心です。
| 確認領域 | 主な資料・数値 | 買い手が知りたいこと | 売主側の準備 |
|---|---|---|---|
| 人員構成 | 部門別・職種別人数、年齢、勤続年数 | 事業を継続できる配置か | 匿名の人員一覧を作る |
| 重要人材 | 資格、担当顧客、権限、代替要員 | 退職時の影響はどこまでか | 業務と権限を複数人に分ける |
| 採用 | 応募数、採用数、採用単価、充足期間 | 欠員を補える会社か | 3年分を同じ定義で集計する |
| 定着 | 退職者数、退職理由、在籍期間 | 採用後に残る職場か | 退職理由を個人攻撃にせず分類する |
| 人件費 | 給与、賞与、法定福利費、残業、外注費 | 買収後の正常な費用はいくらか | 一時費用と恒常費用を分ける |
| 労務管理 | 雇用契約、就業規則、勤怠、未払残業 | 潜在債務や是正費用がないか | 専門家と事前確認する |
個人名や給与明細を、初期段階から全ての買い手候補に渡す必要はありません。初期検討では匿名化した一覧を使い、基本合意後のデューデリジェンスで必要範囲を開示するのが一般的です。個人情報の取扱い、秘密保持、閲覧権限を決めずに人事資料を共有しないよう注意してください。
必要資料全体については、会社売却で必要な書類の整理で段階別にまとめています。人材情報だけを別に整理しておくと、事業上の課題と労務上のリスクを混同せず説明できます。
人手不足でも、すぐに売却価格が下がるとは限らない
人手不足という言葉だけで、会社の評価が一律に下がるわけではありません。重要なのは、不足が売上と利益にどの程度影響しているか、買い手の経営資源で改善できるか、重要人材が残る見込みがあるかです。
例えば、地域の建設会社が案件を断っていても、安定した顧客基盤、複数の資格者、協力会社網、適正な粗利があり、大手買い手の採用力や人員配置で受注を増やせるなら、人手不足は成長余地として評価される場合があります。
反対に、社長一人が営業と現場管理を行い、従業員の年齢が高く、資格者の退職予定もある場合、買い手は引継ぎ期間の延長、キーパーソンの継続条件、追加採用費、価格調整などを求める可能性があります。
| 状態 | 買い手の見方 | 評価を守るための対応 |
|---|---|---|
| 受注はあるが人員不足 | 買い手の人材で成長できる可能性 | 失注・待機案件と必要人員を数値化 |
| 重要社員が一人に集中 | 退職時の売上・許認可リスク | 複数担当化、手順書、継続意向確認 |
| 採用費が高騰 | 正常収益力が低下する可能性 | 採用単価と定着率をセットで示す |
| 外注で柔軟に対応 | 固定費を抑えられる一方、供給リスクあり | 契約、単価、代替先、品質管理を整理 |
| 離職率が改善中 | 施策の効果が続くかを確認 | 改善前後の数値と施策を説明 |
会社の評価は、利益、純資産、将来性、リスク、買い手との相乗効果などを総合して決まります。評価方法の基本は会社売却で使われる3つの評価方法、売却前の改善策は企業価値向上の90日計画も参考にしてください。
人手不足の会社が90日で確認したいこと
人材問題は短期間で全て解決できません。しかし、90日あれば、見えない不安を数値と資料に変え、優先順位を決めることはできます。採用広告を増やす前に、次の順番で現状を確認します。
1〜30日目:人数ではなく役割を棚卸しする
組織図に氏名を並べるだけでなく、誰がどの顧客、許認可、工程、システム、決裁を担っているかを書き出します。「この人が1か月休んだら止まる業務」を部門ごとに確認すると、重要人材と引継ぎ優先度が見えます。
31〜60日目:3年分の採用・退職・残業・外注を並べる
採用人数だけでなく、応募から採用までの日数、採用単価、入社後1年以内の退職、残業時間、外注費を同じ表にします。売上が伸びた年に残業や外注が急増していれば、人員制約を含めた利益の再現性を説明する必要があります。
61〜90日目:残す仕組みと買い手に頼る部分を分ける
全てを売却前に解決しようとすると、時間も費用もかかります。業務手順、顧客情報、資格更新、雇用契約など自社で整える項目と、買い手の採用力、拠点、人員配置で補える項目を分けます。課題を隠すのではなく、改善の道筋と必要な経営資源を示す方が、買い手は検討しやすくなります。
| 期限 | 確認すること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1週目 | 部門・職種・雇用形態別の人数 | 匿名人員一覧 |
| 2週目 | 重要業務と代替者 | 役割・代替可能性表 |
| 3〜4週目 | 資格、年齢、退職予定、更新期限 | 資格者・キーパーソン一覧 |
| 2か月目 | 採用、退職、残業、外注の3年推移 | 人材KPI表 |
| 3か月目 | 引継ぎ、待遇、採用、外注の改善策 | 実行計画と概算費用 |
売却準備全体を確認したい場合は、会社売却の準備チェックリストも合わせてご覧ください。
よくある失敗と対策
採用すれば解決すると考え、役割整理を後回しにする
業務が社長やベテラン社員の頭の中にしかなければ、新しい人を採用しても教育できません。先に業務を分解し、必要な能力、判断権限、独り立ちまでの期間を明確にします。
退職予定を把握せず、売却交渉の途中で発覚する
重要社員の退職が基本合意後に分かると、価格や条件の再交渉につながることがあります。本人への伝え方には慎重さが必要ですが、年齢、勤続、代替可能性、退職リスクは売主側で早めに確認しておくべきです。
課題を隠して高く見せようとする
隠した事実がデューデリジェンスで判明すると、問題そのものよりも売主への信頼低下が大きな障害になります。事実、影響、現在の対策、今後必要な費用を分けて説明します。表明保証や開示の考え方は、会社売却の表明保証と例外開示で詳しく整理しています。
従業員へ早く伝えすぎる、または最後まで準備しない
会社売却の情報は、漏えいすると退職や取引先不安につながる可能性があります。一方、成約直前まで説明内容を準備しなければ、発表時に混乱します。誰に、いつ、誰から、何を伝えるかを買い手と合意し、想定質問への回答を用意します。
データから分かることと分からないこと
今回のデータから、東京都では2026年1月時点でも正社員不足が半数を超え、建設など一部業種で特に深刻であることが分かります。また、採用予定は東京都全体で高い一方、企業規模が小さいほど採用予定割合が低いことも確認できます。
ただし、二つの調査は回答企業、質問、調査月が異なります。人手不足割合54.2%と採用予定割合63.7%を直接足したり、差し引いたりすることはできません。また、回答企業には大企業も含まれ、東京都内の全ての中小企業を完全に表すものではありません。
全国の直近動向では、帝国データバンクの2026年7月調査で、正社員不足51.3%、非正社員不足28.8%でした。正社員不足は7月として4年連続で半数を超えています。2026年上半期の人手不足倒産は227件で、上半期として過去最多でした。
また、2025年度の人手不足倒産は全国で441件、前年度350件から26.0%増えました。従業員や経営幹部の退職を原因とする「従業員退職型」は118件です。倒産件数は人手不足を感じる企業全体の一部ですが、重要人材の退職が事業継続に至る経路を示しています。
自社の判断では、外部統計だけでなく、受注辞退、採用、退職、残業、外注、資格者、年齢構成を確認してください。外部環境と自社データを並べて初めて、採用を続けるのか、事業を絞るのか、提携や会社売却を検討するのかを比較できます。
東京の人手不足に関するよくある質問
東京都の企業は全国より人手不足が深刻ですか?
2026年1月の調査では、正社員不足は東京都54.2%、全国52.3%で、東京都が1.9ポイント高い結果でした。非正社員も東京都29.4%、全国28.8%で、東京都が0.6ポイント高くなっています。ただし、業種構成や回答企業の違いがあるため、差だけで全業種の深刻度を断定することはできません。
人手不足の会社は売却しにくいのでしょうか?
必ずしもそうではありません。買い手が人材、採用力、拠点を補える場合は、未対応の需要を成長機会と見ることがあります。ただし、重要人材の退職で売上や許認可が失われる状態は慎重に評価されます。
売却前に社員を採用しておくべきですか?
採用が間に合い、利益や事業継続に良い影響が見込めるなら選択肢になります。一方、売却直前の採用費や固定人件費が将来利益を圧迫する場合もあります。必要な役割、採用期間、教育期間、買い手が補える機能を整理してから判断します。
重要社員に会社売却をいつ伝えるべきですか?
案件の進み方、秘密保持、本人の役割により異なります。早すぎる開示は情報漏えいや離職のリスクがあり、遅すぎる開示は不信感につながります。FAや弁護士と相談し、買い手とも説明時期・内容を合意してください。
外注が多い会社は評価されにくいですか?
外注が多いこと自体が問題ではありません。固定費を抑え、需要に合わせて供給量を調整できる強みになる場合もあります。契約の継続性、単価、品質、代替先、知的財産や顧客情報の管理が説明できることが重要です。
人手不足を理由に会社売却を考えるのは早すぎますか?
相談したから売却しなければならないわけではありません。採用、業務改善、事業縮小、外部提携、親族内承継、従業員承継、M&Aを比較できるうちに情報を集める方が、選択肢を残しやすくなります。中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、親族内承継、従業員承継、社外への引継ぎを承継の類型として整理しています。
人が足りないと感じた時点で、売上より先に役割を確認する
東京都では正社員不足を感じる企業が54.2%に上り、建設では75.3%でした。2026年度に正社員を採用する予定の企業は63.7%ですが、小規模企業は35.4%です。採用競争と賃金上昇のなかで、小さな会社が人数だけで大企業と競うのは簡単ではありません。
まず確認したいのは、「何人足りないか」より「誰のどの役割が止まるか」です。重要業務、顧客、資格、採用と退職、人件費を整理すれば、自社で改善すべき部分と、買い手や提携先の経営資源で補える部分が見えてきます。
会社売却を選ぶ場合も、人手不足を隠す必要はありません。課題の大きさ、利益への影響、改善策を数字で説明できれば、買い手は引継ぎ後の計画を立てやすくなります。時間があるうちに準備を始めることが、従業員と取引先を守り、売主が納得できる条件を目指す土台になります。
※本記事は2026年9月8日時点で公表されている資料を基にした一般的な情報提供であり、特定の会社の売却、採用、労務、税務、法務上の判断を保証するものではありません。実際の対応は、個別事情に応じて弁護士、社会保険労務士、税理士、M&A支援機関などの専門家へご相談ください。