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会社売却

会社売却で必要な書類は何がある?まず揃えたい書類をわかりやすく整理

会社売却の相談をしたいと思っても、「書類が全部揃うまで動けない」と考えて手が止まることがあります。

実際には、最初からすべての資料を提出するわけではありません。相談、買い手探し、基本合意、デューデリジェンス、最終契約と進むにつれて、確認される範囲が広がります。

最初に行うのは、会社・株主、財務・税務、事業・契約、人・労務、資産・法務の五つに分け、資料の所在と不足を把握することです。未取得の資料があっても、何が足りないかを説明できれば準備を進められます。

必要書類は五つの箱に分けると漏れにくい

会社売却で最初に集める書類を会社株主・財務税務・事業契約・人労務・資産法務の5分類で整理した図

同じ会社売却でも、株式譲渡と事業譲渡では必要資料が変わります。買い手の業種や会社規模、許認可の有無によっても追加があります。まず全体像をつかみ、後から案件に合わせて足します。

分類 最初に確認したい資料 確認される内容
会社・株主 登記事項証明書、定款、株主名簿、組織図、会社沿革 誰が会社を売れるか、意思決定に問題がないか
財務・税務 決算書・勘定科目内訳書・申告書、試算表、借入一覧、固定資産台帳 収益力、資産負債、税務上の論点、資金繰り
事業・契約 会社案内、商品サービス一覧、取引先別売上、重要契約、許認可 売上の継続性、顧客依存、契約の承継可否
人・労務 従業員名簿、雇用契約、賃金台帳、就業規則、社会保険資料 人員構成、人件費、未払賃金、キーパーソン
資産・法務 不動産資料、設備一覧、リース、知的財産、保険、紛争・保証資料 所有関係、処分制限、簿外債務、偶発債務

会社と株主を確認する書類

登記事項証明書と定款

商号、本店、目的、役員、資本金などを確認します。定款を変更している場合は、現在の内容が反映されたものを用意します。登記と実態に差があれば、変更登記が必要かを確認します。

株主名簿と株式に関する記録

株式譲渡では、誰が何株を持っているかが出発点です。株主名簿のほか、過去の株式譲渡契約、相続関係書類、増資・減資・自己株式に関する議事録などを確認します。

株主名簿が長く更新されていない、親族名義の株式がある、元共同経営者と連絡が取れないといった場合は、買い手探しより先に整理へ時間がかかることがあります。

株主総会・取締役会議事録

重要な意思決定が適切に行われてきたかを確認する資料です。役員報酬、借入、資産の売買、関連当事者との取引など、金額が大きいものは特に確認されます。

財務・税務の書類

直近3期分を基準にする

最初の相談では、直近3期分の決算書と申告書、最新の試算表があれば会社の概況を伝えやすくなります。案件によって5期分以上を求められることもあります。

  • 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書
  • 勘定科目内訳明細書
  • 法人税、地方税、消費税の申告書
  • 総勘定元帳、補助元帳
  • 月次試算表、資金繰り表
  • 固定資産台帳、減価償却明細
  • 金融機関別の借入残高、返済予定表、担保・保証の資料

提出する数字は、基準日を揃えます。借入残高が6月末、預金残高が7月末、売掛金が前期末では、同じ時点の財務状態になりません。ファイル名や一覧表に基準日を記載します。

決算書だけでは分からない項目

役員や親族への貸付金、会社とオーナー個人の賃貸借、個人所有設備、簿外で保管している在庫、回収が遅れている売掛金などは、決算書の科目名だけでは実態が分かりにくい項目です。

買い手から質問されたときに説明できるよう、相手方、契約、残高、今後の扱いを整理します。税務上の問題が疑われる場合は、修正の要否を税理士へ確認します。

事業と契約を説明する資料

会社概要と事業の流れ

会社案内があっても、売上のつくり方まで伝わるとは限りません。商品・サービス、顧客、受注経路、仕入先、外注先、粗利、繁忙期を一枚に整理します。

取引先別売上は、上位10社程度から確認します。顧客名を匿名のまま示す段階と、秘密保持契約後に実名を開示する段階を分けます。

重要契約

  • 主要顧客・仕入先との基本契約
  • 代理店、フランチャイズ、ライセンス契約
  • 店舗・事務所・工場の賃貸借契約
  • 設備・車両・システムのリース契約
  • 業務委託、外注、顧問契約
  • 秘密保持、共同開発、業務提携契約

契約には、株主変更や事業譲渡を行う際の通知・承諾、契約解除に関する条項が入っている場合があります。契約相手へ連絡する前に、開示時期を弁護士やM&A支援機関と決めます。

許認可

建設、運送、介護、人材紹介、飲食、古物、宅地建物取引など、許認可が事業の前提になる業種があります。許可証だけでなく、更新期限、名義、営業所、配置が必要な資格者、行政への届出状況を確認します。

株式譲渡では法人が同じでも変更届が必要になることがあり、事業譲渡では許認可をそのまま引き継げないことがあります。個別の制度を所管官庁へ確認します。

人・労務の書類

従業員情報には個人情報が含まれます。初期段階では氏名を伏せ、年齢層、職種、勤続年数、資格、給与水準など、検討に必要な項目だけを示します。

  • 従業員名簿と組織図
  • 雇用契約書、労働条件通知書
  • 就業規則、賃金規程、退職金規程
  • 賃金台帳、勤怠記録、有給休暇の管理簿
  • 社会保険・労働保険の加入と納付資料
  • 出向、派遣、業務委託に関する契約
  • 労働紛争、是正勧告、未払残業に関する資料

従業員承継の説明は、株式譲渡と事業譲渡で異なります。株式譲渡では雇用主である会社が存続しますが、事業譲渡では従業員ごとの転籍同意が必要になるのが一般的です。

資産と法務リスクを確認する書類

不動産・設備・在庫

登記事項証明書、固定資産税資料、賃貸借契約、設備一覧、車検証、リース、在庫表などを揃えます。会社が使用している不動産をオーナー個人が所有している場合は、譲渡後の賃貸条件や売却の可否を検討します。

知的財産とIT

商標、特許、ドメイン、Webサイト、SNSアカウント、ソフトウェア、顧客データなどは、名義と利用権を確認します。制作会社や元従業員の名義になっていないか、ライセンスを第三者へ移せるかも確認します。

紛争・保証・保険

訴訟だけでなく、クレーム、行政指導、事故、返品保証、製品保証、連帯保証、取引先への補償約束なども対象です。該当しない場合は「なし」と記録し、確認した範囲を残します。

取引の段階によって提出範囲は変わる

段階 主な資料 開示上の注意
初回相談 会社概要、直近決算、株主、希望条件 必要最小限。社名を伏せて相談できる場合もある
買い手探し 匿名概要書、財務概要、事業の特徴 顧客名・従業員名などを匿名化
秘密保持契約後 企業概要書、詳細財務、契約概要 候補先と目的を確認して段階的に開示
基本合意後 会計・税務・法務・労務・事業の詳細 デューデリジェンス用の資料室で管理
最終契約・決済 最終契約の前提資料、同意・承諾、残高証明 基準日と原本の有無を確認

相手から求められた資料を無条件に渡すのではなく、検討段階、秘密保持契約、必要性を確認します。買い手候補が同業者の場合は、顧客情報や価格情報の開示範囲に特に注意が必要です。

書類が見つからないときの対応

代替資料を探す

契約書がない場合でも、発注書、請求書、入出金記録、メール、議事録などから取引実態を確認できることがあります。代替資料があっても契約リスクが消えるわけではないため、再契約が必要かを検討します。

再取得できるものを分ける

登記事項証明書、納税証明書、許可証の写しなど、行政機関や専門家から再取得できる資料があります。取得に日数がかかるものもあるため、一覧に期限を入れます。

「ない理由」を記録する

書類がない事実を曖昧にせず、「口頭契約で作成していない」「旧担当者の退職後に所在不明」「更新時に新契約へ切り替えた」と理由を記録します。買い手への説明と、今後の対応を分けて考えられます。

ファイル名と資料一覧を揃える

資料が多くなると、同じ決算書の旧版と新版が混在しやすくなります。次のように命名規則を決めます。

例:2026-07_試算表_確定.pdf / 2025年度_法人税申告書_控え.pdf / 主要契約一覧_2026-08-27.xlsx

資料一覧には、分類、資料名、基準日、対象期間、保管場所、原本の有無、個人情報の有無、開示可能な段階、担当者、未取得理由を記載します。

共有フォルダの権限も絞ります。売却を知らない従業員が閲覧できる場所へ資料を置かず、ダウンロード履歴やアクセス権を管理できる仕組みを使います。

最初の相談に持っていく資料

全部を揃える前に相談するなら、次の資料から始められます。

  1. 直近3期分の決算書・申告書
  2. 当期の試算表
  3. 会社概要または商品・サービスが分かる資料
  4. 株主と持株比率が分かる資料
  5. 従業員数と組織の概要
  6. 借入金と経営者保証の概要
  7. 許認可、重要契約、主要取引先の概要
  8. 希望時期と、雇用・ブランド・価格などの希望条件

ここまであれば、次に何を優先して集めるかを決めやすくなります。準備の進め方は、会社売却の準備期間と6カ月の進行例も参考にしてください。

必要書類に関するよくある質問

決算書は何期分必要ですか

初回は直近3期分が一つの目安です。ただし、業績変動や設備投資、税務論点を確認するため、より長い期間を求められる場合があります。

紙の原本がなく、PDFだけでも問題ありませんか

初期確認はPDFで進められることがあります。最終契約や行政手続きで原本確認が必要になる資料もあるため、原本の有無は別に記録します。

顧客名や従業員名はいつ開示しますか

初期段階では匿名化し、秘密保持契約後も必要性に応じて段階的に開示します。同業の買い手候補へ競争上重要な情報を渡す場合は、専門家と範囲を決めます。

書類に不備があると会社は売れませんか

不備の内容と影響によります。直せるもの、契約条件で対応するもの、買い手が引き受けられないものを分けます。隠さず早めに確認する方が選択肢を残しやすくなります。

主な出典

※本記事は、会社売却で一般に確認される書類を整理したもので、特定の取引や提出範囲を推奨または保証するものではありません。必要書類、保存期間、個人情報の取扱い、許認可や契約の承継可否は、譲渡手法、業種、会社の状況、法令・制度の変更によって異なります。個別の判断は、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士、M&Aの専門家、所管行政機関等へご確認ください。

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