中小企業の後継者不足が大きな問題となっています。多くの経営者がこの難題に直面し、解決策を模索しています。そんな中、小規模なM&A(合併・買収)が注目されているのですが、まだまだ誤解が多い分野です。この記事では、後継者不足に直面する中小企業にとって、なぜ小規模なM&Aが有効なのか、そしてそれにまつわる誤解と実際のメリットについて掘り下げていきます。
後継者不足の休廃業が引き起こす社会的課題
年間約5万件もの企業が休廃業している
本記事執筆時点で最新の2022年度の中小企業白書では、東京商工リサーチと帝国データバンクの毎年の発表を参考に、休廃業の件数を公表しています。
中小企業白書2022年度から引用【詳しくはこちら】
公表されている最新の実績として2022年の実績を見ると、東京商工リサーチの「休廃業・解散企業」動向調査では年間49,625件が、また、帝国データバンクの「休廃業・解散」動向調査によると、53,426件が休廃業したと発表されています。
それぞれの調査結果に差はあれど、年間約5万件もの企業・事業者が休廃業していることになります。
休廃業が原因で転職や退職をせまられた従業員は年間約8万人
また、帝国データバンクの調査結果では、2022年にこれらの企業の廃業に伴い約8万人の従業員が転職や退職を迫られたとされています。
帝国データバンクのプレスリリースから引用【詳しくはこちら】
コロナをきっかけとした政府の支援策の効果もあり、2021年は8万人を下回りましたが、2022年にはその効果も薄れ、また例年通りの件数に戻ってきています。
このような状況の解決策として今注目を浴びているのが、M&Aを活用した第三者への会社・事業の譲渡です。
黒字で休廃業している会社が5割以上も!?
2022年度版の中小企業白書には、東京商工リサーチの調査を基にした休廃業企業の黒字割合も掲載されており5割以上が黒字という結果となっていました。
中小企業白書2022年度から引用【詳しくはこちら】
また、冒頭お伝えした休廃業件数で取り上げられていた帝国データバンクでも同様の調査結果が公表されており、以下のように、50%以上が黒字または黒字かつ資産超過の会社が占める形となりました。
これは、第三者として事業を引き継ぐ側にもメリットのある会社や事業が、後継者がいないために休廃業しているケースが多く存在することを示唆しています。
少しずつ中小企業にもM&Aが浸透!スモールM&Aの件数増加へ
中小機構が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」をご存じでしょうか?
事業承継・引継ぎ支援センターは全国の中小零細企業様のために全国47都道府県に設置された、政府の事業承継支援施設です。
東京都にも設置されており、東京事業承継・引継ぎ支援センターについて解説した以下の記事もあわせてぜひご覧ください。
2022年の事業承継・引継ぎ支援センターへの相談者数は全国で前年度比107%の22,361人とこれまでで最も多くなりました。
さらに、第三者承継(M&A)の件数も、前年度比111%の1,681件と、過去最高を更新しています。
中小機構のプレスリリースから引用【詳しくはこちら】
スモールM&Aはどんな業種や規模の中小企業が多いの?
前述の事業承継・引継ぎ支援センターでは、成約譲渡企業の業種や売上規模を公開しています。
中小機構のプレスリリースから引用【詳しくはこちら】
これらの業種を見ると、成熟市場かつ、人手不足に困っている業界や、設備投資が必要な業界でのマッチング事例が多いことがわかります。
次に、売上規模ですが、1億円以下が64.7%以上と、ほぼ7割が1億円以下となっています。
売上規模が小さくてもM&Aという手段が有効であることが伺えます。
このような社長様にはスモールM&Aがおすすめ!
M&Aは中小零細企業様でも、十分検討に値する選択肢の一つです。
ぜひ、いかに当てはまる社長様は、M&Aをご検討ください。
- 後継者が決まっていない社長様
- 従業員の今後の雇用について不安を抱えている
- 廃業による従業員や取引先への影響が心配
- 生産性向上のため、デジタル化するきっかけが欲しい
- 事業の継続や会社の成長の見通しが立たない
オーナー社長様にスモールM&Aを選択頂くメリット
次に、オーナー社長様がM&Aを選択頂くメリットについてご紹介させて頂きます。
- これまでの経営に対する重責や借入の保証からの解放
- 譲り受け企業とのシナジーによる事業成長や収益改善の可能性
- 従業員の雇用維持や、取引先との関係維持
- 社長様が作り上げた地域に不可欠な事業の維持
M&Aが選択肢から外される、よくある誤解
引き継ぎ手にとっても魅力的な黒字企業でありながら、なかなかM&Aという選択肢がとられないのには理由があります。
ここではなぜオーナー企業様からM&Aがなかなか選ばれにくいのか、よくある心理的な理由についてご紹介させて頂きます。
債務超過だと、譲り受けてがいないのでは無いか?
コロナ禍を経て、債務超過になってしまった会社様も多いかと思います。
債務超過だと、譲り受けてくれる会社・社長がいないのではないかとよく誤解されがちです。実際にそんなことはありません。会社様独自のノウハウ・技術や資産や、買収後の相乗効果を期待して、買い手がつくことも十分あります。
無責任な社長だと思われるかもしれない
M&Aを選択することは経営の一つの選択肢であり、必ずしも無責任とは言えません。しかし、経営者自身が自社の成長や継続を望む中で、M&Aを選択することで「自社を手放すこと」に対する罪悪感や、従業員・関与先からの批判を恐れることがあります。
リストラや乗っ取りなどの悪いイメージ
大企業のM&Aを取り上げたドラマなどによる影響か、M&Aにはリストラや乗っ取りといったネガティブなイメージも付きまとうことがあります。これらのイメージが先行することで、経営者や従業員がM&Aに対して抵抗感を持つことがあります。実際そんなことは無く、引き継いだ従業員様、取引先様を大事にしてくださる買い手様が多くいらっしゃいます。
面倒な手続きが多そう
M&Aは相手との交渉や、現状の企業分析や事業分析・デューデリジェンスなど、手続きや調整が必要です。これにより、手間やコストがかかるという印象を持つ経営者も少なくありません。実際は専門家がかなりの手続きを進めてくれますし、廉価に引き受けてくれる専門家もたくさんいます。また、事業承継を後押しする補助金や助成金も存在します。
会社の資産と個人の資産が明確にわかれていない
中小企業や家族経営の会社では、会社の資産と経営者の個人資産が混在していることが少なくありません。個人の資産についてどのように対処すれば良いか道筋が立たないことも、M&Aが懸念される理由です。しかし、M&Aには引き継ぐ事業や資産を指定して部分的に引き継ぐことも可能です。
規模のある会社がとる選択肢だという印象
まだまだM&Aは大企業が行うものという印象が根付いている場合も多く、中小企業の経営者は自社には関係ないと考えられがちです。しかし、最近ではスモールM&Aという、中小零細企業のM&Aも増加しています。このあとの項目で、実際にどのような規模や、どのような業種の会社・事業がM&Aで譲渡されているのかについて、参考資料と共にご紹介させて頂きます。
安く買いたたかれそうな気がする・・・
会社・事業を譲渡するのは、ほとんどの社長様にとって初めてのことと思います。
そのため、安く買いたたかれるのではないかと不安に思う社長様も少なくありません。
実際には価格は交渉で決まりますのでご安心ください。もしご心配でしたら、アドバイザーを付けて頂くことをおすすめいたします。当社も売り手様のアドバイザリーサービスを提供しています。初回無料で電話相談をお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
この記事を通して、小さな会社の後継者問題と小規模なM&Aについてお話しました。小規模なM&Aは、ただのビジネス手法ではなく、会社の大切な価値を次の世代に引き継ぐチャンスです。この方法の良い点をしっかり理解すれば、後継者がいない問題を乗り越え、会社を成長させることができます。私たちの地域や経済を支える小さな会社がずっと元気でいられるよう、M&Aは大きな助けになると信じています。ぜひ一緒に、この問題に取り組んでいければと思います。最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!