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会社売却

会社売却の査定基準とは?どこを見られて価格が決まるのかをやさしく整理

会社売却を考え始めたとき、まず気になるのが「うちの会社はいくらになるのか?」という点だと思います。

ただ、実際に査定を受けてみると、同じ会社でも担当者や買い手候補によって金額が変わることがあり、「結局、何を基準に決まっているの?」と不安になる方も少なくありません。

ここで大事なのは、査定は“なんとなくの勘”で決まるものではないということです。多くの場合、買い手は「この会社の利益が、今後も続くか」「見えにくいリスクが隠れていないか」を、いくつかの基準に沿って見ています。

この記事では、会社売却における「査定基準(どこを見られるか)」を、難しい言葉をできるだけ使わずに整理します。評価方法(計算のやり方)よりも手前の、“チェックされるポイント”をつかむことで、査定結果に振り回されにくくなり、「どこを整えると価格に効きやすいか」の見当もつけやすくなります。

「まだ売ると決めたわけではない」という段階でも大丈夫です。まずは“見られる基準”を知って、安心して次の一歩を考えられる状態を作っていきましょう。

目次

会社売却の「査定基準」とは何か

評価方法(算定手法)と、査定基準(見るポイント)は別もの

会社売却の話になると、「査定」と「評価方法(算定手法)」がごちゃっと混ざって語られがちです。

ざっくり言うと、評価方法(算定手法)は「いくらに計算するかのやり方」です。たとえば、利益や資産などをもとに金額を出す“計算の型”のようなものです。

一方で、査定基準は「そもそも、どこを見て判断するか」というチェック項目に近い考え方です。

イメージしやすく言うと、

  • 評価方法:点数の付け方(計算方法)
  • 査定基準:何を見て点数を付けるか(見るポイント)

ここを区別しておくと、査定の説明を受けたときに「その金額は、何を根拠に上がった/下がったのか」を理解しやすくなります。

逆にこの区別がないと、金額だけを見て不安になったり、「計算式を変えれば高くなるのでは?」と考えてしまったりしがちです。実際は、計算式以前に“見られているポイント”が整っているかどうかが、査定の土台になります。

査定は「価値」と「リスク」を同時に見ている

査定で見られているのは、単純に「今いくら儲かっているか」だけではありません。

買い手側が知りたいのは、基本的にこの2つです。

  • 価値:この会社は、これからどれくらい利益を生みそうか
  • リスク:その利益が、途中で崩れる要因はないか

たとえば利益が出ていても、

  • 売上が特定の1社に偏っている
  • 社長がいないと回らない
  • 契約や手続きがあいまいで、将来もめそう

こうした要素があると、買い手は「将来の利益が読みにくい」と感じます。その結果、価値が下がるというより、リスクが上がった分だけ“慎重な価格”になりやすい、ということが起こります。

つまり査定は、価値を上げる材料と、不安を増やす材料を同時に見て、バランスを取りながら決まっていくものです。

この見方を知っておくと、「うちは利益が出ているのに、なぜ思ったより伸びないのか」「逆に、数字以上に評価されることがあるのはなぜか」といった疑問が整理しやすくなります。

基準を知ると、査定結果のブレに振り回されにくくなる

査定結果がブレるとき、多くの社長が不安になるのは自然なことです。

ただ、ブレが起きる理由は「適当だから」ではなく、査定が“見るポイントの捉え方”によって変わりやすい性質を持っているから、という面があります。

たとえば同じ数字でも、

  • 安定して続きそうと見られれば、評価は前向きになりやすい
  • たまたま今だけと見られれば、慎重な評価になりやすい

この「見られ方」を左右するのが、まさに査定基準(見るポイント)です。

だからこそ、査定基準を知っていると、

  • 出てきた金額の“理由”を確認できる
  • 納得できない点があれば、論点を分けて質問できる
  • 「次に何を整えると効きやすいか」を現実的に判断できる

という状態になり、金額だけで一喜一憂しにくくなります

査定基準は、査定額をコントロールするための“裏ワザ”ではありません。そうではなく、査定の会話を落ち着いて進めるための地図のようなものです。地図があると、今どこにいて、何が原因で進みにくいのかが見えやすくなります。

参考までに、評価方法と査定基準の違いを、1枚で整理しておきます。

項目 意味 たとえるなら
評価方法(算定手法) 金額を出すための「計算の型」 点数の付け方
査定基準 判断するときに「どこを見るか」 何を見て点数を付けるか
査定結果のブレ 見るポイントの捉え方や前提の置き方で変わる 同じ答案でも採点者の見方で差が出る

この章で押さえておきたいのは、「査定基準=見るポイント」を理解すると、査定の説明が立体的に見えてくる、ということです。金額の大小だけではなく、なぜそうなったのかを落ち着いて確認できるようになります。

査定で見られる全体像

買い手は「将来も利益が続くか」を確認している

査定というと、「今の売上や利益がいくらか」で決まるイメージを持つ方が多いかもしれません。

もちろん数字は大切です。ただ、買い手が本当に知りたいのは、“その利益が、これからも続くか”です。

会社を買う側からすると、購入後に「思ったより利益が出ない」となるのが一番の痛手です。だからこそ、査定では次のような視点で見られます。

  • 利益が出ている理由は、はっきりしているか
  • その理由は、たまたまではなく再現できるか
  • 利益が落ちる可能性がある要因は、把握されているか

たとえば、今期だけ大きな案件が入って利益が跳ねた場合、買い手は「来期も同じように続くのか?」を確認します。逆に、急に利益が落ちたとしても「一時的な要因なのか」「構造的な問題なのか」で受け止め方が変わります。

ここで大事なのは、良い数字を“盛る”ことではなく、数字の背景をきちんと説明できることです。買い手にとっては、将来の見通しが立てやすいほど安心材料になります。

「数字だけ良い会社」より「説明できる会社」が強い

査定で意外と差がつくのが、「説明できるかどうか」です。

同じように利益が出ている会社でも、

  • なぜ利益が出ているのかが言葉で説明できる
  • 強みや弱みを自分の言葉で整理している
  • 不安な点も含めて見通しを立てて話せる

こういう会社は、買い手から見ると「読みやすい会社」です。読みやすいというのは、買った後の運営を想像しやすいという意味です。

反対に、数字が良くても、

  • 数字の理由が説明できない
  • 売上の中身(誰が、何で買っているか)が曖昧
  • 社長しか分からないことが多い

となると、買い手は「見えない部分が多い=怖い」と感じます。怖いものは、どうしても慎重な値付けになりやすいです。

つまり、査定で強いのは「数字が良い会社」ではなく、数字の背景を説明できて、買い手が安心できる会社です。

ちなみに、ここで言う“説明”は立派な資料を作ることではありません。聞かれたときに、筋の通った話ができるだけでも、買い手の見方は変わります。

上がる要素と下がる要素はセットで評価される

査定では、「良いところだけを見てくれる」というより、良いところと不安なところをセットで見て、全体のバランスで判断されます。

たとえば、

  • 強い商品がある(上がる要素)
  • でも特定の担当者に依存している(下がる要素)

といったように、プラスとマイナスが同時に存在するのが普通です。

ここで売主側がやりがちなのが、マイナスを隠したくなることです。ただ実務的には、隠すほど後で発覚したときのダメージが大きくなりやすいです。買い手は「マイナスがあること」よりも、「マイナスが整理されていないこと」を嫌がります。

査定を理解するうえでは、次の感覚が近いです。

  • プラス要素は価値として評価される
  • マイナス要素はリスクとして差し引かれる(または慎重な前提になる)

そのため、プラス要素を増やすだけでなく、マイナス要素を把握して説明できる状態にしておくことが、結果的に「ブレにくい査定」につながります。

全体像をつかみやすいように、査定で見られやすい“プラスとマイナス”の関係をシンプルに整理すると、次のようなイメージです。

見られ方 上がる要素(価値) 下がる要素(リスク)
利益の見え方 安定して出ている/理由が説明できる 一時的な要因が大きい/理由が曖昧
事業の読みやすさ 顧客・商品・強みが整理されている 売上の中身が不透明/偏りが強い
運営の引き継ぎやすさ 仕組み化されている/複数人で回る 社長・特定社員に依存している

査定は「良いところを探す作業」でもあり、「不安を減らす作業」でもあります。どちらか片方だけではなく、両方を同時に見られていると捉えると、査定の説明がぐっと理解しやすくなります。

数字で見られる査定基準

売上よりも、利益の質と安定感が見られる

「売上が大きいほど高く売れるはず」と思われる方も多いのですが、査定の場面では、売上の大きさそのものよりも“利益がどれだけ安定して出ているか”が重視されやすいです。

理由はシンプルで、買い手にとって大事なのは買った後にどれだけ利益が残るかだからです。売上が伸びていても、利益が薄かったり、年によって大きくブレたりすると、将来の見通しが立てにくくなります。

ここでいう「利益の質」とは、ざっくり言うと次のようなイメージです。

  • 継続的に出る利益か(たまたまではないか)
  • 無理をしなくても出る利益か(現場が疲弊していないか)
  • 売上が少し落ちても、利益が極端に崩れない耐久力があるか

たとえば、値引きで売上を作っているケースや、特定の大口案件に強く依存しているケースは、数字がよく見えても「この状態が続くのか?」という視点で見られます。逆に、派手な成長でなくても、安定して利益が積み上がっている会社は、買い手からすると“読みやすい”ので評価されやすくなります。

査定の説明を受けるときは、売上の話だけで終わらず、「利益がどう作られているか」まで聞くと、納得感が出やすいです。

キャッシュの残り方と、運転資金の重さが見られる

同じように利益が出ていても、「お金が残る会社」と「なぜか手元に残りにくい会社」があります。

査定では、この“キャッシュの残り方”がかなり大事に見られます。なぜなら、買い手は買収後に資金繰りで苦しむリスクを避けたいからです。

特に見られやすいのが、運転資金の重さです。運転資金というのは、ざっくり言うと「事業を回すために先に必要になるお金」です。

  • 売上が入金されるまで時間がかかる
  • 在庫を多く持たないと回らない
  • 外注費や人件費が先に出ていく

こうした構造があると、利益が出ていても手元資金が薄くなりやすく、買い手は「買った後に追加の資金が必要になるかも」と考えます。すると、価格の判断も慎重になりやすいです。

ここで誤解しやすいのは、運転資金が重いこと自体が「悪」ではない点です。業種によっては普通に起こります。問題になりやすいのは、社長自身がその構造を把握していない、または説明できないことです。

買い手にとって安心なのは、

  • 入金と支払いのタイミングがどうなっているか
  • 資金繰りが苦しい月があるなら、なぜそうなるのか
  • それをどう回しているのか(取引条件、在庫、借入など)

言葉で整理されている状態です。

一時的な要因(特別利益・一過性の費用)は切り分けて見られる

数字を見るとき、買い手は「今期の利益は高いですね」と言いつつも、そのまま鵜呑みにするわけではありません。

査定では、利益の中身を見て、“毎年起こるもの”“たまたま起こったもの”を切り分けて考えることが一般的です。

たとえば、次のようなものは「一時的な要因」として扱われることがあります。

  • 特別利益:資産の売却など、毎年は起こらない利益
  • 一過性の費用:たまたま大きく出た修繕費、移転費用、トラブル対応費など

ここで気をつけたいのは、買い手がこうした切り分けをするのは、粗探しが目的ではなく「将来の普通の状態」を知りたいからです。

売主側としては、

  • 今期の利益が高いなら、「なぜ高いのか」を説明できる
  • 今期の利益が低いなら、「何が一時的だったのか」を説明できる

この状態にしておくと、査定の会話がスムーズになります。

「一時的な要因」を切り分けるときに、難しい資料を作る必要はありません。たとえば、“今年だけの要素メモ”として、次のように整理しておくだけでも十分役に立ちます。

項目 内容 今年だけ?今後も? 補足(理由・背景)
利益が増えた要因 大口案件が入った 今年だけの可能性 既存顧客の単発更新。来期は未確定。
費用が増えた要因 設備の修繕 今年だけ 突発故障の対応。来期は同規模見込みなし。
今後も続く変化 人員増で固定費が増えた 今後も続く 売上拡大のための採用。稼働率で回収予定。

このように整理できていると、買い手は「この利益は続きそうか」「この費用は一回で終わりそうか」を判断しやすくなります。結果として、査定の前提がクリアになり、変に保守的な見積もりをされにくくなることにもつながります。

事業の強さで見られる査定基準

誰に、何を、なぜ選ばれているかが説明できるか

事業の査定でまず見られやすいのは、「この会社は、誰に何をなぜ選ばれているのか」が、社長の言葉で説明できるかどうかです。

ここが説明できると、買い手は「利益が出ている理由」を理解しやすくなります。逆に、数字は良くても理由が曖昧だと、買い手は“たまたまうまくいっているだけかもしれない”と感じ、慎重になりやすいです。

難しい資料や立派な言い回しは要りません。大事なのは、次の3点が噛み合っていることです。

  • 誰に:主なお客様はどんな人・会社か(業種、規模、地域、課題など)
  • 何を:何を提供していて、どこまでやるのか(商品・サービスの中身)
  • なぜ:なぜ他社ではなく自社が選ばれるのか(決め手)

買い手が知りたいのは、「綺麗な説明」ではなく現場の実感に近い説明です。たとえば、

  • 一度頼まれるとリピートが多いのは、なぜか
  • 紹介が生まれるのは、どんな瞬間か
  • 価格が多少高くても選ばれる理由は何か

こうした話ができると、買い手は「買った後も同じ形で売上を作れそうだ」と判断しやすくなります。

もし言語化が難しい場合は、まずはこの一行からでも十分です。

「うちは、(誰に)向けて、(何を)提供し、(なぜ)選ばれています」

ここが短く言えるだけでも、査定の会話は驚くほど整理されます。

顧客の偏りや解約の起きやすさが見られる

次に見られやすいのが、売上の安定性に直結する「顧客の偏り」と「解約の起きやすさ」です。

買い手は、売上の数字を見ながら同時に、こう考えています。

  • この売上は、どれくらい分散しているか
  • 大きい顧客が抜けたとき、どれくらい影響があるか
  • 解約や取引停止が起きるとしたら、何がきっかけになりやすいか

たとえば、売上の多くが数社に集中している場合、買い手は「その会社が離れたらどうなるか」を必ず想像します。これは責めているのではなく、買った後の不確実性を減らしたいだけです。

また、サブスク型や継続契約のビジネスでは、解約率(離脱)が重要なヒントになります。解約率を細かく計測していなくても、

  • 解約が起きやすいタイミング(例:担当変更、値上げ、繁忙期)
  • 解約の主な理由(例:価格、成果、コミュニケーション)
  • 解約を減らすためにやっていること

が説明できるだけで、買い手の安心感は大きく変わります。

顧客の偏りや解約リスクは「ある・ない」ではなく、把握していて、対策も含めて語れるかがポイントになりやすいです。

整理しやすいように、買い手が気にしやすい視点を表にしておきます(作り込みは不要で、頭の整理に使うイメージです)。

見られやすい点 買い手が気にする理由 説明できると強いこと
売上の上位顧客比率 一社が抜けたときの影響が大きい 依存がある場合でも、代替や補完の見通しがある
契約の継続性 買収後の売上が読めるかどうか 更新の仕組み、関係維持のポイントが言語化できている
解約の起きやすさ 利益の継続性が崩れる可能性 解約理由と打ち手(改善策)が説明できる

競合に真似されにくい強みがあるかが見られる

最後に、事業の査定では「競合に真似されにくい強み」があるかも見られます。

ここでいう強みは、抽象的な「うちは品質が良いです」だけでは弱いです。買い手が知りたいのは、“なぜ真似しにくいのか”という理由です。

たとえば、真似されにくさには色々な形があります。

  • 積み上げ型の資産:長年の顧客基盤、紹介ネットワーク、運用データ、制作物など
  • 仕組み:独自の手順、教育方法、納品・運用の型、品質を守るルール
  • 関係性:特定の業界内での信用、継続契約が生まれる流れ
  • 供給側の強さ:採用・育成が回っている、協力会社との安定した関係がある

ポイントは、「強みがあります」と言い切ることではなく、強みが“再現できる形”で存在していることを示せるかです。

たとえば「社長の人柄で取れている」は、現場感としては正しくても、買い手からすると引き継ぎが難しく見えることがあります。一方で、

  • 紹介が生まれる導線がある
  • サービス提供の手順が型化されている
  • 品質を担保するチェックが仕組みとしてある

のように説明できると、社長が前面に立たなくても事業が回るイメージが湧き、評価されやすくなります。

強みの言語化が難しいときは、次の質問を自社に投げてみると整理しやすいです。

  • 同じ商品・サービスを、明日から他社が真似したら困る理由は何か?
  • 真似されても勝てるとしたら、何が違いを作っているか?
  • お客様が離れない理由は、どこにあるか?

この“真似されにくさ”が説明できるほど、買い手は将来の競争リスクを低く見積もりやすくなり、査定の前提も前向きになりやすいです。

人と体制で見られる査定基準

社長やキーパーソンに依存しすぎていないかが見られる

会社売却の査定では、数字や事業内容と同じくらい、「人の依存度」が見られます。

買い手が気にするのは、ひと言でいうと「その人がいなくなっても、利益が続くか」です。

たとえば、次のような状態は、買い手からすると不安材料になりやすいです。

  • 見積もりや価格決定が社長だけにできる
  • 主要顧客との関係が特定の担当者に集中している
  • クレーム対応や重要判断がキーパーソン頼みになっている
  • その人がいないと、現場が止まる/回らない

ここで誤解しやすいのは、「社長が頑張っている会社はダメ」という話ではありません。中小企業では社長が中心になるのは自然です。問題になりやすいのは、“その人の頭の中にしかない情報”が多いことです。

買い手は、その不確実性を価格に織り込もうとします。逆に、依存が残っていても、

  • 何に依存しているかを把握している
  • 引き継ぎの方法がイメージできる
  • 一定期間の引き継ぎで移せそう

という説明ができると、安心材料になります。

社長やキーパーソンへの依存は、ゼロにする必要はありません。大切なのは、「依存がある部分」と「すでに分散できている部分」を分けて説明できることです。

引き継げる形になっているか(仕組み・権限・ルール)が見られる

人の依存とセットで見られるのが、「引き継ぎやすさ」です。

買い手は「買って終わり」ではなく、「買ったあとに運営する」ことが目的です。だからこそ、会社が仕組みとして回っているかを確認します。

特に見られやすいのは、次の3つです。

  • 仕組み:日々の業務が、一定の手順で回るようになっているか
  • 権限:誰が何を決めるのかが、社内で整理されているか
  • ルール:例外対応や判断基準が、ある程度言語化されているか

ここでいう「仕組み」は、分厚いマニュアルのことではありません。むしろ、現実的に役立つのは、

  • 業務の流れが分かる簡単な手順メモ
  • 担当者が分かる役割分担表
  • よくある例外対応の判断基準メモ

といった、引き継ぐ側が迷いにくい情報です。

また、権限の整理ができている会社は、買い手からすると安心です。たとえば、

  • 契約の締結は誰ができるのか
  • 値引きの判断はどこまで現場で決めていいのか
  • 採用や外注の決裁は誰が持つのか

こうしたことが曖昧だと、買収後の運営で混乱が起きやすくなります。

反対に、ルールがある程度整理されていると、買い手は「この会社は引き継げそうだ」と感じやすくなります。引き継ぎが見える会社は、査定の前提が前向きになりやすい、というのが実務的な感覚です。

ここも、作り込みすぎる必要はありません。整理のイメージを持ちやすいように、最低限の“見える化”例を表にしておきます。

見える化する対象 買い手が安心しやすい理由
業務の流れ 受注〜納品〜請求の手順メモ 引き継ぎ後の運営を想像しやすい
役割分担 担当者と代替要員の一覧 「誰が抜けると止まるか」が見える
判断基準 値引き・例外対応のルール 買収後のトラブルや迷いが減る

採用・離職・労務トラブルの起きやすさも見られる

人に関する査定では、もう一つ大事なのが「人が安定しているか」です。

買い手が見たいのは、単に人数や年齢構成だけではありません。たとえば、

  • 採用が回っているか(必要なときに人を増やせるか)
  • 離職が多すぎないか(現場が不安定になっていないか)
  • 労務トラブルが起きやすい状態になっていないか

といった、運営上のリスクです。

ここで言う労務トラブルは、何か大きな事件があるかどうかだけではありません。たとえば、

  • 残業や休日の取り扱いが曖昧
  • 評価や給与の決め方が属人的
  • 退職時の揉め事が起きやすい

など、火種になりうる状態があるかどうかも見られます。

もちろん、どの会社にも多少の課題はあります。重要なのは、買い手が不安になるのは「課題があること」よりも、「現状が見えないこと」「整理されていないこと」になりやすい点です。

たとえば、次のように説明できるだけでも、印象は変わります。

  • 採用はどの職種が難しいか、今はどう工夫しているか
  • 離職が多い時期があったなら、その理由と今の改善状況
  • 労務面で気をつけているルール(勤怠、残業、社内相談窓口など)

つまり、人と体制の査定では、「属人性が強すぎないか」「引き継いだあとも無理なく回りそうか」が見られています。

買い手が安心できるのは、完璧な組織ではなく、現状が整理されていて、必要な引き継ぎがイメージできる会社です。

契約や法務まわりで見られる査定基準

主要な契約が整理され、説明できる状態かが見られる

会社売却の査定では、「契約書があるかどうか」だけでなく、主要な契約が整理されていて、内容を説明できる状態かが見られます。

買い手からすると、契約は将来の売上や費用を左右する“約束ごと”です。約束ごとが曖昧だと、買った後に「思っていたのと違った」が起きやすくなります。だからこそ、査定の場面でも契約まわりは丁寧に確認されやすいです。

特に整理されていると安心されやすいのは、次のような契約です。

  • 主要顧客との取引契約(継続条件、解約条件、価格改定など)
  • 仕入れ・外注先との契約(単価、納期、独占条件など)
  • 賃貸借契約(事務所・工場・倉庫など、契約期間や更新条件)
  • リース契約(設備や車両など、残期間や解約条件)
  • 業務委託契約(個人委託の範囲、成果物の扱いなど)

ここで大事なのは、細かい条文を暗記することではありません。買い手が安心するのは、

  • 主要契約がどれか把握できている
  • 契約の要点(期間・解約・価格・責任)を説明できる
  • 契約がない取引は「口約束」なのか、「慣行」なのかを含めて状況を説明できる

といった状態です。

もし契約書が見つからないものがあっても、それだけで即アウトという話ではありません。ただ、「どれが未整備か」「どう運用しているか」を把握していると、買い手は現実的に判断しやすくなります。

整理のハードルを下げるために、まずは“一覧化”だけでも効果があります。例えば、こんな表を作っておくと話が早くなります。

契約の種類 相手先 期間・更新 解約条件 ポイント(注意点)
取引契約 主要顧客A 1年更新 30日前通知 価格改定は年1回協議
外注契約 協力会社B 都度発注 都度 実質的に長期、単価は口頭合意
賃貸借 物件オーナー 2年更新 2ヶ月前通知 名義変更可否は要確認

このレベルでも、「何がどこまで整っているか」が見えるので、買い手の不安が減りやすくなります。

許認可・法令対応・クレーム履歴などの不安材料が見られる

契約と並んで、査定で警戒されやすいのが“後から出てくると困る不安材料”です。

代表的なのが、

  • 許認可(必要な許可が取れているか、更新や名義変更がどうなるか)
  • 法令対応(ルール違反の運用が常態化していないか)
  • クレーム履歴(頻度、内容、再発防止策があるか)

です。

買い手が嫌がるのは、「問題が一切ない会社」以外を排除したいからではありません。そうではなく、買収後に想定外の負担が発生することを避けたいのです。

たとえば、許認可が必要な業種であれば、

  • 許可証の有無
  • 更新時期
  • 名義変更や引き継ぎの可否

が整理されているかが見られます。

クレームについても同様で、「クレームがあった」こと自体より、

  • どんな理由で起きたのか
  • どう対応して収束したのか
  • 再発防止の手当てがあるか

が説明できると、買い手は安心しやすくなります。

ここで大切なのは、隠すほど不利になりやすいという点です。後から発覚すると、信頼が落ちるだけでなく、条件の見直し(価格や支払い条件など)に発展しやすくなります。

逆に、不安材料があっても、

  • 現状を把握している
  • 影響範囲を説明できる
  • 改善の手当てをしている(または方針がある)

という状態なら、「管理できている問題」として受け止められやすくなります。

知的財産やデータの帰属が曖昧だと不利になりやすい

もう一つ、見落とされがちなのが知的財産やデータの“持ち主(帰属)”が誰なのかです。

ここが曖昧だと、買い手は「買ったつもりなのに、使えない/揉めるかもしれない」と感じます。すると査定は慎重になりやすく、不利になりやすいポイントになります。

具体的には、次のようなものが対象になりやすいです。

  • 商標(サービス名・ブランド名)
  • ドメイン(サイトのURL)やSNSアカウント
  • Webサイトやパンフレットなどの制作物
  • ソフトウェア、システム、ツール
  • 顧客データ、会員データ、運用データ

たとえば、外部の制作会社にサイト制作を依頼した場合でも、契約の内容によっては「成果物の権利」が曖昧なままになっていることがあります。業務委託で作ってもらったシステムやコンテンツも同様です。

また、データについても、個人情報や取り扱いのルールが絡むため、「引き継げば終わり」ではなく、適切に扱える状態かが見られます。

ここは難しく感じるかもしれませんが、査定の段階ではまず、

  • 何が資産として重要か(ブランド名、サイト、顧客データ等)
  • 名義が誰か(会社か、社長個人か、第三者か)
  • 契約でどう約束されているか(利用範囲、再利用可否など)

を把握しておくことが大切です。

もし「社長個人名義」になっているものがあっても、直ちに致命的という話ではありません。ただ、買い手から見ると不安の種になりやすいので、現状を整理して説明できることが重要になります。

この領域は、契約書の条文を読み込む話に入ると急に難しくなりがちです。だからこそ、まずは「何が重要資産か」「名義は誰か」「契約はあるか」を一覧で把握するだけでも、査定の会話が現実的に進みやすくなります。

成長性で見られる査定基準

伸びる理由が「再現できる形」になっているかが見られる

査定では「今の利益」だけでなく、これから伸びそうかどうか、つまり成長性も見られます。

ただし、ここでよくある誤解が「将来は伸びます」と言えば評価が上がる、というものです。買い手が見ているのは、希望的な話ではなく、伸びる理由が“再現できる形”になっているかです。

たとえば、たまたま紹介が増えて伸びた場合でも、

  • どこから紹介が来ているのか
  • なぜ紹介が起きるのか
  • 紹介が起きる流れを増やすには何をすればいいか

が整理されていれば、買い手は「買った後も再現できそうだ」と判断しやすくなります。

逆に、社長の勘や偶然に依存していると、買い手は「自分たちが引き継いだ後に再現できないかも」と感じます。すると、成長性は“評価されない”というより、“織り込まれにくい”状態になります。

再現性があるかどうかは、派手な仕組みがあるかではなく、次のような一連の流れが言語化されているかで見られやすいです。

  • 集客:どうやって見込み客に出会っているか
  • 受注:なぜ契約が決まるのか(決め手)
  • 継続・拡大:なぜ続くのか/追加が生まれるのか

この流れが「社長の頭の中」ではなく、ある程度は誰でも追える形になっていると、成長性として見られやすくなります。

買い手の強みと噛み合うと、評価が上振れしやすい

成長性の査定は、単純に「伸びしろが大きい会社=高い」という話ではありません。買い手によっては、同じ会社でも見え方が大きく変わります。

なぜかというと、買い手は「自社の強みを使って、伸ばせるか」を考えるからです。つまり、買い手の強みと噛み合うほど、評価が上振れしやすいということが起こります。

たとえば、一般的に噛み合いやすいパターンとしては、

  • 買い手が強い営業網を持っていて、売主の商品を横展開できる
  • 買い手が採用や育成に強く、人手不足の壁を越えられる
  • 買い手が仕入れ・調達に強く、原価を下げられる
  • 買い手が管理・ITに強く、運営を効率化できる

といったものがあります。

ここで重要なのは、「買い手が伸ばしてくれるはず」と期待することではなく、売主側が“どこが噛み合うと伸びるか”を説明できることです。

買い手の視点では、噛み合いが見えるほど「買った後に伸ばせる確度が高い」と判断しやすくなります。その結果、同じ数字でも前向きに評価される可能性が出てきます。

難しい言葉で言う必要はありません。たとえば、

  • 「うちはこの分野の問い合わせは多いのですが、対応できる人が足りません」
  • 「この商品はリピートが強いのですが、営業の手が回っていません」

のように、“伸びを止めているボトルネック”が言えるだけでも、噛み合いの話がしやすくなります。

数字の計画より「打ち手の確度」が見られる

成長性というと、売上計画や利益計画を作って「3年後には売上2倍です」といった数字を出したくなるかもしれません。

もちろん計画があること自体は悪いことではありません。ただ、査定で信頼されやすいのは、数字そのものよりも、その数字を実現するための“打ち手の確度”です。

買い手が見たいのは、

  • 何をやれば伸びるのか(打ち手)
  • それは過去に試して、手応えがあったのか
  • 障害は何で、どう乗り越えるのか

といった「現実味」です。

たとえば、同じ“売上を伸ばす”でも、

  • 根拠が薄い計画:来期から広告を出すので伸びます
  • 確度が高い打ち手:既に反応が出ている集客経路があり、投入量を増やば伸びる見込みがある

では、買い手の受け止め方が変わります。

打ち手の確度を伝えるときは、次のような情報があると、買い手は判断しやすくなります。

  • 過去に一度でも再現できた実績がある(小さくても良い)
  • 伸びが止まる原因が特定できている(人手、設備、営業、資金など)
  • その原因を外せば伸びる、という筋道がある

整理のイメージを持ちやすいように、買い手が見やすい「打ち手の伝え方」を表にしておきます。作り込みのためではなく、頭の中を整える目的で使うイメージです。

打ち手 狙い 根拠(小さくてもOK) 今のボトルネック 外せたらどうなる?
紹介ルートの強化 受注の増加 紹介経由は成約率が高い 紹介を増やす施策が未整備 案件数が増え、安定して伸ばせる
営業の型化 再現性の向上 特定の提案パターンで受注できている 社長依存で横展開できない 人が増えても売上を伸ばせる
対応キャパの拡張 機会損失の解消 問い合わせはあるが受けきれない 人員・育成が追いつかない 売上の上限が上がる

成長性は、“夢”の話に寄るほど評価されにくくなりがちです。逆に、地に足のついた形で「なぜ伸びるのか」「どうやって伸ばすのか」を説明できるほど、買い手は安心して将来を織り込みやすくなります。

査定を受ける前に、基準に沿って整えておくと安心なこと

査定でよく聞かれる質問に、短く答えられる準備をする

査定の前に「完璧な資料」を作る必要はありません。むしろ、多くの方がつまずくのは、資料の量ではなく質問への答えが長くなってしまうことです。

買い手や査定担当者は、限られた時間で「この会社は将来も利益が続くか」「大きなリスクはないか」を把握したいので、最初に聞く質問はある程度パターン化しています。

ここで強いのは、立派な説明ではなく、短く・ズレずに答えられることです。たとえば、次のような質問に対して、30秒〜1分くらいで答えられると会話が一気に進みます。

  • 売上と利益は、何が理由で増減していますか?
  • 主要なお客様は誰で、どんな理由で選ばれていますか?
  • 売上が上位の顧客に偏っていませんか?
  • 社長がいないと止まる業務はどこですか?
  • 不安材料(トラブルや課題)はありますか?

「短く答える」というのは、薄く答えることではありません。ポイントは、結論→理由→補足の順に話すことです。

  • 結論:どういう状態か(例:上位顧客への依存はあります)
  • 理由:なぜそうなっているか(例:当社の売上構造上、大口が中心です)
  • 補足:対策や見通し(例:新規開拓のルートがあり、比率を下げる動きをしています)

この型があるだけで、聞く側は「状況を把握できた」と感じやすく、査定の前提も組み立てやすくなります。

不安材料は隠すより、先に出して整理した方が強い

査定前に不安になりやすいのが、「言いにくいことをどうするか」です。

たとえば、

  • 特定の顧客への依存が強い
  • 社長が現場に深く入っている
  • 契約が口約束の取引がある
  • 人の入れ替わりがあった

など、どの会社にも“完璧ではない部分”はあります。

ここで大事なのは、買い手が嫌がるのは「不安材料があること」そのものではなく、不安材料が後から出てきて、話が食い違うことになりやすい点です。

だからこそ、査定に向けて強い姿勢は、

  • 不安材料を先に出す
  • 影響範囲を切り分ける(どこまで影響するか)
  • 対策や見通しをセットで説明する

という形です。

たとえば「上位顧客に依存している」という話でも、

  • 事実:売上上位の比率は高いです
  • 影響:取引停止の可能性は低いが、万一の影響は大きいです
  • 対策:紹介ルートと既存顧客の横展開で分散を進めています

と整理できていれば、買い手は「管理できている」と受け止めやすくなります。

反対に、隠したり、曖昧にしたりすると、後で発覚したときに信頼が下がり、条件面(価格や支払い条件など)の話に影響しやすくなります。言いにくいことほど、先に整理して出せる状態にしておくと、結果的に安心して進めやすくなります。

(表)査定基準ごとの「見られる点」と「用意しておく材料」一覧

「何から手をつければいいか分からない」という方に向けて、査定基準ごとに“見られる点”と“用意しておく材料”を1枚にまとめました。

ここでの目的は、資料を完璧に揃えることではなく、査定の会話で困らない状態を作ることです。まずは「これなら出せる」という範囲で十分です。

査定基準 見られる点 用意しておく材料(最低限)
数字 利益の安定感/キャッシュの残り方/一時的要因の有無 直近の決算書(複数期)/今期の着地見込みメモ/今年だけの要因メモ
事業の強さ 誰に何をなぜ提供しているか/顧客の偏り/解約の起きやすさ 主要顧客一覧(上位数社)/商品・サービスの説明メモ/受注の決め手メモ
人と体制 社長・キーパーソン依存/引き継ぎやすさ/採用・離職の安定性 組織図・役割分担メモ/主要業務の流れメモ/社長しかできないことリスト
契約・法務 主要契約の整理/許認可・法令対応/不安材料の有無 主要契約の一覧(あるものだけでOK)/許認可の有無・更新時期メモ/クレーム等の整理メモ
成長性 伸びる理由の再現性/ボトルネック/打ち手の確度 伸びる理由の説明メモ/止まっている理由メモ(人手・営業など)/小さな実績(試した結果)

この表を埋める作業は、「査定のために頑張る」というより、自社を落ち着いて説明できる状態を作るための準備です。全部が揃っていなくても、どこが未整備かを把握できていれば、査定の会話は現実的に進みやすくなります。

査定でつまずきやすい誤解

節税のやりすぎで、利益が読みにくくなってしまう

会社売却の査定で、意外と多いのが「節税を頑張ってきたことが、査定では説明の難しさにつながる」というケースです。

節税そのものが悪いわけではありません。むしろ、キャッシュを守るために工夫しているのは自然なことです。

ただ、査定では買い手が「この会社は将来どれくらい利益が出そうか」を見ようとします。ここで、節税によって利益が薄く見える状態が続いていると、買い手側は「本来の利益がどれくらいなのか」を判断しにくくなります。

よく起きるのは、たとえばこんな状態です。

  • 費用が多く計上されていて、利益が実態より低く見える
  • 年によって処理がバラバラで、比較がしにくい
  • 経費の中に、事業とプライベートの境界が曖昧なものがあり、説明が難しい

買い手は、節税を否定したいわけではありません。知りたいのは「もし買ったら、どのくらい利益が残る状態なのか」です。

そのため、節税が強い会社ほど、査定の前に“利益の見え方を整える”という考え方が大切になります。たとえば、

  • この費用は毎年かかるものか/今年だけか
  • 社長個人の要素がある支出はどの範囲か
  • 本来の利益は、どういう前提で考えると自然か

こうした点を整理できていると、買い手は「実態ベース」で理解しやすくなります。

ここで無理に言い訳を作る必要はありません。大切なのは、買い手が判断できる材料を、落ち着いて出せることです。

見せかけの利益づくりが、逆に不信感につながることがある

売却が視野に入ると、「少しでも高く見せたい」という気持ちが出るのは自然です。

ただ、短期的に利益を作ろうとして、見せかけの数字になってしまうと、かえって不信感につながることがあります。

買い手は、数字の変化を「良い悪い」だけで見ません。むしろ、

  • なぜ急に利益が上がったのか
  • その変化は続くのか
  • 無理をしていないか

を見ます。

たとえば、売却前に無理をして起きやすいのは、こんなパターンです。

  • 必要な投資や修繕を止めて、一時的に利益を増やす
  • 値引きや販促を絞って、短期的に利益率を上げる
  • 現場に負荷をかけて、無理に売上を積む

こうした動きは、数字だけ見ると一瞬きれいに見えることがあります。

ただ、買い手からすると、買収後に「修繕が必要だった」「顧客が離れた」「現場が疲弊していた」となるのが一番困ります。だからこそ、“不自然な良さ”は疑われやすいというのが現実です。

売却を意識してやるべきことは、派手に数字を作ることよりも、数字の背景を説明できる状態を作ることです。

たとえば利益が上がったなら、

  • 何が要因だったのか
  • それは再現できるのか
  • 逆に、無理をしていないか

この整理ができていると、買い手は安心して前提を置きやすくなります。

「比較されるポイント」を外すと、頑張りが価格に反映されにくい

もう一つ、査定でつまずきやすいのが、頑張っているのに評価されないというケースです。

その原因として多いのが、買い手が比較したいポイントと、売主がアピールしているポイントがずれていることです。

たとえば、売主が「うちは社長が頑張っている」「現場が気合で回している」と伝えても、買い手は次のような観点で比較します。

  • 社長がいなくても回るか
  • 利益が安定して続くか
  • 主要顧客や人に偏りがないか
  • 契約や運営が整理されているか

つまり、評価されやすいのは「頑張り」そのものではなく、頑張りが“仕組み”や“安定”に変わっているかです。

ここでありがちなズレを、イメージしやすいように表にしておきます。

売主が言いたくなること 買い手が本当に知りたいこと 伝え方のコツ
社長が頑張って売上を作っている 社長が抜けても売上は続くか 営業の型・担当移管の方法を説明する
現場が気合で対応している 品質や納期は安定するか 手順・チェック・例外対応のルールを示す
最近利益が伸びた その理由は再現できるか 要因の分解(継続/一時的)を説明する
取引先との関係は良好 契約や条件はどうなっているか 主要契約の要点(期間・解約・価格)を整理する

このズレを埋めるだけで、「頑張ってきたこと」が評価につながりやすくなります。

査定は、売主の努力を点数化する場ではなく、買い手が安心して未来を描けるかを確認する場です。だからこそ、伝えるべきは「頑張った事実」よりも、頑張りがどう会社に残っているかになります。

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