
東京では、会社をたたむ企業が全国と比べて多いのでしょうか。
帝国データバンクによると、2025年に東京都で休業・廃業、解散を行った企業は1万5,806件でした。全国47都道府県の中で最も多く、全国で唯一1万件を超えています。
しかし、東京都は企業数そのものが多いため、件数だけを見て「東京は会社をたたみやすい」と結論づけることはできません。比較するときは、何社が退出したかという「件数」と、企業数に対して何%が退出したかという「休廃業・解散率」を分けて見る必要があります。
この記事では、帝国データバンクの東京都調査と全国調査を同じ2025年でそろえ、件数、全国に占める割合、前年比、企業数を分母にした率を比較します。そのうえで、東京の数字が多く見える理由と、件数だけでは分からない特徴を整理します。
この記事の結論
2025年に東京都で休廃業・解散した企業は1万5,806件で、全国の約23.3%を占めます。企業数を分母にした東京都の休廃業・解散率を市区郡別の公表値から集計すると約8.0%となり、全国の4.58%の約1.7倍です。東京の件数が多いのは企業の集積だけでは説明できず、企業数に対して見ても退出の割合が高いと考えられます。
2025年に会社をたたんだ企業は東京1万5,806件、全国6万7,949件
帝国データバンクの東京都調査では、2025年に東京都で休業・廃業、解散を行った企業は1万5,806件でした。前年の1万5,126件から680件増え、前年比では4.5%の増加です。
一方、全国の休廃業・解散件数は6万7,949件でした。前年の6万9,019件から1,070件減り、前年比では1.6%の減少です。

| 比較項目 | 東京都 | 全国 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| 2025年の件数 | 15,806件 | 67,949件 | 東京だけで全国の約23.3% |
| 前年比 | +4.5% | ▲1.6% | 全国が減る中で東京は増加 |
| 休廃業・解散率 | 約8.0% | 4.58% | 東京は全国の約1.7倍 |
最も重要なのは、2025年の動きが東京と全国で逆になった点です。全国では高水準ながら3年ぶりに減少しましたが、東京都では3年連続で増加し、現在の基準で集計が始まった2016年以降の最多を更新しました。
東京都の10年推移や2023年以降に増えた背景は、「東京の休廃業・解散は増えている?10年推移で見る『静かな退場』」で詳しく解説しています。本記事では、全国との比較に範囲を絞ります。
東京都は全国の休廃業・解散の約23.3%を占める
全国調査に掲載された東京都の件数は1万5,804件です。全国6万7,949件に占める割合を計算すると、約23.3%となります。
独自計算
15,804件 ÷ 67,949件 × 100 = 約23.3%
つまり、全国で休廃業・解散した企業のおよそ4社に1社が東京都に所在していた計算です。
件数で2番目に多い大阪府は4,411件、3番目の神奈川県は4,117件、4番目の愛知県は3,946件でした。東京都は大阪府の約3.6倍で、他の大都市圏と比べても突出しています。
| 順位 | 都府県 | 2025年の件数 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 東京都 | 15,804件 | +4.5% |
| 2 | 大阪府 | 4,411件 | +0.2% |
| 3 | 神奈川県 | 4,117件 | ▲6.8% |
| 4 | 愛知県 | 3,946件 | +1.5% |
ただし、この順位は「会社をたたみやすい都道府県」の順位ではありません。東京都には本社や事業者が集中しているため、活動を終える企業の絶対数も多くなります。件数の大きさと退出の起こりやすさは、別の指標です。
件数だけでは東京の多さを正しく判断できない
仮に二つの地域で年間1,000社が会社をたたんだとしても、もともとの企業数が1万社の地域と10万社の地域では意味が違います。
- 企業数1万社の地域で1,000社が退出:10%
- 企業数10万社の地域で1,000社が退出:1%
件数は同じでも、企業数に対する割合には10倍の差があります。
帝国データバンクでは、ある年の休廃業・解散件数を前年12月時点の企業数で割り、「休廃業・解散率」を算出しています。
休廃業・解散率 = その年の休廃業・解散件数 ÷ 前年12月時点の企業数
この率を見ることで、企業が多いから件数も多いのか、それとも企業数に対して退出する割合そのものが高いのかを分けて考えられます。
東京都の休廃業・解散率は約8.0%、全国の約1.7倍
全国の2025年の休廃業・解散率は4.58%です。これは帝国データバンクの全国調査に明記されています。
一方、東京都調査では東京都全体の率が一つの数字で掲載されていないため、本記事では市区郡別に公表された2025年の件数と休廃業・解散率から、各地域の分母となる企業数を逆算して合計しました。
その結果、東京都全体の企業数は約19万7,900社、休廃業・解散率は約8.0%と推計されます。市区郡別の率は小数点以下2桁に丸められているため、東京都の数値も概算です。
東京都と全国の率を比較
東京都:約8.0% / 全国:4.58%
約8.0% ÷ 4.58% = 約1.7倍
企業数を分母にしても、東京の休廃業・解散率は全国を上回ります。したがって、東京の件数が多い理由を「会社がたくさんあるから」だけで説明することはできません。
全国の企業数に占める東京都の割合は、同じ計算方法による概算で約13.3%です。これに対し、全国の休廃業・解散件数に占める東京都の割合は約23.3%でした。企業の集積割合よりも退出件数の割合が約10ポイント高いことも、東京の特徴を表しています。
約8.0%は「東京の会社の8%が必ず廃業した」という意味ではない
この統計は、帝国データバンクが保有する企業データベースと各種法人データベースを基に集計したものです。経済センサスや税務上の法人数をそのまま分母にした数字ではありません。
また、「休廃業・解散」には法人だけでなく個人事業主も含まれます。休業状態を確認した企業は将来再開する可能性があり、解散した会社も清算結了までは法人格が残ります。
そのため、約8.0%は東京都内のすべての法人が消滅した割合ではなく、帝国データバンクの同一基準で全国と比較するための率として読むのが適切です。
2025年は全国が減少した一方、東京は4.5%増えた
2025年の全国の休廃業・解散件数は前年比1.6%減でした。過去10年で2番目に多い水準ではあるものの、3年ぶりに前年を下回っています。
東京都は反対に4.5%増え、3年連続で前年を上回りました。全国が減少へ転じた年にも東京は増加が続いたため、東京都の全国に占める割合は2024年の約21.9%から2025年の約23.3%へ上昇しています。

| 年 | 東京都 | 全国 | 東京の全国比 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 12,123件 | 54,709件 | 22.2% |
| 2022年 | 11,786件 | 53,426件 | 22.1% |
| 2023年 | 13,376件 | 59,105件 | 22.6% |
| 2024年 | 15,126件 | 69,019件 | 21.9% |
| 2025年 | 15,804件 | 67,949件 | 23.3% |
2021年から2025年までの4年間で、東京都の件数は約30.4%増えました。同じ期間の全国の増加率は約24.2%です。東京はもともとの件数が大きいうえ、直近4年間の増え方も全国を上回っています。
東京で会社をたたむ企業は全国と何が違うのか
休廃業・解散率が全国より高いことは分かりましたが、その数字だけでは「なぜ高いのか」までは断定できません。ここでは、同じ調査で確認できる企業の状態を比較します。

| 比較項目 | 東京都 | 全国 | 差 |
|---|---|---|---|
| 資産超過型の割合 | 71.8% | 63.4% | 東京が8.4ポイント高い |
| 直前期が黒字の割合 | 52.1% | 49.1% | 東京が3.0ポイント高い |
| 代表者の平均年齢 | 69.7歳 | 71.5歳 | 東京が1.8歳低い |
| 資本金1,000万~5,000万円未満 | 47.1% | 31.3% | 東京が15.8ポイント高い |
東京は資産超過のまま退出した企業が多い
東京都では、休廃業・解散した企業の71.8%が資産超過でした。全国の63.4%より8.4ポイント高い水準です。
資産超過とは、帳簿上の資産が負債を上回っている状態です。資産をすべて額面どおり換金できるとは限りませんが、少なくとも債務超過の会社だけが市場から退出しているわけではありません。
東京の高い休廃業・解散率には、経営が行き詰まった企業だけでなく、債務を返済できる余力があるうちに会社を終えた企業が相当数含まれています。
黒字で会社をたたんだ割合も東京の方が高い
直前期の当期純損益が黒字だった割合は、東京都52.1%、全国49.1%でした。東京都では半数を超えています。
黒字でも、後継者がいない、経営者が引退したい、人材を採用できない、設備更新に多額の資金が必要といった理由で、事業継続を断念することがあります。
この点はT01の「黒字なのに会社を閉じる企業はどれくらい?東京都の『黒字廃業』の実態」で詳しく扱っています。本記事で押さえたいのは、東京の退出率の高さを経営不振だけで説明できないという点です。
代表者は全国より若いが、2025年に急速に高齢化した
休廃業・解散時の代表者平均年齢は、東京都69.7歳、全国71.5歳でした。東京の方が1.8歳低いものの、東京都は前年の68.6歳から1年間で1.1歳上昇しています。全国の上昇幅は0.2歳だったため、東京の高齢化は2025年に大きく進みました。
東京の経営者が全国より若いから後継者問題の影響が小さいとは言えません。70代は28.8%、80代以上は26.2%を占め、合計すると55.0%です。高齢化と後継者不在は、東京でも会社をたたむ判断に関係する重要な背景です。
東京では資本金1,000万~5,000万円未満の企業が多い
資本金が判明した休廃業・解散企業のうち、資本金1,000万~5,000万円未満の割合は東京都47.1%、全国31.3%でした。東京は15.8ポイント高く、休廃業・解散した企業の規模構成にも差があります。
反対に、資本金100万~1,000万円未満は東京都35.6%、全国44.7%です。全国では小規模企業の割合が高い一方、東京では比較的資本金の大きい企業が休廃業・解散に含まれる割合が高くなっています。
資本金だけで企業価値や事業規模は判断できませんが、「東京では零細企業だけが会社をたたんでいる」という見方は統計と一致しません。
「会社をたたむ」と「倒産」は同じではない
この記事でいう「会社をたたむ」は、帝国データバンクの「休廃業・解散」に対応する表現です。倒産件数ではありません。
- 休廃業:倒産などの法的整理を行わず、企業活動が停止したことを確認できた状態
- 解散:商業登記などで会社の解散を確認した状態。ただし、みなし解散は除く
- 倒産:債務の支払いができないなど、事業継続が困難になった状態を一般に指す
休廃業・解散した企業の中には、借入金を返済し、従業員や取引先への対応を行ったうえで、自主的に会社を終えた企業も含まれます。したがって、休廃業・解散率が高いことを、そのまま倒産しやすさや景気の悪さへ置き換えることはできません。
一方で、事業が市場から退出したという点は共通します。企業が持っていた技術、従業員の経験、顧客との関係、仕入先との取引、許認可、ブランドなどが引き継がれなければ、会社とともに失われる可能性があります。
東京の経営者がこの比較から考えておきたいこと
今回の全国比較から分かるのは、東京都では休廃業・解散の絶対数が多いだけでなく、企業数に対する割合も高いことです。さらに、資産超過や黒字のまま退出する企業の割合が全国より高くなっています。
ただし、統計は東京都全体の傾向です。自社を続けるべきか、会社を売却できるか、清算した場合にいくら残るかは、個別に確認しなければ分かりません。
業績が悪化してから初めて考える問題ではない
会社をたたむ検討は、資金が尽きた後に始めるものではありません。従業員への退職金、取引先への支払い、借入金返済、賃貸物件の原状回復、設備や在庫の処分、税務・登記手続きなど、会社を終えるにも資金と時間が必要です。
黒字や資産超過であれば、継続、親族内承継、従業員承継、第三者への会社売却、事業譲渡、清算などを比較する余地があります。早く検討を始めるほど、選択肢を残しやすくなります。
会社を売れるかどうかと、東京の統計は別問題
東京の休廃業・解散率が高いからといって、すべての会社に買い手が見つかるわけではありません。買い手は、収益性、顧客基盤、従業員、技術、許認可、立地、契約、代表者への依存度などを見て判断します。
一方、赤字や債務があっても、特定の事業、顧客、従業員、設備などに引き継ぐ価値が残っている場合があります。売却可能性は決算書の黒字・赤字だけで決まりません。
会社売却と清算の判断基準や手続きの違いは、「会社売却と清算の違いとは?どちらを選ぶべきか判断基準を徹底解説」をご覧ください。本記事では判断方法を繰り返さず、東京と全国の退出動向の比較に限定しています。
一つの選択肢に決める前に数字を並べる
会社をたたむか迷っている段階では、少なくとも次の数字を並べる必要があります。
- このまま3年間続けた場合の資金繰り
- 事業改善や設備更新に必要な資金
- 会社を清算するために必要な費用
- 借入金や個人保証を解消できるか
- 会社または事業を譲渡した場合の想定条件
- 経営者の引退時期と必要な生活資金
「続けるか、閉じるか」の二択にすると、第三者承継や一部事業の譲渡を見落とします。比較できる数字をそろえたうえで、自社に合う出口を選ぶことが重要です。
東京の会社をたたむ企業に関するよくある質問
東京都は全国で最も会社をたたむ企業が多いですか?
件数では最も多いです。2025年の東京都は1万5,806件で、全国で唯一1万件を超えました。2位の大阪府4,411件の約3.6倍です。
企業数が多いから、東京の件数も多いだけではありませんか?
企業数の多さは件数が大きくなる理由の一つです。ただし、企業数を分母にした東京都の休廃業・解散率は約8.0%と推計され、全国4.58%の約1.7倍でした。企業の集積だけでは説明できない差があります。
東京都の件数が1万5,804件と1万5,806件の二つあるのはなぜですか?
2026年1月9日公表の全国調査では1万5,804件、1月28日公表の東京都詳細調査では1万5,806件です。公表時点の最新情報に基づくため、後の詳細調査で2件増えています。本記事では東京都単独の説明には最新の1万5,806件、全国総数に占める割合の計算には全国調査と同時点の1万5,804件を使用しました。
休廃業・解散率が高いと、東京は倒産しやすいということですか?
同じ意味ではありません。休廃業・解散は法的整理を除いた集計で、資産超過や黒字のまま自主的に事業を終えた企業も含みます。東京都では資産超過型が71.8%、直前期が黒字の企業が52.1%でした。
まとめ|東京は件数でも企業数に対する率でも全国を上回る
- 2025年の東京都の休廃業・解散は1万5,806件
- 全国6万7,949件のうち、東京都が約23.3%を占める
- 東京都は全国で唯一1万件を超え、2位の大阪府の約3.6倍
- 企業数を分母にした東京都の休廃業・解散率は約8.0%
- 全国の4.58%と比べ、東京都は約1.7倍
- 2025年は全国が1.6%減る一方、東京都は4.5%増えた
- 東京都は資産超過型と黒字企業の割合が全国より高い
東京で会社をたたむ企業が多いのは、単に企業が集中しているからだけではありません。同じ基準で企業数に対する割合を比べても、東京都の休廃業・解散率は全国を上回っています。
同時に、休廃業・解散した東京都企業の71.8%は資産超過、52.1%は直前期が黒字でした。東京の高い退出率は、経営破綻だけでなく、余力のある段階で会社を終える経営者が多いことも映しています。
会社をたたむことを考え始めたときは、清算だけに絞らず、会社や事業を第三者へ引き継げる可能性も確認する必要があります。KAKEHASHIでは売主側に立ち、事業の価値、想定される買い手、売却と清算の違いを整理します。会社を閉じる前に売却可能性を確認したい方は、早い段階でご相談ください。
主な出典
・帝国データバンク「東京都・『休廃業・解散』動向調査(2025年)」
・帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」