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黒字なのに会社を閉じる企業はどれくらい?東京都の「黒字廃業」をデータで読む

「会社をたたむのは、赤字になって経営が行き詰まってから」——そう考える方は少なくありません。

ところが、東京都の企業データを見ると、実態はもう少し複雑です。

帝国データバンクの「東京都・『休廃業・解散』動向調査(2025年)」によると、2025年に東京都で休業・廃業、解散を行った企業は15,806件。前年の15,126件から4.5%増え、現行基準で集計を開始した2016年以降で過去最多となりました。

さらに注目したいのが、休廃業する直前期の決算です。当期純損益が「黒字」だった企業の割合は52.1%でした。つまり、単純に考えれば、休廃業・解散した企業の半数以上は「直前期が赤字だったから事業をやめた」というわけではありません。

では、なぜ利益が出ている会社が事業を終えるのでしょうか。

この記事では、東京都の最新データをもとに、「黒字廃業」と呼ばれる現象をどう理解すればよいのかを整理します。廃業の手続きや税務・法務を解説する記事ではなく、経営者が自社の「出口」を考えるための判断材料として、東京の企業動向を読み解くことが目的です。

この記事のポイント
東京都では2025年の休廃業・解散が15,806件と過去最多。そのうち直前期が黒字だった割合は52.1%でした。黒字であっても、後継者問題、経営者の高齢化、人手不足、コスト上昇、将来の設備投資などを考え、「まだ余力があるうちに事業を終える」企業が存在すると考えられます。

黒字廃業とは何か

黒字廃業とは何かを整理する経営者

まず押さえておきたいのは、「黒字廃業」は法律上の正式な手続き名称ではないという点です。

一般には、利益が出ている状態で事業をやめることを「黒字廃業」と呼びますが、どの数字をもって「黒字」と判断するかは、調査や文脈によって異なります。

今回参照する帝国データバンクの東京都調査では、黒字・赤字の判定を休廃業・解散の直前期における当期純損益で行っています。したがって、本記事でいう「黒字企業」とは、直前の決算で当期純利益が出ていた企業を指します。

「黒字だった」ことと、「この先も問題なく経営を続けられる」ことは同じではありません。

たとえば、直前期には利益が出ていても、次のような状態はあり得ます。

  • 社長が高齢になり、数年後まで経営を続けることが難しい
  • 親族や社内に後継者がいない
  • 採用が難しくなり、現在の人数では事業を維持できない
  • 原材料費、人件費、賃料などの上昇で今後の利益率低下が見込まれる
  • 設備更新にまとまった資金が必要になる
  • 主要取引先への依存が高く、先行きに不安がある
  • 今は利益が出ていても、市場そのものの縮小が予想される

決算書の黒字は、あくまで過去1年間の経営成績を示す一つの数字です。一方、事業を続けるかどうかの判断は、これから先の数年、場合によっては10年先まで見て行われます。

そのため、黒字企業の廃業を「利益が出ているのになぜ?」と捉えるだけでは実態を見誤ります。むしろ、過去は黒字でも、将来の経営継続に課題がある会社がどのような出口を選んでいるのかを見る必要があります。

なお、「休廃業・解散」と「倒産」も同じではありません。帝国データバンクの調査では、法的整理による倒産を除き、企業活動の停止が確認された「休廃業」や、商業登記等で確認された「解散」を集計しています。黒字廃業を考えるときは、資金が尽きて経営継続ができなくなる「倒産」と区別して見ることが重要です。

東京都の黒字廃業データ|2025年は休廃業・解散15,806件、黒字割合52.1%

2025年東京都の休廃業・解散件数15806件と黒字企業52.1%

東京都で「黒字のまま事業を終える会社」がどの程度存在するのか。まずは2025年の数字を整理します。

項目 2025年の東京都 見方
休廃業・解散件数 15,806件 2016年以降で過去最多
前年件数 15,126件 前年比4.5%増
直前期が黒字の割合 52.1% 2年ぶりに前年を上回る
資産超過型の割合 71.8% 保有資産総額が債務を上回る状態
資本金1,000万~5,000万円未満 47.1% 資本金判明企業で最も多い
資本金100万~1,000万円未満 35.6% 前年から2.3ポイント低下

特に大きいのは、「黒字52.1%」と「資産超過71.8%」という二つの数字です。

52.1%という割合を15,806件に単純に掛け合わせると、約8,200件に相当します。ただし、これは本記事で割合から計算した概算であり、帝国データバンクが「黒字廃業8,200件」として公表した数字ではありません。

それでも、「東京都では休廃業・解散した企業の半分以上が直前期黒字だった」という事実は、会社を終える理由を考えるうえで重要です。

また、資産超過型が71.8%だったことも見逃せません。資産超過とは、簡単にいえば保有している資産の総額が債務を上回っている状態です。もちろん、資産超過だから簡単に廃業できる、あるいは売却できるという意味ではありません。しかし、少なくとも「すべてを失い、支払不能になったから市場から退出した会社だけではない」ことが分かります。

資本金規模を見ると、資本金1,000万~5,000万円未満が47.1%で最も多く、100万~1,000万円未満も35.6%を占めています。東京の休廃業・解散は、一部の極端に小さな事業者だけで起きている現象ではありません。

全国と比べると、東京の特徴がさらに見えます。

帝国データバンクの全国調査では、2025年に全国で休廃業・解散した企業は67,949件で、直前期が黒字だった割合は49.1%、資産超過型は63.4%でした。

2025年 東京都 全国 差・特徴
休廃業・解散の前年比 +4.5% -1.6% 全国が減少する一方、東京は増加
直前期が黒字 52.1% 49.1% 東京が3.0ポイント高い
資産超過型 71.8% 63.4% 東京が8.4ポイント高い

全国では2025年、黒字の休廃業割合が2016年以降で初めて50%を下回りました。それに対して東京都では52.1%と半数を上回っています。さらに、資産超過型の割合も東京の方が高い結果です。

この比較から直ちに「東京は余裕のある廃業が多い」と断定することはできません。企業構成や業種、資産内容などが異なるためです。ただ、少なくとも2025年の東京では、全国以上に「直前期黒字」「資産超過」という状態のまま市場から退出した企業の割合が高かったことは確認できます。

また、資本金規模で最も多い層にも違いがあります。全国では「資本金100万~1,000万円未満」が44.7%で最多でしたが、東京都では「資本金1,000万~5,000万円未満」が47.1%で最多でした。東京の休廃業・解散を考える際には、零細事業者だけの問題として見るのではなく、一定の規模を持つ中小企業の出口問題として捉える必要があります。

帝国データバンクは、こうした動きを中・小規模事業者の「静かな退場」と表現しています。業績が悪化し切るまで経営を続けるのではなく、手元資金や事業体力に余裕が残っている段階で事業を終える経営者がいるという見方です。

データを見るときの注意点
「直前期が黒字=経営状態が非常に良かった」とは限りません。一時的な利益、資産売却、投資の先送りなどが数字に影響する場合もあります。また、本調査は休廃業・解散の理由そのものを1社ずつ特定したものではありません。黒字割合と、後継者不足や高齢化などの背景は、分けて読む必要があります。

なぜ黒字なのに廃業するのか|「今の利益」と「将来の経営」は別の問題

黒字なのに廃業する背景を読み解く東京の経営者

黒字企業が廃業する理由を考えるとき、最も重要なのは、経営者が見ているのは「今年の利益」だけではないという点です。

今期が黒字でも、「5年後も同じ体制で続けられるか」と考えたときに答えが変わる会社は少なくありません。

1.後継者が見つからない

会社に利益が出ていても、社長自身が引退すれば経営を続けられない会社があります。特に中小企業では、営業、技術、取引先との関係、人材採用、資金繰りなどが経営者個人に集中していることがあります。

親族に継ぐ意思がない。社内にも経営を任せられる人がいない。外部から社長を採用するほどの組織ではない。こうした状況では、「会社は黒字だが、自分が辞めた後の経営者がいない」という問題が起こります。

2.経営者自身の年齢や体力の問題

2025年に東京都で休廃業・解散した企業の代表者平均年齢は69.7歳でした。これは、黒字企業だけの平均ではありませんが、企業の出口を考えるうえで経営者の年齢が無視できないことを示しています。

利益が出ていても、仕事量を減らしたい、健康上の負担を減らしたい、家族との時間を増やしたいと考えるのは自然です。経営者個人の人生と会社の寿命は、本来同じである必要はありません。

3.人手不足やコスト上昇で「これから」が厳しい

東京の企業にとって、人件費、採用費、賃料、原材料費、光熱費などの上昇は経営判断に直結します。現在は黒字でも、値上げが難しい業種では、数年後に利益が残らなくなる可能性があります。

帝国データバンクも、2023年以降の休廃業増加の背景として、物価高、代表者の高齢化、後継者問題、人手不足など複数の経営課題を挙げています。

重要なのは、これは「黒字だったのに突然会社をやめた」という話ではなく、将来の収益悪化を予想して、経営余力があるうちに判断した可能性があるということです。

4.大きな投資をする前に区切りをつける

設備の更新、店舗改装、システム刷新、採用強化など、事業を今後も続けるためには追加投資が必要になることがあります。

たとえば、「あと5年続けるなら数千万円の設備投資が必要」「採用しなければ社長が現場から抜けられない」という状況であれば、直近の利益だけを見て判断することはできません。

経営者が70歳前後であれば、追加投資をしてさらに長期間経営するよりも、今のうちに出口を選びたいと考えるケースがあっても不思議ではありません。

このように黒字廃業は、単純な「経営不振」の一言では説明できません。会社の過去の利益と、経営者が考える未来の選択は別の問題だからです。

黒字企業が考えたい「売却・承継・廃業」の3つの選択肢

会社売却・親族社内承継・廃業の3つの選択肢

経営者が「自分はそろそろ引退したい」と考えたとき、会社まで必ず終わらせなければならないわけではありません。

大きく分けると、会社の出口には「第三者への会社売却」「親族・社内への承継」「廃業」という選択肢があります。

選択肢 経営者 事業 向いている可能性がある状況
会社売却 オーナーが経営から離れることが可能 第三者のもとで継続を目指す 後継者不在だが、事業・顧客・人材などに引継ぎ価値がある
親族・社内承継 次の経営者へ交代 継続を目指す 親族や役員・従業員に後継者候補がいる
廃業 経営を終了 原則として終了 事業継続の必要性や引継ぎ価値が乏しい、または経営者が終了を望む

ここで大切なのは、「黒字なら売却」「赤字なら廃業」と機械的に分けられるわけではないことです。

買い手が評価するのは、当期純利益だけではありません。継続的な顧客、取引先、従業員、技術、ノウハウ、ブランド、許認可、立地、設備、Webサイト、契約、事業の仕組みなど、会社によって価値の源泉は異なります。

一方で、黒字会社であっても、社長本人に売上が依存し過ぎている場合や、特定取引先への依存度が極端に高い場合、将来の大きな投資負担が見込まれる場合などには、買い手探しが難しいこともあります。

だからこそ、廃業を決める前に必要なのは「売れる会社かどうかを自分で決めること」ではありません。第三者から見たときに、引き継ぐ価値がある事業なのかを一度確認することです。

会社売却と清算の具体的な違いについては、KAKEHASHIの「会社売却と清算の違いとは?どちらを選ぶべきか判断基準を徹底解説」で詳しく整理しています。本記事では、あくまで東京都の黒字廃業データから「廃業以外の出口も比較しておく必要がある」という点にとどめます。

黒字の会社ほど、廃業を決める前に会社売却を検討したいケース

黒字企業が会社売却を検討したいケース

黒字廃業そのものが間違った選択ということではありません。経営者が十分に比較したうえで「事業を終える」と決めるのであれば、それも合理的な出口です。

ただし、会社を解散し、事業を終了すれば、事業として積み上げてきた価値を第三者へ引き継ぐ選択肢は取りにくくなります。

そのため、次のような会社は、少なくとも廃業を決める前に第三者承継・会社売却の可能性を確認する意味があります。

  • 後継者はいないが、事業は利益を出している
  • 経営者は引退したいが、会社そのものは今後も続けられる
  • 長年取引している顧客や取引先がある
  • 従業員がおり、できれば雇用を残したい
  • 一定の技術、ノウハウ、ブランド、許認可、店舗、Web集客基盤などがある
  • 経営者自身が「自分が辞めるから会社も終わり」と考えている
  • 清算後に手元に残る資金と、売却した場合の対価を比較したことがない

特に黒字企業の場合、買い手から見れば「ゼロから事業を立ち上げるより、既存の顧客や人材、仕組みを引き継いだ方が早い」と判断される可能性があります。

もちろん、黒字だから必ず売れるわけではありません。希望価格、事業規模、オーナー依存度、財務内容、買い手候補の有無などによって結果は変わります。

それでも、廃業が不可逆的な選択になりやすいことを考えると、「売却する」と決める前ではなく、「廃業する」と決める前に会社の引継ぎ可能性を確認するという順番には意味があります。

売ると決めていなくても確認はできる
「会社売却を検討する」と聞くと、すぐに買い手探しを始めるイメージを持つかもしれません。しかし実際には、まず会社の状況を整理し、第三者承継の可能性や概算の評価を確認したうえで、売却・承継・廃業のどれを選ぶか考えることができます。相談したこと自体が、売却を決断したことにはなりません。

また、会社売却と事業承継の考え方の違いについては、「会社売却と事業承継の違いとは?メリット・デメリットと選択のポイントを徹底解説」で詳しく解説しています。自社にどの出口が合うのかを比較したい場合は、そちらも参考になります。

東京で「まだ売るか決めていない段階」から相談できる公的窓口

東京で事業承継や廃業について相談できる公的窓口

会社の出口について考え始めたものの、「いきなりM&A会社へ相談するのは抵抗がある」「まず第三者の意見を聞きたい」という経営者もいるでしょう。

東京都内には、事業承継や第三者承継、経営課題、廃業・再チャレンジについて相談できる公的な窓口があります。

窓口 主な相談内容 この記事との関係
東京都事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継、第三者への会社・事業の譲渡、M&Aなど 後継者不在で、第三者承継の可能性を知りたい場合
東京商工会議所 ビジネスサポートデスク 事業承継の準備、経営課題整理、後継者育成など まだ出口を決めておらず、経営全体から整理したい場合
中小企業活性化協議会 事業再生、廃業、再チャレンジ等の相談 事業継続と廃業の間で悩んでいる場合

東京都事業承継・引継ぎ支援センターは、東京商工会議所が国から委託を受けて運営している公的相談窓口で、第三者への事業承継やM&Aに関する相談にも対応しています。

また、東京商工会議所のビジネスサポートデスクでは、「将来的に事業をどう承継したらよいか」「そろそろ引退したいが社内に後継者がいない」といった、まだ方針が固まっていない段階の相談も案内されています。

廃業を含めて事業継続に悩んでいる場合には、中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援などもあります。

ここで重要なのは、「売却」「親族承継」「廃業」のどれかを決めてから相談する必要はないということです。むしろ、選択肢が残っている段階で相談した方が比較できる幅は広くなります。

東京都では2025年、15,806件の企業が休廃業・解散し、その52.1%は直前期が黒字でした。この数字が示すのは、「黒字なら会社を続ける」「赤字なら会社を閉じる」という単純な二択では、現代の中小企業の出口を説明できないということです。

経営者自身が引退したくても、会社には顧客、従業員、取引関係、技術、ノウハウなどの価値が残っている場合があります。廃業が最も良い選択である会社もあれば、親族・社内承継が適している会社、第三者への会社売却によって事業を残せる会社もあります。

「会社を続けるかどうか」と「自分が経営を続けるかどうか」は、分けて考えることができます。

黒字のうちに会社の出口を考えることは、決して後ろ向きな判断ではありません。むしろ、選択肢が残っている段階だからこそ、売却・承継・廃業を比較し、自分、家族、従業員、取引先にとって納得できる形を探しやすくなります。

本記事の主な出典
・帝国データバンク「東京都・『休廃業・解散』動向調査(2025年)」(2026年1月28日公表)
・東京商工会議所「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」
・東京商工会議所「ビジネスサポートデスク」
・東京商工会議所「中小企業活性化協議会 再チャレンジ支援」

※本記事は公表資料をもとに経営上の一般的な考え方を整理したもので、個別案件に関する法務・税務・労務その他の専門的判断を行うものではありません。実際の手続きや適用関係については、必要に応じて弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士等の専門家や各公的窓口へご確認ください。

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