事業承継で日本の未来へカケハシを

会社売却

東京の医療・福祉事業所はどこに多い?23区の規模分布を比較

東京の医療・福祉|23区の事業所分布

東京23区の医療・福祉の事業所は、世田谷区、練馬区、大田区の順に多くなっています。ただ、働く人の数まで見ると区の並び方は変わります。事業所数が多い地域と、大きな組織が集まる地域は、必ずしも同じではありません。

総務省「令和6年経済センサス‐基礎調査」の確報から23区を合計すると、医療・福祉は35,829事業所、従業者677,601人です。調査日は2024年6月1日、公表日は2025年12月24日。2026年10月29日に公表状況を確認した民営事業所の統計を使っています。

この数字には、国や地方公共団体の事業所と、雇用者のいない個人経営の事業所は含まれません。「東京にあるすべての医療機関・介護施設の数」ではない点を押さえておくと、地域の事業基盤として落ち着いて読めます。

事業所数が多いのは世田谷区、練馬区、大田区

医療・福祉の事業所数が最も多いのは世田谷区の3,149事業所です。次いで練馬区2,378、大田区2,340、足立区2,009、港区1,950となっています。この5区で11,826事業所、23区合計の33.0%を占めます。

世田谷区は23区合計の8.8%です。最も少ない荒川区は690事業所ですが、この件数の差だけで「世田谷区には医療が足りている」「荒川区は事業を引き継ぎにくい」と判断することはできません。人口、面積、事業の種類、隣接区との行き来を含まない比較だからです。

東京23区の医療・福祉の事業所数上位10区。世田谷区3,149、練馬区2,378、大田区2,340。2024年甲調査確報。

次の表は、事業所数の多い順に23区を並べたものです。従業者数と、従業者数を事業所数で割った平均も併記しました。平均は規模の目安であり、その区で最も多い事業所の人数を表すものではありません。

区事業所数従業者数1事業所あたり従業者
世田谷区3,14947,79715.2人
練馬区2,37841,33217.4人
大田区2,34041,08517.6人
足立区2,00942,28421.0人
港区1,95040,64120.8人
杉並区1,93332,78217.0人
新宿区1,83143,88024.0人
板橋区1,72341,68024.2人
江戸川区1,72130,22217.6人
江東区1,55230,29419.5人
渋谷区1,55027,94818.0人
中央区1,52826,85917.6人
葛飾区1,49327,04118.1人
品川区1,48229,62620.0人
豊島区1,28719,43015.1人
千代田区1,18428,27423.9人
中野区1,07318,00916.8人
目黒区1,05818,72017.7人
北区1,04519,57618.7人
墨田区95617,27918.1人
台東区94913,25014.0人
文京区94829,37531.0人
荒川区69010,21714.8人
23区合計35,829677,60118.9人

出典:総務省「令和6年経済センサス‐基礎調査」甲調査確報、第4-1A表・第4-1B表。23区合計と平均は原表から計算。平均=各区の医療・福祉の従業者数÷同事業所数、小数第2位を四捨五入。構成比=該当区または区群の事業所数÷35,829×100、小数第2位を四捨五入。

「特別区部」の公表値と23区の合計が違う理由

原表には「特別区部」という集計行があり、医療・福祉は35,847事業所、678,159人と記載されています。先ほどの23区合計より18事業所、558人多い数字です。

この差は、原表に「境界未定地域」が別の地域として掲載されているためです。各区を比較する表では、千代田区から江戸川区までの23区だけを足しています。特別区部の公表値を誤りとして修正したわけではありません。

東京都全体の公表値は49,497事業所、958,475人です。東京都、特別区部、23行政区の単純合計は、似た名前でも範囲が異なります。別の資料と数字を照合するときは、調査年に加えて、地域の範囲もそろえてください。

従業者の規模を見ると、事業所数の順位とは違う姿になる

従業者数が最も多いのも世田谷区で47,797人ですが、2位は43,880人の新宿区、3位は42,284人の足立区です。事業所数では7位の新宿区が、働く人の数では2位に上がります。板橋区も、事業所数8位に対して従業者数は4位です。

地域の医療・福祉を考える際、事業所の「拠点数」と「そこで働く人の規模」を分ける意味がここにあります。同じ100事業所でも、小規模な診療所を中心とする場合と、多くの人が勤務する病院や福祉施設を含む場合では、地域で働く人の厚みが変わります。

文京区の平均は31.0人、世田谷区は15.2人

1事業所あたり従業者数が最も多いのは文京区の31.0人です。次いで板橋区24.2人、新宿区24.0人、千代田区23.9人。事業所数が最多の世田谷区は15.2人です。23区全体では677,601人÷35,829事業所で18.9人となります。

文京区の事業所数は948で、23区では22番目です。件数の順位だけなら集積が小さく見えても、従業者数は29,375人です。平均に差があることは確認できますが、これだけで特定の大学病院や施設を原因に挙げることはできません。どの事業が何人を占めているかは、産業の内訳や個々の施設の資料で確かめる話になります。

また、平均が高い地域にあるからといって、自社にも大きな人数が必要なわけではありません。少人数の事業所と大規模事業所が同じ地域に共存すると、平均はどちらの実態とも離れることがあります。自社と比較するなら、事業の種類と人数帯をそろえた方が、経営の検討に使いやすくなります。

従業者数は、正社員数や医療従事者数と同じではない

経済センサスの「従業者」は、調査日にその事業所に所属して働いている人を指します。医師、看護師、介護職など特定の職種だけを数えたものではありません。事務や管理の仕事を担う人も含まれます。

同じ一人でも週の勤務時間は異なり、この表は人数をフルタイム勤務に換算した統計ではありません。677,601人という合計を、そのまま常勤の医療・介護職の供給量に読み替えることはできません。

所属と実際の勤務先が異なる出向・派遣の扱いにも注意があります。統計の定義上、別経営の事業所へ送り出している人は所属元に含まれ、別経営の事業所から受け入れている人でも、受入先から賃金・給与を支給されていない場合は受入先の従業者に含めません。現場に同時にいる人数とは差が出ることがあります。

人数帯で見ると、小規模な事業所も地域を支えている

平均だけでは分布が見えないため、同じ2024年調査の第7表から、常用雇用者の人数帯も確認します。ここでいう常用雇用者は、期間を定めずに雇われている人、または1か月以上の期間を定めて雇われている人です。「常用」という名称でも、正社員だけの区分ではありません。

前の表の従業者には個人事業主や有給役員などが含まれるため、常用雇用者数と一致するとは限りません。以下の人数帯は「従業者全員の規模」ではなく、雇用の規模をそろえて比べるための補足です。

23区で常用雇用者が10人未満の事業所は、0人・1~4人・5~9人を合計して22,965事業所、全体の64.1%です。100人以上は590事業所、1.6%でした。このように、数の上では比較的小さな雇用規模の拠点が広く存在します。

区別に10人未満の割合を見ると、文京区は70.1%、世田谷区は65.3%、練馬区は59.0%です。文京区は1事業所あたりの平均従業者数が最大でも、常用雇用者が少ない事業所の割合は低くありません。大きな事業所と小さな事業所の両方があるため、平均一つでは分からない部分が残ります。

東京23区の医療・福祉の常用雇用者規模別事業所構成。0〜4人39.1%、5〜9人25.0%、10〜19人19.0%、20〜49人12.7%、50〜99人2.6%、100人以上1.6%。
常用雇用者の人数帯事業所数23区合計に占める割合
0人9222.6%
1~4人13,08436.5%
5~9人8,95925.0%
10~19人6,79019.0%
20~29人2,6617.4%
30~49人1,8825.3%
50~99人9412.6%
100~199人3611.0%
200~299人800.2%
300人以上1490.4%

出典:同調査・第7表。経営組織は総数、産業は医療・福祉、地域は23行政区を選択して合算。割合=各人数帯の事業所数÷35,829×100、小数第2位を四捨五入。丸めにより表示割合の合計が100%にならない場合があります。

常用雇用者が0人の区分があることも、雇用者のいない個人経営を除くという対象範囲と矛盾しません。法人の事業所や、常用雇用者に該当しない働き方を含む事業所があるからです。「0人」という表示から、誰も働いていない事業所と受け取らないようにしてください。

人数帯の構成は、後継者の有無や事業継続の難しさを示すものでもありません。少人数で安定している事業所も、多数の人が働きながら引継ぎの準備を進めている事業所もあり得ます。規模は事業を知る一つの入り口として使うのが適切です。

病院・診療所と、社会福祉・介護を分けて読む

「医療・福祉」は広い産業区分です。医療業だけでなく、保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業を含みます。診療所を営む方が地域を見たい場合と、介護事業所や保育施設を営む方が地域を見たい場合では、比較する相手を絞る必要があります。

23区合計を中分類で見ると、医療業は20,653事業所・370,285人、保健衛生は539事業所・15,087人、社会保険・社会福祉・介護事業は14,635事業所・292,227人です。三つの事業所数を足すと35,827となり、大分類の35,829より2少なくなります。公式の利用上の注意では、産業分類の格付けが十分にできなかった事業所は上位分類に含まれることがあるとされています。差をどこかの業種へ割り振らず、そのまま扱っています。

事業の種類(抜粋)事業所数従業者数
病院442172,936
一般診療所8,446109,758
歯科診療所6,32643,783
児童福祉事業5,214100,961
老人福祉・介護事業6,437134,862
障害者福祉事業1,75726,550

上表の小分類は代表例の抜粋で、医療・福祉全体をすべて列挙したものではありません。病院や一般診療所などを、別表の医療業全体と重ねて足すと二重計上になります。

事業所数の比率と従業者数の比率は大きく違う

病院は442事業所で、23区の医療・福祉全体の1.2%です。従業者は172,936人で、全体の25.5%に当たります。少ない拠点数で多くの人が働く業種を含むため、医療・福祉全体の平均規模は、事業所数だけを見た印象と変わります。

一般診療所は8,446事業所・109,758人、歯科診療所は6,326事業所・43,783人です。両者とも病院より事業所数は多いものの、従業者数は別の規模になります。診療所の経営を考える際に、病院を含めた平均人数だけを基準にすると、自院と比較対象の違いが大きくなります。

社会保険・社会福祉・介護事業の内側にも違いがあります。老人福祉・介護事業は6,437事業所、児童福祉事業は5,214事業所、障害者福祉事業は1,757事業所です。「福祉施設が多い区」という表現を見たら、どの事業の合計なのかを確かめると、数字の意味をつかみやすくなります。

薬局や公立施設の数を、この表だけで判断しない

街で医療に関わる仕事をしていても、統計上は医療・福祉に入らない場合があります。調剤を行い、医薬品の販売を併せて行う独立した薬局は、産業分類では原則として小売業に分類されます。医療・福祉の事業所数を、薬局を含めた医療関連拠点の総数と考えないようにしましょう。

また、民営という区分は「株式会社だけ」を意味しません。会社以外の法人や、対象に入る個人経営も含まれます。逆に、国や地方公共団体の事業所は甲調査に含まれません。地域全体の医療・福祉の体制を把握する目的なら、公的施設を扱う資料を別に確認し、対象の違いを説明して読むことになります。

この分布から、事業承継についてどこまで分かるのか

地域別の分布から分かるのは、調査時点で、どの区にどれほどの事業所と従業者があったかという産業の構造です。経営者の年齢、後継者の有無、売却意向、収益性、利用者の継続状況は、この表では調べていません。

たとえば「世田谷区は事業所が多いから、引き継ぎたい人も必ず見つかる」とは言えません。引継ぎの可能性を考えるときには、個々の事業内容、立地、働く人の希望、事業の収支などを別に確認することになります。区全体の数は、その個別確認の代わりにはなりません。

近くに同業者が多いことも、一つの意味に決められません。利用者が選べる拠点が多い可能性もあれば、採用で競合する可能性もあります。連携先を探す際の選択肢があるかもしれませんが、具体的な連携が成立するかは各事業者の体制次第です。統計からいずれかの効果を断定することは避けられます。

区の境界と、実際に事業が届く範囲は違う

事業所は住所で区分されますが、利用者や職員が区の中だけで移動しているとは限りません。隣の区から通う人、複数の区を訪問する事業、駅を中心に利用される事業もあります。区別の表は全体を整理するための区切りであり、そのまま商圏の境界ではありません。

たとえば、区境にある事業所について事業継続を相談するなら、所在地の区の数字に加えて、利用者が来る地域や職員が通う範囲を整理する方が話を進めやすくなります。区内の総数を眺めるだけでは、事業所の周囲の事情を見落とす場合があります。

この段階で個人別の情報を外部へ渡す必要はありません。社内で把握できる範囲から、利用者・顧客の地域や事業別の構成を集計し、外部へ説明する際の範囲は専門家と相談できます。公開統計と個別情報を区別しておくと、初回の相談でも必要以上の情報を出さずに、確認したいことを伝えられます。

地域の数字を、自社の検討に使うための整理

統計を使う場面は、事業を売ると決めた後に限りません。現在の形で続ける、後継者へ引き継ぐ、他の事業者との関係を考えるなど、選択肢を検討する前に、地域の中で自社がどのような事業を営んでいるかを整理できます。

資料をすべてそろえてからでないと相談できないわけではありません。気になる数字と自社との違いを一つ書き留めるだけでも、何を追加で調べればよいかが見えてきます。次の表は、その整理に使うための例です。

整理する項目手元で確認すること統計と比べるときの注意
事業の種類拠点ごとに主なサービスを記載医療・福祉の総数だけでなく、同じ分類を選ぶ
数える単位法人全体か、一つの事業所か複数拠点を一社として数えた資料と混ぜない
働く人の数所属人数と常用雇用者数を分ける正社員数や同時勤務人数に読み替えない
事業が届く地域区外からの利用、訪問・通勤の範囲区の境界だけで実際の範囲を決めない
比較する時点現在の状況と2024年時点を区別統計と今の実態の間の変化を確認する
今後の希望続けたい事業、引き継ぎたい役割規模や順位から承継方法を決めない

小規模な事業所が、平均と自社を比べる場合

仮に、10人が所属する事業所の経営者が、文京区の平均31.0人を見たとします。その数字との差を、そのまま「自社は規模が小さすぎる」と受け止める必要はありません。まず同じ医療・福祉でも、病院と診療所、通所と入所など、事業内容が違えば比較する前提が変わります。

自社の10人に有給役員や個人事業主を含むか、短時間勤務の人をどう数えているかも確認点です。統計と同じ数え方に近づけたうえで、同じ事業の人数帯や仕事内容を比べれば、数字の差を具体的な話に変えられます。平均に合わせること自体を目標にする使い方ではありません。

複数拠点を運営している場合

一つの法人が複数の事業所を運営している場合、地域別の表には所在地ごとに拠点が計上されます。3拠点が別々の区にあれば、同じ法人でもそれぞれの区の事業所数に現れます。事業所数を法人数やオーナー数として読むと、実態より多くの主体があるように見えてしまいます。

事業の全体像を説明するときは、法人全体と拠点別の二つを分けておくと便利です。拠点ごとに所在地、事業内容、所属する人の数を並べ、法人全体の合計を別に記載します。この整理は、公的統計との比較だけでなく、今後どの拠点をどの体制で続けるかを話し合う材料にもなります。

数字を比べるときによくある疑問

2021年の活動調査と比べれば、増減は分かりますか

総数をそのまま引き算するだけでは、同じ範囲の増減になりません。2024年の基礎調査は、雇用者のいない個人経営の事業所を対象から除いており、2021年の活動調査とは範囲が異なります。調査対象の変更による差と、開業・廃業などによる変化が混ざるためです。

過去と比べたい場合は、両年の対象範囲、産業分類、地域区分が一致するかを確認し、一致しない点を説明して比較します。今回の表は2024年の同じ時点・同じ条件で地域差を読むためのものとし、増加率や減少率は計算していません。

事業所が多い区ほど、人口あたりのサービスも多いですか

件数だけでは分かりません。人口が多い区や面積が広い区では、事業所数も多くなりやすい面がありますが、今回の表は人口や面積で割っていません。人口あたりの値を求めるなら、対応する時点の人口を分母に使う必要があります。

その場合も、区外からの通院・通所、訪問型サービス、事業ごとの対象者の違いは残ります。人口比を出すだけで、医療や福祉の充足度を判定できるわけではありません。調べたい疑問に合わせて、分母と追加資料を選ぶことになります。

人数帯が小さい事業所は、後継者不足が多いのでしょうか

この統計では後継者を尋ねていないため、判断できません。小規模事業所の数を、そのまま後継者不在の事業所数や売却候補数に置き換えることはできません。事業所の規模と後継者の状態は、それぞれ別に確認する項目です。

従業者が多い地域なら、採用しやすいと考えてよいですか

働いている人が多いことは確認できますが、求職している人の数、必要な資格、勤務条件の希望、求人の充足状況は分かりません。採用の見通しには求人・求職の情報や自社の募集条件なども関わります。地域の雇用規模と、自社が採用できる可能性を分けて考える方が、無理のない計画になります。

自社と似た事業を選んで比較する

23区の医療・福祉は、拠点数と働く人の数で見え方が変わります。所在地の区の順位だけを見るより、事業の種類、雇用の規模、実際に事業が届く地域をそろえると、自社に関係する数字を選びやすくなります。

東京全体の事業所の集まり方は、東京23区の事業所数と地域差で確認できます。事業をどの形で続けるかを考え始めた方は、会社売却と事業承継の違いも比較材料になります。具体的な引継ぎを検討する場合は、地域統計から個別事業の可否を判断せず、その事業に対応する相談先で確認してください。

主な出典

※本記事は公表統計に基づく一般的な情報提供を目的とし、特定の地域・事業の経営状態、サービスの充足度、承継や売却の可能性を判断・保証するものではありません。統計は調査時点の状況を示し、現在の実態とは異なる場合があります。法令・制度等も変更されるため、個別の判断は当該事業に詳しい専門家や公的窓口へご確認ください。

RELATED

PAGE TOP