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会社売却

東京の不動産・物品賃貸業はどこに多い?23区の分布と事業承継

東京の住宅街と高層ビルを背景に、不動産・賃貸業の23区の分布と承継を示す画像

東京で不動産業を営む会社には、売買や賃貸の仲介、物件の保有・賃貸、管理など、さまざまな事業があります。会社売却や事業承継を考えるときも、何を収益の基盤としているかによって、引き継ぐ資産、契約、人、仕事は異なります。地域に事業所が多いことと、自社が引き継ぎやすいことは、分けて考える必要があります。

この記事では、東京都統計年鑑の「不動産業、物品賃貸業」を使い、23区の事業所数、従業者数、区内割合を比較します。統計には物品のリース・レンタル業も含まれるため、不動産会社だけの数としては扱いません。そのうえで、不動産業を中心に、承継前に整理したい所有関係、顧客との契約、預り金、修繕、経営者の仕事を確認します。

不動産業の分布を読む前に、集計の範囲を確認する

「不動産業、物品賃貸業」は広い産業区分

本記事の地域別データは、東京都統計年鑑令和6年の第8-1表に掲載された、産業大分類の「不動産業、物品賃貸業」です。不動産の売買、仲介、賃貸、管理のほか、駐車場業、機械器具や自動車などの物品賃貸業も含まれます。特定の不動産業務だけを数えた資料ではありません。

たとえば、住宅仲介会社の数を知りたい場合や、賃貸住宅の管理会社だけを比較したい場合は、さらに細かい業種区分を確認する必要があります。また、不動産と関係の深い仕事でも、主な事業の内容によって別の産業に分類される場合があります。名称の印象だけで集計対象を判断しないことが大切です。

事業所の数は、物件数や会社数ではない

事業所数は、事業活動を行う場所を単位として数えています。一社が複数の営業所を持つ場合があるほか、個人で運営する事業所も含まれます。賃貸物件の棟数や戸数、不動産を保有する人の数、法人の数を表すものではありません。

従業者数も、その地域の事業所で働く人の数であり、物件の入居者数ではありません。従業者数を事業所数で割った平均を計算しても、そのまま会社全体の規模や管理戸数を判断することはできません。事業の形態によって、人数と資産、収益の関係は変わります。

2021年の分布として読む

資料名は令和6年の統計年鑑ですが、使われている数値は2021年6月1日現在の経済センサスに基づきます。2024年に調査した数や、2026年現在の状況を示すものではありません。その後の開業、廃業、移転、組織再編などを、この表だけで把握することはできません。

対象・指標 読み取れること 読み替えないこと
不動産業、物品賃貸業 売買・賃貸・管理や物品賃貸等の分布 不動産仲介会社だけの数
事業所数 事業活動を行う拠点の数 会社数、賃貸物件数、管理戸数
従業者数 事業所で働く人の集積 入居者数、資産規模、企業価値
区内割合 全産業に占める事業所の比重 土地利用や後継者不在の割合
調査時点 2021年6月1日現在 年鑑の2024年や2026年現在

事業所数は港区、新宿区、千代田区が上位

2021年の不動産業、物品賃貸業は、東京都全体で64,271事業所、従業者404,078人です。区部では52,510事業所、従業者353,726人となっています。東京都全体には多摩地域や島しょ地域も含まれるため、23区の分布と比較する際は範囲をそろえます。

23区の事業所数は、港区4,052所、新宿区3,762所、千代田区3,441所、渋谷区3,416所、大田区3,100所の順です。上位五区の合計は17,771所で、区部52,510所の33.84%を占めます。この産業区分では、都心の区に加えて大田区も上位に入っています。

事業所が多い区でも、内訳が同じとは限りません。売買・仲介、賃貸・管理、物品賃貸といった事業の構成が分からないまま、地域の不動産市場や顧客層を決めつけることは避けます。取引先や買い手を探すときには、自社と相手の具体的な事業内容を確認する必要があります。

不動産業、物品賃貸業の事業所数は港区4052、新宿区3762、千代田区3441、渋谷区3416、大田区3100
東京都統計年鑑令和6年・第8-1表より作成。2021年6月1日現在の民営事業所。物品賃貸業も含み、賃貸物件数ではありません。

事業所の所在地と、扱っている物件の所在地は別

会社の事務所が港区にあっても、保有・管理している物件が都内全域や他県に分布している場合があります。反対に、地域に密着した少人数の事業所が、近隣の物件や所有者との関係を長く支えていることもあります。事業所の分布だけで、物件の分布や営業範囲を説明することはできません。

自社の状況を整理する際には、事務所の場所、顧客や物件の場所、日常の対応が必要な地域を分けます。現地確認や緊急対応が多い仕事と、遠隔でも進められる事務を区別すると、承継後に必要な拠点や人員を考えやすくなります。

従業者数を見ると、拠点の数とは異なる姿がある

不動産業、物品賃貸業の従業者数は、港区47,095人、千代田区46,009人、新宿区41,815人、渋谷区39,145人です。事業所数では新宿区が千代田区より多い一方、従業者数では千代田区が上回っています。拠点の数と、そこで働く人の集まり方は同じ順位になるとは限りません。

一事業所当たりの従業者数を計算すると、港区は約11.6人、千代田区は約13.4人、新宿区は約11.1人です。大田区は約3.6人となっています。ただし、これは集計上の平均で、各区の典型的な会社の人数や中央値ではありません。少人数の会社と大きな拠点が混在する可能性があります。

また、人数の少なさが事業の小ささを示すとも限りません。保有する不動産の賃貸を中心とする事業と、多くの顧客へ管理サービスを提供する事業では、必要な人員の考え方が異なります。会社の価値や承継の難しさは、収益、資産、契約、業務の内容も合わせて検討します。

23区の事業所数・従業者数を一覧で比較する

以下は、事業所数が多い順に並べた一覧です。区内割合は、不動産業、物品賃貸業の事業所数を、その区の全産業の民営事業所数で割って計算しています。地域の事業所構成を見るための指標で、地域内の土地利用の割合や賃貸住宅の割合ではありません。

区 事業所数 従業者数 区内割合
港区 4,052所 47,095人 9.87%
新宿区 3,762所 41,815人 11.37%
千代田区 3,441所 46,009人 9.56%
渋谷区 3,416所 39,145人 10.26%
大田区 3,100所 11,180人 10.86%
世田谷区 3,094所 13,982人 11.25%
杉並区 2,860所 8,764人 14.84%
中央区 2,784所 34,147人 8.16%
品川区 2,422所 13,663人 12.17%
練馬区 2,331所 7,508人 11.46%
豊島区 2,124所 11,909人 11.10%
台東区 2,051所 8,521人 8.96%
足立区 1,991所 8,013人 8.61%
江戸川区 1,968所 8,643人 9.95%
中野区 1,888所 7,850人 15.78%
文京区 1,663所 5,948人 12.08%
目黒区 1,638所 6,418人 13.34%
板橋区 1,625所 5,441人 9.43%
葛飾区 1,531所 4,410人 9.81%
北区 1,389所 5,123人 11.86%
江東区 1,379所 9,144人 7.09%
墨田区 1,250所 5,142人 8.39%
荒川区 727所 2,810人 8.71%

23区の事業所数を合計すると52,486所で、区部52,510所とは24所の差があります。区部の集計には境界未定地域が含まれるためです。本記事の上位五区の構成比には区部合計を使い、区内割合には各区の全産業の事業所数を使っています。

割合は元の数値から計算し、表示時に丸めています。東京都全体、区部、23区の合計では対象範囲が異なります。数字を他の資料と比較するときは、業種区分だけでなく、民営かどうか、調査時点、集計単位も確認してください。

区内割合では中野区、杉並区、目黒区が上位

各区の全産業に占める不動産業、物品賃貸業の割合は、中野区15.78%、杉並区14.84%、目黒区13.34%、品川区12.17%、文京区12.08%の順です。事業所数の上位五区とは異なる顔ぶれになります。

数が多いことは事業所の集積量を、割合が高いことはその区の産業構成における比重を表します。他の産業の事業所数も分母に影響するため、同じ事業所数でも割合は変わります。両方の指標を確認すると、単純な件数の順位だけでは見えない地域の特徴を把握できます。

不動産業、物品賃貸業の区内割合は中野区15.78%、杉並区14.84%、目黒区13.34%、品川区12.17%、文京区12.08%
同表の各区の全産業事業所数を分母に編集部計算。土地利用や後継者不在の割合ではありません。

ただし、区内割合が高いことから、売却しやすい、物件価格が高い、後継者が不足していると結論づけることはできません。地域の統計は、自社の契約や利益、買い手の取得目的を評価する資料とは役割が異なります。

不動産業の後継者不在率53.1%は、別の企業調査

帝国データバンクの東京都・後継者不在率動向調査では、2025年の不動産業の後継者不在率は53.1%です。2024年の54.2%から1.1ポイント低下しています。東京都全業種の2025年の率は47.9%で、不動産業はこれを上回っています。

同調査は、2023年10月から2025年10月の期間について、事業承継の実態を分析できる都内企業54,135社を対象としています。経済センサスの事業所の数とは、数える単位、調査方法、対象が異なります。また、TDBの「不動産業」と、物品賃貸業も含む本記事の地域別統計の区分は同じではありません。

東京都の調査区分 2024年 2025年 変化
不動産業 54.2% 53.1% 1.1ポイント低下
全業種 51.1% 47.9% 3.2ポイント低下

出典:帝国データバンク「東京都・後継者不在率動向調査(2025年)」。経済センサスの不動産業、物品賃貸業とは分類・母集団が異なります。

事業所数に率を掛けて、売却候補数を出さない

本記事では、各区の事業所数に53.1%を掛けて、後継者不在の会社数や会社売却の候補数を推計していません。母集団と業種区分が異なる数字を組み合わせると、実際には調べていない結果を示すことになるためです。

後継者が決まっていない会社でも、親族や従業員への承継を検討している場合があります。第三者への売却をすぐに望んでいるとは限りません。調査結果は準備を考える材料とし、自社については、誰に何を任せたいか、どの時期までに移したいかを具体的に整理します。

承継の準備は、事業と所有しているものを分けるところから

会社の資産、経営者個人の資産、預かっているものを区別する

会社が保有する不動産、経営者や親族が保有する不動産、顧客から管理を任されている不動産は、それぞれ立場が違います。日常的に自社が扱っているからといって、すべてが会社の資産になるわけではありません。名義、契約、実際の利用や管理をそろえて確認します。

会社売却の対象に何を含めるかは、取引の方法と契約条件に関わります。株式を譲る場合と、特定の事業や資産を譲る場合では、確認する範囲が異なります。物件を個人で持ち続けたい、会社の事務所として引き続き貸したいなどの希望があれば、早い段階で支援者へ伝えます。

売上の種類ごとに、継続する条件を確認する

仲介の報酬、管理の報酬、賃料、物品のリース・レンタル収入などを分け、どの契約から売上が生まれるかを整理します。継続して入金がある事業でも、契約の更新、解約、価格の変更、修繕や保守など、収益を維持するための条件があります。

会社の利益を見るときは、入金額だけでなく、誰に送金するお金か、管理や維持にどの費用が必要かも確認します。顧客から預かるお金と自社の売上を混ぜないことが重要です。数字の定義と対象期間をそろえると、買い手へ事業の仕組みを説明しやすくなります。

対象 集める情報 承継で確認すること
資産・物件 所有者、利用、管理、関連契約 売却の対象と残すもの
顧客との契約 期間、更新、報酬、業務範囲 継続条件と必要な説明・手続き
預り金等 契約別明細、帳簿、残高、送金予定 精算と返還・送金を行う主体
途中の仕事 修繕、問い合わせ、請求等の進捗 次の対応、期限、責任者
免許・登録等 現在の登録、体制、変更予定 所管窓口への確認と準備
借入・保証 債務者、返済、担保、個人保証 金融機関との調整と完了確認
経営者の仕事 顧客、判断、緊急対応、採用等 後任、支援期間、完了条件

管理契約と、未完了の仕事を一覧にする

契約書と、現場の運用を照合する

顧客ごとの契約期間、更新、報酬、業務範囲、解約、説明や承諾に関わる条項を確認します。契約書が複数の場所に保管されている場合は、原本と最新の変更書類の所在を整理します。実際に行っている業務が契約の記載と違う場合は、その経緯も確認が必要です。

長年の関係では、口頭で追加対応を引き受けていることも考えられます。どこまで対応し、費用を誰が負担するかが曖昧なまま後任に渡ると、顧客との認識がずれる可能性があります。記録を確認し、必要な事項を支援者や専門家と整理してください。

修繕、問い合わせ、退去対応などの途中経過を残す

承継時点で進行している仕事は、完了したものと分けます。修繕の見積り、発注、工事の進捗、支払い、顧客への報告、未解決の問い合わせなどについて、担当者と次の対応を一覧にします。過去に何を説明したかが分かる記録も必要です。

物品賃貸業の場合は、貸出中の物品、返却予定、保守、点検、破損への対応などを整理します。同じ賃貸という言葉でも、不動産と物品では現場の業務が異なります。統計上は一つの大分類でも、引継ぎ計画は自社の実務に合わせて作成します。

敷金などの預り金は、残高と責任を確認する

敷金、保証金、家賃の収納金などを扱う場合は、何のために、誰から、いくら預かり、誰へ支払う予定かを整理します。帳簿の残高、契約の内容、顧客別の明細、保管や送金の状況を照合します。口座残高があることだけで、精算に必要な情報がそろっているとは限りません。

会社売却の際には、預り金の取扱い、実行時点の精算、成立後に返還や送金を行う主体を確認します。取引の方法によって確認事項が変わるため、個別の契約を見ずに自動的に移ると判断しないことが大切です。弁護士や税理士などと、明細と契約をそろえて確認してください。

売買代金や会社の運転資金と、顧客等への返還・送金に対応するお金を区別すると、引継ぎ後の資金管理を考えやすくなります。未収や未払がある場合も、請求や回収の担当、基準日、記録を整理し、双方が同じ残高を確認できる状態にします。

免許・登録、借入、保証は別々に確認する

業務に必要な免許や登録、資格者の配置などは、事業内容と承継後の体制に合わせて確認します。株主の変更、役員の変更、商号や営業所の変更、事業を譲ることは、それぞれ確認する論点が異なります。会社売却だから一つの手続きで終わると考えないようにします。

国土交通省は、賃貸住宅管理業について登録内容の変更等に関する届出を案内しています。必要な手続きと期限は、実際に行う事業、登録、変更内容に応じて、所管窓口や専門家へ確認してください。承継直前に初めて調べると、営業を続けるための準備が間に合わない可能性があります。

借入金については、借りている主体、返済条件、担保、経営者の個人保証を一覧にします。会社の借入と個人の借入を分け、どの資産や契約と関係しているかを確認します。会社売却や代表者交代だけで個人保証が自動的に外れると考えず、金融機関と専門家を交えて調整してください。

地域との関係を、後任が対応できる仕事へ移す

経営者が長く関係を築いた所有者、入居者、協力会社から、直接相談を受けることがあります。連絡先を渡すだけでなく、過去の対応、相手が重視すること、判断が必要な事項を整理します。ただし、共有する情報は秘密保持や個人情報の取扱いを確認し、必要な範囲にとどめます。

後任への紹介では、旧経営者が同行する相手と、担当者から引き継げる相手を分けます。いつから誰が窓口となり、緊急の連絡をどこへ入れるかを具体的に伝えます。旧経営者がいつまでも直接回答し続ける状態では、新しい体制が定着しにくくなるためです。

旧経営者が一定期間残る場合は、関わる業務、時間、期間、報酬、最終判断する人を明確にします。説明した回数だけではなく、後任が問い合わせを受け、必要な確認をして回答できるかを完了条件にすると、残る課題を確認しやすくなります。

地域の数字を入口に、自社の承継条件を整える

不動産業、物品賃貸業の事業所数は港区、新宿区、千代田区などが上位ですが、区内割合では中野区、杉並区、目黒区などが上位になります。数と割合を分けることで、東京の地域差を異なる角度から確認できます。いずれも物件数や売却候補数を示す数字ではありません。

自社の承継では、所有するもの、預かるもの、契約、人、未完了の仕事を整理することから始めます。地域との関係を守るためにも、経営者の経験を後任が使える情報へ移し、誰が何を担うかを具体的に決めておくことが大切です。

参考資料・集計方法

割合、上位五区の構成比、平均人数はKAKEHASHI編集部計算。区部は境界未定地域を含みます。地域別統計とTDBの後継者不在率は、対象と調査時点が異なる資料として扱い、区別の後継者不在企業数は推計していません。契約、免許・登録、預り金、税務、借入・保証の取扱いは個別の条件を専門家等へ確認してください。

売却後の体制づくりはPMIと引継ぎの進め方、買い手探しはM&Aマッチングサービスの使い方、関連する地域データは東京の建設業の分布と承継をご覧ください。

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