東京都内でも、後継者が決まっていない会社の割合は業種によって大きく異なります。
帝国データバンクの2025年調査では、後継者不在率が最も高いのは建設業の53.6%でした。不動産業53.1%、小売業52.9%、サービス業52.4%が続き、8業種のうち4業種が50%を上回っています。
一方、製造業は37.8%で40%を下回りました。最も高い建設業と、最も低い「その他」の差は25.3ポイントあります。東京都全体の47.9%だけでは見えない違いです。
この記事では、東京都内企業5万4,135社を対象とした公表資料から、業種別の順位、前年からの改善幅、中分類で不在率が高い業種を整理します。
この記事のポイント
- 業種別で最も高いのは建設業の53.6%
- 建設・不動産・小売・サービスの4業種が50%超
- 2024年から2025年にかけて全8業種で改善
- 改善幅が最大だったサービス業も、なお52.4%
- 後継者不在率の高さと、会社売却のしやすさは別の問題
東京都の後継者不在率を業種別に比較
2025年の業種別後継者不在率を、高い順に並べると次のとおりです。

| 順位 | 業種 | 2025年 | 2024年 | 前年差 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 建設業 | 53.6% | 57.1% | -3.5ポイント |
| 2 | 不動産業 | 53.1% | 54.2% | -1.1ポイント |
| 3 | 小売業 | 52.9% | 54.0% | -1.1ポイント |
| 4 | サービス業 | 52.4% | 56.8% | -4.4ポイント |
| 5 | 卸売業 | 44.2% | 47.2% | -3.0ポイント |
| 6 | 運輸・通信業 | 40.1% | 42.6% | -2.5ポイント |
| 7 | 製造業 | 37.8% | 40.4% | -2.6ポイント |
| 8 | その他 | 28.3% | 31.2% | -2.9ポイント |
東京都全体の後継者不在率は47.9%です。建設業は全体より5.7ポイント、不動産業は5.2ポイント、小売業は5.0ポイント、サービス業は4.5ポイント高くなっています。
反対に、製造業は全体を10.1ポイント下回りました。同じ東京の会社でも、業種によって後継者の決まりやすさに差があることが分かります。
東京都全体の推移や年代別の状況は、東京都の後継者不在率を整理した記事で詳しく紹介しています。
建設・不動産・小売・サービスの4業種が50%を超えた
2025年に50%を上回ったのは、建設業、不動産業、小売業、サービス業の4業種です。単純にいえば、調査対象企業の半数以上で後継者が「いない」または「未定」でした。
ただし、この数字を「半数以上の会社が近く廃業する」と読むのは適切ではありません。
後継者不在には、候補者をまだ決めていない会社も含まれます。経営者が若く、現時点では後継者を決める必要がない会社もあります。会社ごとの緊急度は、経営者の年齢や健康状態、社内候補者の有無、承継に必要な期間によって異なります。
建設業は53.6%で最も高い
8業種で最も高かった建設業は53.6%でした。前年の57.1%から3.5ポイント改善していますが、東京都全体より5.7ポイント高い水準です。
建設業では許認可、資格者、現場管理、人脈、取引先との関係など、引継ぎの対象が多岐にわたります。統計だけで原因を一つに決めることはできませんが、後継者候補がいる場合でも、資格や実務を含む準備に時間がかかりやすい点は確認が必要です。
不動産業と小売業は改善幅が小さかった
不動産業は53.1%、小売業は52.9%でした。いずれも前年から1.1ポイントの低下で、8業種の中では改善幅が最も小さくなっています。
不動産業でも、賃貸管理、売買仲介、保有・開発など事業内容はさまざまです。小売業も、店舗型と無店舗型、取扱商品、立地、EC比率などで引継ぎやすさが変わります。大分類の数字だけで個別企業の状況を判断しないことが大切です。
サービス業は最も改善したが52.4%
サービス業は56.8%から52.4%へ4.4ポイント低下し、8業種で最も大きく改善しました。
それでも半数を超えています。「前年より改善したこと」と「現在の不在率が低いこと」は同じではありません。順位と改善幅の両方を見る必要があります。
全8業種で改善したが、改善幅には差がある

2024年から2025年にかけて、後継者不在率は全8業種で低下しました。改善幅の大きい順に並べると、次のとおりです。
- サービス業:-4.4ポイント
- 建設業:-3.5ポイント
- 卸売業:-3.0ポイント
- その他:-2.9ポイント
- 製造業:-2.6ポイント
- 運輸・通信業:-2.5ポイント
- 不動産業:-1.1ポイント
- 小売業:-1.1ポイント
東京都全体も前年から3.2ポイント改善しました。サービス業と建設業は全体を上回る改善幅です。
帝国データバンクは、官民の相談窓口や支援メニューの拡充、金融機関・M&A支援機関の取組、経営者の意識変化などを改善要因として挙げています。ただし、今回の統計だけで、業種ごとにどの要因がどれだけ影響したかを切り分けることはできません。
全国平均との比較は、東京と全国の後継者不在率を比較した記事をご覧ください。
中分類では自動車・自転車小売が61.7%
大分類より細かい中分類では、後継者不在率が高い業種として次の4業種が挙げられています。
| 業種 | 2025年の後継者不在率 |
|---|---|
| 自動車・自転車小売 | 61.7% |
| 職別工事業 | 58.5% |
| 専門サービス | 58.4% |
| 飲食店 | 58.0% |
いずれも東京都全体の47.9%を10ポイント以上上回ります。
ここで注目したいのは、同じ大分類でも事業の特徴が異なることです。たとえば小売業全体は52.9%ですが、自動車・自転車小売は61.7%でした。自社の状況を考えるときは、大分類だけでなく、より近い業態のデータまで確認する必要があります。
業種別データを会社売却の判断へどう生かすか
後継者不在率が高い業種だからといって、会社が高く売れる、買い手がすぐ見つかるとは限りません。
会社売却や第三者承継では、業種の需給だけでなく、個別企業の収益力や引継ぎやすさが見られます。
- 社長がいなくても事業を回せるか
- 資格者や管理者が社内に残るか
- 主要取引先との契約を引き継げるか
- 特定の顧客や仕入先への依存が高すぎないか
- 店舗、設備、不動産、許認可の扱いを整理できるか
- 従業員の雇用継続に見通しがあるか
- 過去数年の利益を説明できるか
後継者不在率は、業界全体の背景を知る材料です。自社が承継できるか、売却できるかを直接示す数字ではありません。
売却を決めていない段階でも、社内承継、親族内承継、第三者承継、廃業を並べて、準備に必要な時間と費用を確認できます。資料整理から始める場合は、会社売却の準備チェックリストも参考にしてください。
後継者が未定の経営者が確認したいこと
業種別の数字を見て不安になったときは、まず自社の状況を次の順で確認すると整理しやすくなります。
- 候補者の有無:親族や役員・従業員に候補者がいるか
- 本人の意思:候補者が経営を引き継ぐ意思を持っているか
- 必要な期間:育成、株式移転、資金調達に何年かかるか
- 経営者依存:営業、技術、判断、取引関係が社長に集中していないか
- 第三者承継の可能性:買い手が評価しやすい利益・人材・契約・資産があるか
- 廃業との比較:従業員、取引先、借入、資産処分への影響を確認したか
候補者がいないことが分かってから準備を始めるより、複数の選択肢を比較できるうちに現状を整理しておく方が、条件を検討する時間を確保しやすくなります。
まとめ
2025年の東京都では、建設業53.6%、不動産業53.1%、小売業52.9%、サービス業52.4%の4業種で後継者不在率が50%を上回りました。
全8業種で前年から改善したものの、最も高い建設業と最も低い「その他」の差は25.3ポイントあります。業種によって状況は大きく異なります。
さらに、中分類では自動車・自転車小売61.7%、職別工事業58.5%、専門サービス58.4%、飲食店58.0%でした。大分類だけでなく、自社に近い業態まで見ることが重要です。
ただし、後継者不在率は会社売却の成立可能性や価格を示す数字ではありません。自社の収益、人材、契約、許認可、経営者依存を整理し、親族内・社内・第三者承継を比較するための入口として活用してください。
よくある質問
東京都で後継者不在率が最も高い業種は何ですか?
2025年調査では建設業が53.6%で最も高く、不動産業53.1%、小売業52.9%、サービス業52.4%が続きます。
後継者不在率が50%を超えると、半数の会社が廃業しますか?
いいえ。後継者が「いない」会社だけでなく「未定」の会社も含まれます。若い経営者の会社も対象であり、廃業見込みを表す数字ではありません。
後継者不在率が高い業種は会社を売りやすいですか?
必ずしもそうではありません。買い手の需要に加え、利益、人材、許認可、契約、設備、顧客基盤、経営者依存などを個別に確認します。
前年から最も改善した業種は何ですか?
サービス業です。2024年の56.8%から2025年は52.4%となり、4.4ポイント低下しました。
主な出典
- 帝国データバンク「東京都・『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年12月23日公表)
※本記事は、公表資料をもとに東京都内企業の後継者不在率を業種別に整理した一般的な情報です。統計は特定企業の廃業可能性、承継の成否、会社売却の可否や価格を示すものではなく、特定の取引や対応を推奨・保証するものでもありません。法令、税制、支援制度等は変更される場合があります。個別の判断は、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、金融機関、M&Aの専門家、公的相談窓口等へご確認ください。