東京都内で後継者が「いない」または「未定」の企業は、2025年調査で47.9%でした。前年から3.2ポイント低下し、調査開始後で初めて50%を下回っています。
改善は8年連続です。2017年の68.2%と比べると20.3ポイント低下しました。ただし、調査対象5万4,135社のうち、後継者不在・未定は2万5,932社あります。割合が下がっても、東京の後継者問題が解消したわけではありません。
年齢、業種、実際の承継方法まで分けると、東京では親族だけに頼らない事業承継が広がっていることも見えてきます。
2025年の東京都は47.9%、初めて半数を下回った

| 調査項目 | 2025年 | 前年との差 |
|---|---|---|
| 調査対象 | 東京都内5万4,135社 | - |
| 後継者がいない・未定 | 2万5,932社 | - |
| 後継者不在率 | 47.9% | -3.2ポイント |
| 連続改善 | 8年連続 | 初の50%割れ |
帝国データバンクは、信用調査報告書などのデータベースを基に、2023年10月から2025年10月までの期間を対象として、事業承継の実態を分析できる都内企業を調査しました。
ここでいう「後継者不在」は、後継者がいない企業と、候補がまだ決まっていない企業を含みます。経営者が若く、まだ選ぶ時期ではない会社も入ります。そのため、47.9%をそのまま「廃業の危機にある企業の割合」と読むことはできません。
10年間で20.3ポイント低下した
| 年 | 後継者不在率 | 前年との差 |
|---|---|---|
| 2016年 | 67.5% | - |
| 2017年 | 68.2% | +0.7ポイント |
| 2018年 | 68.0% | -0.2ポイント |
| 2019年 | 66.3% | -1.7ポイント |
| 2020年 | 65.6% | -0.7ポイント |
| 2021年 | 61.6% | -4.0ポイント |
| 2022年 | 57.7% | -3.9ポイント |
| 2023年 | 53.9% | -3.8ポイント |
| 2024年 | 51.1% | -2.8ポイント |
| 2025年 | 47.9% | -3.2ポイント |
2017年を境に、毎年低下しています。帝国データバンクは、官民の相談窓口や支援メニューの拡充、金融機関やM&A支援機関による取組、経営者の意識変化が改善に影響したと分析しています。
ただし、統計から各施策の効果を個別に切り分けることはできません。後継者候補が決まった企業が増えたことは確認できますが、候補者の育成が終わったか、株式や経営権の移転準備まで進んだかは別の問題です。
全国より2.2ポイント低い
2025年の全国平均は50.1%で、東京都の47.9%は2.2ポイント低い水準です。前年からの改善幅も、全国2.0ポイントに対し東京は3.2ポイントでした。
| 2025年 | 東京都 | 全国 | 差 |
|---|---|---|---|
| 後継者不在率 | 47.9% | 50.1% | 東京が2.2ポイント低い |
| 前年からの改善 | -3.2ポイント | -2.0ポイント | 東京の低下幅が1.2ポイント大きい |
| 調査対象 | 約5.4万社 | 約27万社 | 母集団は異なる |
東京には大企業・中堅企業、従業員数の多い中小企業が相対的に多く、内部から後継者を選びやすい企業が含まれます。M&A支援機関や金融機関も集積しています。全国との差を「東京の経営者は準備が進んでいる」とだけ説明することはできません。
年代別では50代が56.1%、60代でも36.2%

| 社長の年代 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 30代未満 | 83.2% | 81.9% | 77.4% | -4.5ポイント |
| 30代 | 80.4% | 79.8% | 77.2% | -2.6ポイント |
| 40代 | 74.6% | 72.6% | 68.8% | -3.8ポイント |
| 50代 | 59.5% | 59.3% | 56.1% | -3.2ポイント |
| 60代 | 39.6% | 39.0% | 36.2% | -2.8ポイント |
| 70代 | 32.7% | 31.0% | 28.2% | -2.8ポイント |
| 80代以上 | 24.7% | 21.8% | 21.5% | -0.3ポイント |
若い経営者ほど不在率が高いのは、すぐに後継者を決める必要性が低い会社が多いためです。30代と80代を同じ緊急度で比べることはできません。
注目したいのは、事業承継を具体的に考え始める50代でも56.1%、60代でも36.2%が不在・未定であることです。80代以上は21.5%まで下がりますが、5社に1社を上回ります。
候補者が決まっていない状態が長く続くと、経営者の体調や取引環境の変化が起きた際に、親族内承継、従業員承継、第三者承継を比較する時間が短くなります。
全業種で改善したが、建設業は53.6%
2025年は、調査対象の8業種すべてで前年から後継者不在率が下がりました。最も高い建設業は53.6%、最も低い製造業は37.8%です。
| 業種 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 57.1% | 53.6% | -3.5ポイント |
| 不動産業 | 54.2% | 53.1% | -1.1ポイント |
| 小売業 | 54.0% | 52.9% | -1.1ポイント |
| サービス業 | 56.8% | 52.4% | -4.4ポイント |
| 卸売業 | 47.2% | 44.2% | -3.0ポイント |
| 運輸・通信業 | 42.6% | 40.1% | -2.5ポイント |
| 製造業 | 40.4% | 37.8% | -2.6ポイント |
| その他 | 31.2% | 28.3% | -2.9ポイント |
中分類で最も高かったのは自動車・自転車小売の61.7%です。職別工事業58.5%、専門サービス58.4%、飲食店58.0%が続きます。
不在率が高い業種でも、会社売却や第三者承継が容易とは限りません。許認可、設備、人材、顧客、利益率、経営者への依存度など、買い手が引き継げる経営資源があるかを個別に確認します。
実際の社長交代は「内部昇格」が46.5%
2025年に代表者が交代した東京都内企業では、前代表者との関係別に次の割合でした。
| 就任経緯 | 2025年 | 読み方 |
|---|---|---|
| 内部昇格 | 46.5% | 役員・社員など、社内人材が代表へ |
| M&Aほか | 24.7% | 買収・出向・分社化の合計 |
| 同族承継 | 15.6% | 親族への承継 |
| 外部招聘 | 9.6% | 外部人材を代表へ |
| 創業者 | 3.6% | 新設企業など |
内部昇格は全国の36.1%より約10ポイント高く、東京の事業承継では社内人材への交代が中心です。「M&Aほか」も24.7%あり、同族承継15.6%を上回りました。
ここで注意したいのは、調査の「M&Aほか」が会社売却だけを示す数字ではないことです。買収、出向、分社化を合計しています。24.7%を「会社売却による承継率」と読み替えることはできません。
後継者候補の66.5%は非同族
後継者候補の属性を分析できる都内企業約2.8万社では、非同族が66.5%で最も多く、前年から1.9ポイント上昇しました。配偶者3.5%、子ども15.0%、親族15.0%はいずれも前年から低下しています。
非同族には、社内役員・従業員や外部人材などが含まれます。後継者問題への対応は、親族に継ぐか廃業するかの二択ではなくなっています。
ただし、候補者を決めただけでは承継は完了しません。経営者教育、株式取得資金、個人保証、取引先との関係、権限移譲、相続人との調整などが残ります。
47.9%まで改善しても残る三つの課題
後継者が決まった企業と、承継準備が終わった企業は同じではない
候補者がいても、本人の意思確認や育成、株式移転、資金調達が進んでいない場合があります。後継者「あり」の数字だけでは、引継ぎの実行可能性までは分かりません。
高齢経営者の2割以上は不在・未定
80代以上の21.5%は全年代で最も低いものの、時間的な余裕が小さい企業を含みます。経営者の健康状態が変わる前に、社内承継と第三者承継、廃業を並べて考える必要があります。
会社規模によって選択肢が違う
役員・幹部が複数いる会社は内部昇格を検討しやすい一方、経営者一人に顧客・技術・判断が集中する小規模企業では、社内候補がいないことがあります。その場合も、取引先、同業者、起業希望者、M&Aによる第三者承継を検討できます。
東京の経営者が次に確認したいこと
- 候補者がいるかではなく、本人に意思があるか
- 経営と株式を誰へ、いつ、どう移すか
- 株式取得資金と経営者保証をどうするか
- 経営者に集中している業務を引き継げるか
- 親族内・従業員・第三者承継を比較したか
- 承継できない場合の廃業費用と手続きも把握しているか
東京都の後継者不在率は改善していますが、個別企業の判断を代わりにしてくれる数字ではありません。候補者が未定でも、すぐに会社売却へ進む必要はありません。自社の事業を残す方法を並べ、準備に必要な時間を確認するところから始められます。
東京の休廃業・解散が増えている背景は、東京都の10年推移を整理した記事で確認できます。黒字のまま会社を閉じる企業の割合は、東京都の黒字廃業データを読み解いた記事で説明しています。
東京都の後継者不在率に関するよくある質問
47.9%の会社が近く廃業するという意味ですか
違います。後継者がいない企業と未定の企業を含み、若い経営者の会社も対象です。廃業見込みを示す数字ではありません。
後継者不在率が下がった理由は何ですか
帝国データバンクは、官民の相談窓口・支援メニュー、金融機関、M&A支援機関の取組、経営者の意識変化を挙げています。ただし、各要因の影響をこの調査だけで分けることはできません。
「M&Aほか」24.7%は会社売却の割合ですか
会社売却だけではありません。調査上は買収・出向・分社化の合計です。
主な出典
- 帝国データバンク「東京都・『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年12月23日公表)
- 同調査のPDF資料
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表)
- 中小企業基盤整備機構「第三者承継支援について」
※本記事は、公表資料をもとに東京都内の後継者不在と事業承継の動向を整理した一般的な情報です。統計は特定企業の廃業可能性、承継の成否、会社売却の可否を示すものではなく、特定の取引や対応を推奨・保証するものでもありません。法令、税制、支援制度等は変更される場合があります。個別の判断は、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、金融機関、M&Aの専門家、公的相談窓口等へご確認ください。