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会社売却

会社売却前に専門家に相談するべきこと。まず確認したいポイントと相談の進め方

会社売却を考え始めたとき、最初につまずきやすいのが「誰に、何を相談すればいいのか分からない」という不安です。

仲介会社やFA、税理士、弁護士…。名前は聞いたことがあっても、相談する内容が整理できていないまま連絡すると、話が噛み合わなかったり、聞きたいことが聞けないまま終わってしまったりします。逆に言えば、相談するべきことが分かっていれば、売却を決め切っていなくても相談はできますし、早い段階ほどムダな遠回りを減らせます。

この記事では、会社売却の「準備段階」で、専門家に相談しておくべきポイントを分かりやすく整理します。あわせて、相談がスムーズになるように、最低限そろえておくと安心な資料や、相談相手を選ぶときの見極め方も紹介します。

読み終わるころには、次の一歩として「何を聞くべきか」「どこから動けばいいか」が見える状態になっているはずです。焦らず、でも迷わず進めるために、いまの状況整理から一緒に始めていきましょう。

目次

専門家に相談するのは「決めるため」でもOK

「まだ売ると決めたわけじゃないのに、相談していいのかな…」と迷う方は多いです。ですが結論から言うと、売却を決め切っていない段階でも、相談して大丈夫です。

なぜなら、専門家への相談は「売る手続きを進めるため」だけではなく、売るかどうかを判断するための材料をそろえる場でもあるからです。むしろ、何も分からないまま一人で考え続けるほど、不安だけが大きくなりやすくなります。

売却を決め切っていなくても相談していい理由

会社売却は、人生や家族、従業員、取引先にも影響が出るテーマです。簡単に「売ります」と決められないのは、とても自然なことです。

この段階で相談する目的は、無理に背中を押してもらうことではありません。例えば、こんなことを整理できれば十分です。

  • 自分は何に悩んでいるのか(引退したい、後継者がいない、将来が不安、など)
  • 売る以外の選択肢はあるのか(続ける・縮小する・誰かに任せる、など)
  • もし売るなら、どんな進め方が現実的か(期間の目安、必要な準備の量、関わる人)

この整理ができるだけでも、次の一歩が見えます。「まだ決めていない」ことは弱みではなく、相談の出発点です。遠慮せず、今の気持ちのまま話して構いません。

相談が早いほど減らせる失敗(時間・条件・税金のズレ)

早めに相談するメリットは、単に早く売れるからではありません。後から取り返しがつきにくいズレを小さくできることが大きいです。特に多いのが、次の3つです。

時間のズレ

  • 「半年くらいで終わると思っていたが、想像より長くかかった」
  • 「忙しい時期に重なって、社内が回らなくなった」

会社売却は、書類準備や確認事項が多く、どうしても一定の時間がかかります。早めに相談しておけば、だいたいの流れと、負荷が高くなる時期が見えてきます。

条件のズレ

  • 「譲れない条件が後から増えて交渉が止まった」
  • 「最初に言っておけば避けられた話が、途中で問題になった」

条件は、値段だけではありません。引き継ぎ期間、役員や従業員の扱い、取引先との関係など、気になるポイントは人それぞれです。早い段階で相談しておくと、自分の希望条件を“言葉にする”作業ができ、あとでの混乱が減ります。

税金のズレ

  • 「売った後に手取りが思ったより少なくて驚いた」
  • 「先にやってしまった判断が、税金面で不利だった」

税金は、売り方やお金の受け取り方によって変わります。ただ、ここで大事なのは細かい税率の暗記ではありません。まずは、“税金で手取りが変わる”という前提を早めに共有し、大まかなイメージを持っておくことが重要です。相談を早めにしておけば、あとから「そんなはずじゃなかった」を減らせます。

まとめると、専門家への相談は、売却のスタートではなく「判断の準備」です。まだ迷いがあるときほど、状況整理のために使ってください。決め切っていないからこそ、早めの相談が役に立ちます

最初に相談で整理したい「自分の前提」

専門家に相談するとき、資料や数字も大切ですが、それ以上に大事なのが「自分の前提」を言葉にしておくことです。

前提があいまいなままだと、話が進むほど「なんか違う…」が起きやすくなります。逆に、前提が整理できていると、専門家からの提案も具体的になり、判断がラクになります

ここでは、最初の相談で必ず整理しておきたい前提を3つに絞ってお伝えします。完璧でなくて大丈夫です。今の時点で言える範囲で書き出してみてください。

なぜ売りたいのか(目的で方針が変わる)

会社売却は「売る」こと自体が目的ではなく、たいていは売った先に実現したいことがあります。

例えば、よくある目的はこんなものです。

  • 後継者がいないので、会社と従業員を守りたい
  • 体力・気力の限界が近く、引退や負担軽減をしたい
  • 先行きが不安で、早めに手を打っておきたい
  • 次の事業や人生に集中したい
  • 会社の成長のために、より大きい資本や仕組みに乗せたい

同じ「売却」でも、目的が違えば、重視するポイントも変わります。
たとえば、従業員を守りたい人は条件面(雇用の継続・働き方)が最優先になりやすいですし、引退したい人は時期や引き継ぎ負担が重要になりやすいです。

ここでのコツは、きれいな言葉にしようとしないことです。「正直な理由」のほうが、結果的に良い相談になります。

いつ頃までにどうしたいのか(急ぎ度の確認)

次に大事なのが、時間の希望です。ここが決まると、現実的な進め方が見えてきます。

ただ、最初から「○月○日までに売る」と決める必要はありません。まずは、次のどれに近いかを確認するだけでOKです。

  • できれば早めに動きたい(半年〜1年以内を想定)
  • 急ぎではないが、選択肢として準備したい(1〜2年くらいの幅)
  • まだ判断前なので、まずは情報整理から始めたい

急ぎ度が高い場合は、理想を追いすぎると間に合わなくなることがあります。逆に急ぎでない場合は、焦って決める必要はありません。時間の希望は「交渉の方針」だけでなく「自分の安心」にも関わるので、最初に共有しておくと話がスムーズです。

あわせて、急ぐ理由があるなら、それもそのまま伝えて大丈夫です。
(例:健康面、資金繰り、主要取引先の変化、家族事情など)

絶対に譲れない条件と、妥協できる条件

相談でよくあるのが、「価格だけを条件にしてしまう」ことです。もちろん価格は大事ですが、会社売却ではそれ以外にも、あとから大きく効いてくる条件があります。

だからこそ最初に、譲れない条件妥協できる条件を分けておくのがおすすめです。例えば、こんな切り口があります。

  • 従業員:雇用は守りたい/配置転換はある程度OK など
  • 自分の関わり方:すぐ退きたい/半年は引き継ぐ/一定期間は残ってもいい など
  • 社名・ブランド:残したい/こだわらない など
  • 取引先:関係を崩したくない/説明のタイミングは慎重にしたい など
  • 売却後の働き方:完全に離れたい/顧問として関わるのはOK など

ここで大事なのは、全部を「譲れない」にしないことです。譲れない条件が多すぎると、現実的な選択肢が一気に狭まります。

おすすめは、まず譲れない条件は2〜3個に絞ること。残りは「できれば希望」「状況によって調整可能」といった形で、段階をつけておくと、相談が一気に進みやすくなります。

そして最後にもう一つ。条件は途中で変わっても構いません。ただし、最初に“今の時点の優先順位”を出しておくと、専門家も提案がしやすくなり、あなた自身も判断がしやすくなります。

この章でお伝えした3つの前提は、どれも完璧に固める必要はありません。大切なのは、自分の中のモヤモヤを「言葉にして共有できる状態」にすることです。そこから相談は、ぐっとラクになります。

誰に相談するのがよいか(相談先の役割をざっくり把握)

会社売却の相談先は、ひとつではありません。むしろ、「目的によって相談相手が変わる」のが自然です。

ただ、最初から全部の専門家に当たろうとすると、時間も気力も削られます。そこでこの章では、よく登場する相談先について、それぞれの役割を“ざっくり”整理します。細かい制度や専門用語は不要です。まずは「この話は誰に向いているか」の当たりをつけることが目的です。

M&Aの専門家(仲介・FA)が得意なこと/苦手なこと

M&Aの専門家(仲介やFA)は、会社売却の全体を前に進めるための相談相手です。特に、次のようなテーマが得意です。

  • 売却の進め方の設計(どんな順番で、何を準備して、いつ動くか)
  • 買い手候補探しと交渉(候補の洗い出し、面談、条件調整)
  • 売却条件の整理(何が論点になりやすいか、落としどころの考え方)
  • スケジュール管理(いつ何が起きるかの見通し)

一方で、苦手になりやすいこと・専門外になりやすいこともあります。たとえば次のような領域です。

  • 税金の最終判断(税務の確定的な結論は税理士の領域になりやすい)
  • 契約書の法的な詰め(細かな条文の解釈や法的リスクの判断は弁護士が強い)
  • 労務・雇用の実務(就業規則、雇用条件の整理などは社労士が得意)

ここで大事なのは、どちらが良い悪いではなく、「得意分野が違う」ということです。M&Aの専門家には、まず全体像の相談前に進めるための道筋を聞くのが向いています。

税理士に相談しておくと安心なこと

税理士は、会社の数字に強い味方です。売却前の段階で相談しておくと安心なのは、次のようなポイントです。

  • 会社の数字の見え方(利益がどう出ているか、継続的な収益か、特殊要因があるか)
  • 説明しづらい数字の整理(役員報酬、経費、貸付金など、誤解されやすい項目の見せ方)
  • 売却後の手取りの大枠(どのくらい税金が影響しそうかの“イメージ作り”)
  • 売却前にやっていいこと/注意が必要なこと(後から説明が難しくなる動きがないか)

ここでの注意点は、税理士さんによってM&Aへの慣れが違うことです。M&Aの税務に詳しい方もいれば、普段は申告中心でM&Aは経験が少ない方もいます。

ただ、経験の多い少ないにかかわらず、税理士に相談する価値はあります。なぜなら、売却の話以前に「自社の数字を自分が説明できる状態」を作るだけでも、今後がかなりラクになるからです。

弁護士・社労士など、必要になりやすい場面

会社売却では、途中から「これは専門家に任せた方が安心だな」という場面が出てきます。特に出番が増えやすいのが、弁護士や社労士です。

弁護士が必要になりやすい場面

  • 契約書の確認(内容の抜け漏れ、将来の揉め事につながりそうな条文のチェック)
  • トラブルの芽があるとき(紛争・クレーム・訴訟リスクが気になる場合)
  • 約束の範囲をはっきりさせたいとき(口約束を避けたい、責任範囲を明確にしたい)

社労士が必要になりやすい場面

  • 雇用・労務の整理(雇用条件、就業規則、未払い残業などの懸念がある場合)
  • 従業員対応の準備(伝え方やタイミングを慎重に考えたい場合)
  • 人に関わるリスクを減らしたいとき(退職・不満・誤解が起きないように整えたい)

ほかにも、許認可や契約の相手先が多い業種では、行政書士などの専門家が必要になることもあります。とはいえ、最初から全部そろえる必要はありません。まずは「今の悩みは何か」を起点に、必要な人を順番に増やしていくのが現実的です。

まとめると、相談先選びで迷ったときは、こう考えると整理しやすいです。

  • 全体の進め方・買い手探し・交渉 → M&Aの専門家(仲介・FA)
  • 数字の整理・手取りの見通し → 税理士
  • 契約・法的リスク → 弁護士
  • 従業員・労務の不安 → 社労士

「誰に相談すべきか」が見えるだけでも、最初の一歩はぐっと踏み出しやすくなります。あなたの状況に合わせて、無理のない順番で相談先を選んでいきましょう。

会社売却前に必ず聞いておきたい相談テーマ

専門家に相談するなら、「とりあえず話を聞いてみる」だけで終わらせないのが大切です。
会社売却は、あとから取り返しがつきにくい判断も混ざります。

そこでこの章では、売却前の相談で必ず聞いておきたいテーマを4つに絞って整理します。全部を完璧に理解する必要はありません。ただ、ここを押さえておくと、話が進んだときに「そんなつもりじゃなかった…」を減らせます。

売却スキームの選び方(株式譲渡か事業譲渡かの考え方)

会社売却には、代表的な形として「株式譲渡」「事業譲渡」があります。
まず相談でやっておきたいのは、言葉の暗記ではなく、自社の状況だとどちらが現実的かを見立ててもらうことです。

ざっくり言うと、考え方の違いはこうです。

  • 株式譲渡:会社そのもの(株)を引き継ぐイメージ
  • 事業譲渡:会社の中の「事業」を切り出して渡すイメージ

ここで相談すべきポイントは、次のような点です。

  • 何を引き継いでもらう必要があるか(契約、許認可、資産、負債など)
  • 引き継ぎの手間がどれくらい増えるか(手続きの多さ、関係者の調整)
  • 売り手側の負担やリスクがどう変わるか(後から揉める可能性を含む)

大事なのは、最初から「どっちが得か」を決めにいかないことです。
会社によって事情が違うので、まずは「選び方の軸」を聞いて、判断材料をそろえるのが良い進め方です。

お金の話(価格の考え方・手取りのイメージ・資金の残し方)

売却の相談でいちばん気になるのは、やはりお金だと思います。
ただ、ここで注意したいのは、「売却価格=手元に残るお金」ではないという点です。

相談では、次の3つをセットで確認しておくと安心です。

価格の考え方

  • 何を根拠に価格が決まるのか(利益、資産、将来性など)
  • 希望価格と現実のギャップが出る理由(買い手の見方、リスクの見え方)

手取りのイメージ

  • 税金や諸費用でどの程度変わりそうか(大枠の感覚でOK)
  • 売却の形によって手取りの考え方が変わるか

資金の残し方

  • 売却後に生活・次の挑戦・家族のために、どれくらい残したいか
  • 「会社のお金」と「個人のお金」をどう分けて考えるか

ここは気が引けるかもしれませんが、遠慮せず聞いて大丈夫です。
お金の話を曖昧にしたまま進むと、後半でショックが大きくなりやすいからです。相談の時点で、少なくとも“イメージ”は持っておくのがおすすめです。

契約・トラブル予防(後から揉めやすいポイントの確認)

会社売却では、最初は雰囲気よく進んでいても、あとから「言った・言わない」になって揉めることがあります。
だからこそ相談では、後から揉めやすいポイントを先に知っておくことが重要です。

具体的には、こんな論点が揉めやすいです。

  • 売却後の責任の範囲(どこまで売り手が対応するのか)
  • 引き継ぎの内容と期間(何を、いつまで、どこまでやるか)
  • 追加の支払い条件(後から条件が変わる可能性があるか)
  • 情報の出し方(どのタイミングで何を開示するか)

ここで大切なのは、細かい条文を理解することではありません。
相談の段階では、「どこで揉めやすいか」「自分は何を気にするべきか」を把握できれば十分です。先に地雷を知っておくだけで、落ち着いて進められます。

従業員・取引先への影響(不安が出やすい論点の整理)

会社売却で、オーナー社長が一番悩みやすいのが、従業員や取引先への影響です。
「売るなら、周りに迷惑をかけたくない」と感じるのは自然なことです。

ここで相談しておきたいのは、次のような点です。

  • 誰に、いつ、どう伝えるのがよいか(早すぎても遅すぎても難しい)
  • 不安が出やすいポイント(雇用、待遇、体制変更、取引の継続など)
  • 社内外の情報管理(どこまで共有するか、漏れたときの影響)

このテーマは「正解」が一つではありません。会社の規模や文化、関係性によって変わります。
だからこそ、専門家と一緒に「自社の事情に合った進め方」を考える価値があります。

まとめると、売却前の相談で大切なのは、4つのテーマを“質問できる形”にしておくことです。

  • どういう形で売るのが現実的か
  • 価格と手取りをどう考えるか
  • 後から揉めやすい点はどこか
  • 従業員・取引先への影響はどう整理するか

この4つを押さえて相談できれば、話はぐっと前に進みやすくなります。分からないまま進めないためにも、まずはここから聞いてみてください。

相談をスムーズにするための「最低限の持ち物」

専門家への相談は、準備が完璧でなくても始められます。
ただ、何もない状態で相談すると、どうしても話がふわっとしてしまい、「結局、何をすればいいのか分からないまま終わる」ことが起きがちです。

ここでは、相談をスムーズにするために、まず用意しておきたい最低限の持ち物を整理します。ポイントは、立派な資料を作ることではなく、状況を共有できる材料をそろえることです。

まずはこれだけ(決算書・試算表・会社概要・組織の情報)

最初の相談では、分厚い資料は不要です。まずは、次の4つがあれば十分スタートできます。

  • 決算書(できれば直近2〜3期分)
  • 試算表(あれば直近のもの)
  • 会社概要が分かる情報(事業内容、所在地、沿革、主要サービスなど)
  • 組織や体制が分かる情報(従業員数、役員、主要メンバーの役割)

決算書や試算表は、「正確な数字を見せるため」だけではありません。
専門家が状況を把握し、どこが強みで、どこが説明ポイントになりそうかをつかむための材料になります。

会社概要や組織の情報は、箇条書きでOKです。形式より中身が大事なので、Wordやメモ帳、メール本文でも構いません。

口頭で説明できるメモ(強み、課題、気になる点)

数字と同じくらい、相談を前に進めるのが「あなたの言葉での説明」です。
とはいえ、いきなり口頭で整理して話すのは難しいので、簡単なメモを作っておくのがおすすめです。

メモは長文にしなくて大丈夫です。次の3つを、1〜3行ずつ書くだけでも十分役に立ちます。

  • 強み:なぜお客様に選ばれているか/他社と違う点
  • 課題:今しんどいところ/不安なところ(人・売上・取引先など)
  • 気になる点:相談で特に聞きたいこと、ひっかかっていること

たとえば、こんなレベルでOKです。

  • 強み:固定客が多い/紹介が多い/特定分野に強い
  • 課題:キーマンに依存している/社長が現場に入りすぎている
  • 気になる点:従業員は守れるのか/どれくらい時間がかかるのか

このメモがあるだけで、相談の場で「何を話すべきか」を見失いにくくなります。話が脱線しにくくなるので、結果的に時間も節約できます。

まだ整っていない部分があっても大丈夫な伝え方

「資料が足りない」「数字がきれいに整理できていない」「説明がうまくできる自信がない」
こうした不安があると、相談を先延ばしにしてしまいがちです。

でも実際は、最初から全部そろっている人のほうが少ないです。
大事なのは、整っていないことを隠さず、正直に共有することです。

伝え方のコツはシンプルで、次の3点をセットで話すことです。

  • 何が未整備か(例:試算表が最新ではない、契約書が手元にない)
  • なぜ未整備か(例:担当者が退職した、社内で整理が追いついていない)
  • いつまでに用意できそうか(例:来月の月次締め後なら出せる)

この3点が言えるだけで、専門家は次の動きを組み立てやすくなります。
反対に、「大丈夫です」「たぶんあります」と曖昧にしてしまうと、後から確認が増えて余計に時間がかかることがあります。

完璧を目指すより、今ある材料で前に進めて、足りないものは順番にそろえるほうが現実的です。
相談は、準備が整ってからのご褒美ではなく、準備を整えるためのスタート地点です。

相談でよくある「もったいないパターン」を避ける

専門家に相談するだけでも前進ですが、やり方次第では時間と気力を使ったのに、成果がほとんど残らないことがあります。

ここでは、相談の場でよくある「もったいないパターン」を3つ紹介します。
どれも、悪気があって起きるものではありません。むしろ、真面目な方ほど陥りやすいです。
先に知っておくだけで、相談の質がぐっと上がります。

価格だけ聞いて終わる(判断材料が不足する)

「いくらで売れそうですか?」は、当然気になる質問です。
ただ、この質問だけで終わってしまうと、相談としてはもったいないです。

理由はシンプルで、価格は前提が分からないとブレやすいからです。
同じ会社でも、次のような条件で見え方が変わります。

  • どんな形で売る想定か
  • どれくらいの期間で動くか
  • 社長がどれくらい引き継ぎに関わるか
  • 買い手が何を評価し、何を不安に感じるか

なので相談では、価格を聞くならセットで、「なぜその水準になるのか」を必ず聞くのがおすすめです。

  • 価格の根拠はどこか(何を見て判断しているのか)
  • 上げるために必要な条件は何か(現実的にできる範囲で)
  • 下がりやすいリスクは何か(買い手が嫌がる点)

価格は「答え」ではなく、判断材料のひとつです。
数字だけもらっても、次の一手が決まりません。相談の場では、次に動ける材料まで一緒に持ち帰りましょう。

話を盛ってしまう/隠してしまう(後で自分が苦しくなる)

相談の場では、つい良く見せたくなるものです。
「弱いところを言ったら不利になるかも」と思う気持ちも、自然です。

ただ、ここで話を盛る都合の悪いことを隠すと、後で自分が苦しくなります。
なぜなら、会社売却は途中で確認が入る場面が増えるからです。あとから事実が出てくると、信頼が落ちたり、話が止まったりします。

だからおすすめは、最初から全部さらけ出すというより、「気になっていることは、気になっていると伝える」です。

  • 不安な点がある(例:特定の取引先に依存している)
  • 整理できていない(例:契約書が古く、最新がどれか分からない)
  • 今後確認が必要(例:未解決の案件があり、状況を調べたい)

こう伝えるだけでも、専門家は適切に段取りを組めます。
反対に「問題ないです」と言い切ってしまうと、後から出たときのダメージが大きくなります。

相談は面接ではありません。評価される場ではなく、整理する場です。
正直に話したほうが、結果的にあなたの味方が増えます。

専門家の言う通りにしすぎる(意思決定が他人任せになる)

専門家は経験があり、頼もしく見えます。だからこそ、言われた通りにしたくなる気持ちも分かります。

ただ、会社売却は、最終的に責任を持つのはあなた自身です。
専門家は提案をしてくれますが、あなたの人生や会社の価値観まで代わりに決めることはできません。

言う通りにしすぎてしまうと、後からこんなことが起きやすいです。

  • 違和感があるのに進めてしまい、途中で止まる
  • 周りに説明できず、社内外が不安になる
  • 結果に納得できず、後悔が残る

じゃあどうすればいいかというと、答えはシンプルです。
提案を受けたら、必ず「理由」と「選択肢」を聞くことです。

  • なぜそれが良いと思うのか
  • 別の選択肢はあるのか
  • それぞれのメリット・デメリットは何か

そして最後は、あなたの前提(目的・期限・譲れない条件)に照らして、自分の言葉で決める。これができれば、相談は一気に強くなります。

相談は、専門家に任せきるためではなく、あなたが納得して判断するためにあります。
「もったいないパターン」を避けて、相談の時間をしっかり“前に進む時間”にしていきましょう。

相談相手を選ぶときの見極めポイント

会社売却の相談は、内容が大きいぶん、相談相手との相性が結果に影響しやすいです。
「話しやすい」「感じがいい」も大切ですが、それだけで決めると、あとでモヤモヤが出ることがあります。

この章では、初めての相談でも確認しやすい見極めポイントを3つに絞ってお伝えします。
難しい比較は不要です。聞くべきことを聞ければ、それだけで失敗は減らせます

立場と報酬の仕組み(どこに偏りが出やすいか)

まず最初に確認したいのは、相談相手の立場報酬の仕組みです。
ここを曖昧にしたまま進めると、提案の方向性が見えにくくなり、後から「そういうことだったのか…」となりがちです。

大切なのは、相手を疑うことではありません。
人は、立場と報酬の仕組みによって、自然と考え方が偏りやすいという前提を持つことです。

初回相談では、次のようにストレートに聞いてOKです。

  • 今回、私はどちら側の支援(売り手側/買い手側)になりますか?
  • 報酬は、いつ・何に対して発生しますか?(着手金、月額、成功報酬など)
  • 成功報酬は何を基準に計算しますか?(売却価格なのか、別の基準なのか)

この確認をすることで、提案を聞くときに「なぜその話になるのか」が理解しやすくなります。
結果として、納得感のある判断につながります。

説明の分かりやすさと、質問の向き合い方

相談相手を選ぶとき、実は一番大事なのは説明の分かりやすさです。
専門家は知識があるのが前提ですが、売り手にとって重要なのは、自分が判断できる形で説明してくれるかです。

見極めのポイントは、難しい言葉を使うかどうかではありません。たとえば、こんな点を見てみてください。

  • こちらの状況を聞いた上で話してくれるか(最初からテンプレ説明だけになっていないか)
  • 分からない言葉が出たときに、かみ砕いて言い直してくれるか
  • メリットだけでなく、デメリットや注意点も説明してくれるか
  • 質問を嫌がらず、むしろ歓迎してくれるか

特に大事なのは、こちらが質問したときの反応です。
「質問しづらい空気」がある相手だと、あとで確認不足が積み上がってしまいます。

逆に、質問に丁寧に向き合ってくれる相手なら、たとえ今すぐ契約しなくても、相談の価値は高いです。
会社売却は長い道のりになりやすいので、「話し合える相手かどうか」を大切にしてください。

初回相談で確認したいこと(進め方・連絡頻度・守秘)

最後に、初回相談のうちに確認しておくと安心なのが、進め方連絡のルール、そして守秘です。
ここを最初に握っておくと、途中のストレスが減ります。

進め方

  • 次に何をやる流れになりますか?(最初のステップを具体的に)
  • どのタイミングで判断が必要になりますか?(意思決定ポイントの目安)
  • こちらが用意するものは何ですか?(資料・情報・社内体制など)

連絡頻度・連絡手段

  • 基本の連絡頻度はどれくらいですか?(週1、都度など)
  • 連絡手段は何が中心ですか?(メール、チャット、電話など)
  • 急ぎのときはどう連絡すればいいですか?

守秘(情報の扱い)

  • 相談内容や会社情報は、どの範囲で共有されますか?
  • 買い手候補に情報を出すときは、どんな手順ですか?
  • 社名が出るのはどの段階ですか?

守秘は、会社売却で一番神経を使う部分のひとつです。
だからこそ、初回から遠慮せずに確認して大丈夫です。むしろ、ここに丁寧に答えてくれる相手は、信頼しやすい傾向があります。

相談相手選びで迷ったら、今日の章のポイントを思い出してください。

  • 立場と報酬の仕組みを先に確認する
  • 分かりやすく説明し、質問に向き合ってくれるかを見る
  • 進め方・連絡頻度・守秘を初回で握る

この3つを押さえるだけで、相談相手選びの失敗はかなり減ります。
焦らず、でも遠慮せずに、あなたが納得できる相手を選んでいきましょう。

相談後にやること(次の一手が見える状態へ)

相談が終わった直後は、「少しスッキリした」と感じる一方で、家に帰ってからまた迷いが戻ることもあります。
それは、相談で出た情報が多く、頭の中が整理しきれていないからです。

だからこそ、相談後にやるべきことはシンプルです。
次の一手が見える状態にするために、決めることと、持ち帰ることを分け、確認事項をメモに落とし込み、焦らない判断基準も持っておきます。

この章だけで完結するように、相談後の動きを3つにまとめます。

今日決めること/持ち帰ることを分ける

相談の場で一番起きやすい失敗は、流れで「じゃあ進めましょう」と言ってしまい、あとから不安になることです。
そこでおすすめなのが、相談の最後に「今日決めること」と「持ち帰ること」をはっきり分けることです。

今日決めてもいいことは、主に「次の準備に向けた小さな一歩」です。

  • 次回の打ち合わせ日(仮でもOK)
  • 追加で用意する資料(何を、いつまでに出すか)
  • 次に確認するテーマ(価格なのか、進め方なのか、条件整理なのか)

一方で、持ち帰っていいことは、「方向性に関わる大きな判断」です。

  • 本当に売るのか、いつ売るのか
  • どの相談相手と進めるのか
  • 譲れない条件をどこまで強く置くのか

相談の最後に、こんな一言を入れるだけでも整理が進みます。

  • 「今日は、次回までに用意するものだけ決めて、方向性は持ち帰って考えます」

この言い方なら角が立ちませんし、あなた自身も落ち着いて判断できます。

追加で確認すべき論点をメモ化する

相談後に迷いが戻る原因のひとつは、「聞いたはずなのに思い出せない」「何が宿題だったか分からない」という状態です。
これを防ぐのに一番効くのが、メモ化です。

ポイントは、きれいにまとめることではありません。短く、あとで見て分かる形にすることです。おすすめの書き方は、この3つです。

  • 分かったこと(例:進め方の全体像、今の課題の優先順位)
  • 分からないこと(例:条件の決め方、手取りのイメージ)
  • 次に確認すること(例:追加資料の範囲、スケジュール感)

さらに、相談相手に確認すべき論点が出た場合は、質問の形にしておくのがおすすめです。

  • 「私の場合、どの条件が交渉で論点になりやすいですか?」
  • 「次回までに用意する資料は、最低限どれですか?」
  • 「ここが整わないと次に進みにくい、というポイントはどこですか?」

質問が「文章」になっていると、次回の相談がスムーズになります。
そして何より、あなたの中で次の一手が具体的になります。

焦らず進めるための合図(今は動かない判断も含めて)

会社売却は、早く動けば正解というものではありません。
状況によっては、「今は動かない」という判断が、いちばん賢いこともあります。

焦らず進めるために、相談後に自分へ確認してほしい「合図」をいくつか挙げます。
当てはまるものが多いほど、一度立ち止まって整理する価値があります。

  • 相談相手の説明が理解できないまま、話が進みそうになっている
  • 譲れない条件が自分でも言語化できていない
  • 資料が出せない理由を自分が把握できていない
  • 「何となく不安」だけが残っている
  • 社内や家族に説明できる状態になっていない

この状態で無理に進めると、途中で止まったり、判断がブレたりして、結果的に遠回りになります。
だからこそ、今は動かない判断をするなら、こう言える形にしておくと安心です。

  • 「今すぐ進めるのではなく、○○を整理してから判断します」
  • 「次回までに、条件の優先順位だけ決めて持ってきます」

動かないことは、逃げではありません。
判断の精度を上げるための時間です。

相談後にやることは、たくさんありません。次の一手が見える状態に整えるだけで十分です。

  • 今日決めること/持ち帰ることを分ける
  • 追加で確認すべき論点をメモ化する
  • 焦らず進める合図を持ち、「今は動かない」判断もOKにする

この3つができれば、相談は「いい話を聞いた」で終わらず、あなたの意思で前に進む時間になります。

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