M&Aは、企業の成長戦略や事業再編の一環として、近年ますます注目を集めています。しかし、M&Aのプロセスは複雑であり、成功への道のりは簡単ではありません。そこで、M&Aの成功をサポートするための専門家や機関が必要となるのですが、中でも「M&A支援機関」はその中心的な役割を果たしています。
この記事では、M&A支援機関とは何か、なぜ登録制度が必要なのか、そしてその登録制度を通じて依頼者が得られるメリットについて詳しく解説していきます。
M&A支援機関とは?登録制度ができた理由
M&A支援機関についてわかりやすく解説
M&A支援機関の登録制度は、中小企業がM&Aを安全に進めるための基礎作りとして導入されました。
さらに、事業承継・引継ぎ補助金では、M&A支援機関のサービスに関連するコスト(仲介料やフィナンシャルアドバイザーの費用など)は、あらかじめ認定されたM&A支援機関が提供するサポートに限り、補助の対象となります。
M&A支援機関とは、中小企業のM&A(合併・買収)をサポートする専門の機関を指します。具体的には、中小企業との間でFA(フィナンシャル・アドバイザー)業務や仲介業務に関する契約を結ぶ者を指します。これには、FA業務や仲介業務を専業としている者だけでなく、金融機関などの仲介業務を行う者も含まれます。一方で、FA業務や仲介業務以外の業務、例えばデュー・ディリジェンス業務のみを行う専門家は、このカテゴリには含まれません。
中小企業とのM&Aに関する契約を締結する者や、M&Aの手続きの進行に関する総合的なサポートを提供する者、また、M&Aに関する手数料を受け取る者もM&A支援機関として認識されます。
M&A支援機関登録制度ができた理由とは?
令和3年に中小企業庁は中小企業のM&Aを推進するための「中小M&A推進計画」を発表しました。この計画の中で、中小企業におけるM&A支援機関の信頼性向上が重要な課題として挙げられました。そのため、以下の2つの対応策が提案されました。それが、以下の2つです。
①M&A支援機関の登録制度を新たに設け、登録された機関のみが補助金の対象となるようにする。
②M&A支援機関のサポートに関する問題を持つ中小企業からの情報提供を受け付ける窓口を設置する。
この登録制度の導入により、中小企業がM&Aの際に信頼できる支援機関を選ぶことが容易になります。また、「中小M&Aガイドライン」の理解と普及を促進し、中小企業がM&Aを安心して選択できる環境を実現することが目的とされています。
以上、M&A支援機関とその登録制度について、概要を解説しました。M&Aは中小企業の成長や事業継続の一つの手段として注目されており、信頼できる支援機関の存在は非常に重要です。この登録制度は、その信頼関係の構築に一役買っている制度となります。
M&A支援機関の数・登録状況。どんな事業者が登録している?
中小企業のM&A支援機関のホームページでは、毎月新しく採択した支援機関の公表と、支援機関の登録状況について公表さいています。
中小企業庁のHPは【こちら】
今回は、令和5年10月18日に公表された情報を基に割合を出してみました。
法人、個人の割合は?
まず、以下の表にM&A支援機関の登録状況をまとめました。
項目 | 数量 | パーセンテージ |
---|---|---|
登録数合計 | 3,011件 | 100% |
法人 | 2,219 | 73.7% |
個人 | 792 | 26.3% |
この表から、M&A支援機関の大部分は法人として登録されており、約4分の3を占めています。一方、個人としての登録も約4分の1存在しており、多様な形態の事業者がM&A支援機関として活動していることがわかります。
どんな会社が登録している?
次に、M&A支援機関の種類別の登録状況を詳しく見てみましょう。
M&A支援機関の種類 | 登録数 | パーセンテージ |
---|---|---|
M&A専門業者 – 仲介 | 656件 | 21.8% |
士業等専門家 – 税理士 | 557件 | 18.5% |
コンサルティング会社(経営コンサル) | 456件 | 15.1% |
M&A専門業者 – FA | 394件 | 13.1% |
士業等専門家 – 公認会計士 | 290件 | 9.6% |
金融機関 | 234件 | 7.8% |
その他 | 424件 | 14.1% |
M&Aの仲介を専門とする業者が最も多く、次いで税理士や経営コンサルタントが多いことがわかります。多様なバックグラウンドを持つ専門家が関与していることが伺えます。
登録している事業者の規模は?
最後に、M&A支援業務専従者数別の登録状況を見てみましょう。
M&A支援業務専従者数 | 登録数 | パーセンテージ |
---|---|---|
0人 | 667件 | 22.1% |
1~2人 | 1,503件 | 49.9% |
3~4人 | 440件 | 14.6% |
5~9人 | 266件 | 8.8% |
10人以上 | 135件 | 4.5% |
多くのM&A支援機関は、1~2人の専従者で構成されていることがわかります。
M&A支援機関の登録状況を詳しく見ると、多様な専門家がM&A支援機関として登録しており、それぞれの専門性を活かして中小企業のM&Aをサポートしていることが伺えます。特に、1~2人の専従者で運営されている事業者が多いことから、M&A支援業務は少数の専門家によって提供されているケースも多いことがわかります。中小企業は自社のニーズに合わせて、最適なM&A支援機関を選ぶ土台ができつつあります。
M&A支援機関を活用するメリット
①料金体系が明確だから安心
M&A支援機関として登録するためには、一定の要件を満たす必要があります。その中には、料金体系が明確であることも含まれています。これにより、依頼者は事前に料金を把握することができ、予期せぬ追加料金などの心配がなくなります。明確な料金体系は、依頼者にとって安心感をもたらし、信頼性の向上にも寄与します。
②中小M&Aガイドラインに沿っているため安心
M&A支援機関としての登録要件には、中小M&Aガイドラインに従っていることも求められています。このガイドラインは、M&Aの過程での公平性や透明性を確保するためのものであり、これに従っている機関を利用することで、不利な条件での契約を避けることができるなど、依頼者は、公正な取引が行われることを期待することができます。
③売り手も買い手も事業承継引継ぎ補助金を利用してM&Aができる
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業や小規模事業者の事業承継やM&Aを支援するための補助金です。この補助金は、経営者の高齢化や後継者不在といった問題に対応するために設けられており、M&Aの際に専門家の活用が必要な場合、M&A支援機関のサポート費用が補助の対象になります。具体的には、M&A未成約の場合でも最大300万円、M&Aが成約した場合は最大600万円の補助が受けられます。これにより、売り手も買い手も、M&Aの際の負担を軽減することができます。
以上、M&A支援機関のメリットについての解説を行いました。M&A支援機関を活用することで、これらのメリットを受けながら、よりスムーズなM&Aを実現することができます。
M&A支援機関の登録を検討されている方へ。要件や申請の流れ、必要情報について解説
ここでは、M&A支援機関の登録に関する情報を解説します。
登録に必要な要件
M&A支援機関としての登録を行うためには、主な要件について記載させて頂きます。
・中小M&Aガイドラインの遵守宣言とHPへの掲載
中小M&Aガイドラインの遵守を明確に宣言することが求められます。
中小M&Aガイドラインの遵守に関する宣言を自社のホームページに掲載する必要があります。
この際、ホームページは一般に閲覧可能な状態であることが条件となります。
・FA・仲介フィーの料金表の提出
FA(フィナンシャル・アドバイザー)や仲介業者としての料金表(料金を定めた規程やガイドライン等)を提出することが必須です。
これらの要件を満たすことで、M&A支援機関としての信頼性や透明性が確保され、依頼者や関係者からの信頼を得ることができます。
登録手続きの流れ
M&A支援機関としての登録を行うための手続きは以下の通りです。
①公募要領の確認
公式サイトで公募要領を確認し、必要な書類や情報を整理します。
中小企業庁「M&A支援機関」のHPは【こちら】
②フォームから申請内容や申請書の提出
申請は全てオンライン上で実施されます。所定の申請書と必要書類を提出します。
③事務局による審査
申請内容の審査が行われます。もし不備などがあればメールにて、不備の内容や再申請の案内が事務局より届きます。
③審査結果の通知と中小企業庁HPにて公表
審査結果が公表され、登録が完了します。
申請から登録・公表までどのくらいかかる?
公募期間中、毎月月末までに申請のあったものについて、翌月中旬頃を目途に登録 FA・仲介業者を公表する形で予定されています。ただし、申請内容や書類に不備・不足がある場合は、申請が受理されないことがあります。そのため、公募要領や登録事務局の公式サイトに掲載される参考資料を十分に確認し、不備のないように申請を行うことが重要です。
登録に必要な情報
M&A支援機関として登録を行う際には、以下の情報や資料を提出する必要があります。
申請に必要な情報についての、テンプレートやひな形も提供されていますので、詳しくは、中小企業庁のHPもぜひご覧ください。
中小企業庁「M&A支援機関」のHPは【こちら】
・基本情報の提出
登録を希望するFA・仲介業者の基本情報をフォームより入力します。
・中小M&Aガイドライン遵守宣誓
中小M&Aガイドラインの遵守を宣誓することが求められます。また、この宣誓内容を自社のホームページに掲載した際のURLも提出が必要です。宣誓文のサンプルは中小企業庁のホームページからダウンロード可能です。
・事業概要の提出
M&A支援の実施体制などがわかる資料を提出します。これには、会社の案内やパンフレットなどが使用できます。
・料金表の提出
料金に関する情報を記載した料金表を提出します。また、料金表の登録に使用するフォーマット(テンプレート)は中小企業庁のホームページからダウンロードできます。
・実在確認資料
法人や個人が実際に存在していることを確認するための資料を提出します。一般的には、履歴事項全部証明書などの謄本が使用されます。
・現在の活動状況
申請フォームを使用して、現在の活動状況を詳細に入力します。
これらの情報や資料を正確に提出することで、M&A支援機関としての登録がスムーズに進行します。正確な情報提供は、登録の信頼性を高めるためにも非常に重要です。
まとめ
M&Aは企業の成長や事業再編の重要な手段として位置づけられていますが、その成功の鍵を握るのは適切なサポートと情報です。M&A支援機関とその登録制度は、企業や個人が安心してM&Aのプロセスを進めるための信頼の証となります。この記事を通じて、M&A支援機関の役割や登録制度の意義、そしてそれを活用することのメリットについて理解を深めていただけたことを願っています。M&Aを検討する際は、正確な情報と専門的なサポートを受けることで、より確実な成果を得ることができるでしょう。
当社もMA支援機関の登録事業者です。MAでお悩みでしたらお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。