会社を売却する過程で直面するのが負債や借入の問題です。
この記事では、それらの借入の種類と、売却時の取り扱いについてご紹介させて頂きます。
まず、企業の資金調達は、短期的な運転資金や長期的な投資に関連して、さまざまな方法で行われます。
金融機関からの借入の種類
金融機関からの借入は大きく2つにわかれます。
短期借入
これは、1年以内に返済されるもので、主に運転資金として活用されることが多い借入です。
例としては、手形貸付や当座借越があります。
これらは流動負債として企業の財務諸表上に計上されます。
長期借入
返済期間が1年を超えるものを指します。
固定負債として計上され、主に長期の投資や事業拡大に関連する資金調達のために行われます。
借入は多くの会社様がされており、決して珍しいことではありません。
しかし、会社の売却を考える際には、これらの負債の扱いが鍵となります。
会社を売却時における借入金の取扱いとは?
売却時における会社内の負債や借入の取り扱いは、売却の方法やスキームによっても異なる取り扱いとなります。
株式譲渡の特徴と借入の取扱い
株式譲渡は、会社の全体、つまり株式全体を売却する方法です。
この方法を選択すると、負債や借入はそのまま買手の会社に引き継がれることになります。
買手側はデューデリジェンスを通じて、詳しくリスクや負債を調査することが不可欠となります。また、従業員関連の負債、特に退職金に関しても取り扱いが必要です。
これは売却価格の算定や清算の過程で非常に重要な要因となります。
事業譲渡とその特徴
事業譲渡は、会社の一部または特定の事業部門だけを切り離して売却する手法です。
この場合、関連する負債や借入は元の会社に残る形となり、売却によって得られた資金を使用してこれらの債務を返済する選択ができます。
しかし、特定の債権や債務を買手側に移行させる場合は、それぞれの契約の再締結や、関連する第三者の同意取得が必要となります。
事業譲渡は、プロセスがやや複雑となり、時間がかかる場合がありますが、買手側にとっては特定の事業部門だけの取得というメリットがあります。
一方、売手側にとっては、全体の売却が難しい場合の有効な選択肢として位置づけられます。
保証には種類がある?連帯保証とは?
売り手の社長様にとっては、連帯保証がどうなるのかは、特に気になる点かと思います。
連帯保証についてより具体的にご紹介させて頂きます。
そもそも連帯保証とは?
連帯保証は、借入金の返済を主債務者が果たせない場合に、連帯保証人がその責任を全額負う契約です。
通常の保証とは異なり、債権者は連帯保証人に対して直接、返済の要求をすることができます。
なぜ連帯保証を必要とするのか?
主に金融機関がリスクを軽減するために、法人が借入を行う際に連帯保証を要求します。
これにより、経営者がその返済に対する責任感を持ち、会社の健全な経営を続けることが期待されます。
また、これは金融機関のリスクヘッジの一環としての位置付けでもあります。
連帯保証債務と通常の保証債務の違い
連帯保証と通常の保証には、以下の主な違いがあります。
・催告の抗弁権
通常の保証では、主債務者の財産から先に返済を求めることができる権利がありますが、連帯保証にはその権利は存在しません。
・検索の抗弁権
保証人が主債務者に返済を求めることができる権利ですが、連帯保証人にはこの権利は付与されません。
・分別の利益
複数の保証人がいる場合に、均等に返済負担を分けることができる権利。連帯保証では、任意の保証人から全額の返済を求めることができるので、この権利も適用されません。
会社売却時の連帯保証の取り扱い
会社を売却する際、経営者が連帯保証人としての立場にある場合、その保証契約は解除されることが一般的です。売却先の企業や経営者との契約内容や、金融機関との再交渉など、複数の手続きを経て、経営者の連帯保証の責任が免除されます。
株式譲渡の場合と連帯保証
記事の冒頭でご紹介した通り、株式の所有者は会社の実権を握ることとなり、企業の負債も買い手に移転します。しかし、100%の株式が移転されるわけではなく、一部の株式を譲渡する場合、全ての債務が移転されるわけではありません。これは、連帯保証の解除を含む債務の取扱いにも影響します。よって、M&Aの前段階での交渉が重要となります。
事業譲渡の場合と連帯保証
この場合、事業の資産や負債のみが移転し、株式は移転されません。そのため、既存の法人格やその法人の借入金は元の所有者のもとに残ることが一般的です。
会社の売却と連帯保証の解除についてのまとめ
連帯保証の解除は、M&Aの際に大きな関心を集めるテーマとなっています。
株式譲渡の際、多くのケースで負債が移転するため、元のオーナーの連帯保証は基本的には解除されることとなりますが、自動的には行われません。
金融機関との新しい合意や謄本の変更登記の手続きが必要です。
事前の交渉や契約書の内容も重要となります。