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会社売却

東京で長く続く事業所はどの業種に多い?開設時期別データで比較

長く続く東京の事業所|開設時期と業種で読む

東京には、同じ場所で何十年も仕事を続けてきた工場や店があります。ただ、街で見かける老舗の印象と、統計に表れる事業所の開設時期は、必ずしも同じではありません。

2021年6月1日時点の経済センサスでは、東京都の民営事業所62万8,239か所のうち、開設時期が1984年以前の事業所は14万9,237か所でした。総数で割ると23.8%です。産業中分類別に比率を計算すると、宗教、ゴム製品製造業、学校教育、金属製品製造業などが上位に入ります。

この「開設時期」は、会社の創業年や法人の設立年を表すものではありません。移転や法人成り、事業譲渡などによって、統計上の時期が変わる場合があります。事業承継を考える際は、業界の事業所構成を知る資料として使い、自社の歴史や経営者の年齢とは分けて読むと役立ちます。

東京では約4分の1が1984年以前の開設

総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」の第23表から、東京都と全国の数値を取り出しました。対象は民営事業所で、株式会社などの会社のほか、個人経営、会社以外の法人、法人でない団体を含みます。国や地方公共団体の事業所は含みません。また、個人経営の農業・林業・漁業、家事サービス業、外国公務は、調査対象から除かれています。

ここでは、最も古い開設時期区分である「1984年以前」に注目します。記事独自に「創業30年」「創業100年」といった線を設けたものではなく、公表表の区分をそのまま使っています。

地域民営事業所総数1984年以前の開設総数に占める割合
東京都628,239149,23723.8%
全国5,156,0631,426,97127.7%

出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」第23表。事業所数は公表値、割合はKAKEHASHIによる計算。分母は開設時期不詳を含む総数。小数第2位を四捨五入。

東京都の割合は、全国より3.9ポイント低い水準です。この差は「東京の会社は長続きしない」という意味ではありません。新しい事業所の多さ、産業の構成、拠点の移転、経営組織の変化などが数字に関係し得ますが、この表だけでそれぞれの影響を分けることはできません。

1984年以前という区分には、1984年に開設した事業所も、それより何十年も前に開設した事業所も入ります。正確な開設年は分からないため、この区分から平均年齢を求めたり、「創業100年の老舗が何社ある」と数えたりすることはできません。

なお、これは2021年の姿です。2026年の現況をそのまま示す数字ではありません。2026年10月29日に公表資料を確認した時点では、2024年の経済センサス‐基礎調査の確報表に同じ開設時期別の表がなく、比較には2021年活動調査を使用しています。2026年活動調査の結果は、総務省統計局の案内では2027年5月末に速報、同年9月頃から順次確報が公表される予定です。

開設時期の古い事業所が多い業種を比べる

業種ごとの違いを見るため、東京都の産業中分類のうち事業所数が1以上ある95分類について、「1984年以前の事業所数÷その業種の事業所総数」を計算しました。上位10業種は次のとおりです。比率の高い順であり、事業所の数が多い順ではありません。

順位業種(産業中分類)事業所総数1984年以前割合
1宗教5,4724,72786.4%
2ゴム製品製造業61140566.3%
3学校教育2,4901,60264.3%
4金属製品製造業4,9083,14764.1%
5パルプ・紙・紙加工品製造業1,21076062.8%
6非鉄金属製造業42926962.7%
7鉄鋼業35122062.7%
8木材・木製品製造業(家具を除く)33519959.4%
9家具・装備品製造業1,13263456.0%
10協同組織金融業1,09561255.9%

出典:同調査第23表よりKAKEHASHI計算。東京都・民営・単独/本所/支所の総数・経営組織総数。各業種の分母には開設時期不詳を含む。順位は丸める前の割合で判定し、表示は小数第1位。

東京都の1984年以前開設事業所の割合上位10業種。宗教86.4%、ゴム製品製造業66.3%、学校教育64.3%など

最も高い宗教は86.4%でした。この分類には寺院や神社などの事業所が含まれます。学校教育も上位に入りますが、今回の表は民営のみで、国や地方公共団体の事業所を含まない集計です。こうした分類を含む表を「中小企業の老舗ランキング」と呼ぶと、対象が変わってしまいます。

会社売却を検討する読者にとって身近な製造業では、ゴム製品、金属製品、紙加工品などが上位にあります。たとえば金属製品製造業は4,908事業所のうち3,147事業所が1984年以前の開設です。東京都の同分類に、古い開設時期の拠点が多く残っていることは数字から確認できます。

ただし、設備を何年使っているか、技術者の平均年齢が何歳か、受注が安定しているかまでは分かりません。開設時期が古い工場でも設備を更新している場合がありますし、開設時期が新しい工場でも、移転前からの技術や顧客を引き継いでいる場合があります。

製造業全体では半数ほどが1984年以前

産業大分類の製造業全体では、3万8,766事業所のうち1万9,431事業所が1984年以前で、割合は50.1%です。東京都全産業の23.8%とは差があります。ただ、製造業の中にも多くの業種があり、業務内容や立地の事情は同じではありません。

大分類の50.1%は、中分類の比率を単純に平均した数字ではありません。公表された製造業全体の事業所数を分母に、同じ大分類の1984年以前の事業所数を分子として計算した割合です。事業所数の小さい業種と大きい業種を同じ重さで平均する方法とは、結果が異なります。

自社と近い業界を確認する際も、「製造業だから長く続く」「情報通信業だから歴史が浅い」と大きくまとめず、実際の主な事業に近い中分類を見る方が、比較の対象をそろえやすくなります。

割合と件数では、見えてくる業種が変わる

長い歴史のある店や会社と接する機会を考えるなら、割合だけでなく件数も参考になります。上位比率の表に飲食店はありませんが、1984年以前の飲食店は都内に1万1,368事業所あり、件数では2番目に多い分類です。

業種(産業中分類)事業所総数1984年以前割合
不動産賃貸業・管理業48,44818,93239.1%
飲食店67,18511,36816.9%
その他の小売業31,6938,50526.8%
洗濯・理容・美容・浴場業29,2888,34328.5%
飲食料品小売業26,6258,09930.4%

不動産賃貸業・管理業は1万8,932事業所で、1984年以前の件数が最も多くなっています。飲食店、その他の小売業、洗濯・理容・美容・浴場業なども続きます。これらは一つの会社に複数の拠点がある場合を含むため、そのまま企業数やオーナー数には置き換えられません。

たとえばゴム製品製造業は、1984年以前の割合が66.3%と高いものの、該当する事業所数は405です。飲食店は16.9%で1万1,368事業所です。「同じ業種の中で古い拠点が占める割合」と「古い拠点が都内にいくつあるか」は別の問いだと分かります。

自社の業種の数字を見る際は、長く続いている店や工場が、周囲の暮らしや取引の中でどのような役割を担っているかにも目を向けられます。固定客の注文、近隣への配達、小口の加工依頼など、ご自身には日常でも、次の経営者が知っておきたい仕事があります。日々頼まれていることを一つ挙げると、会社の沿革だけでは伝わらない強みを説明するきっかけになります。

「この場所の開設」と「会社の創業」はどう違うのか

経済センサスの用語解説では、開設時期は会社や企業の創業時期ではなく、事業所が現在の場所で事業を始めた時期を指します。また、同じ場所で仕事を続けていても、経営組織や事業の所有者が変わることで、新しい開設時期として扱われる場合があります。

この違いは、事業承継の話をするときに特に関係します。見た目も屋号も変わらない店を別の経営者が引き継いだ場合、街の人には長く続く店として認識されていても、統計では引継ぎ時点が開設時期になることがあります。

起こったこと開設時期を読む際の注意
別の場所へ拠点を移した現在の場所で事業を始めた時期を見るため、会社の創業年とは一致しない
個人経営から株式会社になった法人成りした時期を開設時期とする扱いがある
個人経営の店を経営権の譲渡で引き継いだ経営者が交代した時期を開設時期とする。ただし相続による引継ぎはこの扱いに含まれない
新設合併や法人の分割で新たな法人が設立されたその時期を開設時期とする
事業譲渡・吸収合併で別法人の所有になったその時期を開設時期とする

出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 用語の解説」8「事業所の開設時期」をもとに整理。個別の取引の法的効果を示す表ではありません。

このため、会社紹介で「創業60年」と説明している企業が、開設時期別の表では新しい区分に入っていても、直ちにどちらかが間違いとはいえません。会社の起点、法人の設立、現在地への移転という異なる出来事を示している可能性があります。

会社の歴史を後継者や譲受候補へ伝える場合は、創業年だけを大きく記載するより、「創業」「法人設立」「現在地への移転」「主力事業の開始」「事業を引き継いだ時期」を分けた年表にすると、誤解が生じにくくなります。年月があいまいな場合は、分かる範囲と確認できていない範囲を分けておけば構いません。

新しい開設時期が多いからといって、企業が短命とは限らない

東京都の情報サービス業では、1万5,070事業所のうち1984年以前は682事業所で、割合は4.5%です。金属製品製造業の64.1%と並べると大きな違いがあります。しかし、この差だけから「情報サービス業の会社は続きにくい」と判断することはできません。

今回の表にあるのは、調査日に存在していた事業所の開設時期です。過去に開設したすべての事業所を追跡し、何年後に何割が残ったかを調べた表ではありません。会社の生存率を求めるには、出発時点の対象と、その後の存続状況を対応させた別のデータが必要です。

2021年時点の東京と全国の民営事業所を開設時期別に比較。1984年以前は東京23.8%、全国27.7%

開設時期のグラフも、横軸を時間の流れとして読む折れ線グラフとは違います。「1984年以前」は長い期間をまとめた区分で、「1985~1994年」は10年間、「2021年」は調査日の6月1日までです。区分の件数をそのまま比べて「開業が減っている」と結論づけると、期間の長さの違いまで増減に含めてしまいます。

また、古い開設時期の事業所が多い業種についても、「新規参入がない」「市場が縮んでいる」「後継者がいない」とは限りません。事業所の開設、移転、組織変更、休廃業など複数の動きが重なった結果であり、個々の理由はこの集計から判別できません。

数字を経営判断に使うなら、「開設時期が古い拠点が多い」という確認できる事実と、「設備の更新や人の引継ぎを話し合う機会がありそうだ」という検討のきっかけを分けておくと、統計に無理な役割を持たせずに済みます。

自社の歴史を、引継ぎの話につなげるには

開設時期の表は、売却価格や承継方法を決める資料ではありません。ただ、長く同じ場所で続けてきた仕事について、後継者と何を話すかを考える入口にはなります。年数そのものを価値に換算するのではなく、その間に積み重なった仕事を具体的に整理していきます。

場所に結び付いたものを確認する

長く使っている工場なら、取引先までの距離、搬入経路、設備の配置、協力工場との連携など、今の場所だから成り立っている仕事があるかもしれません。店であれば、近隣の顧客が来店する理由、季節の催事、周辺の事業者との関係などが考えられます。

たとえば工場の移転を検討するなら、搬入できる車両、近隣の協力工場との往復、従業員の通勤など、今の仕事を支える条件を書き出せます。店舗であれば、来店しやすい時間帯や配達先との距離も材料になります。残したい条件と、場所が変わっても続けられる仕事が分かると、譲受候補と拠点の扱いを相談しやすくなります。

設備の年数と、事業所の開設年を分ける

事業所が1980年からあることと、機械が1980年製であることは別です。古い開設時期の工場に新しい設備があることも、最近移転した拠点で以前の設備を使っていることもあります。開設年から更新費用を推測せず、主要設備の取得時期、点検の状況、今後の更新予定を確認します。

すべてを一度に一覧化できなくても、止まると納期に影響する設備や、修理を頼める人が限られる設備から確認する方法があります。承継をすぐ実行しない場合にも、日々の仕事を続けるための備えとして使える整理です。

長年の関係を、特定の人だけが分かる状態にしない

取引先との付き合いが長いほど、発注時の細かな注意や、品質についての約束が、口頭のやりとりに残っていることがあります。関係が続いてきた背景を尊重しながら、後継者が困りそうな場面を一緒に振り返ると、引継ぎの負担を減らせます。

資料は初めから完璧でなくても構いません。直近の注文を一つ選び、誰が何を確認したか、例外があったときにどう判断したかをメモするところから始められます。経験や判断を伝える方法は、事業承継で経営ノウハウを引き継ぐ方法で整理しています。

架空の2社で考える、開設時期の読み違い

同じ1980年創業の会社でも、その後の経緯が違えば、統計上の開設時期は違うものになります。以下は定義を理解するための架空の例で、実在企業の事例や統計の個票ではありません。

A社は1980年から同じ場所で金属部品を製造しています。事業所の開設は古い区分ですが、設備は順次入れ替えており、後継者も既に日常の判断を担っています。この会社について、開設時期が古いという理由だけで設備が古い、承継が遅れていると評価することはできません。

B社も1980年創業ですが、事業の拡大に合わせて2018年に工場を移しました。現在地での開設時期は新しくても、移転前からの顧客や技術は残っているかもしれません。新しい開設区分に入ることは、会社が2018年にゼロから始まったことを意味しません。

二つの会社を比べる際に確かめたいのは、過去の長さだけではなく、現在の仕事を誰が担い、どんな顧客がいて、どの設備で生産し、次の経営者が何を引き継げるかです。統計の比率は業界の背景を説明できますが、この個別確認を省くことはできません。

公表表を使うときに確認したいこと

今回の比率は公表された事業所数を使った記事内の計算で、国や東京都が公表した「老舗企業率」ではありません。計算の手順を示しておくと、別の業種や地域を確認するときにも同じ条件で比べられます。

  • 地域は東京都全体。東京23区だけではなく、市町村・島しょ部を含む。
  • 対象は民営事業所。会社企業だけでなく、個人経営や会社以外の法人等も含む。
  • 単独・本所・支所は総数を選び、同じ会社の複数拠点もそれぞれ数える。
  • 産業は事業所の主な事業による中分類。会社全体の主業と必ず一致するわけではない。
  • 分子は1984年以前の開設に該当する事業所数。分母は各業種の総数で、開設時期不詳も含める。
  • 割合は分子÷分母×100。順位は丸め前、本文と図表は小数第2位を四捨五入する。

東京都全体なら、149,237÷628,239×100=23.7548…%で、表示は23.8%です。全国との差は、丸め前の東京都の割合から全国の割合を引き、同じように小数第1位まで示すとマイナス3.9ポイントになります。「3.9%減」と書くのは別の計算なので使っていません。

開設時期不詳は東京都で1万6,208事業所あります。仮に不詳を除いた61万2,031事業所を分母にすると、1984年以前の割合は24.4%となります。本稿の23.8%と計算の対象が違うため、両方を説明なしに混ぜて比較しないようにしています。不詳の事業所が実際にいつ開設したかは分かりません。

なお、産業分類を十分に特定できなかった事業所は、上位の分類に含まれる場合があります。東京都の中分類95業種の総数を足すと62万8,035事業所となり、全産業の62万8,239事業所とは一致しません。全産業や製造業全体の比率には、それぞれの階層で公表された総数を使っています。

表の記号も確認が必要です。「-」は該当する数字がない場合などに使われ、「X」は秘匿を表します。秘匿された人数や金額を、ゼロとみなして比率を計算してはいけません。本稿の上位表と比較表に用いた事業所数は、公表された数値が確認できる項目です。

よくある疑問

古い取引の記録が少ない会社でも、歩みや強みを伝えられますか

手元に残る受注台帳、製品の写真、古い図面、設備の更新記録などから整理できます。長く勤める従業員と「どの仕事が転機になったか」「なぜお客様との取引が続いたか」を振り返る方法もあります。記憶だけの話は時期や経緯を断定せず、確認できた資料と分けて記録します。すべての年を埋める必要はありません。今も受注につながっている技術や対応を説明できることが、後継者や譲受候補にとって役立ちます。

長年のお客様との関係を、次の経営者へどう引き継げばよいですか

連絡先に加えて、相手が大切にしている品質や納期、過去に対応を変えた理由を残すと、後任が会話を続けやすくなります。たとえば「急ぎの注文は先に電話をいただく」「図面を変える前にこの担当者と相談する」といった普段の約束です。後任が決まったら、紹介、同行、後任が主に対応する期間を設け、取引先の反応も見ながら進められます。会社売却を検討中の場合は、顧客名や取引内容を渡す範囲と、承継を伝える時期を支援者と相談してください。

長年使ってきた屋号やブランドを、売却後も残す相談はできますか

屋号やブランドを残したい希望は、候補先を探す段階から相談先へ伝えられます。「この名前だから注文をいただける」「地域のお客様に親しまれている」など、続けたい理由も添えると、買い手と話し合いやすくなります。使用している商標やロゴの権利者、看板・包装・ウェブサイトでの使い方を確認し、何をいつまで残すかを交渉します。希望に応じてもらえるかは相手の方針によるため、最終的な約束は契約内容と照合してください。

開設年を入口に、残したい仕事を具体的にする

東京の産業には、古い開設時期の拠点が多い業種と、新しい開設時期の拠点が多い業種が混在しています。割合を見ると製造業などの特徴が分かり、件数を見ると飲食店や不動産賃貸業・管理業など別の姿も見えてきます。

その数字を自社に当てはめる際は、会社の創業年、現在地への移転、経営組織の変更を切り分けると、積み重ねてきた仕事を正確に伝えられます。今の場所、設備、人、顧客との関係のうち、何を次へ残したいかを整理することは、親族内承継、従業員承継、第三者承継、事業を終える場合のいずれにも共通する準備になります。

会社売却も選択肢として考える場合は、会社売却前に整理しておきたいことで準備の全体像を確認できます。今すぐ方針を決める必要はなく、分かっていることを相談先に伝え、確認が必要な部分を一緒に整理する進め方もあります。

主な出典

※本記事は公表統計をもとにした一般的な情報提供です。特定の企業の存続期間、後継者の状況、売却可能性や価格を判断・保証するものではありません。統計や制度は更新されることがあります。個別の承継・売却・廃業の判断は、自社の状況に応じて税理士、弁護士、M&Aや事業承継の専門家等にご確認ください。

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