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東京の製造業はどこに多い?23区の事業所分布と事業承継

東京の製造業 23区の事業所分布と事業承継

東京の製造業は、工場が多い区だけを見ても全体像をつかめません。事業所の数、そこで働く人の数、地域の全産業に占める割合では、上位に並ぶ区が変わります。会社や工場の引継ぎを考えるときにも、この違いを踏まえると、自社の周りにある取引や技術のつながりを整理しやすくなります。

2021年の経済センサスを基にした東京都の公表表では、製造業の民営事業所は都内に38,766所、区部に32,281所あります。23区の内訳では大田区が3,584所で最多です。一方、各区の全産業に占める製造業の割合は墨田区が最も高く、製造業の従業者数では千代田区が上位になります。同じ「製造業が多い」でも、見ている指標は違います。

本記事は、地域の産業構造を知るために2021年の事業所統計を使い、承継の状況は帝国データバンクの2025年調査で別に確認します。2026年10月28日に資料を確認しました。2021年の数値を現在の工場数として扱わず、区ごとの後継者不在率や売却価格も推計していません。

東京の製造業を見る三つの数字

事業所数は拠点の数、企業数は会社の数

経済センサスの事業所は、一定の場所で経済活動を行う単位です。一つの会社が本社と複数の工場を持っていれば、会社の数と事業所の数は一致しません。反対に、同じ建物に複数の事業者が入っている場合もあります。本記事で「3,584所」と表すときは、3,584社の売却候補や3,584棟の工場を意味しません。

製造業という産業分類も、金属加工だけを指すものではありません。食品、印刷、繊維、化学、機械など幅広い事業が含まれます。また、製造業に分類される本社・管理部門を含み得るため、事業所数だけで生産設備の立地を断定することもできません。区の数字を自社と比べるときは、製品分野や工程が近いかを別に確かめます。

従業者数は働く人の分布を捉える数字

同じ千事業所でも、一つの拠点の人数が違えば、雇用の広がりは変わります。そこで、事業所数に加えて従業者数を見ます。ここで使う従業者数は統計上の定義に沿うものであり、正社員数や工場の現場作業者数だけを抜き出した数字ではありません。会社全体の従業員数とも区別する必要があります。

従業者数を事業所数で割った一事業所当たりの人数は、地域の構造を知る補助指標です。ただし平均なので、一部の大きな拠点の影響を受けます。平均が十人だから十人規模の工場が典型的に存在する、とまでは言えません。規模別の分布や中央値を示しているわけではないためです。

地域内の割合で見ると、小さな区の特徴も分かる

事業所数の順位は、その区にある経済活動全体の大きさにも左右されます。製造業が地域の中でどの程度の位置を占めるかを見るため、本記事では「製造業の事業所数÷同じ区の全産業の民営事業所数」を計算しています。面積当たりの密度でも、全国の製造業に占める割合でもありません。

例えば、総事業所数が多い区では、製造業の数が多くても割合が低い場合があります。逆に、総数が比較的少ない区で製造業の割合が高ければ、その地域の事業所構成に製造業が強く表れていると読めます。数と割合を一緒に見ることで、単純な順位だけでは見えない違いが分かります。

指標 見えること この数字だけでは分からないこと
事業所数 活動する拠点の数 企業数、工場建物数、売却候補数
従業者数 各拠点で働く人の集積 正社員数、現場作業者だけの人数
区内の製造業割合 地域の事業所構成における位置 後継者不在率、承継の緊急度
一事業所当たり従業者数 集計上の平均的な拠点規模 中央値、企業規模、生産性

事業所数では大田区、足立区、墨田区が上位

上位五区で区部の約四割を占める

製造業の事業所数は、大田区3,584所、足立区2,609所、墨田区2,528所、葛飾区2,329所、台東区2,241所の順です。上位五区を足すと13,291所で、区部の32,281所に対して41.17%になります。大田区だけに集中しているのではなく、複数の地域にまとまった拠点が分布していることが分かります。

大田区は区部の製造業事業所の11.10%を占めます。ただし、この割合をそのまま生産額の割合や技術力の高さと読み替えることはできません。小さな工場と大きな管理拠点が、事業所数ではどちらも一所として集計されるためです。生産の役割を調べたい場合は、製品、工程、取引先、設備の状況を重ねて確認します。

足立区、墨田区、葛飾区、台東区の数が大きいことからも、承継を考える際には都心の本社機能だけでなく、各地の事業拠点とのつながりを見る意味があります。これは統計から見える分布の話であり、各区の事業所が互いに取引していることを示すデータではありません。実際の外注関係は、自社の仕入台帳や工程表から確かめます。

2021年の製造業事業所数は大田区3584、足立区2609、墨田区2528、葛飾区2329、台東区2241
東京都統計年鑑令和6年・第8-1表(2021年経済センサス)より作成。民営事業所の数であり、企業数ではありません。

隣の区にある工程も引継ぎの対象になる

仮に、自社では切削だけを行い、熱処理、表面処理、検査の一部を外部へ依頼しているとします。この場合、自社工場が残るだけでは従来の納期や品質を維持できないことがあります。承継に向けて整理したいのは住所の一覧だけでなく、どの部品をどこに頼み、代替先があり、誰が段取りを理解しているかという仕事の流れです。

この例は特定企業の事例ではなく、確認のための想定です。統計上の集積は、周辺に同業・関連事業者を探すきっかけにはなりますが、依頼できる設備や空き能力を保証しません。近隣の企業が存在していても、材質、精度、ロット、認証、納期などが合うとは限らないため、承継先と実務の条件をすり合わせます。

地域内の製造業割合は墨田区16.97%、荒川区15.62%

事業所数の順位と、地域内の割合の順位は一致しません。割合で見ると墨田区16.97%、荒川区15.62%、葛飾区14.93%、大田区12.56%、足立区11.28%が上位です。荒川区の製造業事業所は1,304所ですが、全産業の民営事業所8,346所に対する比率では高い位置にあります。

この差は、「件数が少ない区は製造業との関係も薄い」という読み方を避ける手がかりになります。荒川区は件数の上位五区には入らなくても、区内の事業所構成に占める製造業の重みが大きい地域です。支援の必要性を考える際も、対象数だけでなく、地域の中での位置を並べて見ることが役立ちます。

ただし、製造業の割合が高いことは、後継者不足が深刻であることと同じではありません。製造業の経営者の年齢や後継者の決定状況は、この事業所統計には含まれていません。割合の高い区を「承継リスクが高い区」と名付けることはせず、地域産業の構造を示す指標として使います。

区内の全産業に占める製造業の割合は墨田区16.97%、荒川区15.62%、葛飾区14.93%、大田区12.56%、足立区11.28%
同表を基に製造業事業所数÷各区の全産業の民営事業所数で計算。2021年6月1日現在。後継者不在率ではありません。

従業者数の順位が変わるのはなぜか

製造業の従業者数では千代田区58,310人、港区43,670人、大田区33,659人が上位になります。事業所数では大田区が最多だったのに対し、従業者数では違う区が先に並びます。会社の管理機能や規模の大きな事業所などを含む分布を見ている可能性があり、工場の件数だけで説明できる数字ではありません。

一事業所当たりの従業者数を計算すると、千代田区49.6人、港区38.6人、大田区9.4人です。大田区は事業所の裾野が広い一方、千代田区や港区は集計上の一拠点当たりの人数が多いという違いが読み取れます。ただし、ここから各区の中小企業比率や生産性の優劣を直接判断することはできません。

売却や承継の相談資料にこの比較を使う場合は、「会社の規模」と「地域にある事業所の平均」を混ぜないことが大切です。例えば、本社は港区、製造拠点は大田区という会社なら、会社全体の従業員をどちらか一方の区だけで説明すると実態から離れます。自社の各拠点の仕事と人数を一覧にした上で、地域の数字を背景として添えます。

23区の製造業事業所数・従業者数を一覧で確認

次の表は、製造業の民営事業所数が多い順に並べています。区内割合は各区の全産業の民営事業所数を分母にし、一事業所当たり従業者数は小数第一位に丸めました。割合や平均はKAKEHASHI編集部の計算です。区部合計には境界未定地域を含むため、23区の数値の合計と区部合計はわずかに異なります。

区 製造業事業所数 製造業従業者数 区内割合 一事業所当たり
大田区 3,584所 33,659人 12.56% 9.4人
足立区 2,609所 20,025人 11.28% 7.7人
墨田区 2,528所 21,439人 16.97% 8.5人
葛飾区 2,329所 14,491人 14.93% 6.2人
台東区 2,241所 18,628人 9.79% 8.3人
江戸川区 2,197所 16,668人 11.11% 7.6人
江東区 1,776所 21,810人 9.13% 12.3人
板橋区 1,629所 20,744人 9.45% 12.7人
品川区 1,310所 25,207人 6.58% 19.2人
荒川区 1,304所 8,597人 15.62% 6.6人
中央区 1,286所 30,671人 3.77% 23.8人
千代田区 1,176所 58,310人 3.27% 49.6人
港区 1,132所 43,670人 2.76% 38.6人
新宿区 1,107所 19,515人 3.35% 17.6人
文京区 937所 13,511人 6.81% 14.4人
北区 856所 11,797人 7.31% 13.8人
渋谷区 822所 11,034人 2.47% 13.4人
練馬区 776所 5,863人 3.81% 7.6人
豊島区 694所 7,741人 3.63% 11.2人
世田谷区 687所 4,976人 2.50% 7.2人
目黒区 513所 4,929人 4.18% 9.6人
杉並区 439所 3,345人 2.28% 7.6人
中野区 344所 3,094人 2.88% 9.0人

表から自社の区を見つけたら、まず事業所数と従業者数の両方を確認します。その上で、同程度の事業所数なのに従業者数が違う区、総数は少なくても区内割合が高い区を比べると、指標の役割がつかめます。順位を事業価値の格付けにするのではなく、自社の説明に足りない情報を探すために使うのが適切です。

なお、この表は2021年6月1日時点の構造を示します。それ以降に開設・閉鎖・移転した拠点は反映されません。2026年現在の候補先や支援対象を調べる際は、公式な事業者情報や現地の状況などで存続と事業内容を確認してください。新しい統計がある場合も、対象や産業分類が揃うかを確かめてから比較します。

東京の製造業の後継者不在率は37.8%

帝国データバンクの2025年調査では、東京都の製造業の後継者不在率は37.8%で、前年の40.4%から2.6ポイント低下しています。東京都の全業種47.9%と比べると低い水準ですが、これは同社が承継の実態を分析できた企業を対象とする調査結果です。都内すべての製造事業所を調べた割合ではありません。

地域の事業所統計とこの調査では、調査時点も対象単位も異なります。そのため、大田区の3,584所に37.8%を掛けて「後継者のいない工場数」を求めることはしません。同じ会社が複数の事業所を持つ場合もあり、区別の後継者の状態も確認できないからです。二つの資料は、地域構造と承継の動きを別々に見るために並べています。

東京都の調査区分 2024年 2025年 変化
製造業 40.4% 37.8% 2.6ポイント低下
全業種 51.1% 47.9% 3.2ポイント低下

出典:帝国データバンク「東京都・後継者不在率動向調査(2025年)」。同社が承継状況を分析可能な都内企業を対象。経済センサスとは母集団が異なります。

後継者が「いる」ことと、引継ぎの準備が終わっていることも同じではありません。候補者が決まっていても、顧客の窓口、見積り、設備の使い方、品質判断などが現社長に集中していれば、移行に時間が必要です。逆に後継者が未定でも、親族、従業員、第三者への承継を比較する準備から始められます。

工場や製造事業を残すために、何から整理するか

技術を「人」「設備」「取引」に分けて書き出す

製造業の強みを伝えるとき、「長年の経験がある」だけでは、何を引き継げるかが見えにくくなります。人が担う判断、設備が実現する加工、取引先と共有している仕様や品質基準に分けて整理すると、候補者が理解しやすくなります。ここでは価格評価ではなく、引継ぎに必要な情報の所在を明らかにすることを目指します。

人については、加工条件の調整、見積り、顧客対応、不具合の原因判断など、特定の人しか行えない仕事を書き出します。設備については、所有・リースの区別、保守、更新見込み、図面や取扱資料の所在を確認します。取引については、発注の頻度、品質条件、主要顧客への依存、外注工程を整理します。

これらを一度に完全なマニュアルにする必要はありません。最初は「誰に聞けば分かるか」「どの資料に残っているか」を一枚にまとめるだけでも、引継ぎの順番を考えやすくなります。社長が休むと止まる仕事から優先すると、日常の事業継続にもつながります。

場所を残す希望と、事業を残す希望を分ける

現在の場所で働き続けてほしいという希望がある場合は、早い段階で相談先に伝えます。建物や土地の所有者、賃貸期間、設備の移設可能性、従業員の通勤、外注先との距離などが条件になるためです。事業を残すことと、すべての拠点を今のまま維持することは、検討すべき事項が異なります。

例えば、社長個人が工場の土地を持っている場合、会社の引継ぎと不動産の利用条件を別に整理する必要があります。土地を売るのか貸すのか、今後の修繕は誰が負担するのかなどは個別の契約に関わります。本記事の地域統計だけで結論を出せる部分ではないため、専門家と確認して条件表に落とし込みます。

図面や顧客情報は、相談の段階で一括公開しない

自社の技術を説明したいときも、顧客の図面や個別仕様を無条件に渡せるとは限りません。守秘義務、知的財産、取引契約の制約を確認し、匿名の概要と詳細資料を分けます。地域統計は公開情報なので広く共有できますが、自社の具体的な加工条件や顧客名は、相手と目的に応じて開示を判断します。

候補者を探す前に、渡せる資料と確認が必要な資料を整理しておけば、問い合わせが来てから慌てずに対応できます。社外の専門家に相談する場合も、守秘の扱いと業務の範囲を確認します。何を守りたいかを説明できることは、価格以外の条件を考える土台になります。

整理する対象 最初に集める情報 相談で確認したい点
技術・人 担当者、判断基準、代替できない工程 教える順番と必要な引継ぎ期間
設備 所有関係、保守記録、更新の見込み 継続使用・更新・移設の条件
取引 主要顧客、外注工程、契約の所在 説明・承諾の要否と情報開示
工場の場所 所有者、賃貸期間、通勤・物流 場所を維持する希望と契約条件
経営の仕事 見積り、資金繰り、採用、決裁 社長から誰へ何を移すか

統計を見ながら相談する際の進め方

初回の相談では、この表で自社の区の位置を確認した上で、会社の事業、拠点、従業員、引き継ぎたい技術、社長の希望を簡単に整理して持参すると話が具体的になります。地域の順位を良く見せるための資料作りより、自社について分かっていることと未整理のことを分ける方が役に立ちます。

次に、承継方法を決める前の課題と、候補者が決まってから確認する課題を分けます。社長しか作れない見積りや、設備資料の散在は、相手が決まる前から整理できます。一方、具体的な契約条件、金融機関との調整、取引先への説明時期は、候補者や譲渡方法との関係で詰めていく事項です。

相談先は、事業承継・引継ぎ支援センター、日頃取引している金融機関、税理士、M&Aの支援機関などが候補です。窓口によって担当できる範囲が異なるため、誰が全体の進行を見て、誰に個別の確認を頼むかを整理します。すぐ売却する予定がなくても、準備の順番について相談できます。

よくある質問

この表から、工場が減っている区は分かりますか?

この表は一時点の分布なので、減少や増加は判断できません。変化を見るには、比較する年の調査対象、産業分類、事業所の定義を揃える必要があります。異なる調査の数字をそのまま引き算すると、実際の変化と集計方法の違いが混ざる場合があります。本記事の「多い」「高い」は2021年の同じ表の中での比較です。

従業者数が多い区ほど、製造業の会社を高く売れますか?

地域の従業者数から個別企業の売却価格は判断できません。会社の利益、資産、負債、顧客との関係、設備、技術、引継ぎ条件などを別に検討する必要があります。地域データは事業環境の説明に使い、価格や買い手の評価の代わりにはしないでください。

後継者不在率が下がっているなら、準備を急がなくてもよいですか?

業界全体の割合が下がっていても、自社の準備に必要な期間は変わりません。候補者の育成、技術の引継ぎ、設備更新や取引先との調整には、それぞれ時間がかかります。統計を安心や不安の材料だけにせず、自社で未整理の仕事が何かを確認するきっかけにすると役立ちます。

区境を越えて承継先を探してもよいですか?

所在地だけで候補を限定する必要があるとは限りません。今の拠点を残したいのか、特定の工程を残したいのか、従業員の通勤を重視するのかで条件は変わります。区単位の表は地域を比べる便宜上の区切りです。実際の取引範囲や物流、通勤の条件も合わせて考えます。

2021年の統計を今の相談に使う意味はありますか?

調査時点を明示すれば、地域の産業構造を共有する基礎資料になります。ただし、現在の候補企業の存在や稼働状況を確認する資料ではありません。公開統計で全体像をつかみ、個別企業については現在の情報で確認するという順番で使います。過去の構造と現状の事実を分けることが大切です。

数字から、自社が引き継ぐものを具体化する

東京の製造業は、事業所数では大田区などに広く分布し、地域内割合では墨田区や荒川区の存在感が高く、従業者数では千代田区や港区も大きな位置を占めます。この違いを理解すると、「東京の製造業」という一つの言葉の中にも、拠点の役割や規模の違いがあることが見えてきます。

会社の承継を考えるときは、地域の数字を入り口に、技術、人、設備、取引、場所を一つずつ整理してみてください。KAKEHASHIでは、まだ譲渡を決めていない段階でも、引き継ぎたいものと準備の順番から相談できます。

参考資料・集計方法

区部合計は境界未定地域を含みます。23区の製造業事業所数の合計は32,276所、区部は32,281所です。図表の割合は丸め前の値から計算し、表示時に丸めています。異なる調査を掛け合わせた区別の後継者不在企業数の推計は行っていません。

関連する地域データは東京の建設会社の23区分布、第三者への承継を検討する際の相手の整理は会社売却の買い手候補の種類もご覧ください。

※本記事は公開統計を加工した一般的な情報提供です。個別企業の経営状態、後継者の有無、事業継続の可能性、売却価格を示すものではありません。法務・税務・許認可・契約上の個別判断は、専門家や関係機関にご確認ください。

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