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東京の後継者不在率は50代56.1%|60代・70代の年代別データ

東京都内の経営者が事業承継を考えるとき、「何歳までに後継者を決めるべきか」は避けて通れない問いです。2025年の東京都調査では、社長年齢別の後継者不在率は50代56.1%、60代36.2%、70代28.2%でした。

一見すると、年齢が上がるほど後継者不在の問題が小さくなるように見えます。しかし、これは「70代なら安心」という意味ではありません。年齢を重ねるほど承継を具体化する企業が増える一方で、休廃業した企業や調査対象から外れた企業も含まれないためです。さらに全国調査では、高齢層ほど、いったん決めた承継計画が中止・見直しになる割合が高いことも示されています。

本記事では、帝国データバンクが公表した東京都54,135社のデータをもとに、50代・60代・70代の違い、全国平均との差、3年間の変化を独自に整理します。そのうえで、年代ごとに経営者が今から何を始めるべきかを具体例、チェックリスト、FAQとともに解説します。

この記事の要点

  • 東京都の後継者不在率は、50代56.1%、60代36.2%、70代28.2%
  • 2023年から2025年にかけ、3年代とも改善した
  • 50代は全国より2.2ポイント低い一方、60代・70代は全国をわずかに上回る
  • 不在率が低下しても、候補者の意思、株式移転、経営者保証、実務引継ぎが終わったとは限らない
  • 50代は選択肢を増やす時期、60代は承継方法を決める時期、70代は不測の事態に備えながら完了を急ぐ時期

東京都の後継者不在率は50代56.1%、60代36.2%、70代28.2%

帝国データバンク「東京都・後継者不在率動向調査(2025年)」では、2025年の東京都全体の後継者不在率は47.9%でした。前年の51.1%から3.2ポイント低下し、調査開始後初めて50%を下回っています。

ただし、社長年齢ごとに見ると状況は大きく異なります。

社長年齢 2025年 前年 前年差 おおよその見方
50代 56.1% 59.3% -3.2ポイント 2社に1社以上が不在
60代 36.2% 39.0% -2.8ポイント 3社に1社を超える
70代 28.2% 31.0% -2.8ポイント 4社に1社を超える

50代は後継者不在率が最も高く、半数を超えています。これは、まだ経営継続の時間があるため後継者を「決めていない」「候補者はいるが本人の意思を確認していない」企業が多いことが一因と考えられます。

60代になると不在率は大きく下がります。親族や役員・従業員への承継を具体化したり、第三者承継を検討したりする会社が増えるためです。70代ではさらに下がりますが、28.2%は決して小さい数字ではありません。70代社長の4社に1社以上が、なお後継者不在または未定という状態です。

東京都全体の推移や業種差を先に確認したい方は、東京の後継者不在率の推移と事業承継対策もあわせてご覧ください。

50代・60代・70代とも3年間で改善している

2023年から2025年までの推移を見ると、3年代すべてで後継者不在率が低下しました。特に70代は、32.7%から28.2%へ4.5ポイント改善しています。

東京都の50代・60代・70代社長の後継者不在率を2023年から2025年まで比較したグラフ
東京都の年代別後継者不在率(帝国データバンク公表値を基にKAKEHASHI作成)
社長年齢 2023年 2024年 2025年 2年間の変化
50代 59.5% 59.3% 56.1% -3.4ポイント
60代 39.6% 39.0% 36.2% -3.4ポイント
70代 32.7% 31.0% 28.2% -4.5ポイント

改善の背景には、事業承継支援の浸透、M&Aを含む第三者承継の選択肢の定着、経営者自身の問題意識の高まりがあると考えられます。東京都の2025年調査では、直近の代表者交代における就任経緯は「内部昇格」が46.5%で最も多く、「M&Aほか」が24.7%、「同族承継」が15.6%でした。親族だけに限定せず、役員・従業員や第三者まで候補を広げる動きが表れています。

一方、改善幅だけで安心するのは危険です。50代では依然として56.1%が不在です。70代でも28.2%が不在であり、突発的な病気や意思決定能力の低下が起きる前に、経営と所有の引継ぎを終える必要があります。

東京都と全国では年代ごとに差がある

全国企業「後継者不在率」動向調査(2025年)と比べると、東京都は50代で全国より2.2ポイント低い一方、60代では0.3ポイント、70代では0.9ポイント高くなっています。

2025年の後継者不在率を東京都と全国で50代・60代・70代別に比較したグラフ
2025年の東京都と全国の年代別比較(帝国データバンク公表値を基にKAKEHASHI作成)
社長年齢 東京都 全国 東京-全国
50代 56.1% 58.3% -2.2ポイント
60代 36.2% 35.9% +0.3ポイント
70代 28.2% 27.3% +0.9ポイント

東京都は、M&A仲介会社、金融機関、士業などの支援機関が集まり、買い手候補にも接触しやすい地域です。そのことが50代の早い段階で選択肢を持つ企業の多さにつながっている可能性があります。

しかし、60代・70代では全国平均をわずかに上回っています。差は1ポイント未満であり、地域特性だけから因果関係を断定することはできません。東京にはサービス業や小規模事業者が多く、専門性や経営者個人への依存が強い会社では、後継候補を見つけても引継ぎに時間がかかることがあります。

また、調査対象や集計方法の違いによって数値は変わります。全国差は「東京だから承継しやすい・難しい」と結論づける材料ではなく、自社が同年代の企業と比べて準備が進んでいるかを考える目安として使うのが適切です。より広い地域比較は、東京の後継者不足を全国と比較した記事で詳しく整理しています。

年齢が上がるほど不在率が下がる4つの理由

承継期限が現実的になる

50代では「まだ働ける」という意識が強く、後継者選びを先送りしがちです。60代以降になると、健康、家族、役員任期、取引先との関係などをきっかけに引退時期が具体化します。その結果、候補者を決める会社が増え、不在率が下がります。

候補者の意思確認が進む

後継候補が頭の中にいるだけでは、承継計画とはいえません。本人が経営を引き受ける意思を持ち、家族の理解を得て、株式取得や個人保証を含む条件に合意して初めて実行可能性が高まります。年齢が上がるにつれ、こうした話し合いを始める企業が増えます。

親族外承継を選ぶ企業が増える

親族内に適任者がいなくても、役員・従業員への承継やM&Aという選択肢があります。東京都の調査では、後継者候補のうち非同族が66.5%を占めました。「子どもが継がないから廃業」ではなく、候補の範囲を広げることが不在率の改善につながっています。

調査対象に残る企業が変化する

70代の不在率が低い背景には、承継済み企業が残る一方、後継者が決まらないまま休廃業した企業が調査対象から外れるという選別の影響も考えられます。年代別データは同一企業を追跡した結果ではなく、その時点の企業群を比較したものです。したがって、「70代まで待てば自然に後継者が決まる」と読むのは誤りです。

後継者不在率だけでは分からない5つの実務リスク

後継者が「いる」と回答できても、承継が完了するとは限りません。経営者が確認したいのは、次の5点です。

確認項目 不十分な状態 必要な対応
本人の意思 候補者へ正式に打診していない 役割、時期、報酬、責任を話し合う
経営能力 現場経験はあるが財務・人事を任せていない 権限移譲と育成計画を作る
株式・資金 株価や取得資金を試算していない 株価、税金、資金調達方法を確認する
個人保証 現経営者の保証解除の条件が不明 金融機関と早期に協議する
緊急対応 印鑑、口座、契約、権限が社長に集中 緊急時の代行者と保管場所を文書化する

とくに株式と経営権は別問題です。社長職を譲っても株式が先代に集中していれば、重要な意思決定で対立するおそれがあります。反対に、株式を渡しても取引先、人材、許認可、ノウハウの引継ぎが不十分なら、業績が悪化する可能性があります。

事業承継の期限と手順を整理する際は、事業承継計画書の記入例を使い、経営・資産・関係者対応を時系列に並べると抜け漏れを防げます。

50代経営者は「選択肢を増やす」ことから始める

50代の強みは、承継までの時間を取りやすいことです。後継者不在率は56.1%と高いものの、今から着手すれば親族内承継、従業員承継、第三者承継のすべてを比較できます。

最初の90日で行いたいのは、会社の価値と経営者依存を可視化することです。株主構成、借入・個人保証、主要取引先、許認可、キーパーソン、知的財産、社長しか分からない業務を一覧にします。そのうえで、候補者になり得る人と、候補者がいない場合の外部承継の条件を整理します。

50代で「子どもはいずれ継ぐだろう」と考えている場合ほど、早めの意思確認が重要です。本人が別の職業や生活拠点を持っていれば、数年後の打診では選択肢が限られます。断られても準備期間が残る50代のうちに話す方が、会社と家族の双方にとって負担が小さくなります。

60代経営者は「承継方法を決める」段階に移る

60代の後継者不在率は36.2%です。50代より低いものの、3社に1社を超えます。候補がいない場合は、親族内だけで探し続けるのではなく、役員・従業員承継とM&Aを同時に比較することが現実的です。

60代では、1年以内に承継方法の方向性を決めることをおすすめします。従業員承継なら、本人の意思、株式取得資金、他の役員との関係、個人保証を確認します。M&Aなら、直近3期の決算書、月次試算表、契約書、労務資料、許認可などを整備し、会社の強みとリスクを説明できる状態にします。

社長が元気なうちに交渉を始めれば、相手を比較し、従業員や取引先への説明時期も選べます。会社売却を選択肢に入れる場合は、会社売却前の準備チェックリストも参考にしてください。

70代経営者は「緊急時対応」と「完了」を同時に進める

70代の後継者不在率は28.2%まで低下していますが、時間的な余裕は50代・60代より小さくなります。候補者が決まっていても、正式な契約、代表交代、株式移転、保証解除、許認可の変更が終わっていなければ、承継途中です。

全国調査では、過去に後継者が決まっていた企業のうち、その後に計画が中止・見直しとなった割合は、2025年に60代2.3%、70代3.3%、80代以上4.7%でした。高齢になるほど候補者側の事情、健康、会社業績、家族関係などによって計画が揺らぐ可能性があります。

そのため70代では、予定どおりの承継を進める計画と、社長が突然動けなくなった場合の緊急計画を並行して準備します。銀行口座、実印、電子証明書、主要契約、給与支払、資金繰り、取引先連絡、許認可の管理者を確認し、少なくとも一人が代行できる状態にしてください。

年代別に見る「最初の90日」の行動

年代 優先テーマ 最初の30日 31~60日 61~90日
50代 選択肢を増やす 会社・株主・保証・属人業務を棚卸し 親族・役員・従業員の候補を整理 候補者との対話と簡易企業価値の把握
60代 承継方法を決める 引退希望時期と条件を決める 各承継方法の実現可能性を比較 専門家を交えた工程表を作成
70代 緊急対応と完了 権限・口座・契約の緊急引継ぎを文書化 候補者・金融機関・株主の合意を確認 代表・株式・保証・許認可の手続きを実行

この表は一般的な目安です。株主が多い、相続人間の意見が分かれる、許認可が個人に紐づく、含み益の大きい不動産を保有するなどの事情がある場合は、より長い準備期間が必要です。

具体例:59歳の製造業経営者が選択肢を残した進め方

ここでは、東京都内で従業員25人の製造業を経営する59歳のAさんを想定します。子どもは別業種で働いており、社内には工場長と営業部長がいます。Aさんは「いずれ誰かが継ぐ」と考えていましたが、正式な打診はしていませんでした。

Aさんが最初に行ったのは、後継者を一人に決めることではなく、3つの選択肢を同時に調べることでした。子どもへ意思を確認し、工場長・営業部長が共同で経営を担えるかを評価し、第三者承継を選ぶ場合の企業価値と候補買い手も確認しました。

その結果、子どもは承継を希望せず、工場長は製造部門には強いものの、株式取得資金と営業面に不安があることが分かりました。そこで、工場長を経営幹部として残すことを前提にM&Aの候補先を探し、営業基盤を持つ同業企業への譲渡も比較対象にしました。

この進め方のポイントは、最初からM&Aありきでも、親族承継ありきでもないことです。59歳の時点で候補者の意思と資金面を確認したため、選択肢を切り替える時間を確保できました。もし70代まで正式な確認を先送りしていれば、条件を比較する余裕は小さくなっていたでしょう。

なお、これは考え方を示すための架空事例です。実際の承継方法は、株主構成、財務状況、家族関係、従業員の意思、買い手候補などによって異なります。

後継者候補を決めるときの判断基準

承継方法 向いている状況 主な確認点
親族内承継 本人に意思と適性があり、家族・株主の理解を得られる 教育期間、相続、株式、他の相続人との公平
役員・従業員承継 社内に信頼できる人材がおり、取引先との関係を維持したい 株式取得資金、個人保証、経営能力、他の役員との関係
第三者承継・M&A 社内外に後継候補がいない、成長投資や雇用維持を重視する 買い手の方針、価格、従業員処遇、引継ぎ期間
休廃業 事業継続が難しく、譲渡可能な事業や資産も限られる 従業員、取引先、債務、契約、資産処分、税金

従業員承継には社内事情を理解している利点がありますが、株式取得資金や個人保証が壁になります。検討を進める場合は、従業員承継を成功させるポイントも確認してください。

M&Aでは、価格だけでなく、従業員の雇用、取引先との関係、経営者の引継ぎ期間、社名や拠点の扱いを比べる必要があります。後継者不在を解消するための手段であると同時に、会社が次の成長資源を得る方法でもあります。

後継者不在を放置しないためのチェックリスト

次の項目に「いいえ」がある場合は、候補者がいる会社でも準備途中です。

  • 経営者本人が希望する引退時期を年月で決めている
  • 後継候補者へ正式に打診し、本人の意思を確認している
  • 候補者の家族や主要株主にも必要な説明をしている
  • 株主名簿と株券発行の有無を確認している
  • 株式評価と取得資金の目安を把握している
  • 借入金と経営者保証の引継ぎ条件を金融機関へ確認している
  • 主要顧客・仕入先との契約やチェンジオブコントロール条項を確認している
  • 許認可が承継後も維持できるか確認している
  • 社長しか分からない業務、暗証番号、保管場所を一覧化している
  • 後継候補者に財務、人事、営業の意思決定を経験させている
  • 第一候補が辞退した場合の第二案がある
  • 親族内・社内承継が難しい場合のM&A条件を把握している

チェック数を増やすこと自体が目的ではありません。最も大きな障害を一つ特定し、担当者と期限を決めることが重要です。たとえば「保証解除の条件が不明」であれば、金融機関への相談日を決めます。「候補者の意思が不明」であれば、家族行事とは分けて面談の場を設けます。

よくある質問

50代で後継者がいないのは遅いですか?

遅くありません。むしろ選択肢を比較しやすい時期です。親族・役員・従業員への打診、育成、株式対策、第三者承継の検討には数年かかることがあります。50代のうちに始めれば、第一候補が難しいと分かった場合も計画を切り替えられます。

60代からM&Aを検討しても間に合いますか?

間に合う可能性は十分あります。ただし、買い手探索、条件交渉、デューデリジェンス、契約、引継ぎには時間がかかります。決算や契約書が整理されていない場合はさらに長くなるため、売却を決めていなくても資料整備から始めることが大切です。

70代の不在率が低いなら、急がなくてもよいですか?

いいえ。70代は不在率が28.2%まで下がっていますが、4社に1社以上が不在です。また候補者がいても、株式、保証、許認可、権限移譲が終わっていない場合があります。通常の承継計画に加え、経営者が突然動けなくなった場合の緊急引継ぎも必要です。

「後継者がいる」とは、どこまで決まった状態ですか?

調査上の回答と、実務上の承継完了は同じではありません。候補者がいるだけでなく、本人の意思、就任時期、株式移転、資金、個人保証、経営権限について合意できているかを確認してください。

東京都と全国の差は大きいですか?

50代では東京が全国より2.2ポイント低い一方、60代は0.3ポイント、70代は0.9ポイント高い状況です。地域差よりも、年代差の方が大きいといえます。自社の判断では地域平均だけでなく、業種、規模、収益力、経営者依存度をあわせて見る必要があります。

後継者が決まっていても会社売却を比較すべきですか?

必ず売却する必要はありません。ただし、候補者の資金負担や個人保証、会社の成長投資、従業員の雇用を考えると、第三者承継との比較が有効な場合があります。複数案を比較したうえで親族内・従業員承継を選ぶことも、合理的な判断です。

まとめ

東京都の2025年の後継者不在率は、50代56.1%、60代36.2%、70代28.2%でした。3年代とも前年から改善していますが、年齢が上がるほど問題が自然に解消するわけではありません。承継を進めた企業が増える一方で、休廃業や計画の中止という要素もあります。

50代は選択肢を増やし、60代は承継方法を決め、70代は緊急時対応と手続き完了を並行して進めることが重要です。後継者の名前だけでなく、本人の意思、経営能力、株式、資金、保証、実務引継ぎまで確認して初めて、承継の実現可能性が高まります。

まずは、引退希望時期と最大の障害を一つ書き出してください。その一歩が、会社・従業員・取引先を守るための具体的な承継計画につながります。

※本記事は、2026年9月18日時点で公表されている資料を基に一般的な情報を提供するもので、個別の法務・税務・投資助言ではありません。実際の事業承継、株式移転、会社売却、税務判断については、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家へご相談ください。

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