「東京は会社が多いぶん、後継者がいない会社も多いのでは」と感じる経営者は少なくありません。
帝国データバンクの2025年調査では、東京都内企業の後継者不在率は47.9%、全国平均は50.1%でした。同じ年の割合で比べると、東京は全国より2.2ポイント低く、「東京の方が多い」とはいえません。
ただし、東京だけでも後継者が「いない」または「未定」の企業は2万5,932社あります。割合が全国平均を下回っているからといって、後継者問題が小さいわけではありません。
この記事では、東京と全国を同じ2025年調査で並べ、年代・業種・実際の承継方法まで比較します。東京都内の推移を詳しく知りたい方は、先に東京都の後継者不在率を詳しく整理した記事もご覧ください。
東京都は47.9%、全国は50.1%

| 比較項目 | 東京都 | 全国 |
|---|---|---|
| 2025年の後継者不在率 | 47.9% | 50.1% |
| 2024年 | 51.1% | 52.1% |
| 前年からの変化 | -3.2ポイント | -2.0ポイント |
| 調査対象 | 5万4,135社 | 約27万社 |
東京都は2025年に初めて50%を下回りました。前年からの低下幅も、全国の2.0ポイントに対して東京は3.2ポイントと、東京の方が1.2ポイント大きくなっています。
数字だけで答えるなら、東京は全国平均より後継者不在率が低い地域です。ただし、差は2.2ポイントです。東京の企業だけが特別に後継者問題を解決できている、とまで評価できる差ではありません。
「全国より低い」だけで安心できない理由
後継者不在率は、調査対象のうち後継者が「いない」または「未定」の企業の割合です。経営者が若く、まだ後継者を決める段階ではない会社も含まれます。
そのため、47.9%を「近く廃業する会社の割合」と読むのは誤りです。反対に、後継者が決まっていれば承継準備がすべて終わっている、とも限りません。株式の移転方法、資金、経営者保証、従業員や取引先への説明など、候補者を決めた後にも準備があります。
また、東京には大企業・中堅企業に加え、役員や管理職の層が厚い中小企業もあります。社内から次の経営者を選びやすい企業が含まれることが、全国との差に影響している可能性があります。
ここで大切なのは、全国平均との勝ち負けではなく、自社で「誰に、いつ、どのように引き継ぐか」を具体化できているかです。
年代別では50代まで東京が全国を下回る

| 社長の年代 | 東京都 | 全国 | 東京-全国 |
|---|---|---|---|
| 30代未満 | 77.4% | 83.2% | -5.8ポイント |
| 30代 | 77.2% | 81.3% | -4.1ポイント |
| 40代 | 68.8% | 72.6% | -3.8ポイント |
| 50代 | 56.1% | 58.3% | -2.2ポイント |
| 60代 | 36.2% | 35.9% | +0.3ポイント |
| 70代 | 28.2% | 27.3% | +0.9ポイント |
| 80代以上 | 21.5% | 22.2% | -0.7ポイント |
50代までは、すべての年代で東京が全国を下回っています。とくに30代未満では5.8ポイント、30代では4.1ポイントの差があります。
一方、60代と70代では東京が全国をわずかに上回りました。差は1ポイント未満ですが、経営者が高齢になれば東京だから安心、とはいえないことが分かります。
50代の東京でも56.1%が後継者不在・未定です。まだ現役で働ける年代だからこそ、候補者の育成、親族への承継、第三者への承継を比較できる時間があります。売却を急いで決める必要はありませんが、選択肢を調べ始めるには早すぎる年代ではありません。
業種別では不動産業だけ東京が全国を上回る
| 業種 | 東京都 | 全国 | 東京-全国 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 53.6% | 57.3% | -3.7ポイント |
| 製造業 | 37.8% | 42.4% | -4.6ポイント |
| 卸売業 | 44.2% | 46.8% | -2.6ポイント |
| 小売業 | 52.9% | 55.2% | -2.3ポイント |
| 運輸・通信業 | 40.1% | 45.7% | -5.6ポイント |
| サービス業 | 52.4% | 52.9% | -0.5ポイント |
| 不動産業 | 53.1% | 51.1% | +2.0ポイント |
主な業種では、東京の不在率が全国を下回る業種が多くなっています。差が大きいのは運輸・通信業の5.6ポイント、製造業の4.6ポイントです。
一方、不動産業は東京53.1%、全国51.1%で、東京が2.0ポイント上回りました。東京全体の平均だけを見ると見落としやすい差です。自社の状況を考える際は、地域平均だけでなく業種も合わせて確認する必要があります。
なお、業種別の数値は業界全体の傾向です。同じ不動産業でも、賃貸管理、売買仲介、自社保有、開発など事業内容によって承継の難しさは異なります。個別企業の売却可能性や価格を、この割合だけで判断することはできません。
東京では親族以外への承継が多い
| 代表者の就任経緯 | 東京都 | 全国 | 東京-全国 |
|---|---|---|---|
| 内部昇格 | 46.5% | 36.1% | +10.4ポイント |
| 同族承継 | 15.6% | 32.3% | -16.7ポイント |
| M&Aほか | 24.7% | 20.6% | +4.1ポイント |
| 外部招聘 | 9.6% | 7.6% | +2.0ポイント |
2025年に代表者交代が行われた企業を見ると、東京では内部昇格が46.5%で、全国の36.1%を10.4ポイント上回りました。反対に、同族承継は東京15.6%、全国32.3%で、大きな差があります。
東京では、子どもや親族だけでなく、社内の役員・社員、社外の第三者まで含めて後継者を考える傾向が強いと読めます。
ただし、帝国データバンクの「M&Aほか」には、買収だけでなく出向や分社化も含まれます。24.7%をそのまま「会社売却の割合」と解釈しないよう注意が必要です。また、2025年の就任経緯別データは速報値です。
後継者がいないときに考えたい三つの方向
後継者が決まっていない場合、主な方向は次の三つです。
- 親族への承継:子ども、配偶者、その他の親族へ引き継ぐ
- 社内承継:役員や社員を育成し、経営を引き継ぐ
- 第三者への承継:会社売却や事業譲渡などで社外へ引き継ぐ
どれか一つを最初から正解と決める必要はありません。親族本人の意思、社内候補者の経営力と株式取得資金、会社の収益力、経営者保証、希望時期などによって現実的な方法は変わります。
第三者への承継も候補に入れる場合は、慌てて買い手を探す前に、売却の目的や譲れない条件を整理します。具体的な準備は、会社売却前にやるべきことを整理した記事、全体の手順は会社売却の流れを解説した記事で確認できます。
東京の経営者が数字から確認したいこと
東京の後継者不在率が全国平均より低くても、自社の準備が進んでいるとは限りません。まず、次の点を社内で確認してみてください。
- 経営を引き継いでほしい候補者はいるか
- 候補者本人に意思を確認できているか
- 株式や事業用資産をどのように移すか
- 経営者保証や個人名義の資産を整理できるか
- いつまでに方向性を決めたいか
- 従業員、取引先、ブランドをどのように守りたいか
候補者がいない場合でも、すぐに廃業を決める必要はありません。社内承継の可能性を確かめ、第三者への承継を含めて比較すれば、選択肢を残せます。
一方で、準備を先延ばしにすると、業績の悪化、体調の変化、候補者の退職などによって選べる方法が減ることがあります。50代・60代のうちから情報を集め、判断できる材料をそろえておくことが大切です。
まとめ
2025年の後継者不在率は、東京都47.9%、全国50.1%でした。東京は全国より2.2ポイント低く、同じ年の割合だけで比べると「東京の方が後継者のいない会社が多い」とはいえません。
ただし、東京都内でも2万5,932社が後継者不在・未定です。年代別では60代・70代が全国をわずかに上回り、業種別では不動産業が全国より2.0ポイント高くなっています。平均値だけでは見えない違いがあります。
東京の特徴は、内部昇格やM&Aほかなど、親族以外への承継が全国より多いことです。後継者が決まっていない経営者は、親族・社内・第三者の三つを並べ、自社に合う進め方を早めに比較してみてください。
よくある質問
東京は全国より後継者がいない会社が少ないのですか?
2025年調査の割合では、東京47.9%、全国50.1%で、東京が2.2ポイント低くなっています。ただし、東京だけでも後継者不在・未定は2万5,932社あり、問題が小さいという意味ではありません。
後継者不在率47.9%は、47.9%の会社が廃業するという意味ですか?
いいえ。後継者不在率には、後継者がいない企業と、まだ候補が決まっていない企業が含まれます。若い経営者の会社も対象です。廃業予定企業の割合ではありません。
「M&Aほか」24.7%は会社売却の割合ですか?
そのまま会社売却の割合とはいえません。帝国データバンクの区分では、買収・出向・分社化の合計が「M&Aほか」です。
主な出典
- 帝国データバンク「東京都・『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年12月23日公表)
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表)
本記事は公開資料をもとに一般的な情報を整理したもので、個別の事業承継、会社売却、税務・法務に関する助言を目的とするものではありません。制度や数値は更新されることがあります。実際の判断は、最新の公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。