東京都の社長は、全国と比べれば若いのでしょうか。帝国データバンクが2026年3月9日に公表した「東京都・『社長年齢』分析調査(2025年)」によると、2025年末時点の東京都内企業の社長平均年齢は60.2歳でした。全国平均の60.8歳を0.6歳下回り、47都道府県では若い方から10番目に当たる38位です。
ただし、「東京の社長は比較的若いから、事業承継には余裕がある」と読むのは早計です。東京都の平均年齢は1990年の54.3歳から35年連続で上昇し、過去最高を更新しました。60代以上の社長は51.3%と半数を超え、社長交代率は4.74%にとどまります。
この記事では、東京都と全国の長期推移、年代構成、業種差、社長交代の前後、若手社長の比率を横断して比較します。そのうえで、数字から分かることと分からないことを分け、東京の中小企業経営者が承継・会社売却・経営体制の整備をいつ始めるべきかを具体的に整理します。
- 東京都の社長平均年齢は60.2歳、35年連続で過去最高
- 1990年は全国より高齢、2025年は全国より若い
- 60代以上が51.3%、若手の多さだけでは高齢化を止められない
- 製造業63.0歳、サービス業57.5歳|業種差は5.5歳
- 社長交代率4.74%でも、若返り幅は11.1歳に縮小
- 平均年齢と業績の関係をどう読むか
- 数字から分かることと、分からないこと
- 年代別に変えるべき準備の重点
- 3つの企業例で見る、同じ年齢でも違う判断
- 東京の経営者が今から進める7つの手順
- 2026年9月時点で使える東京都の相談・支援
- 事業承継の準備チェックリスト
- 東京都の社長年齢に関するよくある質問
- ご自身の希望する時期に向けて、承継の選択肢を考える
東京都の社長平均年齢は60.2歳、35年連続で過去最高
帝国データバンクの調査は、同社の企業概要ファイル「COSMOS2」に収録された約150万社のうち、2025年12月時点で東京都内に本社を置き、社長年齢が判明した会社を対象としています。個人、非営利法人、公益法人などは対象外です。
| 比較項目 | 東京都 | 全国 | 東京-全国 |
|---|---|---|---|
| 2025年の社長平均年齢 | 60.2歳 | 60.8歳 | -0.6歳 |
| 2024年からの変化 | +0.1歳 | +0.1歳 | 同じ |
| 1990年の平均年齢 | 54.3歳 | 54.0歳 | +0.3歳 |
| 1990年から2025年の上昇 | +5.9歳 | +6.8歳 | -0.9歳 |
| 2025年の社長交代率 | 4.74% | 3.84% | +0.90ポイント |
東京都の平均は全国より0.6歳若く、社長交代率は全国より0.90ポイント高い状況です。それでも、東京の平均年齢は前年から0.1歳上昇しました。社長交代が全国より多いだけでは、全体の高齢化を反転させるほどの力になっていません。
30年前の1995年と比べても、東京都は55.8歳から60.2歳へ4.4歳上昇しています。経営者の年齢が1年上がること自体は問題ではありません。経験や取引関係が会社の強みになる場合もあります。注意したいのは、代表者の年齢だけが上がり、意思決定、人脈、金融機関対応、重要顧客との関係が社長個人に集中したままになることです。

1990年は全国より高齢、2025年は全国より若い
長期推移を見ると、東京の位置は変わっています。1990年は東京都54.3歳、全国54.0歳で、東京都の方が0.3歳高齢でした。2000年は東京都57.1歳、全国56.6歳で差が0.5歳まで広がります。2010年はどちらも58.4歳でした。
その後は全国の上昇が東京を上回り、2020年には東京都59.6歳、全国60.1歳、2025年には東京都60.2歳、全国60.8歳となりました。1990年からの上昇幅は東京都5.9歳、全国6.8歳です。
| 年 | 東京都 | 全国 | 東京-全国 |
|---|---|---|---|
| 1990年 | 54.3歳 | 54.0歳 | +0.3歳 |
| 2000年 | 57.1歳 | 56.6歳 | +0.5歳 |
| 2010年 | 58.4歳 | 58.4歳 | ±0.0歳 |
| 2020年 | 59.6歳 | 60.1歳 | -0.5歳 |
| 2025年 | 60.2歳 | 60.8歳 | -0.6歳 |
この差には、東京へ新しい会社や成長企業が集まりやすいこと、ITを含むサービス業の比重、若い起業家の流入などが関係している可能性があります。東京商工リサーチの2025年「若手社長」動向調査では、40歳未満の社長比率は東京都が3.6%で全国トップでした。
一方、その3.6%だけで東京都全体を説明することはできません。東京都でも40歳未満の社長は少数であり、帝国データバンクの別集計では30代以下が4.0%、60代以上が51.3%です。「若い社長が集まる東京」と「既存企業の社長が高齢化する東京」は同時に存在しています。
60代以上が51.3%、若手の多さだけでは高齢化を止められない
東京都の社長を年代別に見ると、最も多いのは50代の29.3%です。次いで60代が28.1%、70代が16.9%、40代が15.3%、80代以上が6.3%でした。30代は3.7%、30歳未満は0.3%です。
| 社長の年代 | 東京都内企業の構成比 | 100社に置き換えた目安 | 承継面での主な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 0.3% | 0~1社 | 成長投資と経営管理の整備 |
| 30代 | 3.7% | 約4社 | 属人化を避け、幹部層を育てる |
| 40代 | 15.3% | 約15社 | 次世代候補と株主構成を確認する |
| 50代 | 29.3% | 約29社 | 承継方法を比較し、準備を始める |
| 60代 | 28.1% | 約28社 | 候補者・資金・保証・実行時期を確定する |
| 70代 | 16.9% | 約17社 | 経営空白への備えと複数の出口を並行する |
| 80代以上 | 6.3% | 約6社 | 権限移譲、緊急時対応、譲渡可能性を早急に確認する |
50代以上は80.6%で、2020年の77.6%から5年間で3.0ポイント上昇しました。60代以上も2020年の49.3%から2025年の51.3%へ2.0ポイント上昇しています。平均60.2歳という一つの数字より、「社長の半数以上が60代以上」という構成の方が、事業承継の実務では重い意味を持ちます。
事業承継は、代表者名を変更すれば終わる手続きではありません。後継者育成、株式の移転、経営者保証、許認可、取引先への説明、従業員の不安解消、個人所有資産の扱いなどを順番に進めます。中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、事業承継計画をおよそ5年から10年のスパンで作ることが望ましいと説明しています。
社長が60歳の時点から10年計画を作れば、70歳までに承継する選択肢を持ちやすくなります。70代に入ってからゼロから始めると、候補者育成や企業価値改善に使える時間が短くなり、健康上の変化が交渉条件に影響するおそれもあります。
東京都の年代別後継者不在率については、すでに50代・60代・70代で後継者不在率はどう変わるかで詳しく分析しています。本記事では重複を避けますが、50代の56.1%、60代の36.2%、70代の28.2%が後継者不在・未定です。年齢が上がるほど割合は下がっても、未定企業に残された準備期間は短くなります。
製造業63.0歳、サービス業57.5歳|業種差は5.5歳
東京都の平均60.2歳は、業種によって大きく異なります。最も高い製造業は63.0歳、最も低いサービス業は57.5歳で、差は5.5歳です。製造業の次は不動産業62.9歳、建設業61.5歳、卸売業61.4歳、運輸・通信業60.7歳と続きます。

| 業種 | 社長平均年齢 | 60代以上の割合 | 80代以上の割合 |
|---|---|---|---|
| 製造 | 63.0歳 | 60.3% | 8.7% |
| 不動産 | 62.9歳 | 59.1% | 11.7% |
| 建設 | 61.5歳 | 54.3% | 6.6% |
| 卸売 | 61.4歳 | 54.5% | 6.9% |
| 運輸・通信 | 60.7歳 | 53.9% | 5.1% |
| 小売 | 59.1歳 | 46.3% | 6.6% |
| サービス | 57.5歳 | 43.9% | 3.6% |
製造業は技術承継と設備の将来負担を同時に見る
製造業では、社長の平均年齢だけでなく、熟練者の技術、品質管理、主要取引先との関係、老朽設備の更新、工場不動産、環境対応を一体で考える必要があります。後継者候補がいても、大型設備投資や個人保証まで引き継ぐ意思があるとは限りません。
大田区など都内には中小製造業の集積があります。会社売却を検討する場合、技術者が退職する前に工程、原価、図面、検査基準を見える化できれば、買い手が継続可能性を評価しやすくなります。社長の経験を口頭で伝えるだけでは、企業価値として認識されにくい点に注意が必要です。
不動産業は80代以上が11.7%
不動産業は平均62.9歳で、80代以上の割合が11.7%と表中で最も高くなっています。物件や管理契約が安定していても、社長個人の人脈、共有持分、個人所有不動産、親族間の株式分散が承継を難しくする場合があります。
会社が所有する不動産と社長個人が所有する不動産を分け、賃貸借契約、借入金、担保、含み損益、修繕計画を一覧にしておくことが重要です。会社売却では、物件を会社に残すのか、売却前に切り離すのかで価格・税務・資金調達が変わります。
サービス業は若いが、属人化の問題は残る
サービス業の平均57.5歳は東京都全体より2.7歳若く、30代以下の割合も6.5%あります。ただし、広告運用、IT、人材、コンサルティングなどでは、代表者自身が営業・制作・採用の中心になりやすい傾向があります。年齢が若くても、売上が代表者一人に集中していれば承継しやすいとはいえません。
顧客との契約主体、従業員が再現できる業務手順、継続課金、解約率、知的財産、外注先との契約を整えると、親族内承継にも第三者承継にも役立ちます。経営者年齢は準備開始の一つの目安ですが、実際の緊急度は「社長が不在でも会社が回るか」で判断すべきです。
社長交代率4.74%でも、若返り幅は11.1歳に縮小
東京都で2024年から2025年に社長が交代した企業の割合は4.74%でした。前年の4.68%から0.06ポイント上昇し、3年連続で上がっています。しかし、2009年の5.64%や2021年の4.87%を下回り、平均年齢の上昇を止めるほどではありませんでした。
もう一つ注目したいのが、交代前後の年齢差です。2025年に交代した企業では、前社長の平均年齢が65.4歳、新社長が54.3歳で、若返り幅は11.1歳でした。2022年は前社長66.0歳、新社長53.2歳で、差は12.8歳でした。3年間で若返り幅が1.7歳縮まっています。
| 年 | 交代前の社長 | 交代後の社長 | 若返り幅 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 66.0歳 | 53.2歳 | 12.8歳 |
| 2023年 | 65.7歳 | 54.0歳 | 11.6歳 |
| 2024年 | 65.8歳 | 54.3歳 | 11.5歳 |
| 2025年 | 65.4歳 | 54.3歳 | 11.1歳 |
前社長の引退年齢が下がることは、早めの承継が進んでいる可能性を示します。一方、新社長の年齢は上昇傾向です。社内で経験のある役員へ引き継ぐケースや、シニア層の起業など、複数の動きが数字に影響していると考えられます。
ここから「若い後継者へ交代すべき」と単純に決めることはできません。新社長の適性は年齢だけで測れないためです。ただし、交代時点で新社長が50代半ばなら、次の承継まで見据えた体制づくりを同時に始める必要があります。単発の代表交代ではなく、継続的に後継者を育てる仕組みへ切り替えることが重要です。
平均年齢と業績の関係をどう読むか
東京商工リサーチは、2024年8月から2025年7月を最新期として、5期連続で売上高と最終利益を確認できた企業を年代別に集計しています。その結果、増収企業率は40歳未満が58.3%で最も高く、40代55.7%、50代52.9%と続き、70歳以上では50%を下回りました。
この結果は、若い社長の企業ほど増収しやすい傾向を示します。ただし、社長の年齢が業績を直接決めると断定はできません。若い社長は成長市場や創業から日が浅い企業に多い一方、高齢の社長は成熟産業や長寿企業に多い可能性があります。企業規模、業種、社歴、市場成長率などの条件がそろっていない単純比較です。
経営者が確認すべきなのは、「年齢が上がったから業績が落ちる」という説明ではなく、投資判断や人材登用が遅れていないか、既存顧客への依存が高まっていないか、後継者へ権限が移っているかという具体的な経営課題です。
同調査では、増益企業率は40代49.7%、50代49.1%、60代48.18%、40歳未満48.10%で、差は小さく、若手社長が首位ではありませんでした。売上と利益は分けて見る必要があります。承継前に無理な売上拡大を追うより、粗利、顧客継続、人員配置、資金繰りを整え、次の経営者が引き継げる収益構造を作る方が重要な場合もあります。
数字から分かることと、分からないこと
| データから確認できること | データだけでは判断できないこと |
|---|---|
| 東京都の平均年齢は35年連続で上昇した | 個別企業の社長がいつ引退すべきか |
| 全国より0.6歳若い | 東京の企業が全国より承継しやすいか |
| 60代以上が51.3%を占める | 後継者候補の能力・意思・資金力 |
| 業種間で最大5.5歳の差がある | 年齢差の原因が業種だけにあるか |
| 社長交代率は4.74% | 交代が親族内・従業員・第三者のどれか |
| 交代前後の平均年齢差は11.1歳 | 権限・株式・保証が実質的に移ったか |
平均年齢には、大企業と中小企業、創業直後の会社と老舗企業が含まれます。帝国データバンクのデータベースに収録され、年齢が判明した企業が対象であり、東京都内の全事業者を完全に数えた統計ではありません。また、社長が交代しても、前社長が会長として実権を持つ場合があります。反対に、代表者は変わらなくても、実務上の権限移譲が進んでいる会社もあります。
したがって、60.2歳は「東京の会社は60歳から売却すべき」という境界線ではありません。自社の準備状況を確認するきっかけとして使う数字です。年齢、健康、後継者、株式、借入、経営者保証、顧客集中、従業員年齢、設備更新を合わせて判断します。
年代別に変えるべき準備の重点
50代は、承継方法を決める前に選択肢を広げる
50代は東京都の社長で最も多い年代です。この時期は、親族内承継、従業員承継、第三者承継を並行して比較しやすく、企業価値改善にも時間を使えます。子どもが会社へ入っていても、本人の意思、他の相続人との関係、株式取得資金まで確認しなければ「後継者が決まった」とはいえません。
第三者承継を将来の候補に残すなら、社長個人への売上依存を下げ、月次決算を早め、許認可や契約を整理します。すぐ売るためではなく、いつでも比較できる状態にする準備です。企業価値を高める優先順位は会社売却前の90日改善計画でも整理しています。
60代は、候補者の有無から実行可能性へ進む
60代では「息子が継ぐ予定」「役員に任せたい」という意向だけで止めず、実行条件を確認します。株式をどう移すか、買い取り資金はあるか、個人保証を外せるか、金融機関・主要顧客・従業員へいつ説明するかを工程表にします。
親族や社内候補が難しいと分かった場合も、会社の収益力と組織が保たれていれば第三者承継を検討できます。候補先の探索から基本合意、デューデリジェンス、契約、引継ぎには相応の期間がかかるため、体調や業績が悪化してから始めないことが重要です。必要書類は会社売却でまず揃えたい書類を参考にしてください。
70代以上は、通常計画と緊急時対応を同時に作る
70代以上では、通常の承継計画に加え、社長が一時的に判断できなくなった場合の対応が必要です。銀行印・実印・電子証明書の管理、支払い権限、重要取引の更新、従業員への指揮命令、株主総会・取締役会の手続き、家族と幹部の連絡網を確認します。
緊急時対応は、引退を決めたことを意味しません。経営空白で会社の価値や信用を落とさないための備えです。後継者候補が未定なら、親族・従業員・第三者への承継可能性と、最終的な廃業の条件を並べて比較し、期限を決めます。
3つの企業例で見る、同じ年齢でも違う判断
例1.58歳、都内IT企業、後継候補は社内にいる
売上3億円、営業利益3,000万円、社長が主要顧客の営業を担い、40代の取締役が運営を担当している会社を想定します。平均年齢だけを見れば準備を急ぐ必要がないように見えますが、顧客関係が社長に集中しています。
この会社では、2年かけて営業窓口を複数化し、取締役へ値決め・採用・投資権限を移し、株式取得資金と個人保証を金融機関へ相談します。同時に第三者評価も取り、社内承継と会社売却の手取り・条件を比較できる状態にします。
例2.64歳、都内製造業、親族後継者はいない
売上5億円、工場は社長個人所有、主力技術者も60代、設備更新が3年後に必要な会社を想定します。製造業の平均63.0歳に近くても、「平均的だから待てる」とは判断できません。技術者の退職と設備投資が同時に迫っているためです。
最初の6か月で工程・原価・品質管理を文書化し、工場賃貸借と設備更新額を整理します。従業員承継の意思と資金力を確認し、難しければ同業・周辺業種への第三者承継を並行して検討します。買い手が設備更新を負担するのか、譲渡前に売主が投資するのかを早い段階で比べます。
例3.74歳、都内不動産管理会社、長男が非常勤
管理戸数は安定していますが、株式が親族に分散し、社長個人の物件を会社が管理しているケースです。長男が非常勤であるだけでは、後継者が決まったとはいえません。引継ぎ意思、宅地建物取引業免許の体制、管理契約、借入・担保、他の相続人との調整が必要です。
3か月以内に株主・資産・契約・許認可を一覧化し、長男が常勤で経営を担う意思を確認します。意思や適性が合わなければ、事業譲渡や株式譲渡も含めて比較します。同時に、社長が入院した場合でも家賃送金や修繕判断が止まらない権限表を作ります。
東京の経営者が今から進める7つの手順
- 経営者の希望時期を言葉にする
完全退任、会長として残る、一定期間の引継ぎなど、望む関わり方と時期を整理します。 - 後継者候補の意思を確認する
親族・役員・従業員に、役職だけでなく株式取得、保証、働き方まで含めて確認します。 - 会社と社長個人を分ける
個人所有不動産、貸付金・借入金、保証、社用と私用が混在する費用を一覧にします。 - 株式・財務・契約を見える化する
株主名簿、定款、登記、3期分の決算、月次試算表、借入、許認可、重要契約を揃えます。 - 承継方法を3案で比較する
親族内、従業員、第三者の各案について、期間、資金、税金、雇用、実行リスクを比べます。 - 5年から10年の工程へ落とす
人材育成、権限移譲、株式移転、経営改善、対外説明を年度ごとに置きます。 - 半年ごとに見直す
候補者の事情、業績、健康、金融環境、制度変更に合わせ、期限と代替案を更新します。
相談先は一社に決める前に役割を分けて考えます。顧問税理士は税務と株価、弁護士は契約と紛争リスク、金融機関は借入・保証・資金調達、FAやM&A支援機関は第三者承継の候補探索や条件交渉を支援します。買い手と売り手の双方から手数料を受け取る仲介と、売主側だけを支援するFAでは立場が異なるため、利益相反と報酬体系を確認してください。
2026年9月時点で使える東京都の相談・支援
東京都事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置し、東京商工会議所が委託を受けて運営する公的相談窓口です。親族内承継、従業員承継、第三者承継に対応し、相談は無料、秘密厳守と案内されています。多摩地域には別の支援センターがあります。
また、東京都中小企業振興公社の令和8年度「事業承継支援助成金」は、自社株式の評価、セルフ・デューデリジェンス、中核人材の確保・育成など、外部専門家への委託費の一部を対象としています。第2回の募集期間は2026年8月3日から9月16日17時までで、助成限度額は200万円、原則の助成率は3分の2以内です。
ただし、申請前の支援実績、相談・現地診断、承継予定時期などタイプごとの要件があります。9月16日までに申請書だけを出せばよいとは限りません。利用を検討する場合は、必ず最新の募集要項と申請前チェック表を確認してください。第3回は2026年10月13日から12月15日17時までの予定です。
事業承継の準備チェックリスト
- 社長が希望する退任時期と退任後の関わり方を家族・幹部と共有している
- 後継者候補本人から引継ぎの意思を確認している
- 候補者へ採用、投資、値決め、資金繰りの権限を段階的に移している
- 株主名簿と実際の株式保有者が一致している
- 株式取得資金、贈与・相続・譲渡の税負担を試算している
- 経営者保証や個人担保の解除・切替を金融機関へ相談している
- 会社と個人の不動産、貸付金、保険、経費を区分している
- 直近3期の決算書と月次試算表を説明できる
- 主要顧客・仕入先・許認可・知的財産・重要契約を一覧化している
- 社長不在でも支払い、受注、労務、緊急対応が止まらない
- 親族内・従業員・第三者承継の3案を比較している
- 承継が難しいと判明した場合の期限と代替案を決めている
- 相談先の立場、報酬、利益相反、支援範囲を確認している
- 公的支援や助成金の要件を、契約・発注前に確認している
東京都の社長年齢に関するよくある質問
東京都の社長は全国より若いのですか?
2025年の平均では東京都60.2歳、全国60.8歳で、東京都が0.6歳若い結果です。ただし、東京都も35年連続で平均年齢が上昇し、60代以上が51.3%を占めています。全国より若いことと、承継準備に余裕があることは同じではありません。
社長は何歳から事業承継を考えるべきですか?
一律の年齢はありませんが、5年から10年の準備期間を考えると、60歳前後までに具体的な計画へ着手することには合理性があります。社長への依存が強い、後継候補がいない、設備更新や許認可の課題がある場合は、年齢に関係なく早めに始めます。
後継者が決まっていれば安心ですか?
候補者がいる場合は、本人の希望、経営を担う準備、株式取得資金、経営者保証などを一つずつ話し合うことができます。他の株主・相続人や取引先・従業員への説明、前社長が引継ぎ後に担う役割も整理しておくと、新しい体制へ移りやすくなります。
高齢の社長が経営する会社は売却しにくいですか?
社長の年齢だけで売却可能性は決まりません。収益力、顧客基盤、人材、許認可、契約、財務、社長依存度、業界の需要が評価されます。ただし、健康悪化や幹部退職で準備期間が短くなると、候補先や条件の比較が難しくなるため、余力のある段階で可能性を確認することが重要です。
東京で無料相談できる場所はありますか?
東京都事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的窓口で、親族内承継、従業員承継、第三者承継を相談できます。東京23区中心のセンターと多摩地域のセンターがあるため、所在地に応じて確認してください。
助成金を使ってM&A費用をすべて賄えますか?
すべての費用が対象になるわけではありません。東京都の助成金は対象事業・対象経費・申請前要件が定められ、原則の助成率や上限もあります。契約や発注の時期によって対象外になる可能性があるため、募集要項を確認し、公社へ事前に相談してください。
ご自身の希望する時期に向けて、承継の選択肢を考える
東京都の社長平均年齢は60.2歳で、全国より0.6歳若い一方、35年連続で過去最高を更新しました。60代以上は51.3%、社長交代率は4.74%です。製造業63.0歳とサービス業57.5歳では5.5歳の差があり、業種によって緊急度と課題も変わります。
平均年齢は自社の引退時期を決める数字ではありません。しかし、社長交代が進んでも全体の高齢化が止まらず、交代後の社長も平均54.3歳であることは、単発の代表交代だけでなく、継続的な後継者育成と組織化が必要であることを示しています。
まず、社長が不在でも会社が回るか、後継候補が株式と保証まで引き継げるか、第三者承継を含む代替案があるかを確認してください。会社売却を選ぶか決めていない段階でも、資料整理と企業価値の確認は他の承継方法に役立ちます。KAKEHASHIでは、売主側の立場から承継方法と会社売却の可能性を整理しています。
主な参考資料
- 帝国データバンク「東京都・『社長年齢』分析調査(2025年)」
- 帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2025年)」
- 東京商工リサーチ「2025年『若手社長』動向調査」
- J-Net21「事業承継計画の作り方」
- 東京都事業承継・引継ぎ支援センター
- 東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継支援助成金」
※本記事は、2026年9月6日時点で公表されている資料を基に、一般的な情報提供を目的として作成しています。調査ごとに対象企業・「社長」の定義・集計方法が異なるため、数値を単純比較できない場合があります。本記事は個別案件に対する法務・税務・会計・投資上の助言ではありません。事業承継、株式移転、会社売却、助成金申請などを実行する際は、最新の制度・募集要項を確認し、弁護士、税理士、公認会計士、金融機関、各支援機関などの専門家へご相談ください。