商店街で長く続けてきた店を次の方へ引き継ぐとき、内装や設備を整え直す費用が気になる方は多いと思います。東京都の「商店街起業・承継支援事業」は、都内商店街で新たに店舗を開く方を対象に、店舗改装、設備・備品、広告、家賃の一部を助成する制度です。
2026年度第3回の申請期間は、2026年10月9日(金)から10月30日(金)17時までです。交付決定は2027年3月1日の予定で、店で事業を始める日は原則として交付決定日以降であることが求められます。
ただし、この制度は「今の経営者が、自分の店の改装費を申請する制度」とは限りません。事業承継の場合は、店を引き継いで新たに運営する後継者が申請者となることが基本です。現経営者と後継者が一緒に、承継の方法、開業日、工事の時期、資金の準備を確認することが大切です。
- 2026年度第3回は10月9日から30日17時まで
- 申請者は、承継後に店舗を運営する後継者側が基本
- 事業所整備費は助成率3分の2以内、上限250万円
- 店舗賃借料は最長3年間、合計の助成限度額は最大694万円
- 助成金は後払いのため、工事代や家賃を先に支払う資金が必要
- 申請予定店舗が都内区市町村に登録された商店街にあるか確認が必要
商店街起業・承継支援事業とは
東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社が、商店街の担い手を増やし、地域の活性化につなげるために実施している助成事業です。新規開業だけでなく、都内商店街の店舗を事業承継によって引き継ぎ、改装して開業する場合も対象区分に含まれます。
年齢や性別だけで対象外になる制度ではありません。女性または39歳以下の男性を主な対象とする「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」とは別に、「商店街起業・承継支援事業」が用意されています。どちらに該当するかは、申請者の状況、現在の事業、開業形態を募集要項で確認します。
| 確認項目 | 2026年度第3回 | 経営者が気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 申請期間 | 10月9日〜10月30日17時 | 後継者の申請準備と商店街への説明を早めに始める |
| 一次審査 | 10月中旬〜12月中旬 | 追加確認に答えられるよう、承継内容と資金計画を共有する |
| 面接審査 | 2027年1月中旬〜下旬 | 後継者自身が店の将来像を説明できるようにする |
| 交付決定 | 2027年3月1日予定 | 原則として、この日より前に店舗営業を始めない |
申請は原則としてJグランツを使います。JグランツにはGビズIDプライムが必要で、公式サイトでは発行まで2〜3週間かかる場合があると案内されています。10月5日時点で未取得の場合は、募集要項を確認しながら早めに手続きを始める必要があります。電子申請が難しい場合は、公式サイトに郵送申請の案内があります。

最大694万円の内訳を読み違えない
商店街起業・承継支援事業は、助成限度額の合計が最大694万円です。ただし、申請すれば一律に694万円を受け取れるわけではありません。対象経費ごとの助成率と上限があり、審査で認められた経費を実際に支払い、証拠書類をそろえた後に助成額が確定します。
| 経費区分 | 主な内容 | 助成率 | 助成限度額 |
|---|---|---|---|
| 事業所整備費 | 店舗の新装・改装工事、設備・備品、宣伝・広告 | 3分の2以内 | 250万円 |
| 店舗賃借料・1年目 | 新たに借りる店舗等の家賃 | 3分の2以内 | 月15万円 |
| 店舗賃借料・2年目 | 同上 | 3分の2以内 | 月12万円 |
| 店舗賃借料・3年目 | 同上 | 3分の2以内 | 月10万円 |
家賃部分の上限を3年間合計すると、15万円×12か月+12万円×12か月+10万円×12か月=444万円です。事業所整備費の上限250万円と合わせて、最大694万円になります。
また、事業所整備費に含まれる宣伝・広告費は、助成対象経費として認められる額に上限があります。ホームページ、チラシ、看板などを検討する場合も、募集要項で対象範囲を確かめ、見積書を分けておくと整理しやすくなります。
助成率3分の2でも、先に全額を用意する
たとえば、対象と認められる改装・設備費が300万円なら、助成率3分の2を単純計算した額は200万円です。自己負担の目安は100万円ですが、助成金は後払いです。そのため、実際には工事会社へ支払う300万円をいったん用意し、その後に実績確認を受ける資金計画が必要です。
| 想定する対象経費 | 3分の2の試算 | 自己負担の目安 | 先に必要な支払資金 |
|---|---|---|---|
| 150万円 | 100万円 | 50万円 | 150万円 |
| 300万円 | 200万円 | 100万円 | 300万円 |
| 450万円 | 300万円 | 200万円以上 | 450万円 |
※上表は仕組みを理解するための単純試算です。450万円の例では事業所整備費の助成限度額250万円が適用されるため、自己負担は少なくとも200万円となります。実際の助成額は対象経費、審査、実績確認により決まります。

店を譲る経営者と後継者が一緒に決めたい4つのこと
1.何を引き継ぐのか
店舗承継では、商品やサービスだけでなく、屋号、設備、在庫、仕入先、顧客との関係、電話番号、ウェブサイト、営業上のノウハウなど、引き継ぐものがいくつもあります。すべてを一度に決める必要はありませんが、助成金で整える設備と、売買・譲渡の対象を混同しないようにします。
たとえば、冷蔵設備を現経営者から買い取るのか、後継者が新たに購入するのかで、契約書、見積書、支払先が変わります。既存設備の譲渡が助成対象になるとは限らないため、公社へ事前に確認することが大切です。
2.いつ店を引き継ぎ、いつ営業を始めるのか
第3回の交付決定は2027年3月1日の予定です。公式Q&Aでは、この制度上の「開業日」は開業届の日付ではなく、店舗で事業を開始した日と説明されています。交付決定前に後継者が店舗営業を始めると対象外になる可能性があります。
一方、長期間休業すると常連客や従業員に影響が出ることもあります。現経営者が営業を続ける期間、改装のために休む期間、後継者が開業する日を、工事会社や家主とも相談して一本の工程表にしておくと安心です。
3.店舗の契約と許認可をどう引き継ぐのか
賃貸店舗の場合、今の契約をそのまま後継者へ移せるとは限りません。名義変更、新規契約、敷金や保証金の扱い、原状回復義務を家主や管理会社に確認します。飲食店、美容室、薬局などは許認可や届出も関係するため、保健所など所管窓口への確認も必要です。
公式Q&Aでは、申請時点で賃貸借契約を結んでいる必要はないとされています。予定物件の場所や家賃が分かる資料を用意します。ただし、家賃として助成対象になるのは交付決定日以降に支払った分であることにも注意します。
4.承継後に商店街とどう関わるのか
審査では、自店の収益だけでなく、商店街活動への参加や他店との協力、地域への波及効果も見られます。現経営者が長年築いた近隣店との関係は、後継者にとって大きな財産です。行事、会費、清掃、防犯、共同販促など、普段の関わり方を伝えておくと、後継者は計画を具体化しやすくなります。
申請できそうかを確かめるチェックポイント
| 確認すること | 制度上のポイント | 確認先・資料 |
|---|---|---|
| 店舗の場所 | 都内区市町村に登録された商店街・商店会等にあるか | 出店予定地の区市町村 |
| 業種 | 公社が定める助成対象業種に該当するか | 公式の業種確認表 |
| 事業開始日 | 店舗での事業開始が交付決定日以降か | 承継・工事・開業の工程表 |
| 申請者の関与 | 申請予定店舗の事業に専ら従事できるか | 勤務・役員・兼業状況 |
| 現経営者の実績 | 生存中の承継では、基準日時点で都内で1年以上実質的に事業を行っているか | 第3回基準日2026年10月1日 |
| 商店街の確認 | 商店街出店確認書に代表者等の署名が得られるか | 商店街会長・担当者 |
上の条件を満たしていても、採択が約束されるわけではありません。一次審査と面接審査があり、事業の実現可能性、資金計画、商店街への貢献、経営者としての知識や経験などが確認されます。
申請までの進め方
まず、後継者と承継の方向を共有する
最初からすべての契約条件を固める必要はありません。まずは、誰が運営するのか、いつ頃引き継ぐのか、何を残したいのかを話し合います。現経営者にとって大切な従業員、常連客、取引先への考えも、後継者へ伝えておきます。
店舗が登録商店街にあるか確認する
見た目が商店街にある店舗でも、制度上の登録商店街に属しているとは限りません。出店予定地の区市町村へ、商店街名と代表者の連絡先を確認します。その後、商店街の担当者へ事業内容を説明し、商店街出店確認書への署名を依頼します。
GビズIDと申請書類を準備する
原則電子申請のため、GビズIDプライムを用意します。申請書では、店のコンセプト、顧客、商品・サービス、売上と費用、資金調達、商店街との協力などを説明します。現経営者が持つ過去の売上推移や季節変動、仕入条件は、後継者の損益計画を現実的にする材料になります。
見積書と資金計画をそろえる
改装工事、設備、備品、広告を分けて見積もりを取り、助成対象になりそうなものと、対象外でも必要なものを整理します。助成金が入るまでの支払資金、運転資金、予備費も別に見ておきます。
交付決定までは契約・発注の時期を確認する
助成事業では、交付決定前の契約、発注、支払いが対象外になることがあります。物件の賃貸借については別の扱いがあるため、公式Q&Aと募集要項を確認し、不明な支出は契約前に公社へ問い合わせます。「店を押さえたい」「工事日を先に確保したい」という事情がある場合ほど、順序を確認してから進めることが大切です。
店舗承継の具体例
例1:家族以外の従業員が飲食店を引き継ぐ
70代の店主が、長く勤務してきた料理人へ店を引き継ぐケースです。後継者は厨房機器の一部を更新し、客席の段差を改善したいと考えています。
この場合、現経営者は常連客や仕入先、レシピ、従業員との関係を引き継ぎ、後継者は開業後の店舗運営と資金計画を説明します。厨房機器、改装、広告が助成対象になるか、保健所の営業許可をどう取り直すか、賃貸借契約をどう切り替えるかを順に確認します。
例2:親族が小売店を引き継ぎ、売場を改装する
親から子へ小売店を承継し、従来の商品を残しながら新しい顧客層向けの売場を加えるケースです。申請では「古くなったから改装する」だけでなく、地域の顧客ニーズ、売上計画、商店街内の他店との連携を具体的にします。
什器、レジ、看板、ウェブサイトなどを検討するときは、対象経費の範囲と上限を分けて確認します。今の店で使っている設備を無償で引き継ぐのか、新しく買うのかも整理します。
承継の契約と助成金の申請は分けて整理する
店舗を引き継ぐ契約では、誰が誰に、何を、いくらで譲るかを決めます。一方、助成金の申請では、後継者が開業のために新たに負担する対象経費を説明します。この二つは関係しますが、同じものではありません。
たとえば、現経営者から営業権、在庫、既存設備をまとめて譲り受ける場合、その承継対価がそのまま助成対象になるとは限りません。後継者が別に発注する改装工事や新規設備については、対象経費になる可能性があります。承継契約の金額と、助成金用の見積書を分けておくと、公社や専門家へ相談しやすくなります。
お金の流れは、少なくとも次の五つに分けて考えると整理できます。
- 店や事業を譲り受けるための承継対価
- 内装工事、設備、備品、広告などの開業費用
- 敷金・保証金、仲介手数料、許認可などの周辺費用
- 商品仕入れ、人件費、光熱費など開業後の運転資金
- 助成金が支払われるまでの立替資金と予備費
承継対価を高く設定しすぎると、改装や運転資金が足りなくなることがあります。反対に、価格だけを抑えて必要な修繕を先送りすると、後継者が営業開始後に追加負担を抱えることもあります。現経営者の希望、後継者の返済力、設備の状態を一緒に見ながら、無理のない配分を考えます。
個人事業の承継、事業譲渡、株式譲渡では、契約書、税金、許認可、従業員の雇用の扱いが異なります。助成金の条件だけで承継方法を決めず、店を残す目的に合う形を専門家と確認してください。
他の東京都制度との違い
東京都には、事業承継に関する複数の助成制度があります。名前が似ていても、申請者、対象経費、承継の時期が異なります。
| 制度・記事 | 主な場面 | 今回の制度との違い |
|---|---|---|
| 商店街起業・承継支援事業 | 都内商店街の店舗を引き継いで開業 | 改装・設備・広告・家賃を支援 |
| 事業承継支援助成金 | 承継に向けた外部専門家への相談等 | 店舗改装や家賃の制度ではない |
| 後継者チャレンジ | 後継者による大規模な設備投資 | 商店街店舗に限られず、設備投資中心 |
| 事業承継後の新規事業支援 | 承継後の事業展開 | 承継後の成長計画を支援 |
同じ経費について複数の助成金を重ねて受け取れるとは限りません。店の改装、設備更新、専門家費用、販路開拓を分け、自社の計画に合う制度を選びます。
よくある行き違い
「最大694万円」を前提に予算を組む
最大額は、事業所整備費と3年間の家賃助成をそれぞれ上限まで利用した場合の合計です。対象経費、助成率、実際の家賃、審査結果によって額は変わります。助成金が少なくても運営できる計画を基本にします。
現経営者だけで申請を進める
承継後に店舗を運営するのは後継者です。申請書や面接では、後継者自身が事業計画を説明できることが大切です。現経営者は過去の実績や地域との関係を伝え、後継者の計画づくりを支えます。
商店街への相談を最後に回す
申請には商店街出店確認書があり、代表者等の署名が必要です。商店街の課題を聞く項目もあるため、締切直前では間に合わないことがあります。店を引き継ぐ話を地域にどこまで伝えるかは慎重に考えながら、必要な担当者へ早めに相談します。
助成対象外の費用を自己資金に入れていない
在庫の仕入れ、保証金、許認可、運転資金、承継対価、対象外の設備など、助成金だけでは賄えない支出があります。制度の対象経費表と、自社に必要な支出一覧を並べて確認します。
申請前に確認するチェックリスト
- 後継者と、引き継ぐ店・商品・顧客・従業員について話し合った
- 申請予定店舗が都内の登録商店街に属するか区市町村へ確認した
- 公社の業種確認表で、予定業種が対象か確かめた
- 第3回の基準日と現経営者の事業実績を確認した
- 後継者が申請予定店舗の事業に専ら従事できるか確認した
- 商店街出店確認書の相談先と必要日数を確認した
- GビズIDプライムを取得済み、または申請手続きを始めた
- 改装、設備、広告、家賃を分けて見積もった
- 助成金入金前に支払う資金と、開業後の運転資金を見込んだ
- 交付決定前に行ってよい契約・発注・支払いを公社へ確認した
- 賃貸借契約、許認可、屋号、顧客情報などの引継ぎ方法を確認した
- 商店街活動への参加や地域への貢献を後継者と話し合った
よくある質問
現経営者が申請できますか?
現在の店をそのまま続けるための改装であれば、この制度の対象になるとは限りません。事業承継では、店を引き継いで新たに運営する後継者が申請者となることが基本です。承継形態によって判断が変わるため、申請前に公社へ確認してください。
親族以外への承継でも使えますか?
制度上の事業承継は、親族内承継だけに限るとは案内されていません。従業員や第三者への承継を考えている場合も、現経営者の事業実績、後継者の申請資格、店舗の開業時期などを確認します。親族以外への承継の考え方は、東京の後継者候補は66.5%が親族以外でも解説しています。
申請時点で店舗を契約していなくても大丈夫ですか?
公式Q&Aでは、申請時点で契約済みである必要はないとされています。予定物件の場所や家賃が分かる資料を用意します。交付決定日の6か月前から契約した物件が対象になり得ますが、助成対象となる家賃は交付決定日以降に支払った分です。
開業届を出した後でも申請できますか?
公式Q&Aでは、開業届の日付ではなく、店舗で実際に事業を始めた日を制度上の開業日としています。開業届を提出済みでも申請できる場合がありますが、交付決定前に店舗営業を始めると対象外です。
商店街に加入していないと申請できませんか?
まず、店舗が区市町村に登録された商店街に属するかを確認します。申請には商店街出店確認書があり、商店街代表者等から署名を受けます。加入条件や会費、活動内容も商店街へ確認してください。
助成金はいつ入金されますか?
助成金は後払いです。公社が店舗の現地調査や支払い状況を確認した後に支払われます。工事費や設備費、家賃を先に支払える資金計画が必要です。
株式譲渡で会社ごと引き継ぐ場合も対象ですか?
株式譲渡では同じ法人が店舗営業を続けるため、この制度が求める「新たに店舗をオープンする方」に該当するかは個別確認が必要です。事業譲渡、個人事業の承継、法人の株式譲渡では契約と許認可の扱いも異なるため、公社と専門家へ承継形態を伝えて確認してください。
店を誰に引き継ぐか、まだ決まっていません
助成金の申請を急ぐ前に、親族、従業員、第三者への承継、会社売却などの選択肢を比べるところから始めても問題ありません。会社や店の名前を一般に公開せず、秘密保持に配慮しながら相談できます。東京都内の後継者選びに関するデータは、東京の会社売却・事業承継データにまとめています。
店の歴史を残しながら、後継者の計画を形にする
店舗承継では、今の店をそのまま残すことだけが正解ではありません。常連客が大切にしてきた商品、従業員の経験、取引先との信頼を守りながら、後継者が続けやすい設備や売場へ整えることもできます。
商店街起業・承継支援事業は、そのための改装や設備、家賃を支える制度です。一方で、申請期限、開業日、後払い、商店街確認書など、順序を間違えると利用しにくくなる条件があります。
まずは現経営者と後継者で、残したいもの、変えたいもの、必要な資金を一枚に書き出してみてください。資料がすべてそろっていなくても、何を確認すればよいかを相談することはできます。
出典・確認先
- 東京都「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業・商店街起業・承継支援事業」
- 東京都中小企業振興公社 商店街起業・承継支援事業 特設サイト
- 申請手続き・募集要項・申請書類
- よくある質問
- 申請前確認チャート
制度内容は2026年10月5日時点の公式情報を確認しています。申請の際は、最新の募集要項、申請様式、対象業種、Q&Aを必ずご確認ください。
※本記事は公表資料に基づく一般的な情報であり、助成金の採択、法務・税務上の取扱いを保証するものではありません。契約、許認可、税務、雇用などは、東京都中小企業振興公社、自治体、税理士、弁護士、行政書士等の専門家へ個別にご確認ください。