「継ぐスタ」とは、近年注目を集めている、日本政策金融公庫が支援する新しい創業形態の一つです。本記事では、「継ぐスタ」の具体的な手順、その魅力や利点、そして利用する際のポイントや注意点について詳しく解説していきます。経営を始める際の新たな選択肢として、また、既存の事業者が後継者を探す際の参考として、ぜひ本記事をお役立てください。
日本政策金融公庫が運営する継ぐスタとは?
「継ぐスタ」とは、日本政策金融公庫の創業支援の名称です。事業の引継ぎと創業をかけ合わせているのが特徴の新しい創業スタイルを、日本政策金融公庫が支援しています。従来の「ゼロからの創業」とは異なり、既存の事業や企業を受け継ぐことで、新たな経営の舵取りを始める方法を指します。このアプローチは、多くのメリットを持ちながらも、その利用には注意が必要です。こちらの記事を読んでいる皆様の中には、新しい事業を始めたり、経営をしたいと考えている方がたくさんいらっしゃると思います。「継ぐスタ」は、それらの方の夢を実現するための方法の一つとして注目されています。
継ぐスタの4つのメリット
初期投資を抑えられる
例として飲食店の開業を考えると、新しい店舗を設立するためには、場所の確保、内装の変更、そしてキッチン設備の購入など、さまざまな初期投資が必要です。しかし、「継ぐスタ」を利用選択することで、既存の店舗や設備を引き継ぐことができ、これにより初期の出費を大きく抑えることができます。特に、創業初期には予期せぬ出費が増えることもあるため、この節約は大きな利点となります。
経営に必要なリソースをそのまま引き継げる
飲食店の例を引き続き考えると、店舗の成功には、特定の技術や味、顧客の信頼、食材の供給ルート、そして地域での知名度など、多くのビジネスリソースが必要です。これらのリソースを一から築くのは難しいのですが、「継ぐスタ」では、これらの価値あるリソースを引き継ぐことができます。これにより、新しいアイディアや戦略を持ちながら、既存のリソースを最大限に活用することができます。
M&A手数料がかからない
「継ぐスタ」は日本政策金融公庫によって運営されており、その主要な業務は融資です。そのため、M&Aに関する手数料は発生しません。これにより、企業や事業の買収をサポートする際のコストを削減することができます。
資金調達のサポート
事業や企業の買収に必要な資金の調達に関しても、日本政策金融公庫からの融資を利用することができます。これにより、資金面でのサポートを受けながら、スムーズなM&Aを進めることが可能となります。
継ぐスタを利用するときの注意点
「継ぐスタ」を利用する際には、以下の点に注意が必要です。
すべての理想が叶う案件は見つかりにくい
既存の事業から引き継ぐ対象を選ぶ際、自身の目指す目的やビジョンが詳細であるほど、理想的な事業を見つけるのが難しくなる可能性があります。
人気な案件は条件が厳しくなる場合も
すばらしい経営資源を持つ事業や、高い利益を上げている事業は、多くの人々にとって魅力的です。募集が多くなる場合は、事業を受け継ぐための条件が厳しくなることもあります。
ゼロからの創業か、事業を引き継ぐ形で創業するか、どちらの方法が自分の目標やビジョンに合致するかをしっかりと考慮し、その上で創業を進めることが重要です。
継ぐスタはどんな人におすすめ?
経験と知識を活用したい方
自身が持つ専門的な知識や経験を生かしたいけれども、「ゼロからの創業」には不安を感じている方。
初期投資をなるべく抑えたい方
新規に事業を立ち上げる際の高い初期投資を避けたいと考え、既存の事業を引き継ぎたいと思っている方。
早く事業を軌道に乗せたい方
創業初期からの赤字を最小限に抑え、事業を迅速に安定させたいと考える方。
既存のリソースをうまく活用したい方
独自のアイディアをゼロから形にするのは難しいと感じ、他の企業の経営資源を利用して実現したい方。
既存の事業を伸ばすのが得意と感じる方
新しい事業をゼロから立ち上げることよりも、既存の企業を伸ばすことが得意と感じる方
これらの考えを持つ方々にとって、「継ぐスタ」は非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
継ぐスタを利用する手順
「継ぐスタ」を利用する際の手順について、以下に詳しく解説いたします。
①希望の事業を探す
まず最初に、自分の目指す方向やこれまでの経験を基に、受け継ぎたい事業を探します。ただし、具体的なビジョンがあるほど、理想の事業を見つけるのは難しくなることも。日本公庫の「事業承継マッチング支援」などのサービスを活用し、効果的に事業を探すことをおすすめします。
②譲る側のオーナー様との事業の譲渡に関する合意形成
希望する事業を見つけたら、次は事業の譲渡に関する合意を目指します。自分のスキルやビジョンをしっかりと伝え、事業を譲渡してもらうための信頼を築くことが大切です。また、譲渡条件や価格など、双方が納得できる形での合意を心がけましょう。
③正式な譲渡契約の締結
合意が形成されたら、正式な譲渡契約を結びます。契約形態は「継ぐスタ」の方法に応じて、以下のようなパターンが用意されています。
・個人として「事業譲渡補足」を通じて事業を受け継ぐ。
・自らが代表となる法人を設立し、「事業譲渡」を通じて事業を受け継ぐ。
・個人として「株式譲渡」を通じて、事業を譲渡する側の新しい代表として参画する。
事業の譲渡が完了したら、次はその事業をさらに成長させるステージです。受け継いだ事業の強みを活かしつつ、新しい価値を創出していきます。従業員や取引先との関係を深め、事業の基盤をさらに強固にしていくことが求められます。
よくある質問
未経験の分野でも挑戦できますか?
未経験の分野に挑戦する方も対象です。事業の前オーナーの下で一定の期間学ぶ、または前オーナーを顧問として迎えるなどして、必要な知識や経験を身につけるなどの支援を受けるなども可能です。※前オーナー様への確認が必要です。
全てを自分だけで進めなければいけませんか?
事業の譲受は、M&Aの一環としての手続きが伴います。このプロセスには専門的な知識が求められるため、全てを自分だけで進めるのは難しいことが多く、税理士や弁護士などの専門家のサポートを受けることも必要と思います。日本政策金融公庫は事業引継ぎ支援センターとも連携しているため、各種専門家の紹介を受けることが可能です。
M&Aの際の資金調達はどうすればよいですか?
事業の譲受に必要な資金は、事業の規模や状況により異なります。自己資金が不足する場合、外部資金の調達が考えられます。日本政策金融公庫は「継ぐスタ」に対応した融資制度を提供しています。詳しくは以下の記事でご紹介していますので、ぜひ、ご参考ください。
「日本政策金融公庫の融資制度「事業承継・集約・活性化支援資金」を徹底解説!」
まとめ
「継ぐスタ」は、新しい創業の形として多くの可能性を秘めています。既存の事業や企業を受け継ぐことで、新たな挑戦を始めることができるこの方法は、多くの経営者や起業家に新しい選択肢を提供しています。しかし、その魅力的な側面と同時に、注意すべきポイントも存在します。本記事を通じて、その手順やメリット、注意点についての理解を深めていただけたら幸いです。