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東京の会社は国と都のどちらの支援を使える?事業承継・M&A補助金16次の確認ポイント

事業承継・M&A補助金16次と東京都支援の違い

東京都内で会社を経営されている方が、事業承継やM&Aに伴う費用を考えるとき、国の「事業承継・M&A補助金」と東京都の「事業承継支援助成金」は、どちらも有力な選択肢です。

ただし、名前が似ていても、支援する場面は同じではありません。後継者への承継を見据えた設備投資、M&Aの仲介・デューデリジェンス、譲受後のPMI、売却準備の企業価値算定など、これから行うことによって選ぶ枠が変わります。

2026年10月9日現在、国の第16次公募は2026年11月6日(金)17時が申請期限です。東京都の2026年度第3回募集は2026年10月13日(火)から12月15日(火)17時までです。単純に補助上限だけを比べるのではなく、「何の費用を」「いつ契約し」「いつ支払うか」を先に整理すると、自社に合う制度を判断しやすくなります。

この記事では、会社を築いてこられたオーナー社長の立場から、国と東京都の制度の違い、4つの経営場面ごとの考え方、申請前に確認したい注意点を分かりやすく整理します。

制度 申請期間 主な支援場面 最初に確認すること
国・第16次 2026年10月2日〜11月6日17時 承継前の設備投資、M&A専門家費用、PMI、廃業・再チャレンジ 該当する申請枠、GビズID、契約・支払時期
東京都・第3回 2026年10月13日〜12月15日17時 承継・M&Aの準備、企業価値算定、自社DD、PMI計画など 都内要件、支援機関との相談、助成対象期間

※日付は各制度の公式公募要領に基づきます。国と東京都では対象者、対象経費、申請要件が異なります。

国と東京都のどちらを見るかは、会社が今いる段階で考える

補助金の情報を見ると、上限額や補助率に目が向きやすいものです。しかし、実際の判断で先に確認したいのは、会社が今どの段階にあり、次にどの費用が発生するかです。

会社の段階 想定される費用 確認したい制度 理由
親族・従業員への承継を予定 機械、システム、店舗改装など 国・事業承継促進枠 承継を契機とした生産性向上の投資を支援
M&Aを検討・実行 FA・仲介、DD、セカンドオピニオンなど 国・専門家活用枠 譲渡側・譲受側の専門家費用を対象にできる
M&Aが成立し統合を進める PMI専門家、統合に必要な設備・システム 国・PMI推進枠 統合計画の策定と実行の両方に対応
売却や承継の方向性を整える 企業価値算定、自社DD、承継計画、PMI計画など 東京都・事業承継支援助成金 実行前の準備や課題整理に使いやすい

たとえば、会社売却を考え始めた段階で、まだ相手候補も決まっていない場合は、いきなり仲介契約を結ぶことだけが準備ではありません。自社の強み、株主構成、主要契約、簿外債務の可能性などを専門家と整理し、売却を進めるか、親族・従業員承継を残すかを比較する時間も大切です。東京都の助成は、こうした準備段階と相性のよいメニューがあります。

一方、すでに相手候補があり、FA・仲介やデューデリジェンスの費用が具体化しているなら、国の専門家活用枠が候補になります。承継予定日が定まり、後継者が取り組む設備投資を考えている場合は、事業承継促進枠を確認します。

補助金の対象経費と申請時期を専門家と確認する東京のオーナー社長

事業承継・M&A補助金16次の4つの申請枠

国の第16次公募では、会社の置かれた状況に応じて申請枠が分かれています。同じ会社でも、支出内容によって申請先が変わるため、「事業承継だからこの枠」と一括りにはできません。

申請枠 主な対象 補助上限・補助率 経営者が確認したい点
事業承継促進枠 親族・従業員などへの承継を予定し、生産性向上に取り組む事業者 上限800万円。一定の賃上げ要件を満たす場合は1,000万円。小規模事業者等は2/3、その他は1/2 承継予定日が指定期間内か。設備等が承継後の計画につながるか
専門家活用枠 M&Aの譲渡側・譲受側 上限600万円。DD費用は上限200万円を加算できる場合あり。買い手は2/3、売り手は1/2または2/3 仲介・FAは登録M&A支援機関か。成約しない場合の上限と対象費用
PMI推進枠 M&A後の統合に取り組む譲受側 専門家活用型は上限150万円・1/2。事業統合投資型は上限800万円、賃上げ要件で1,000万円、小規模事業者等2/3・その他1/2 統合計画の策定支援か、設備・システム等の実行投資か
廃業・再チャレンジ枠 事業承継・M&Aに伴う廃業や再挑戦 上限300万円、2/3 単独申請か、他枠との併用か。廃業費の範囲

事業承継促進枠では、承継対象期間が2026年11月6日から2031年11月5日までと定められています。承継日が近い会社だけでなく、数年先を見据えて後継者と設備投資を考える会社にも検討余地があります。ただし、単なる老朽設備の更新ではなく、承継を契機とした生産性向上の計画として説明できることが大切です。

専門家活用枠では、FA・仲介費用を補助対象とする場合、契約する業者がM&A支援機関登録制度の登録機関であることを確認します。登録の有無だけで良し悪しを決めるものではありませんが、補助対象になるかどうかに関わる重要な要件です。契約前に、担当者へ登録番号と対象となる費目を尋ねておくと安心です。

「上限800万円」は、800万円が先に振り込まれる意味ではない

補助金の数字は、受け取れる最大額です。実際の交付額は、認められた対象経費に補助率を掛けて決まり、原則として事業完了後の実績報告・確定を経て支払われます。

たとえば、補助率2/3の枠で対象経費900万円がすべて認められた場合、計算上の補助額は600万円です。会社は契約時や支払時に900万円を用意し、その後に補助額を受け取る流れを想定します。対象外経費や消費税、審査で減額される可能性も考え、資金繰りには余裕を持たせることが重要です。

数字を読むときの3つの視点

  • 補助上限ではなく、自社の対象経費×補助率で概算する
  • 交付決定前に契約・発注・支払をすると対象外になり得るため、日程を先に確認する
  • 後払いを前提に、つなぎ資金と自己負担額を確保する

東京都の事業承継支援助成金は、準備段階の費用を確認しやすい

東京都の2026年度第3回事業承継支援助成金は、助成上限200万円、下限20万円、助成率2/3が基本です。小規模企業者がA・B・Dタイプを申請する場合は、対象経費の10分の10となる区分もあります。

国の制度より上限は小さいものの、企業価値算定、M&Aに向けた自社のデューデリジェンス、事業承継計画の策定、PMI計画の作成など、実行の前段階で専門家に相談したい費用が対象候補です。会社売却を決め切っていない段階でも、選択肢を比較するための準備として使える可能性があります。

東京都中小企業振興公社の支援を受けた実績がない場合も、募集要項で定められた個別相談を経て申請できる場合があります。「支援を受けたことがないから対象外」と早合点せず、公社の窓口で確認してみるとよいでしょう。

比較項目 国・第16次 東京都・第3回
主な役割 承継に伴う投資、M&A実行、PMI、廃業・再挑戦 承継・M&Aの準備、課題整理、価値算定、計画策定
上限 枠により150万〜1,000万円。廃業費等の加算あり 200万円
補助・助成率 1/2または2/3が中心 2/3。小規模企業者の一部タイプは10/10
申請方法 Jグランツ Jグランツ
費用を使える時期 交付決定後から補助事業期間内 2026年12月1日〜2027年7月31日の助成対象期間内
相談先 補助金事務局、認定支援機関、登録M&A支援機関等 東京都中小企業振興公社

国と東京都の制度は、対象経費が重なることがあります。同じ契約・同じ経費について二重に補助を受けることはできません。別々の経費で両方を検討する場合も、制度ごとの併用条件を確認し、どの契約をどちらへ申請するかを明確に分ける必要があります。

東京都の制度を詳しく知りたい方は、既存記事の東京都の事業承継支援助成金、企業価値算定や自社DDについては企業価値算定・自社DDの助成もあわせてご覧ください。

オーナー社長の状況別に見る3つの具体例

1.後継者が決まり、工場設備を入れ替えたい

70代の社長が、工場長として長く勤務してきた役員へ数年後に株式と経営を引き継ぐケースを考えます。後継者は、熟練者の経験に頼ってきた検査工程をデジタル化し、若手が仕事を覚えやすい環境にしたいと考えています。

この場合は、国の事業承継促進枠を中心に確認します。承継予定日を対象期間内に置き、設備投資が生産性向上と後継者の経営計画にどうつながるかを整理します。単に「古い機械だから買い替える」だけでなく、検査時間、手戻り、品質管理、若手育成などの改善効果を数字で示せると、計画の筋道が伝わりやすくなります。

申請前に、社内では「誰へ、いつ、どのように承継するか」を大まかに共有しておきます。すべてを決め切ってから相談する必要はありません。承継方法や株式移転の時期に迷いがある場合は、事業承継計画書の考え方を参考に、税理士や金融機関、支援機関と一緒に順序を整えるとよいでしょう。

事業承継後の設備投資計画を話し合う経営者と後継者

2.会社売却を検討し、仲介契約の前に自社を整理したい

後継者がいないものの、従業員の雇用と取引先との関係をできるだけ守りたい会社では、価格だけでなく、買い手の方針や引継ぎ条件を比較できる準備が重要です。

まだ相手候補がいない段階なら、東京都の助成を使って企業価値算定や自社DDを行える可能性があります。株主名簿、定款、借入・個人保証、主要契約、知的財産、許認可などを整理すると、買い手から質問を受けた際に慌てずに対応できます。これは売却を急がせるためではなく、売却、従業員承継、親族承継、現状維持を比較する材料を増やすための準備です。

仲介会社やFAと契約し、具体的なM&A手続きへ進む段階では、国の専門家活用枠を確認します。契約前に、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬、DD費用のうち、どれが補助対象となる可能性があるかを見積書で分けてもらうと整理しやすくなります。

3.M&A成立後、従業員と業務の統合を進めたい

M&Aは契約締結が終点ではありません。給与・評価制度、会計システム、受発注、主要顧客への説明、工場や店舗の運営ルールなどを調整し、両社の強みを生かせる状態にしていく必要があります。

外部専門家と100日計画や統合方針を作る費用は、PMI推進枠の専門家活用型が候補です。システム統合や生産設備の更新など、計画を実行するための投資が中心なら、事業統合投資型を確認します。

ただし、制度があるから急いで統合するのではなく、現場が無理なく受け入れられる順序を優先します。会社名、就業規則、評価制度などを一度に変えると、従業員が将来を不安に感じることがあります。統合効果と現場の負担を見ながら、先に合わせるもの、当面残すものを分ける考え方が大切です。

申請期限より前に確認したい契約・発注・支払の時期

補助金でよくある行き違いは、「申請期限までに支払えばよい」と考えてしまうことです。多くの補助事業では、交付決定前の契約・発注・支払は対象外となります。公募期間中に見積りや相談を進めることはできますが、対象にしたい契約を締結する日は、必ず申請枠の要領と事務局の案内で確認してください。

国の第16次公募では、申請受付終了後に審査があり、交付決定は2027年1月下旬以降の予定です。補助事業期間は交付決定日から原則14か月以内とされています。設備の納期やM&Aの契約時期が先に決まっている場合は、補助金のスケジュールに合わせられるかを早めに検討します。

東京都の第3回募集は、助成対象期間が2026年12月1日から2027年7月31日までです。契約、サービス提供、支払のすべてが対象期間内に必要か、費目ごとの例外があるかを募集要項で確認します。

契約前に専門家へ確認したいこと

  • 今回の見積りのうち、補助対象となる可能性がある費目
  • 契約・発注・着手・支払を行ってよい最も早い日
  • 採択されなかった場合の契約の扱いと、自社負担できる金額
  • 見積書、契約書、請求書、振込記録に必要な記載
  • 補助対象期間内に完了できる業務範囲

GビズIDは申請直前ではなく、最初に確認する

国・東京都のいずれも、電子申請にはJグランツを使います。JグランツへのログインにはGビズIDプライムが必要です。公式案内では、アカウント発行に1〜2週間程度、状況によっては3週間ほどかかる場合があります。

第16次公募の締切が2026年11月6日17時であることを考えると、未取得の会社は申請内容を作り込む前に、まずGビズIDの手続きを始めるのが現実的です。すでに取得済みでも、代表者変更やメールアドレス変更後にログインできるかを確認しておきます。

なお、IDを取得しただけで申請が完了するわけではありません。申請画面では、事業計画、承継・M&Aの状況、経費明細、見積書、決算書などの入力・添付が必要になります。締切当日はアクセス集中や入力不足が起こりやすいため、社内の入力担当者と専門家の確認日を先に決めておくと安心です。

最初の相談では、すべての資料が揃っていなくてもよい

「補助金の相談をするなら、承継方針も資料も完成させなければ」と思われるかもしれません。しかし、初回相談は、どの制度に可能性があり、何から整えるかを確認する場でもあります。

まず手元にある範囲で、次の内容を共有できれば話を始められます。

  • 会社所在地、業種、従業員数、直近の売上規模
  • 親族・従業員承継、M&A、まだ未定のいずれか
  • おおよその希望時期
  • 検討している設備・専門家業務と概算金額
  • すでに契約・発注・支払をしているものがあるか
  • GビズIDプライムの取得状況

そのうえで、決算書、履歴事項全部証明書、株主名簿、見積書、承継計画など、申請に必要な資料を順に揃えます。会社名や売却意向を一般に公開する必要はありません。相談先とは秘密保持の取り扱いを確認し、共有範囲を決めて進めます。

補助金を使うか判断するチェックリスト

  • 承継・M&A・PMIのうち、今の会社に最も近い段階を言葉にできる
  • 補助金を使いたい費用と、通常の運転資金を分けている
  • 契約、発注、納品、支払の予定日を一覧にした
  • 交付決定まで契約を待てるか、相手先と相談した
  • 補助金が後払いでも資金繰りに無理がない
  • 採択されなかった場合も進める事業と、見送る事業を分けた
  • 国と東京都へ同じ経費を重ねて申請していない
  • FA・仲介費用を申請する場合、相手が登録M&A支援機関か確認した
  • GビズIDプライムへログインできる
  • 公募要領の最新版と申請画面の注意事項を確認した

補助金は、会社の進路を決める目的そのものではなく、必要な準備や投資を進める手段です。補助率が高いという理由だけで不要な支出を増やすと、自己負担と管理負担が残ります。補助金がなくても会社に必要な取組か、という視点を持つと判断がぶれにくくなります。

よくある質問

国と東京都の制度へ同時に申請できますか?

制度上の併用可否を個別に確認する必要がありますが、少なくとも同じ契約・同じ経費を二重に補助してもらうことはできません。企業価値算定は東京都、承継後の設備投資は国など、費用と目的を明確に分ける場合でも、両方の事務局へ事前に確認してください。

会社売却をまだ決めていなくても相談できますか?

相談できます。東京都の制度には、企業価値算定や自社DD、承継計画など、選択肢を比較する準備に使えるメニューがあります。売却を前提に話を進めるのではなく、従業員・取引先への影響やご家族の意向も含めて相談内容を整理するとよいでしょう。

M&Aが成約しなかった場合も専門家費用は対象ですか?

国の専門家活用枠では、成約に至らなかった場合、補助上限や対象経費の扱いが変わります。第16次公募では、成約しない場合の上限は300万円となり、原則としてDD費用が対象となる整理です。仲介費用等の扱いは申請類型と公募要領で必ず確認してください。

交付決定前に仲介契約を結んでしまいました。対象になりますか?

交付決定前の契約・発注・支払は、原則として対象外になる可能性が高いです。契約日、業務開始日、支払日を整理し、事務局へ個別に確認してください。すでに支出した費用を補助対象と見込んだまま資金計画を立てないことが大切です。

申請すれば必ず採択されますか?

採択は保証されません。申請要件を満たしたうえで審査があります。採択されなかった場合に備え、全額自己負担でも進める取組、規模を小さくして進める取組、いったん見送る取組を分けておくと、経営判断を保ちやすくなります。

補助金の申請を仲介会社へ任せきりにしてもよいですか?

専門家の支援は心強い一方、申請内容と誓約の責任は申請者側にもあります。経費の内容、契約時期、自己負担、報告義務を経営者または社内担当者も把握し、提出前に内容を確認してください。

どこへ相談すればよいですか?

国の制度は事業承継・M&A補助金事務局、東京都の制度は東京都中小企業振興公社が公式窓口です。承継方法や税務、株式移転を含む相談は、税理士、弁護士、金融機関、認定経営革新等支援機関などへ相談します。会社売却の専門家を選ぶ際は、料金だけでなく、担当者の経験、秘密保持、利益相反への対応、従業員や取引先への考え方も確認するとよいでしょう。

自社の目的と日程を先に決め、制度を後から当てはめる

国の事業承継・M&A補助金16次は、設備投資からM&A専門家費用、PMI、廃業・再挑戦まで幅広く支援します。東京都の事業承継支援助成金は、企業価値算定や自社DD、計画策定など、承継・売却の準備を整える場面で確認しやすい制度です。

どちらが有利かは、上限額だけでは決まりません。会社の現在地、契約予定日、必要経費、自己資金、採択されなかった場合の方針を並べると、使う制度が見えてきます。

長年築いてこられた会社の承継は、制度の締切だけで急いで決めるものではありません。一方で、GビズIDや見積り、契約時期には準備期間が必要です。まずは「誰へ、いつ頃、何を引き継ぎたいか」「従業員や取引先に何を残したいか」を言葉にし、支援機関と一緒に申請の可否と進め方を確認してみてください。

公式情報

※本記事は2026年10月9日時点の公表資料を基にした一般的な情報です。補助金・助成金は審査があり、採択や交付を保証するものではありません。対象要件、公募期間、契約・支払時期、併用可否は変更される場合があります。申請時には必ず最新の公募要領と公式窓口をご確認ください。税務・法務・労務上の判断は、税理士、弁護士、社会保険労務士などの専門家へご相談ください。

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